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2011年03月09日 (水) | Edit |
最近音量についてイロイロ調べているうちに見つけた貴重なデータをご紹介します。

名古屋にある「愛知県芸術劇場」(ホームページはこちら)のかなり詳細な音響解析の報告書です。この施設はなかなか立派なコンサートホールを備えているようです。
報告書全文のPDFはコチラからダウンロードできます。
座席表のPDFはコチラからダウンロードできます。

最近の記事では音楽を聴く時の音圧について書いてきましたので、今回も報告書の中から客席の音圧分布のデータを取り上げてみました。残響特性等、かなり詳しいデータが掲載されていますので、ご興味のある方はPDFをダウンロードしてご覧ください。

下は当該コンサートホール客席の音圧分布測定結果の抜粋です。
701.jpg
ステージ中央に12面体スピーカ(音響パワー100dB)を置いて、ホール中心線上の各位置で音圧を測定した結果です。画像の質が悪かったので、プロットに色を付けました。緑が125Hz、青が500Hz、赤が2KHzです。測定点⑤が最前列席あたり、測定点⑧がホールのほぼ中心に位置します。④がスピーカ位置です。

結果を見ると、周波数の高い2kHzは⑤から⑧に向けて急激に低下し(約-8dB)、周波数の低い125Hzは比較的緩やかに低下しています。低音は壁面等の反射で吸収されにくいのに対し、高音は比較的吸収されやすためにこのような傾向が出るのだと思われます。この傾向は周波数が高くなればもっと顕著に表れると考えられます(後述のベト5データ参照)。

以上の結果から、最前列では後方の席に比べて高音(2kHz)のレベルが極端に高くなる傾向にあり、これが最大音圧レベルの値に強く影響していると言えます。また、高音レベルはステージに近い領域(上図では測定点⑤から⑧にかけて)で急激に低下し、それより後方では他の周波数(125Hz、500Hz)と同程度の傾きで緩やかに減衰する事が分かります。上図では測定点⑥~⑦近辺で3つの周波数のレベルが同等になります。これはコメントで頂いた5列目あたりに相当するのではないでしょうか。

高音(2kHz)の減衰が収まる測定点⑧より後の席(全席の8割くらい?)では、後に行くほど徐々に音圧レベルが低下するものの、ほぼ一定した周波数特性(つまり2kHzが他に比べて低い特性)が得られている事が分かります。

さらに、以前の記事で紹介した鎌倉芸術館でのベト5音圧測定データから興味深い知見が得られました。

ちょっと見にくいですが、最前列席のスペクトル(赤)とホール中央席のスペクトル(緑)を重ね合わせてみました。クリックで拡大してご覧ください。
702.jpg
500Hz近辺の音圧差は6dB程度に過ぎませんが、後方の席では2kHzより上で急激に音圧が低下する事が分かります。このデータでは4kHz以上で20dBも低下しています。やはり、周波数が高いほど減衰は顕著に表れるようです。このため全周波数の音圧ピーク値は、最前列席(106.7dB)に対して中央席(89.9dB)で15dB以上も低下するという結果になっています。すなわち、中域音の減衰量は6dB程度に過ぎないわけですから、全周波数で15dBを超える大きな差は高域音の減衰に強く影響されていると言えます。先のコンサートホールの音圧分布に4kHzのデータをプロットしたら、ステージ近くの領域で2kHzよりも大幅に急激な減衰が見られるはずです。A特性は約800Hz~8kHzに強い感度を持つため、高域レベルの低下はdBAレベルにもモロに影響します(つまり人間が感じる音の大きさにもモロに影響する)。従って、最前列席とその他大部分の席との間に10dBAかそれ以上の音圧レベル差が生じる事は十分に考えられます。

さらに、この2つのベト5実測スペクトルをCDの信号スペクトルと比較してみたところ、興味深い結果が得られました。CDはいつものブロさん指揮ベト5第一楽章(全部)です。もちろん縦横のスケールを合わせて重ねています。

まずは最前列の測定データと比較してみます(クリックすると拡大します)
703.jpg
最前列の実測値だと、約2kHz以上の高域がCDに比べて随分高くなっています。また、50Hz以下の低域も実測の方が随分高いですね。40Hz付近にホールの定在波かなにかが影響しているのかも知れません。

ではホール中央部の測定データではどうでしょうか。
704.jpg
なんと高域も低域も非常に良く一致しています。嘘みたい。。。。

ブロムシュテット、フルトベングラ、カラヤン、チェリビダッケ指揮の4つのベト5第1楽章のスペクトルを重ね合わせてみました。
705.jpg
どれも同じようなもので、やはり高域はかなり減衰しています。そんなに遠くのマイクロフォンで収録しているとは思えませんので、ホール中ほどで聴く状態に合わせてイコライジングしているのかなぁ?

まぁとにかく、フルオーケストラを最前列席で聴くと、ホール中ほどの大部分の席で聴くよりも、あるいはCDやLPで聴くよりも約2kHz以上の高音がかなり強く聞こえてしまう事だけは確かなようです。CDやLPの高域が減衰した信号をピーク105dBとか110dBを目指して再生したら、実際の最前列で聴く音よりもやたら中低音のでかい音を聴くことになっちゃうですね。。。そりゃたいへんだ!家揺れるぞ。

まとめ
交響曲における最前列席または指揮者位置の最大音圧レベルが95dBA(ピークで110dB近く)であるという定説は、いろいろ調べたところほぼ信頼できるもののようです。しかしこれはホール全体の中でも極めて特異な周波数分布を持つ極狭い範囲での極端なデータに過ぎず、その他の座席での一般的な最大音圧はホールにもよりますが概ね85~80dBAあるいはそれ以下のレベルに分布すると考えられます。従ってホール全席の音圧分布は前記事の快適音量分布にかなり近いものになると思われます。また、CDやLPに記録されている信号のスペクトルも、ホール内の平均的な座席で聴くのに近い特性を持つ事が分かりました。

追記
「生演奏の再現」というのに拘るのであれば、交響曲の場合、音量を上げたとしても耳元の音圧でせいぜい85dBA(ピークで100dB未満、95dBくらい)もあれば十分であり、どうしても最前列席あるいは指揮者位置での音を「再現」したいというのであれば、CDなりLPなりのソース信号の高域をイコライザで相当量ブーストした上でピーク110dBなり95dBAなりの最大音量に合わせて再生する必要があると思われます。再三申しているように、僕は再生音楽を「生演奏の再現」とは考えませんし、自分にとって快適な音量で聴けば良いと思いますが、一般的な快適音量レベルとホール中ほどの音量レベルはそれほど違わないようです(当然と言えば当然かもしれませんけど)。

追記2
上記の快適音量は、マンションの小部屋(6畳程度)であれば、8cmフルレンジドライバと20WそこそこのIcon AMPでも十分に達成できる音量であると言えます(2mくらいの距離でも大丈夫、馬鹿ブーしないサブウーハー使用ならばさらに余裕あり)。

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