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2013年06月04日 (火) | Edit |
前の記事に頂いたTollheitさまからのコメントへのご返答も兼ねて、僕の「音場」に関する一般的な考えを書いてみます。

いろいろなジャンルの音楽を聴く僕ですが、交響曲や教会音楽等、広大な空間の反響音(時間的遅れを伴うホールトーン)が音楽の内容に重要な役割を持つ楽曲の場合、家庭のステレオスピーカでそれらを正しく再生する事は非常に困難であるように思えます。なぜかというと、ホールに比べて圧倒的に小さな再生場空間の音響特性が影響するためです。

もちろん、どのようなソースでも部屋の音響特性は影響しますが、ジャズにせよロックにせよクラシックにせよスタジオ録音盤や小編成のソースではそれほどクリティカルとは感じないのに対し、交響曲の再生は全く特別であるように僕には感じられます。これは、楽団とホールが渾然一体となって一つの巨大な楽器を成し、聴衆はその巨大な楽器空間の内部で聴くという状態だからでしょう。

ここで僕が重視しているのは、反響音の聞こえる「方向」ではなく「時間的」な遅れや減衰具合です。僕はカナル型イヤフォン+携帯電話でフルトベングラさんのベトベン交響曲全集(モノラル)を聴いて始めて交響曲を聴く醍醐味を知りトリハダが立ちました。指揮者は明らかにホールの反響に合わせて棒を振っており、楽団の音とホールの音を調和させようとしています。指揮者とは楽団とホールが渾然一体となった巨大な楽器の奏者なのだと、全く遅ればせながら実感しました。このような巨大な楽器の演奏を楽しもうとすると、ホールに比べて圧倒的に小さいお部屋の音響的影響は全く邪魔にしかなりません。これは方向感覚を伴わない時間的な空間効果であると言えます。

一般的に僕は、再生音楽を聴くに際して、視覚的に明確な方向感覚を求めません。聴覚の方向認識能力は視覚に比べて非常に曖昧であり、通常は聴覚以外の情報(視覚等の他の感覚からの情報、過去の経験、予備知識等)も含めて総合的に音の方向を判断しています。例えば、ジェット機の音が聞こえた場合、我々は聴覚の方向感覚だけに頼るのではなく、過去の経験からそれがジェット機の音であると判断し、上空を見上げて飛行機雲を視覚で確認し、その音は上空から聞こえているのだと判断します。

トランペット奏者が後方に居るという予備知識が全く無ければ、ホールの環境やリスナの聴覚的空間認識の訓練度合にもよりますが、それが突然鳴っても何処で鳴ったのかは俄には分からないでしょう(ゴルゴ13なら確実にポイントできるでしょうけどね)。ステージにはトランペット奏者が見えないのにホールのどこかから突然トランペットが聞こえたぞ!と驚いてグルット見渡し、あ、後に居たんだ!と分かるという具合でしょう。しかし、もしリスナがトランペット奏者は後に居るという予備知識を持っていれば、トランペットが鳴った瞬間に後から聞こえたように感じるでしょう。聴覚による空間認識とはその程度のものです。ただし、訓練によりかなり鍛える事ができるとも言われています(ゴルゴ13のようにね)。

サラウンド方式では、ステレオ方式よりもホールトーンを再現しやすいかもしれませんが、やはり部屋の影響を受ける事に違いはありません。部屋を無響室並にできるのであれば、サラウンド方式にはかなり期待できるとは思います。あるいは、多数のスピカで頭部をグルット囲むようにニアフィールド配置すれば、かなり良好な再生ができるでしょう。しかし、それでは大げさ過ぎますしヘッドフォンよりも不自由ですね。そもそも、部屋に8本もスピカを置くなんて、世の多くのヒトビトには受け入れられないでしょう。サラウンドシステムは、純粋に音楽鑑賞用というよりは、派手に演出されたハリウッド映画(ドルビーサラウンドだっけ?)をオウチに持ち込もうというのが狙いの装置であるような気がします。オペラ等の映像付き音楽ソフトを楽しむには良いかもしれません。

純粋に聴覚で音楽を楽しもうとする場合、普通のお部屋でスピカで再生する限り音場再現にはどうやったって無理があるので、ヘンテコリンな演出はせずにいっそモノラルで真面目に録音してくれた方が音楽が聴きやすくてエーンチャウ?というのが僕の正直な感想です。実際、フルトベングラさんの交響曲(最近はヘッドフォンでよく聴く)やマイルスの古い録音を聴いても、モノラルでゼンゼンOKやん。。。と思います。

という事で、僕は、そのように広大な空間が生む音響効果(といっても方向ではなく時間的な現象)が重要となる交響曲等のソースには、部屋の影響を全く受けないヘッドフォン方式(多少人工的処理を加えたバイノーラル方式)が最も現実的であろうと考えます。バイノラル方式は音場の記録・再生において原理的に極めて理に適っており、お手軽でありコンパクトであり低コストです。そして再三申しているようにヘッドフォン・イヤフォンは「音楽再生クオリティ」の観点でも、巨大な振動板をガシガシ動かして巨大な量の空気を駆動せねばならないスピーカ方式よりも遙かに優れています。最大の欠点は身体に直接装着する必要があるという点ですね。

恐らく、真面目に制作されたバイノーラル方式のソースの定位感は、演出・強調された現在のステレオ方式やサラウンド方式ほど視覚的に明確ではないはずです。前方にある程度の距離を置いてオーケストラを配した通常の録音ではモノラルソースに近いでしょう。しかし、それが本来の自然な状態です。実際ホールで音楽を聞いている状態では、音がどっちから聞こえるかなんて全く気にしていないでしょうし(方向認識は専ら視覚に頼る)、反響音が四方八方から聞こえるため目を瞑ってしまえば音源の方向は判然としないでしょう。僕も実際に試して見ましたよ。

サラウンド方式で気になるのは、サラウンド効果を強調するために、オーケストラがリスナをグルッと取り巻くように配置したようなソースが見られる事です。人間は興味の対象に無意識に正対しようとします。このように、オーケストラの各楽器がぐるっと広く展開してしまっては、本来1つの巨大な楽器となるべきオーケストラの全体に意識を向けにくい(無意識に全体を把握しにくい)のではないかと思います。「わー、なんか囲まれてるぅーーー。スッゴーーーイ!みたーいなぁぁー」ハリウッド的エンターテインメント性はあるでしょうが、音楽ソノモノは聞きにくいでしょう。 これでは飛び出す映画とオンナジ。

実際、ジャズのスタジオ録音盤(ステレオ)をヘッドフォンで聞くとリズムを司るベースとドラムスが左右に完全に分かれて集中し辛く感じる場合があります。左の真横にベーシストが居て、右の真横にドラマが居る状態ですから全く不自然です。このため僕は例の抵抗を挿入してセパレーションを弱めます。その反面、外出時は余り気にせず聞いています。気にしなければ気にせずに済みます。殆どのリスナはそのように気にせず聞いています。まぁ、オンヂョとはその程度のものです。

個人差は多少あれども、聴覚の空間認識分解能は視覚に比べて圧倒的にアヤフヤであり、例えば上記のサラウンドソースのようにそれを視覚的に明確にしようとして極端な演出をすれば、最も重要な音楽全体の聞こえ方は不自然になるでしょう。一方、時間的分解能は聴覚の方が視覚よりも遙かに優れます。動画のサンプリングレートは毎秒数10コマに過ぎませんが、音楽のサンプリングレートは毎秒数万以上ですからね。僕が、ホールトーンの空間的再現(方向)よりも時間的再現(反響音の遅れ)の方を全く重要と感じるのは、恐らくこのためでしょう。

聴覚にムリヤリ視覚的な空間認識をさせようとする「オンヂョ」は僕に言わせれば、オコチャマ向け「オマケ」です。過剰な演出効果は邪魔にしかなりません。

今後、ヘッドフォンの普及に伴ってバイノラルソースが作られるようになったとしても、そのようなギミック的オコチャマ向け効果はゼッタイニ追い求めて欲しくありません。あくまでも「音楽」の全体を「自然な雰囲気」で聴けるようにしてくれれば良いわけであり、バイオリンが何処に居るかを実際以上にハッキリと視覚的に聞き分けられる必要はゼンゼンなかろうと思います。そんなもん全く重要だとは思えません。ちゃんと音楽聞かせんかい。音楽を。。。です。

ヒヨロンカがソーチをヒョウーカするにあたって、やたらと微に入り細に入り「オンヂョ」とか「オンゾ」について云々するため、オヂオザッシ購読者達(オヂオマニア達)にもオンヂョを過剰に意識する傾向が見られます。僕は数年前にLEANAUDIOに着手してオヂオの現状を知り全く驚きました。オクチパクパクとかタテニヒロガルとかヒロガラナイとか。。。あんな原理的に全くエーカゲンで部屋の影響を致命的に受けるステレオ方式のオンジョを微に入り細に入り評価しているなんて。。。

オヂオザッシの弊害を全く受けていない普通に音楽を愛聴している者達はステレオ感を殆ど意識していません。聴覚の空間認識なんてソンナ程度のモンですから、偏ったメディア情報に影響されなければ、そもそも大して気にするものではないという事です。ビトルズはステレオ方式が出回ってもずっと後期までモノラルで作品を作っていましたし、ジョージ君なんかステレオスピカを2つくっつけて聞いていたなんて情報もあります。マニア達が評した「音楽家達のオーディオ」でも、音楽家達(主にクラシック畑)は総じて音場に無頓着であり、彼ら(音楽家達)のオヂオは自分達(マニア達)のオヂオから乖離していると結論付けています。背後に無造作にスピカを置いている大家も居たとか。僕には大いに納得できるトコロです。

日本のオヂオ界は、ある時代までオンヂョをさほど重視しなかったそうです。確かに僕が中高生の頃に読んだ雑誌にはオクチパクパクとか書いてなかったように思います。現在の異常なオンヂョ重視傾向は、ある時期にヒヨロンカ達が海外の動向に影響されての事だと聞きます。まぁ、ポエムのネタが増えるので、彼らには有り難いという事ではないでしょうか?

視覚に比べて時間分解能に圧倒的に優れる一方、空間分解能に全く劣る聴覚のみを使って体験する再生音楽においては、視覚を模したようなギミック的空間表現よりも、複雑かつダイナミック極まりない音楽の時間および周波数ドメイン的再現性の方がヒャックオクマン倍重要であると感じます。故に、僕は視覚的空間認識を徒に強要するような演出は「無駄なオマケ」と考えるという事です。

オマケによって最も重要な音楽再生が疎かになってはアキマセン。基本の音楽再生クオリティを最大限に重視し(もちろん、それ以前に音楽の内容ですが)、それを自然な雰囲気で聞けるように適度な空間効果を加える程度で良いのでは?と思います。 全く意識に登らないような自然な空間演出で音楽に浸れる(シンクロできる)状態が最良でしょう。敢えて意識すれば「あ、この楽器は右寄りに居るのかな」となんとなく聞き分けられるけど、意識しなければゼンゼン気にならないという感じでしょうかね。そいうので十分だと思います。今の幅狭配置のZAP君のスッテレオ感はそんな感じです。

音場に関しては今までにも散々書いてきました。下の記事もご覧ください。

マニアはどうして音場に拘るのか?
ステレオ方式の左右SPの干渉
バイノーラル方式を見直しても良いのでは
空間認識について - ケロ開発中の経験
空間認識がどうたらの補足
聴覚と空間認識について
音場の再現性について考える - 3 音場ってホンマに重要?
音場の再現性について考える - 2 バイノーラル方式
音場の再現性について考える - 1 ステレオ方式
臨場感なんぞクソクラエ
自動車開発分野におけるバイノーラル録音の実施例

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テーマ:オーディオ
ジャンル:趣味・実用
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