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2010年12月21日 (火) | Edit |
これも何度も書きましたが、ハチマルはそこそこ上等のカナル型イヤフォンの低音の聴きやすさに感動し、そのような低音がスピーカーでも聴けるようにとアレコレやってきたワケです。この歳にして、十分な低音まで明瞭に聞こえると音楽を聴く楽しみが倍増するコト、今までそのような低音を聴いていなかったというコトに遅ればせながら気付いたという次第です。

このためLEANAUDIOを振り返ると、低音再生(主に100Hz以下)の事ばかり書いてきたような気がします。100Hz以上であれば、現在の技術レベルでなんら苦労なく普通に再生できる(例えば8cmフルレンジ1本で十分に再生できる)ため、この領域は専ら「好みの問題」と考えて細かい事は敢えて書かなかったという面もあります。しかし100Hz以下の正確な再生となると、前の記事で書いたようなスピーカー本体の問題のみならず部屋の音響特性も含めて様々な困難が伴う事、そして何よりも、カナル型イヤフォンで聴いて100Hz以下の正確な再生が音楽を楽しむ上で決定的に重要だと気付いた事から、このブログの首題も自ずと「低音」寄りになったと言う次第です。

今回は、様々なジャンルの楽曲の周波数分布(スペクトル)から低音再生の重要性をあらためて考えてみます。

まずはCDのトラックのスペクトル解析結果をざっとご覧ください。

以下のグラフでは100Hz~40Hz帯域を黄色、40Hz~25Hz帯域を緑で示しています。

1)ベートーベン交響曲(全てブロムシュテッド指揮)
No.4 第1楽章
bet4.jpg

No.5 第1楽章
bet5.jpg

No.7 第1楽章
bet7.jpg

2)アコースティックJAZZ
マイルス/RIOT
Miles Riot copy

コルトレーン/至上の愛-1
 Coltrane A love supreme 1

3)エレキJAZZ
ウェザーリポート/Volcane for Hire
WR Volcano for Hire

ジャコパストリアス/Invitation(Japanライブ)
Jaco Invitation

4)ロック/ポップ
マドンナ/Bad Girl
Madonna Bad Gir

ピンクフロイド/吹けよ風、呼べよ嵐
PF One of These Days

いずれのジャンルでも、40Hzまでの黄色の帯域には明瞭なピークが見られ、重要な音楽情報が含まれている事が分かります。この帯域まではしっかりと再生したいものです。

ちなみに下記はオーケストラの低音楽器の最低音階です。
コントラバス E1 (41.2 Hz)
ベースクラリネット D2 (73.4 Hz)
バスーン Bb1 (58.3 Hz)
コントラバスーン Bb0 (29.1Hz)
ベーストロンボーン B1 (61.7 Hz)
40Hzまで再生できれば、コントラバスーンを除く低音楽器の最低音階をカバーできると言えます。
ジャズのウッドベースはもちろんエレキベースの最低音階もコントラバスと同じです。

打楽器の場合、ティンパニは F2 (87.3 Hz)、バスドラムは30~80Hzとされています。ハチマル所有の「春の祭典」には35Hzの強烈なバスドラが録音されています。ピアノの最低音階は27.5Hz、パイプオルガンになると20Hz以下なんてのもあるそうです。ベトベン最晩年のピアノソナタでは32Hz(C1)まで使っています。まあ、パイプオルガンはともかく、30Hzまで確かなレスポンスを確保できればほぼ理想的と言えるかもしれません。というか、それ以下の周波数では聴覚だけで知覚する事は難しく、大型装置で部屋全体の空気を揺るがさないと感じないと思う。

以上は全て西洋音楽ですが、日本古来の音楽ではどうでしょうか?

5)雅楽
ツタヤで雅楽のCDを借りてきました。雅楽は中国から伝来した音楽で、日本音楽の中では珍しいとされる多種楽器の合奏形態をとり、CDのサブタイトルには「平安のオーケストラ」と書かれています。その中から比較的長い「喜春楽」序と破のスペクトルを下に示します。
喜春楽」序
gagaku.jpg
「喜春楽」破
gagaku2.jpg

これらと比べると、西洋音楽のスペクトルはどのジャンルでも随分左上がり(低音寄り)である事が分かります。よく言われるように「西洋音楽は低音を土台として、様々な音域の楽器のハーモニーを積み重ねる事によってピラミッドのように構築されている」というのがよく分かりますね。ハチマルがカナル型イヤフォンで過去に聞き込んだ音楽をもう一度聴き直してみて気が付いたのもこの点です。この構造を土台の低音までしっかりと正確に耳に届けて聴く事ができれば、今までよりももっともっと音楽を楽しめると。。。

低音再生において、周波数ドメインのみならずタイムドメイン的クオリティ(位相、トランジェント特性)も重要なのは言うまでもありません。ジャズを聴く場合は特にそうだと思います。ジャズではスイング感とかグルーブ感とか言われる絶妙なビートのユラギが非常に重要です。例えば4ビートの場合、均等に四分音符を刻むのではなく、絶妙かつダイナミックにタイミングをゆるがしています。そして、その重要な役目を担うのがベースとドラムスです。ベースとドラムスがヘボなジャズバンドはとても聴けたモノではありません。例として、ジャコは16ビートの超高速ベースでバンドをグリングリン加速します。加速といってもペースそのものは一定なのですが、まるでエッシャーの騙し絵の階段を駆け上るように、無限に加速していくかのような錯覚にとらわれる事があります(このグルーブ感というかドライブ感がジャコの真骨頂だと思うぞ)。エンディングに向かって大編成のビッグバンドをベース1本で無限に加速し続けるジャコのベースを聴く時、僕は未だに鳥肌が立ちます。このようなジャズの醍醐味を味わうには、タイムドメイン的に正確な低音がとても重要だと感じます(これがバスレフ型を受け入れられない主要因だと思う)。クラシックの場合、交響曲ではそれほどタイムドメイン的重要性は感じません。しかし、ベトベン最晩年のピアノソナタの低音部にゾクゾクっとする時に、その重要性をつくづく感じる事があります。

まあ、ハヤイハナシが西洋音楽を楽しむには「可聴帯域の下限近くまで位相を乱さずに十分なレスポンスで耳に届かせる事が重要」という事です。これがハチマルの言う「微視的な音質以前に最優先で達成せらるべき総合的音楽再生クオリティ」です。別にそれが観念論的にあるいは技術論的に理想だからそうあるべきだと言っているのではありません。記録されている音楽の聴きやすさを求めれば、より良く聴こうと求めれば、より深く楽しもうと求めれば、自然とそうなるという事です。それがLEANAUDIOトライアルを通してハチマルが得た結論でもあります。

次回に続く。。。

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