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2016年11月14日 (月) | Edit |
前回の記事で、イヤフォン/ヘッドフォンに比べてスピーカによる低音再生がいかに難儀であるかがお分かりいただけたかと思います。

今回は、スピーカの振幅は低周波域で急増して歪みが大きくなるというオハナシです。

装置の小型化を図るには、ドライバをできるだけ小径にする必要があります(38cmウーハなんか、狭いお部屋で絶対使いたくないですからね。高価だし)。しかし、小さなドライバで十分に低い音まで再生しようとすると、小径のサブウーハを追加する方式にしろ、フルレンジで信号をブーストする方式にしろ、あるいはバスレフ方式にしろ、振動板の振幅は同一音量で比較すると大径ドライバを使う場合よりも大きくなります。そうすると、ドライバの機械的限界によって歪みが急増します。

この歪みは、通常、基本の周波数の整数倍の周波数で発生します(40Hzを再生する場合、80、120、160Hz、...で発生)。つまり、非常に低い音を再生しようとすると、それより何倍か高い周波数でノイズが発生し、全体的な再生クオリティが劣化します。LEANAUDIOでは、デスクトップ用の小さなシステムでイヤフォンなみの低音再生クオリティを達成しようと試みたわけですが、この低音歪みの重要性を痛感しました。歪みが多いと、低音はかえって大きくバンバンと聞こえるのですが(何故なら、歪みは高い周波数で発生し、人間の耳には高い周波数の方が聞こえやすい)、イヤフォンのようにズシリと重い本当の低音が聞こえないのです。良質な低音は静かだと言われますが、正にそのトーーーリ。

そして、様々なドライバを試した結果、MarkAudio製ドライバに行き着きました。当ブログで計測結果を再三ご紹介した通り、MarkAudio製のフルレンジ ドライバは、同等サイズのウーハーよりも低音再生能力がずば抜けて優れており(大振幅での歪みが非常に小さい)、トータルの音楽再生クオリティが明らかに向上するからです。過去記事をご覧くださいませ。

これは、ドライバの機械的な設計(サスペンションのコンプライアンス(柔らかさ)と直線性が保たれるストローク)が他社製とは異次元と言って良いほど優れているからです。小径のAlpairというと、高域が優れているように思われるかも知れませんが、本当のヒミツは低音再生の優秀さにあります。低域のクオリティが高いからこそ、トータルの音楽再生クオリティが高く聞こえるという事です。音楽の構造と同様、最低音域の再生は音楽再生の土台であり、全体のクオリティを大きく左右すると言うのが、LEANAUDIOを通した私の結論です。

さて、これからちょっと難しいオハナシになりますが、この問題についてできるだけ易しく説明できるよう頑張ってみますね。

下はスピーカー設計プログラム(アプレット版)によるシミュレーション結果です。
黄色の線で示した振動板の振幅に注目してください。

密閉型
mippei.jpg

バスレフ型
basR.jpg

重ねたグラフ
kasane1 copy

ドライバと箱の容積はどちらも同じです。入力信号の大きさは全ての周波数で一定ですが、周波数が1kHzを下回ると、どちらの形式でも振幅が急激に増加する事が分かります。

密閉型とバスレフ型の振幅(黄色のライン)を比較すると、120Hzくらいまではほとんど同じです。それ以下では、密閉型の振幅は周波数の低下に伴って単調に増加します。途中の膨らみは、箱の中の空気と振動板が共振するために生じます。私のように吸音材を大量に使うと、共振は抑えられてこの膨らみは目立たなくなります(ただし、レスポンスも低下する)。

他方、バスレフは共鳴周波数(約75Hz)で振幅が一度最小となります(理想的な共鳴では、理論的に振幅は0となる)。これがバスレフの良いトコロです。一見、バスレフ用のドライバは、密閉型ほど大振幅の歪みを重視しなくても良いように思われます。しかし、決してそうではありません。共鳴周波数より下ではレスポンス(聞こえる音の大きさ)が急激に減衰するのに、振幅は一気に増加し、60Hz以下では密閉型よりも大幅に大きくなってしまいます。制動を失った振動板がスカスカ動くのに、ポートからの音が振動板からの音を打ち消してしまうので、音が聞こえないという、いわゆる「空振り」の状態です。そして、振幅が激増すると、歪みも急激に増加し、歪みの周波数はポートからの音によって打ち消されないために、耳に聞こえてしまいます(元の周波数の音は殆ど聞こえないのに歪みの音ばかり聞こえる状態)。
共鳴周波数が十分に低ければ(例えば40Hz以下)、それ以下の音楽の信号のレベルは一般的に十分に低くなるため、これはあまり問題になりません。しかし、小型バスレフでは共鳴周波数が比較的高く(例えば、約70Hz)、それ以下の音楽信号のレベルもソコソコ高いため(例えば、マドンナのズンドコビートは約40Hz/-12dB)、かなり大きな空振りが(従って歪みが)発生するはずです。

小型システムにおいて、バスレフ方式というのは非常に不利な選択だと思えてなりません。LEANAUDIOでも様々な手立てを試しましたが、イヤフォンをリファレンスとする私にはバスレフ型がとうとう受け入れられませんでした。仕事しながら長いこと聞いていると、だんだんと違和感が募り始め、ティッシュでポートをドンドン埋めてしまって、とうとう密閉型になる。。というのを散々繰り返しましたからね。密閉型に対してほんの狭い周波数領域のレスポンスを精々6~8dB程度稼ぐために支払う代償が、あまりに大きすぎるように感じます。で、それやったら密閉型をちょっとブーストしたらエーヤンとなるのです。

長くなったので、今回はオシマイ。

今回の結論は、特に小型のシステムにおいては、密閉型にしろ、バスレフ型にしろ、振動板の大振幅時の歪みを抑える事が重要だという事です。

次回は、歪みが発生するメカニズムと、実際のスピーカの歪み特性をご紹介しようと思います。

オッタノシミニ!
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