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2010年06月05日 (土) | Edit |
前々回の記事「音楽再生の基準てなんやろか?」では、ソース音の忠実な再生を妨げている最大の要因として、
1) スピーカーと耳の距離(すなわち部屋の音響特性の影響)
2) スピーカーの低域再生限界(特に小型スピーカーでは問題)
を挙げ、「敢えて追加するならば」の前置きをしてから
3) バスレフポートの音
を挙げました。これはデータによる検証ができていなかったためです。
1)と2)に関しては、このブログで度々測定データを紹介してきましたが、バスレフポートに関しては全くの聴感によるコメントしかできませんでした。そこで今回はデータによる裏付けを試みました。

前置き
僕はジャズのピチカートベースの聞こえ方を非常にというか異常に重視します。これはジャズを聴き始めた時からの癖なので仕方ありません。ピチカートはパルス音なので、バスレフ型では問題が表れやすいように思います。交響曲を聴く場合には僕もバスレフ型でほとんど問題を感じません。というのは楽器の音がほとんど連続音だからです。背面バスレフにすると若干響きが広がって、逆に良く感じる場合もたまにありました。一般的にポート音に限らず、パルス状の音に注目した方が音の変な癖を感じやすいような気がします。例えば箱の定在波の場合、僕はピアノの音に注目します。ストリングだけに注目すると、このような問題が分かりにくくなるか、あるいは逆に綺麗に響いて聞こえてしまったりします。

測定条件
スピーカー: 前の記事で使用したポチ1型+TangBand 8cmフルレンジ、ポートの設定も前回と同じ(同調80Hz)
音源: マイルスのアルバム「Miles Smiles」から「Foot Prints」のベースソロの4音 (ご試聴ください)。
この曲は、何か変えた時にまず最初に試聴する僕のリファレンス的な曲です。今回は冒頭のベースソロ4音だけ抽出しました。最初は正弦波信号で比較したのですが、それでは明確な差がでないため、実際の音楽信号を使用した次第です。

録音方法: 16bit/44.1kH WAV、モノラル、マイクロフォンはいつものパソコン用、マイクロフォン位置はスピーカー前方15cm (f特測定位置と同じ)

アンプ: ONKYO A-905FX(一部トーンコントロールを使用)

再生装置: 録音を行うPCとは別のPC上でFrieveAudioにて再生(24bit/96kHz出力)。基本的にイコライザはOFF。ただし最後の実験だけイコライザを使用。


測定結果

まずはお決まりの周波数特性です
553.jpg

基本的に前回記事のデータと変わりません。水色はアンプのトーンコントロール(70Hz/最大+10dB)を使用して密閉型の低域を増強したものです(約3/4位置=+7.5dB)。スピーカーからの音圧レベルをできるだけ揃えるために、以下の比較ではこの「密閉+トーンコントロール」と「バスレフ」を比較します。アンプのボリュームと入力信号レベルは全ての測定で同一としました。

ではマイクロフォンから測定した音波の波形とCDに記録されているデータの波形を比較してみます。つまり「タイムドメイン」的に評価してみます。

なお複数波形を重ね合わせて比較していますが、時間的同期情報が無いため、時間方向(左右方向)の位置合わせは見た目で適当に行っています。

これがソース信号。約2秒間です。以下ではまず4番目、次に2番目の音の出だし部の波形を比較します。
560.jpg

まずはベース4音「ポポポポーン」の最後の「ポーン」の出だしの波形を比較します(約0.05秒)。基本周波数は約150Hz。
まずは密閉型(トーンコントロールON)
550_20100605140625.jpg
クリックで拡大して見てください。赤がソースの信号データ。青が測定波形です。測定波形は頑張って信号波形をトレースしているように見えます。測定繰り返し性を確認するため、グラフには3回の測定波形を重ねてプロットしています。ほとんど完全に重なるので、測定繰り返し性は問題ないと思います。

次にバスレフ型(トーンコントロールOFF)
549.jpg
これも3回の測定結果を重ねています。2、3、4番目の波形が明らかにずっこけ気味ですね。信号の基本周波数は150Hzですが、上の周波数特性を見ると150Hzでもポートの効果が見られます。

以上の結果では、明らかに密閉型の方が信号をより正確にトレースしていると言えそうです。

次に「ポポポポーン」の2番目の「ポ」の出だしの波形です。基本周波数は少し下がって100Hz。
まずは密閉型(トーンコントロールON)
555.jpg
ありゃりゃ。3つめくらいから動きが怪しくなりますね。「密閉よ、もおまえもか?」

お次はバスレフ型(トーンコントロールOFF)
554.jpg
波形の変形の仕方が密閉とは明らかに異なりますが、これでは五十歩百歩かな。ただ、上の結果でもそうですが、全体的にバスレフ型は音の出だしの波形(最初の2~3山)の崩れが大きいと言えます。その後の波形は大して崩れていません。ピチカートでは問題を感じるけどクラシック(弓弾き)ではあまり問題を感じないのは、このへんが原因のようです。正弦波信号の比較では差が明確に出なかったのもうなずけます。

密閉型の方は、周波数が下がってトーンコントロールが影響する範囲に入ったのが問題の原因かもしれません。トーンコントロールをOFFにして、かわりにFrieveAudioのデジタル イコライザで150Hz~70Hzにかけて+7.5dBしてみました。
イコライザはこんな感じ。
559.jpg

さて波形は?
密閉型(トーンコントロールOFF、デジタルイコライザON)
556.jpg

ビンゴ! やはりアナログ式のトーンコントロールが悪さをしていたようです。以前も聴感上違和感を感じて使うのを止めたのですが(関連記事)、こういう事だったのかと納得です。ここまで明らかに違いが出るとは予想していませんでした。これに対してデジタルでブーストした波形はかなり頑張って信号をトレースしています。アナログフィルタとは異なり、デジタルフィルタは位相の問題を一切生じないとは聞いていましたが、確かにそのように見受けられます。ソース信号がデジタルになったこの時代にわざわざアナログ フィルタを使用するのは馬鹿げていると言えるでしょう。

結果は以上です。
密閉型とバスレフ型の波形の違いをどう思われますか。波形の違いなんて「コマケー」違いでしょうか?
例えば今のアンプを100万円のアンプに変えても、こんな雑な測定で分かるような違いが出るとはまず思えません。ましてや電線を変えた時の変化量に比べたら、天変地異くらいの大変化ではないでしょうか。

以上をまとめてみます。

1) ピチカートベースの信号を再生した場合の再生音波形には、密閉型とバスレフ型で明らかな違いが確認できました。この信号に対しては、密閉型の方が明らかに高い信号忠実度を示しました。バスレフ型では音の出だし(トランジェント部)の波形に顕著な崩れが見られました。つまり「タイムドメイン」的に劣るという事です。

2) 同じ信号に対してアンプ内蔵のアナログ式トーンコントロールとFrieveAudioのデジタルイコライザーで同等量のブーストを適用した場合、スピーカーから再生される音波の信号忠実度は、明らかに後者の方が優れる事が分かりました。

また、僕の基本コンセプトである密閉型スピーカ+デジタルブーストの優位性も改めて確認できたと思います。

今まで、どうしてもバスレフの音に馴染めずに違和感を憶えていたのですが、波形を見てもやはり少し変な事が分かりました。もう少し下の70~80Hzでも測定してみたかったのですが、適当な信号が見付かりませんでした。このように小型のスピーカーをバスレフ型にすると、ポートの音域がベース帯域にもろに被さりますが、大型スピーカーでポート帯域を50Hz以下に持ってゆければ、違和感はかなり解消できると思います。

世間に出回っているスピーカの大部分はバスレフ型ですので、それに馴染んだ耳には密閉型は「地味」「響かない」「沈んだ」感じに聞こえるかもしれません。しかし暫く耳を密閉型に馴染ませた後にバスレフ型に戻すと凄く「癖」のある音に聞こえると思います。自動音場補正でも使い始めは違和感を覚えるのですが、一度馴染むと手放せなくなるのと似ているかもしれません。

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