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2013年07月01日 (月) | Edit |
今回は、前回のポート音計測結果をシミュレーションと照合してみます。

下はいつものシミュレーションです。
実測では、ポート音のピークが63Hzあたりにあるため、それに合わせて微調整しています。
バスレフ
SIMU BR
密閉
SIMU Cloased
緑の位相曲線には、実測と照合するための各共振点を示すをプロットしています。
バスレフ型では、インピダンスの最初のピーク(-90°)、パスレフ共鳴点(-180°)、インピダンスの2番目のピーク(-270°)を照合点とします。密閉型の照合点はインピダンスピーク1点(-90°)だけです。
注: 僕は常に「入力の位相」をゼロと考えます。従って、シミュレーション グラフの目盛りでは、バスレフの場合+270°、密閉の場合+90°を位相ゼロと考えます。ご注意ください(末尾の「追記」参照)。

計測波形から読み取った振動板音ポート音合成音の振幅をグラフにプロットしました。  
振幅   
- 振動板音をキャンセルするためにマイクをポートの正面に置いたため、ポート音が少し大きめに拾われています。マイクの距離を離すと特性はほぼフラットになります。
- 密閉型にサブウーハ(ポート音)をアドオンした状態に近い事が分かります。
- 100Hzで振動板音とポート音の振幅が同等になります。以下では、これを実質的なクロスオーバー点と呼びます。
- 共鳴周波数以下では、ポート音の見せかけの位相が振動板音よりも90°以上進むため、互いに音を弱め合って合成音はポート音よりも小さくなります。共鳴周波数以上では互いに強め合うため合成音はポート音よりも大きくなります。
- 200Hzではポート音はほとんど影響せず、合成音と振動板音の大きさはほとんど同じです。

波形から読み取った振動板音ポート音合成音の位相をグラフにプロットしました。  
位相  
グラフの上ほど位相は遅れます。ご注意ください。
- 青(実線)が振動板音(密閉)の位相です。
- 緑(破線)がポート音、(破線)が合成音(バスレフ)です。これらは波形から単純に直接読み取った見せかけの位相です。このため、60Hz以下では信号よりも進んでいます(0°以下になっている)。
- ポート音の位相は50Hzから100Hzの間で一気に180°近くも回転するのに対し、振動板音の位相回転はわずかです。
- クロスオーバー点(100Hz)において、振動板音とポート音の見せかけの位相が揃います。しかし、ポート音は極性が反転しているため、実際には信号に対して270°遅れており、振動板に対して180°遅れています。
- この事は、反転を考慮した実際のポートの位相(時間ドメイン的位相)を示す(実線)を見るとよく分かります。。

- 青は、上図のシミュレーションから読み取った位相です。
今回は、密閉型の共振点(80Hz)でシミュレーション(-90°)に一致するよう、実測のプロットを全体的にシフトしています。というのは、信号から音響出力の間にアンプの位相特性も影響し、今のところそれは不明だからです(特にIconAMPは他のアンプ(IA7E、ClassicPro等)に比べて低音の位相が少し進み気味(あるいは高音の位相が遅れ気味))。結果として、実測のプロットは全て一律に約20°補正しています。これにより、ポート音の実際の位相(反転を考慮した時間ドメイン的位相)もシミュレーションと非常によく一致します。
- 40Hzでは波形の振幅が極端に低くなるため、位相の読み取り値は正確ではありません。また、最初のインピーダンスピークの実際の周波数はシミュレーションよりも少し高く、50Hz弱にある模様です。

さて、合成音(バスレフ)の見せかけの位相はポート音の見せかけの位相と殆ど一致していますが、実際の位相は単純に「X°」と言う事はできません。何故ならば、合成音は「極性と位相と位相変化挙動が異なる」2つの音が合成された音に過ぎないからです。正確に表現するなら「振動板とポートの音はx : yの割合で含まれ、信号に対して振動板音はX°遅れており、ポート音は反転した上でY°遅れている」としか言いようがありません。

図中の細い赤破線は、合成音の「合成位相」を便宜的に表現したものです。ポート音と振動板音の振幅の比率に基づいて平均的な位相を算出してプロットしています。しかし、厳密には正しい表現とは言えません。

下は、上図の位相から求めた遅れ時間のグラフです。   
遅れ時間    
このように、ポート音(バスレフの低音)は振動板(密閉型)に対して時間的に急激に遅れます。 しかも極性は反転しています。 また、共鳴周波数を下げれば下げるほど、周波数に反比例して遅れ時間は増加します(1周期の約1/2遅れる)。60Hzの共鳴ポートは約8ms遅れますが、50Hzでは約10ms、40Hzでは約12.5msです。

結論として、バスレフ型は密閉型にサブウーハをアドオンした状態に近いと言えるでしょう。そしてそのサブウーハは、クロス点において位相が密閉型に対して約180°遅れるものの、極性が反転しているためにうまく同相で繫がります。つまり、クロス点において180°位相が遅れたサブウーハを「逆相」で接続して相対的位相を揃えるのと同じ事を「筒っぽ」が勝手にやってくれるという事です。非常に巧妙に作動する事には驚かされます。 昔の人は偉い!

その事を確かめるために、実際の楽曲信号に対する挙動を調べてみました。

下は、春の祭典の例のバスドラに「100Hz~200Hz」 の非常に急峻なバンドパスを適用した信号に対するバスレフ型と密閉型の応答波形です。
春100-200 
赤がバスレフ、青が密閉です。ポート音のクロス周波数(100Hz)以上の帯域では、両者の挙動は殆ど同じです。

下は、同じ信号に「50~100Hz」 (つまりポート作動帯域)の非常に急峻なバンドパスを適用した場合の波形です。
春50-100jpg 
密閉型は信号を非常に正確にトレースしますが、バスレフの波形はなんだかゼンゼン違って見えます。また、バスレフの方が密閉よりも位相が進んでいるようにも見えます。

そこでバスレフの波形を上下反転してみました。
春50-100反転 
すると、密閉型ほどではないですが、信号との対応が明確になります。また、バスレフ型は密閉型に対して遅れています。

このように、バスレフ型の場合、ポート音が効果的に作用する低音領域の音は、密閉型に対して反転した上で遅れています。そして、これらを合成するとドレガドレヤネン?ドナイナットンネン?状態になるという事です。 周波数ドメイン的には正しく応答しますが、時間ドメイン的にはかなり出鱈目な応答です。

追記
シミュレーションから僕が読み取った「入力をゼロとする絶対的位相」はあくまでもポート音の位相を表すに過ぎず、ポートの作動領域よりも高い周波数では、バスレフ型は密閉型と全く同じ挙動になると考えられます。そして、バスレフ型(ポート共振周波数)から密閉型(クロス周波数)への移行は、単純に2つの異なる音(振動板音とポート音)の強弱関係の変化として捉える事ができます。

このシミュレーションの元々の位相プロット(縦軸の目盛り)は「相対的位相」しか考えていません。これは僕の言う「見せかけの位相」です。従って、グラフの目盛りを素直に読むと、100Hzにおいて両者の位相は共に0°で一致します。しかし、実際には、100Hzにおいてポートの音は180°遅れて反転しています。その結果として見せかけの位相が一致しているに過ぎません。時間ドメインで考えると様相は全く異なるという事です。この点にご注意ください。僕は常に信号の位相を基準にして時間領域で現象を捉えます。つまり、シミュレーションの目盛りでは、バスレフ型の場合+270°、密閉型の場合+90°を「遅れゼロ」の基準とみなすという事です。

次回は、バスレフ型の動的挙動に焦点を合わせてみたいと思います。

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