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2016年11月18日 (金) | Edit |
前の記事では、低音域ではスピーカの振動板振幅が増加する事によって主に2次と3次の高調波歪みが増加するというオハナシをしました。今回は、市販ブックシェルフ型2ウェイスピーカの歪み特性をご紹介します。

歪み特性がカタログ等で公表される事は稀なのですが、ネットで検索して見つかった貴重な2例をご覧にいれます。

まずはバスレフ型。
参考のため、以前の記事に掲載した振動板振幅のシミュレーショングラフを再掲します。
basR.jpg
黄色が振動板の振幅です。おさらいすると、
バスレフ型では、共鳴周波数で振幅が一度減少する。
それ以下の周波数では振動板が制動を失って振幅は激増する(いわゆる「空振り」状態)。
でしたよね。

下のグラフは、FOSTEXのGR160という16cmバスレフ型2wayの周波数特性です。
GR160_f (1)
このグラフには、2次(赤)と3次(青)の歪みがプロットされています。
共鳴周波数(約70Hz)で振動板振幅が減少するため、2次および3次歪みは実際に減少している事がわかります。それより低い周波数ではどちらの歪みも増加し、2次(赤)は約40Hzでロールオフしています。3次はさらに増え続けますが、25Hzくらいでロールオフすると思われます。

SPLは40Hz以下でフラットになっていますが、これは歪みが激増したためです。このスピーカから40Hz以下の音は殆ど出ません。
このスピーカに40Hzの信号を入力した場合、出てくる音のほとんどが2次(80Hz)と3次(120Hz)の成分で占められ、元の40Hzの成分はほとんど含まれません。つまり、40Hzのマドンナのズンドコビートの信号が入力されると、このスピーカからは40Hzではなく80Hzと120Hzの音しか出てこないという事です。さらに30Hzでは、殆ど3次成分だけになります。つまり、ソースに強い30Hzの信号が含まれていた場合、このスピーカからは90Hzの音しか出てきません。

ここで忘れてならないのが、我々の耳には周波数の高い音の方が良く聞こえるという事実です。例えば、30Hzに対して125Hzの音は約25dBも大きく聞こえます。つまり、極低音の2次や3次の歪みの音は、元の音よりも遙かに敏感に聞こえやすいという事です。ホンマ厄介ですね。低音再生は。。。

下は、上の特性図から計算した歪み率(%)です。
BR.jpg
緑が3次、赤が2次です。青破線は2次と3次の合計です。4次以上は非常に僅かであると仮定し、ここではこれをTHD (総高調波歪み)と見なします。

1kH以上の歪み率は2次も3次も0.2%以下しかありません。なぜなら、振動板の振幅は非常にわずかだからです(シミュレーション グラフを見てね)。周波数が下がるにつれて振幅が増加するため歪み率も徐々に増加し、100Hzにおける3次歪み率は1%を少し超えています。

そこから、共鳴周波数(70Hz)に向けて歪み率は一度減少しますが、その後は空振り状態となって激増します。THD (2次+3次)は、50Hzで10%、40Hzで70%、30Hzで90%に達します。つまり、40Hz以下では元の周波数の音は殆ど含まれなくなります。以前の記事に書いたように、バスレフ型の場合、共鳴周波数より下の音は殆ど聞こえないか、聞こえたとしても音階がアヤフヤになるというのは、正にこういう事です。さらに、過渡的な問題も生じるため、出てくる音は元の信号波形とは似ても似つかぬ出鱈目な波形になります。もう、「ナンカ音が出てるだけ」という状態です。もはや「再生」と言えるレベルでは全くアリマセン。音階によっては根音(例えばドレミのド)が全然聞こえないか、聞こえたとしても音階とリズムが狂って聞こえるという事です。音楽ソースによっては40Hzまでかなり強い信号が含まれるため、この問題は顕著に感じられる場合があります。
聞いているうちにだんだんとイライラしてきて、ポートにティッシュペーパーや吸音材を詰め込み始めるのは恐らくそういう事です。

下は最近見つけたFOSTEX GX100Limited (10cm)の特性です。参考として追加しておきます。
l_ts_fostex100gxltd09.jpg

最近のスタジオ用モニタの殆どはアンプとDSP(デジタル信号プロセッサ)を内蔵していますが、それらのF特を見ると、バスレフの共鳴周波数より低い信号を非常に急峻なハイパスフィルタで除去しているように見受けられます。つまり、デタラメな音しか出てこないなら、入力信号をスパッとカットして全然聞こえないようにしてしまえ!という事です。共鳴周波数が比較的高い小型バスレフでは、そのような手立てが必須だと思います。シツコイですが、そんなんやったら密閉にしてDSPでちょっとだけブーストしたらエーヤンと思うのですが、何故そうしない?そのココロハ?

次に密閉型です。
下は、クリプトンKX-3PIIという密閉型2ウェイスピーカの特性です。ウーハーは17cmです。
KX-3P.jpg
横軸の左端は20Hzではなく35Hzくらいですので注意してください。F特は約50Hzまでフラットです。素晴らしい!
密閉型の現象はシンプルです。周波数が低下するにつれて振幅が増加して歪みが単純に増加します。途中で低下し始めるのはロールオフ現象です。2次も3次も約130Hz (約65Hz x 2、約45 Hz x 3)でロールオフしています。

下はグラフから読み取った歪み率です。
closed.jpg
赤が2次、緑が3次の歪み率です。密閉型は現象がシンプルなので説明は不要ですね。100Hzにおける3次歪みは0.2%以下であり、40Hzでも2%以下です。これは私のRoar+サブウーハの通常音量での特性とほぼ同等です。実用状態でこの特性なら私の基準を満たしてくれます。

しかし、ここで注意が必要なのは、これは1W入力で計測された値であるという事です。このスピーカの効率(1W入力で1m離れた位置で計測した音圧)は85dB以上あるため、一般的な住宅の一般的な広さの部屋で、一般的な快適音量(耳位置で70~80dB)でもって音楽を聞くのであれば、入力は概ね1W以下で十分でしょう。ですから、常識的な条件で音楽を聞く限り、このスピーカの40Hzでの3次歪みが2%を超える事はまずなかろうと思われます。しかし、アンプのボリュームを上げて敢えて大音量で聞こうとすると、振動板の振幅が増加し、3次歪みは激増するでしょう。

85dB以上で音楽を長時間聴いていると難聴を発症する危険性が高くなると言われます。微細なオトのチガイを聞き分けようとするマニア達にとって、難聴は致命傷でしょう。あるいは、長年の大音量再生で既に難聴気味になっているために、ますます大音量で聞こうとするのかもしれません。たまのライブならまだしも、日常的に大音量で音楽を聞く事は、音質面でも健康面でも良かろうはずがアリマセン。ご注意を。。。

という事で、市販の2ウェイスピーカの歪み特性について考察しました。
私がナゼそこまでバスレフ型を忌み嫌い、密閉型を好むのか、よくお分かりいただけたと思います。

次回は、基本の基本シリーズの最終回です。
オッタノシミニ!
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