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2013年06月21日 (金) | Edit |
一連の位相と時間の遅れに関する記事の最終回です。

今回はシミュレーション結果に基づいて検討を加えます。

その前に、今までの経緯を振り返りたいと思います。
発端は「ハイエンドスピーカのクロスオーバー周波数を調べてみました 」でした。

我々が耳で感知する音楽のスペクトル形状から、僕は主要帯域である100Hz~4kHzでは分割せず、その両端を必要に応じてサブウーハなりスーパツイータなりで補う方式が良かろうと考えています。これを基に、巷のハイエンドスピカがどのように帯域を分割しているのかを簡単に調べて見たところ、Vienna Acoustics Klimt “The Music”が120Hz以上を同軸フルレンジに分担させるという、僕のコンセプトに非常に近い構成を持つ事が分かりました。

しかし、パッシブネットワークを使ってそのように低い周波数でクロスする場合、何かと問題が生じるであろうと考え、シミュレーションで検討しました。その結果は「ウーハー用パッシブネットワークの問題点」に記載しています。今回は、このシミュレーション結果を基に検討を加えます。

なお、一連の検討は、100Hz近くでクロスするという、サブウーハを想定した極端に低周波でのフィルタの挙動に限定するものであり、一般的な市販スピーカシステムで使われている周波数帯(500Hz~)では大した問題ではなかろうし、数kHzレンジのツイータ用であれば全く気にする必要は無かろうと僕は考えています。

今回の検討に先立ち、実測との比較によるシミュレーションの検証も行いました。
シミュレーションに基づいて算出した「入力信号に対する出力音響波の位相回転と時間遅れ」が実測値とよく一致する事は最近の2つの記事「位相と時間 - 実験君による検証」および「位相と時間 - バスレフ型でも実験君してみた」で確認しました。

また、理論的な考え方については「位相と時間、遅れるの?進むの?アーヤヤコシー」 に書きました。

下は、今回の元ネタであるシミュレーション結果です。
密閉
Seal.jpg
バスレフ
Filter OFF
バスレフ+アナログフィルタ(Fc = 120Hz)
120.jpg
シミュレーションは、Vienna Acoustics Klimt “The Music”を想定して、22cmウーハ(FOSTEX FW227)、バスレフ型(共鳴周波数=40Hz)、ローパス カットオフ=120Hzに設定しています。

シミュレーション結果から読み取った位相値をグラフにプロットしました。
ソース信号に対する音響出力の位相
SIM 角度
青が密閉、赤がバスレフ、緑がバスレフ+フィルタです。上図は、シミュレーションの位相曲線から単純に読み取った位相をプロットしていますが、縦軸のスケールはシミュレーションとは逆にしています。つまり、プロットが上にあるほど遅れます。ご注意ください。

縦軸のゼロは、入力信号の位相に相当します。ゼロであれば、出力波形はソース波形にピッタリと揃います。
しつこいですが、周波数が限りなくゼロに近付くと、位相の回転(遅れ)も限りなくゼロに近付きます。これが入力の位相です。僕は入力に対する出力の遅れを見たいわけですから、この状態を基準(ゼロ)と考えます。この場合、出力の位相は入力に対して進む事は絶対なく、周波数の増加とともに単調に遅れ方向に回転します。

前の記事に書いたように、理論的には、周波数の増加に伴って密閉型では180°、バスレフ型では360°、バスレフ+フィルタでは540°に収束します。ただし、このシミュレーションでは、インピーダンスの漸増によるものか、位相はそれを超えてダラダラと遅れています。

ソース信号に対する音響出力の時間的遅れ
SIM 時間
上図の位相から簡単に遅れ時間が求まります。
時間 (ms) = (位相(°) ÷ 360) × (1000 ÷ 周波数(Hz))
位相は高音ほど遅れますが、タイミングは低音ほど遅れます。何故ならば、低音ほど1周期の時間が長いためです。同じ360°でも100Hzの1周期の長さは1kHzの10倍です。これに比べれば、位相の回転量は微小です。
密閉型に比べてバスレフ型の時間的遅れは大きく、アナログフィルタを追加するとさらに遅れます。カットオフ(120Hz)近くの100Hzにおける遅れは、密閉に対してバスレフで約3倍、バスレフ+フィルタで約5倍にも達します。

音速を340m/sとした場合、10msは約3.4m、15msは約5.1mに相当します。例えば、バスレフ+フィルタの場合、ピアノの40Hzの音は1kHzの音よりも約5m遠くから届く事になります。

LEANAUDIOの経緯をたどる
全部の位相
上の図に、過去にLEANAUDIOで試した方式を簡単にプロットしてみました。

FrieveAudioによる馬鹿ブーストあるいはFrieveAudioのチャンデバ機能を使った2.1chの遅れは、位相を補正しなければグラフの青丸のプロット(密閉型)に相当します。僕には効果がよく分かりませんが、位相補正をONにすれば全域でほぼゼロになります。

茶色の破線(※と+)は、僕が過去に試した3"ドライバによるバスレフ型の範囲(共鳴周波数50~60Hz)を示しています。バスレフ型の場合、同調周波数が高くなると遅れ度合は単純に減少します。ですから、40Hzまで延ばした大型バスレフでは遅れ時間は大きくなります。さて、僕はLEANAUDIO初期の頃に、都合5種類の3"ドライバを買ってバスレフ型をいろいろ試しましたが、結局違和感を拭いきれず、密閉型+サブウーハ → 密閉型馬鹿ブーストへと進みます。

水色は、Alpair10/4L密閉型にFc=60Hzのアナログフィルタを追加した状態です。DAYTONプレートアンプの内蔵フィルタを使った状態に相当します。なお、密閉型サブウーハの場合、出力特性はフラットではなく約12dB/Octで減衰するため、100Hzでクロスさせようとすると、フィルタのカットオフを60Hz程度に設定する必要があります。この構成での遅れ具合はバスレフ型と同程度ですが、僕には密閉型サブウーハ方式の方が明らかに好ましく感じられました。これは、バスレフ型は動的挙動が複雑であるため過渡波形が大きく崩れる事と、各種の付帯音が多い事に起因するものと考えられます。

3種類の13cmウーハを試した後、最終的にAlpair10をサブウーハ用に採用しました。Alpair10のずば抜けた3次歪みの少なさにより、低音のクオリティは大きく改善されましたが、楽曲によってはAlpair6Mの馬鹿ブーストに比べて微妙に違和感を覚える事がありました。このため2.1chシステムを常時使用するには至らず、一部の楽曲はAlpair6Mの馬鹿ブーストで聴いたりしていました。

紫は、サウンドブラスタDACのチャンデバを使った場合の2.1chシステムの遅れです。これは先日の1発正弦波の応答波形から読み取ったものなのであまり正確ではありません。近いうちに正確に調べてみます。このDACソフトウェアがどのようなフィルタ処理を採用しているのかは不明ですが、FrieveAudioの高性能フィルタとは異なり、遅れが発生しています。しかし、その遅れ具合はプレートアンプのアナログフィルタを使った場合よりも減少しています。遅れの全くないFrieveAudioのチャンデバを使った方が、多少良く感じられるような気もしないでもありませんが、iTuneの使いやすさを天秤にかければまぁこれでエーンチャウと、以前のように仕事中にワザワザFrieveAudioに切り換えて聴く事がなくなったという事です。

このDACチャンデバのクロス周波数は、ソフトウェアの既定値パラメータである80Hzに設定していますが、実質的なクロス周波数は100Hzのちょっと上くらいです。
下は各種ローパスフィルタを通したスピカ出力特性です。
サウンドブラスタフィルタ
緑がサウンドブラスタ、青がアナログネットワーク(22mH+400μF)、赤がFrieveAudio(-12dB/Oct、70Hz)です。サウンドブラスタは120Hzあたりまでは-12dB/Octの傾きを持ち、そこから急激に減衰するようです。一般的に、密閉型サブウーハに対しては、-12dB/Octのフィルタは適しません。なぜならば、スピーカの出力が-12dB/Octで減衰しているため、理論的にはフラットにしかならないからです。上図でも、ドライバのロールオフ周波数(約120Hz)までは、ダラダラとしか減衰していません。-24dB/Oct以上の急峻なフィルタリングが理想的です。

最後に、群遅延というヤツを始めて計算してみました。
SIM 群遅延
群遅延は、簡単に言うと、周波数あたりの位相の回転量を表します。狭い周波数範囲で位相が大きく変化すると群遅延は大きくなります。当然ですが、小さいに超した事はありません。バスレフ型の群遅延は密閉型よりも大きくなります。また、アナログフィルタをこのように低周波数で使うと極端に群遅延が大きくなりそうです(ピークは30を超えている)。もちろん、一般的市販スピカのように数百Hz以上の周波数でクロスすれば、このような極端な問題は解消されます。Viennaはどのように対策しているのでしょうか。。。

という事で、100Hz近辺でクロスする場合のアナログフィルタの挙動について、シミュレーション結果を基に解析してみました。

繰り返しますが、市販スピカの標準的な周波数(数100Hz以上)でクロスする場合、アナログフィルタを使っても大した問題はないでしょうし、数kHzレベルでクロスするツイータに関しては全く問題無かろうと僕は考えています。

しかし、サブウーハのように100Hz近辺でクロスする場合、アナログフィルタによる遅れ「時間」が大きくなるため、FriveAudioのような位相回転の無い高性能デジタルフィルタの適用が好ましいでしょう。密閉型サブウーハの場合、100Hzで理想的にクロスさせるには、-24dB/Octの急峻なフィルタをを使ってカットオフ周波数を60Hz程度まで下げる必要があり、場合によっては深刻な遅れが発生します。バスレフ型サブウーハの場合、アナログフィルタによる遅れはさらに深刻なものとなるため、クロス周波数を余り下げない(200Hz以上とか)か、下げる必要がある場合は高性能なデジタルフィルタが必須であると言えるでしょう。

以上で、アナログフィルタの遅れに関するお話しはオッシマイです。

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