FC2ブログ
2013年08月29日 (木) | Edit |
前の記事で、オーディオ用圧縮コーデックに関しては、ITU-R (国際電気通信連合 無線通信部門)が定める主観品質評価法(ブラインド評価)に則った方法で音質が評価されている事を紹介しました。

では、巷を賑わすハイレゾ音源についてはどうなのでしょうか?

例によってネットでサーチしてみましたが、確たる情報は得られませんでした。「高音質」が喧伝されているわけですが、その根拠はイッタイゼンタイ何処にあるのでしょうか? JAROさんに叱られないのでしょうか?

サーチ中に非常に興味深い論文を見付けましたので、要約をご紹介します。
PDFで113ページに及ぶ博士号申請論文です。

PDFへのリンク
ハイレゾリューションオーディオの研究 -西口敏行、電気通信大 情報システム研究科 博士(工学)の学位申請論文

以下、実験の内容と結果を要約しますが、原文に目を通される事を強くお勧めします。

実験1
実験システム
-信号は192kHz/24bitでデジタル化
-1024タップの直線FIRフィルタを使って21kHzで可聴帯域と超高域を分割
-再生システムは21kHz以下と以上で独立した系統を持つ
-実験はITU-R BS1116に完全準拠した音響評価質で実施
-2チャンネル ステレオ再生(スピカとリスナ間の距離は3m)
-可聴帯域用スピカにはB&Wの800シリーズ(Diamond)を使ったと思われる(図から推測)
-超高域用には別体のスーパーツイータ(上限70kHz)を使用(歪みを計測して機種選定している)

被験者
-男性30名、女性6名の計36名
-音響関係の研究者と音声制作技術者が33名、学生2名、評価音源の演奏家自身1名
-年齢は10代が3名、20代が12名、30代が16名、40代が3名、50代が2名

音源
-様々な音楽ジャンル、楽器からなる全20種を用意
-そのうち16種は独自録音(演奏家による生演奏を録音)
-生録楽器には琵琶、ジャズピアノトリオ、バイオリン、フルート、ピッコロ、サックス、ボーカル、フルオーケストラ!、ギター等が含まれる
-マイクロフォンには音楽録音用を使用してステレオ録音(40~50kHzまでフラットな特性を持つ、全指向性)
-音源のうち2種類は市販のSACD
-超高域を含むホワイトノイズも音源の1つとして用意
-音量は音源の主要なピークが80dBA(FAST)前後となるレベルを標準とする(僕の標準音量と同じだね)
-被験者は上記標準レベルに対し-3~+5dBの範囲で音量を調整してもよい(36名中26名は標準音量で試聴)

実験方法
-3つのサンプル(リファレンスとA、B)を比較試聴
-リファレンスは必ず超高音域を含み、AとBのどちらかは超高音域をカットした可聴帯域のみの音源
-被験者はAとBのどちらがリファレンスと同じに聞こえるかを答える
-被験者はリモコンを使ってサンプルを自由に切り換えながら音源の任意の位置を繰り返し聞くことができる

結果
-音源ごとの正答率を見ると、特に有意な音源はない(被験者が超高域の有無を弁別していると言える音源は1つもない)。敢えて言えば、超高域のレベルが高く、かつ、超高域成分が非定常(変化する)音源の正答率は比較的高いと言えるかもしれない。
-被験者ごとの正答率を見ると、1名だけ(17才の女性)が有意(聞き分けている)とみなせる結果を出したが、追試の結果では有意とみなせる結果は得られなかった。
-結局、実験1では20種の音源を用い、36名の被験者で評価を行ったが、音源別および被験者別どちらで見ても、有意な弁別結果(確かに聞き分けているという結果)は得られなかった。


実験2
実験1の結果で超高域成分が高い音源の正答率が比較的高いように見える事、また音源の提示時間が影響する(ある程度長い時間聞くと超高域を関知できる)とする学説がある事から、追加の実験が行われた。

実験1との相違点
-100kHzまで高い感度を持つ音楽録音用の広帯域マイクロフォンを新たに開発して音源の録音に使用
-このマイクの感度は、10kHz以下よりも超高域感度が10dBも高いやや極端な特性を持つ
-被験者にある程度長い時間聞かせるために試聴方法を変更(音源の提示時間を85~120秒と長くした)
-音源には弦楽四重奏、筑前琵琶、ハープシコードの3種類を用意
-特に琵琶では21kHz以上の超高域が常時40~50dB出ており、70dBに達する箇所もある(帯域も70kHzまでと広い)
-被験者は男性5名、女性8名の計13名
-音楽大学学生7名、音大教員3名、作曲家2名、演奏家1名
-年齢は19~51才

結果
-13名中2名の被験者(20才女性と30才男性、ともに音大学生)が、「琵琶の音源でのみ」超高域の有無を有意に弁別できた(有意水準5%の二項検定)
-音源の提示時間を20秒程度に縮めた場合、上記2名+琵琶音源でも超高域を有意に弁別できなかった
-上記2名に対して純音の閾値測定を行ったところ、22kHzの閾値は90dBを超えており、直接的に琵琶音源の超高域を聴取できたとは考えがたい(単純に耳で聞こえたとは思えない)
-従って、上記2名が超高域の有無を聞き分けたメカニズムは不明である

以上です。

僕の感想としては、
非常に信憑性の高い実験であると思います。リスニング位置での測定で実際に超高域成分が再生されている事も確認されており、再生装置としては申し分ないでしょう。また、被験者の選択も適切だと思いますが、ハイレゾの音質が良いと喧伝するオヂオヒヨロンカ達にもゼヒ参加して頂きたかったと思います。

結局、特殊なマイクを使って録音した特殊な楽器(琵琶)の音源を長時間提示した場合のみ、2名の被験者が辛うじて超高域を弁別できた(正答率70数%)というのが結論です(半ば無理矢理感が漂っている)。そして、その弁別は単純に耳で聞き分けたとは言えないという事です。この実験結果を見る限り、一般的な人が、一般的に市販されているハイエンド装置を買って、一般的に配布されているハイレゾ音源を再生しても、まずその違いは弁別不能であろう。。と言えそうです(プラセボ効果を排除すれば。。。という前提でね)。

共に音大生という事ですから、「あなたは、この音楽を愛聴するにおいて、この超高域が聞こえる事をどの程度重要だと考えますか?聞こえる事が好ましいと思われますか?」という質問も是非投げかけて欲しかったと思います。最終的に重要なのは、聞こえるか聞こえないかではなく、聞こえる事によって何か得る物があるのか、それが音楽を愛聴するにおいて果たして如何ほど重要なのか?という事ですからね。アッタリマエですが。

徒なハイレゾ化は計算処理負荷、通信負荷、ストレージ等のリソースを浪費します。すなわちエネルギや資源を浪費するという事です。また、末端ユーザの経済的負担も増加します。世界的に見て裕福なヒトビトはほんの一部に過ぎません。音楽は全人類の貴重な財産です。世の中に対する真の有用性が明らかにならぬママ、商業的思惑によって、このような媒体がなし崩しに標準的な規格として普及してしまう事は非常に危険です。これからの時代、そいう考え方が必要です。ゼッタイニ!

ソレハソレのソレと明確に位置付けて(つまり、上記のような評価をキチント実施して、一般大衆を徒に煽るのではなく、正しい客観的情報を公開した上で)、「ソレでも、敢えて、、」と言うマニアック層向けに限定的に配布される事を僕は望みます。

また、これは「ハイレゾ」に限った事ではなく、常識的に考えて異常に高額で怪しげな製品や根拠不明の論が横行するオヂオ界全般に言える事でもあると思います。これらの動向をプロフェッショナルな(クロートさんの)観点から監視して警鐘を鳴らすのがヂャナリズムの重要な役割であると思うのですが。。。。。。逆に煽ってね?

追記
ハイレゾに関しては、もう1つの観点からの評価が必要です。すなわち、超高域まで再生できる装置を使ってサンプリングレートとビット分解能の異なるソースを比較する必要があります。例えば24bit/192kHzと24および16bit/44.1kHzの比較です。そのような評価結果もネットで見つかったら、またご紹介したいと思います。

お役に立てたらクリックしてください。ランキングに参加してます にほんブログ村ランキング参加中
関連記事
テーマ:オーディオ
ジャンル:趣味・実用
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック