FC2ブログ
2012年01月05日 (木) | Edit |
昨日は仕事が手に付かず、ちょくちょく中断しながらAlpair 10をざっと計測してみましたので、結果をご紹介します。

ソモソモAlpair 10を試して見ようと考えたのは、今まで試した13cmウーハ(DynavoxのPPコーン、六本木およびDaytonのアルミコーン)の超低音再生能力はAlpair 6M x2本とほぼ同等であり、従って、そのような13cmウーハーを使用して2.1ch方式にしても、馬鹿ブーストに比べて低音再生限界は殆ど向上しなかったためです(関連記事)。これらの一般的なウーハのカタログ上のXmax(振動板の最大振幅)はおしなべて3mm程度しかありません。

ちなみに、Xmaxと有効振動板面積の積(仮にVmaxと呼ぶ)はそのドライバの有効最大行程体積(エンジンの排気量のようなもの)に相当し、純粋に機械的に考えるならば、このVmax値が低域再生能力に直接関係するはずです。計算してみたところ、A6M 2本のVmax値と、Xmax=3mmの一般的13cmウーハ1本のVmax値はほぼ同等であり、これは上記の結果と対応しているように思えます。

マークオーディオ製フルレンジドライバのXmaxは同径の他社製品に比べて極端に大きく、13cmクラスのAlpair 10フルレンジのXmaxのカタログ値は7.5mmとなっています(標準的13cmウーハの2倍以上!A10ウーハーバージョンでは9.5mm!)。上記の推論に従えば、A10は大振幅が要求される超低音領域の再生能力に非常に優れているのではないかと単純に予測できます。ただ、メーカによってXmaxの定義が異なる可能性もあり、また、磁気回路側の限界も影響すると考えられるため、そのへんをどうしても確かめてみたいと言う純粋な興味から、昨年Alpair10を1本だけ購入しました。実用上はA6Mの馬鹿ブーでも十分に満足しているのですが、実験君としては確かめずに居られなかったという事です。悲しい性ですね。

という事で、今回は約7.5Lの実験用密閉箱(Victor製パワードサブウーハの箱を流用)を使用して実験君開始です。第1の目的はAlpair 10の超低域再生能力を確認する事ですが、今回は容積の影響も調べてみました。デスクトップで使うので、どこまで箱をコンパクトにできそうか、大まかな傾向を掴もうというのが狙いです。

下が今回使用した実験用箱です。
_1000118.jpg
この箱は板厚12mmのパーチクルボード製ですが、フロントバッフルに板厚12mmの合板を接着して補強しています。とりあえず、オーディオテクニカのインシュレータを使用してデスクトップに設置しました。中に文庫本を詰め込んで容積を調整します。

まずはF特です。計測距離は25cmです。グラフは全てクリックで拡大できます。
Ftoku_20120103173627.jpg
黒がAlpair 6M (2.5L吸音材タップリ)です。赤と青がAlpair 10です。赤は容積7.5Lですが吸音材を最小限しか入れていません。青は文庫本を大量にブチ込んで容積を約4.5Lに減らした吸音材タップリ仕様です。7.5Lの吸音材タップリ仕様は4.5LのF特と殆ど一致するのでグラフには載せていません。

さて、まずA6とA10を比較してみましょう。吸音材タップリ同士の黒(A6M、2.5L)と青(A10、4.5L)を比べます。A10の100Hz以下のレスポンスが約6dB増加している事が分かります。この差は大きいです。このため、ブーストしなくてもソコソコ音楽を楽しめますし、フラットにする場合のブースト係数を大幅に低減できます。スピーカの設置位置(デスクトップからの高さ)が同じではないため、200Hz~2kHzの範囲のF特の細かい凸凹は無視してください(デスクトップ反射音の影響が異なるため)。

5kHz以上の高域ではA10の方がフラットな特性を示しています。メタルコーンでは一般的に高域に特徴的なピークが発生するとされます。A6Mでは10kHzに振動挙動の変わり目と思われるディップが明確に存在します。Alpair 5では15kHz近辺に強いピークが見られましたし、六本木およびDaytonのアルミコーン ウーハにも強いピークが発生します。それらに比べるとAlpair 10の特性は素晴らしくフラットであると言えます。

A6Mは全体的に緩いカマボコ状の特性を示すため、例えばA5やA6Pと聴き比べると少し癖があるのですが、A10の特性は計測前の聴感評価からも予測された通り全体的に非常にフラットです。ただし基本的な音のキャラは、どちらも僕の愛して止まぬニュートラル/明瞭/ナチュラルなメタルコーンAlpairサウンドである事に全く変わりなく、シリーズとして非常に一貫性が保たれているように感じます。

次に、A10の赤(7.5L、吸音材少量)と青(4.5L、吸音材タップリ)を比較します。吸音材を少なくすると、ドライバの機械的共振によって100Hz前後のレスポンスが増加しています。スピーカのインピーダンスのピークがこの辺りにあるという事です。7.5L吸音材タップリ仕様の特性は、4.5L吸音材タップリ(青)と殆ど変わらないため、グラフに載せていません。つまり、吸音材をタップリとブチ込むと、共振効果が殺されるため(インピーダンスのピークが平になるため)、容積を変えてもF特にはあまり影響しないという事です。

下はAlpair5での計算結果です。吸音材なしの状態と考えてください。
567_20120106081630.jpg
密閉箱で容積をどんどん小さくした時の特性変化を示しています(最小0.2L)。容積を小さくするとスピーカのインピーダンス曲線が平坦になり、共振領域のレスポンスだけが低下する事がよく分かります。吸音材を大量にブチ込むと、容積が大きくてもインピーダンス曲線が平になるため、容積による特性変化はもっと小さくなります。

過去の経験から、ハチマルはどうもこの共振領域の音が気に入らないらしく、吸音材タップリを好みます。基本的にデジタルイコライザを使うので、何かとややこしい共振や共鳴を利用して低域特性を稼ぐ必要はありません。エンジンの吸排気系でもそうなのですが、共鳴現象を利用すると特定周波数(特定回転数領域)でメリットが得られる反面、一般的に好ましくない現象も伴うため、使わずに済むなら使わないに超した事はありません。デジイコを使うならば、わざわざリスクを背負いながら密閉型の機械的共振や、バスレフ型のヘルムホルツ共鳴を利用する必要は無いという事です。

という事で、F特を見る限り、容積は4.5Lでも問題無さそうですが、肝心の超低域の波形(歪み)や位相遅れの問題はどうなのでしょうか?と。。ここからがいよいよ本題です。

下は40Hzの正弦波を再生した時のスピーカ出力波形です。これも前方25cmにマイクを設置して計測しました。
sine.jpg
黒がA6を2本使用した時の波形です。ボリュームをかなり上げているので、主に3次高調波によって音響波形が大きく歪んでいます。赤と青がA10一本だけの波形です。赤は7.5L吸音材少量、青は4.5L吸音材タップリ。この周波数領域はドライバの機械的共振領域の外なので、両者の間に殆ど差は見られません。A6Mと同じ絶対音量レベルでは綺麗な正弦波形状が保たれています。今まで試した13cmウーハ1本では、A6M 2本と同等に歪んでいましたので、この時点でAlpair 10の優位性は確定です。ヤタ!さらにボリュームを思いっきり上げてみましたが、波形が大きく歪む兆候は見られず、ズンと重い「音」を発生してくれます。スゴイ!

40Hzのまともな正弦波音をここまで大ボリュームで聴いたのは始めてです。これ以上ボリュームを上げると、デスク周辺が振動してスピーカ以外のアチコチから音が出始めるので、限界を見極めるのは諦めました。「春の祭典」でも全く問題なく再生できるのは明らかです。頑丈な箱を作って、窓枠にしっかりと固定したら本格的に評価してみたいと思います。しかし、ハチマルの実用レベルでは、どんなにボリュームを上げてもAlpair 10の限界に達する事はないでしょう。

下はFFTの結果です(40Hz正弦波、ほぼ同一音量)。
FFT.jpg
黒がA6M x2本、赤がA10 7.5L吸音材少量、青がA10 4.5L吸音材タップリです。A10では3次歪みが劇的に低下し、4次、5次、6次でも顕著な改善がみられます。基本的に赤と青は殆ど同じですが、5次の高調波だけ4.5Lの方が低くなっています。

2次高調波は振動板の前進方向と後退方向でバネ特性が異なる事に由来すると思われ、振幅の増加に伴って増加します。これはプラス側とマイナス側で波形が対称にならないA級真空管アンプではお馴染みの歪みです。基本的に2次歪みが多少増えても聴感的には余り気になりません。これに対し3次が2次と同等くらいまで増加すると、明らかに音が違って聞こえ、波形も明らかに変形します。ハチマル基準では、3次が2次と同等レベルになった状態を一応の限界の目安としています。

空気バネは非線形であるため、容積を小さくすると2次歪みが増加するのではないかと予測していました。今回の結果を詳しく見ると、小容積の4.5Lでは2次と4次が若干増えるものの、3次と5次は逆に低下するため、容積を減らしても問題無かろうと思われます(ヒトは偶数次よりも奇数次の歪みを嫌うと一般的に言われますしね)。

なお、上図のFFTの縦軸は対数です(1目盛り20dB)。A6Mだけを縦軸リニアで示すと下図のようになります。
fftliny.jpg
基本周波数成分(40Hz)に対する3次高調波成分(120Hz)の大きさは約8%程度です。その他の高調波成分はほとんど見えません。

さらに、以前の記事で使用した、パルス入りの40Hz正弦波も再生してみました。色分けは他のグラフと同じです。今回の計測には全てIcon AMPを使用しています。
pulse.jpg
小径のA6Mに比べてA10の低音の位相が遅れるという事も無さそうです。また、A10の容積/吸音材違いによる差も殆ど見られません。信号の先頭部および末尾で若干A10の方がオーバーシュートが大きいようですが、Frieve Audioで補正すれば劇的に改善されるはずです。

という事で、Alpair 10の超低音再生能力は予測通り素晴らしく高そうです。馬鹿デカイXmax値は伊達ではないと言えましょう。「ウーハ」として売られている製品よりも、20kHzまで全くフラットに再生できる「フルレンジドライバ」の方が低音再生能力が遙かに高いというのは一体全体どういう事なんでしょうか? マークさん???

買ってみてよかった!

Mark audio Alpairの巨大なXmaxは、このようなヤクザな使い方を想定したものではなく、常用域でのリニアリティとコンプライアンスを可能な限り高めようとした結果だと思われますが、奇しくもハチマルLEANAUDIOにとってはこの上も無く有り難い特性だと言えましょう。Alpairのポテンシャル恐るべしです! イヤホンマ。8cmクラスのフルレンジドライバ(Alpair 6M)を馬鹿ブーストしただけでで十分に音楽が楽しめているのもAlpairだからこそ、と考えて宜しいかと思います。他社製同クラスの小径フルレンジで同じ事ができるかどうかは甚だ疑問です。

さて、本格的に頑丈な箱を作らねば。。メンドクサ。。容積は4.5Lで良さそうですね。剛性を稼ぐためにポチと組み合わせて一体型の2.1chボックスにしようと思います。ZAP君最終形態です。もうホントに春の祭典でも矢でも鉄砲でも持ってきやがれなシステムが完成します。それでスピーカ本体の開発は完全終結。絶対にオシマイ。のはず。。。


追記
ランキングが3位まで上昇していました。久しぶりです。応援ありがとうございます。でも、お年玉はもう十分ですよ。どうかブログ村の趣旨に則って応援してくださいね。

お役に立てたらクリックしてください。ランキングに参加してます にほんブログ村ランキング参加中
関連記事
テーマ:オーディオ
ジャンル:趣味・実用
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック