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2010年05月30日 (日) | Edit |
吸音材は必要悪のように言われる事が多いようですし、吸音材なんぞ全く不要という極端なご意見まで聞かれますが、はたしてそうでしょうか?

僕は今まで聴感だけを頼りに吸音材の量を決めてきましたが、今回は測定でその効果を確かめてみたいと思います。

まずは、僕の聴感による吸音材調整方法を書いてみます。

ハチマルの吸音材チューニング法
1) 中高域では主にピアノの音を重視します。ストリングだと分かりにくい (定在波があった方が華やかに聞こえてしまう事すらある) のですが、打撃音のピアノを聴くと違いが分かりやすいように思います。それに、ジャズ聴き始めのころに妹のピアノを借りて理論書みたいなのを読みながらコードをイヂッテでさんざん遊んだ事もあるので、記憶音としても一番確かだからです。吸音材を入れない場合、ピアノの音が不自然な響きに聞こえます。
僕はこういう音を箱くさい音と言って嫌います。

2) 低域は例によってウッドベースの聞こえ方を重視します(これもやはり弦を弾くパルシブな音ですね)。この場合、吸音材を増やすにつれて低域がタイトに引き締まります。僕は「ボゥン」とか「ボン」ではなくて「ボン・」と聞こえるダンピングが効いた音が好きなので、結局何度やっても箱の内部を吸音材で隙間無く埋める事になってしまいます。これは密閉箱限定の手法です。もう少し容積を減らしても良いのかもしれません。

542.jpg
臓物を出してみました。聴感を頼りにだんだんと増やしていったのですが、引きずり出してみて改めて驚きました。
コイズミ無線で売っている「ミクロンウール」を使っています。

僕のスピーカーはご存じのように密閉型ですが、バスレフでこんなに入れたらポートの効果がなくなってしまいます。
オーヂオイヂリを始めた当初は僕もバスレフのチューニングに散々トライしたのですが、何度やっても、好みの方向にチューニングしてゆくとポートと箱内部の吸音材の量がどんどん増えて「結局密閉と変わらんやん」という結末になりました。

それでは測定で確認してみましょう。。。。。

測定データ
非常に微妙な測定であるため、マイクロフォンはスピーカーの前方約5cmの位置に置きました(S/Nを上げるため)。スピーカーはいつものAlpair5 2.5L密閉型です。アンプにはIcon AMPを使用しました。はたして定在波の影響はスピーカー前方でも観測できるのでしょうか?

1) まず吸音材を全て取り出して測定しました。
536.jpg
おやおや、それらしきピークが800Hz~2kHzの領域に見られます。

2) 次にサーモウールを左側面/底面/背面に一枚ずつ貼り付けてみました。
538.jpg
見事にピークが消えましたね。やはりピークは箱の定在波だったようです。箱の内寸から定在波の周波数を予測すると、前後(210mm: 810Hz)、上下(140mm: 1.2kHz)、左右(85mm: 2kHz)となります(音速=340m/sec)。前後と上下はほぼ計算に一致するみたいですが、左右方向のピークは2kHz前後に分散して発生しています(ナンデ?)。あと、スピーカー軸方向(前後)の定在波の影響が一番大きく出ていますね。ちなみに箱をいくらゴツク作っても無駄ですよ。これはいわゆる「箱鳴り」ではなくて内部の定在波が薄い振動板を通して(あるいは動かして)出てくる音ですから。

これで箱内部の定在波の影響が振動板前方の音にも表れるという事が分かりました。こいつが「箱くささ」の原因だと思われます。また、対面する壁の一方に吸音材を貼れば、かなり効果的に定在波を抑え込める事も分かりました。苦労して丸いエンクロージャ作る必要もないかな??
3kHzのディップは定在波ではなくてユニット/バッフル/部屋のいずれかの影響のようです。

3) では吸音材をたっぷり詰め込んだハチマル チューニングはどうでしょうか?
539.jpg
約150Hzを中心とする盛り上がりが低下して、ビシッとフラットになりました。これによって低音の「締まり」を出している模様です。
この150Hzの盛り上がりは、Alpair5の共振周波数にほぼ一致します(下図)。
543.jpg
スピーカー設計プログラムによる計算結果

この盛り上がりがスピーカーの共振によるものだとすると、ダンピングファクタ(DF)の低い真空管アンプで違いが出るはずです。そこでTU-870につなぎ換えて測定してみると。。。
540.jpg
ビンゴ! 150Hzがポッコリ盛り上がりました。まず間違いなくスピーカーの共振の影響ですね。
注: 僕はTU-870の高域および低域補正用のコンデンサを外しているので、オリジナル回路のTU-870とは特性が若干異なります。イコライザで調整するので特性調整用のコンデンサは不要なんです。。。

より高出力のONKYO F-905FXでも測定してみましたが、Iconとほとんど変わりませんでした。半導体アンプでも共振の影響が結構出るのかなぁ?? アキュフェーズとかの上等のアンプだとどうなんでしょうね?

スピーカーの共振についてちょっと簡単に説明
スピーカーの振動板を手前に引っ張り出してからパッと手を離すと、振動板はしばらく前後に振動してから最終的に中立位置(元の位置)に戻ります(減衰振動と言う)。この時の前後振動の周波数が共振周波数です。共振周波数は運動する物体の質量(振動板の等価質量)とバネ定数(スピーカー内部の機械的バネと密閉箱の空気バネのバネの強さ)によって決まります。このため、箱の容積を小さくすると共振周波数は高くなります(空気バネが強くなるため)。
この周波数を持つ信号入力に対してスピーカーは非常に動きやすく、DFの低いアンプでは制動しきれずに振動板が動き過ぎてしまいます。このためパルシブな信号に対して音が「ボン・」と止まりにくくなります。バネとして働く空気に吸音材を入れる事によって、空気バネの伸び縮みを妨げる効果(ダンピング効果)が得られます。この効果により、スピーカーと空気で構成された振動系全体の共振の強さを緩和する事ができます。


マイクロフォンを20cmまで離して測定してみました。なお、2kHz以上の形状は、マイクロフォン位置が少し変わっただけで大きく変化するので気にしないでください。
541.jpg
S/Nが下がるので見にくくなりますが、この距離でも定在波の影響は明らかに見て取れますね(見やすくするためにグラフを上下にずらしてます)。

最後に吸音材を元に戻してから、Icon AMPとTU-870を比較してみました。
544.jpg

やはりTU-870の方が低域で盛り上がりますが、吸音材なしよりは傾向が弱まっています。新システムをチューニングする際に、メインスピーカーの共振周波数を避けるためにクロスを200Hzまで上げて見た事があるのですが、やはりAlpair5でできるだけベース音を聴いた方がシャープに聞こえるので、最終的に100Hzクロスに落ち着いています。

まとめ
今回の測定から次の事が分かりました。
1) 箱内部の定在波の影響は、スピーカー振動板の前方でも観測できます。つまり密閉型でも定在波の音がスピーカーを透過して聞こえるという事です。ましてや、土手っ腹に風穴の空いたバスレフ型では、吸音材で対策しない限り盛大に定在波を聴く事になります。 (ただし、それがそのスピーカーの個性として好きであれば、別に殺してしまう必要はありません。ワザワザ箱鳴りするように作られた高級スピーカーもあるくらいですから、要は自分の好きな音にチューニングしてしまえば良いという事ですので)

2) 今回試した吸音材(ミクロンウール)で見る限り、対面する壁の一方に1層の吸音材を貼る(つまり3面貼る)だけで劇的に定在波の影響を下げる事ができるようです。通常のバスレフ等ではこれで十分だと思います。

3) 密閉箱の場合、吸音材を増やす事によってスピーカーの共振周波数におけるダンピングを改善できるようです。聴感上もそのように感じます(というか聴感を頼りにチューンしたらこうなった)。

4) 以上から、吸音材の調整はスピーカーのチューニングにおいて非常に重要かつ効果的であると言えます。

如何でしたか。結構貴重なデータをお見せできたと思います。是非ご参考にしてください。最近集中的にブログを更新しましたが、また暫くご無沙汰します(仕事しなくっちゃ!)。ブログ村の応援もヨロシコ!

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