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2012年10月20日 (土) | Edit |
お待たせしました。

今回は振動板の振幅と波形の計測結果をお見せします。

なお当ブログを今回初めて読まれる方は、1つ前の記事を必ず先にお読みください。でないとチンプンカンプンかもしれません。

写真は振幅を計測するための実験君セットアップです。あいかわらず超雑。お仕事の休憩中にチョコチョコっとやるだけですから。。。
test config
iPadのカメラなので写りは最悪ですがご容赦くださいませ。写真のドライバは、マークさんが送ってくださった保護機構(Arrestor)付きの改良型Alpair 10シルバーです。Arrestorとは、早い話が機械的に振幅を制限する(底打ちさせる)シリコン製のストッパです。僕が以前ブリバリっとA10を一台破壊したのを知って送ってくださいました。。。。あれは全く当方のアホなミスで壊れたのですが、他にもブリっとやってしまった方もいらっしゃるようで、ユーザ思いのマークさんは早速この保護機構を採用されたようです。

今回の一連の試験はArrestorの評価も兼ねています。評価の結果、A10のArrestorは丁度良く作動している事を確認できました。今後のロットに順次投入されるのではないでしょうか。ただし、前進側には何のリミッタもありませんので過信はなりませぬよ。1台ずつ大切に組み上げられたドライバです。正しく使いましょう。。。と言える立場ではないですが。。

上の写真でご覧の通り、ドライバを箱に取り付けないオープンエア状態で評価しました。使うのはカメラ、照明、マイクロフォンです。

<計測方法>
ボビンに2mmおきのスケールと三角マークを印刷した紙を貼り付けます。
ラベル1 copy
まず静止状態で撮影し、PhotoShopでスケールの画像からピクセルあたりの長さを計算しておきます。次に正弦波信号をドライバに入力して振動板を上下させてシャッター速度1秒で撮影します。当然画像はブレますが、上死点と下死点では一瞬運動が停止するため、三角マークの残像?が比較的はっきりと写ります。それらの位置をPhotoShop上の座標で読み取って、実際の移動量に換算するという算段。。。。
アーーーーーメンドクサ。。。
でもね。。途中からそんな面倒臭い事しなくても良い事がわかりました。なんと運動中のスケールを目で簡単に読み取れるのですよ。2mm、4mm、6mm...の振幅では、2mmおきのスケールの線が重なってハッキリと見えます。慣れてくると目分量で奇数mmの振幅にも調整できました。楽勝じゃん! カメラは不要ですね。。。今度やる時は1mmおきに長短のスケールを印刷した紙を貼り付けようと思います。。

それでは結果をご覧ください。

1. Alpair 6M 40Hz
Alpai6M 40Hz copy
上の写真はブリブリが始まる直前の状態です。これ以上振幅を上げると、波形の中腹の平らな所が凹み始めて、1周期3山の波形(ハチマル用語の「ブリブリ」)になります。で、このブリブリ一歩手前の状態の写真から読み取った振幅は4.3+4.1=8.4mmでした。つまりA6Mのコイル長=7.2mmを既に超えています。ただし、コイルはまだ完全にギャップの外に飛び出していません(11.2mmを超えると完全に飛び出す)。
ふーーーん。こういう状態だったんだぁ。。。よくわかりました。実験てオモシロイですね。

では振幅の小さい方から見て行きます。
A6M 40 2mm A6M  40 3mm
図中の振幅の値は両振幅(pp)です。A6Mの最大線形片振幅Xmax=1.6mm (両振幅で3.2mm(pp))ですから、右側の3mm(pp)がほぼ線形限界状態に相当します。3次高調波の増加にともなって波形が少し尖り始めています。

A6M  40 4mmA6M  40 6mm
Xmaxを超えて4mm(pp)になると3次高調波成分は2次よりも高くなり、波形は三角形になります。聴感上3次高調波は耳触りです。右側の6mm(pp)はまだコイル長(7.2mm)以内の振幅ですが、波形は大きく変形しています。良質なトーンを得るにはやはりXmax=1.6mm (3.2mm(pp))あたりを正味の限界と考えた方が良さそうですね。

大した事ないように思われるかもしれませんが、次のDaytonウーハの結果をご覧になれば、Xmaxまでまともに振動板を運動させる事がそう簡単ではない事をお分かりいただけると思います。また、50Hz以下の超低域で大信号が入るのはバスドラくらいなので、そのような音ではブリらない限りあまり気になりません。経験上、40Hz/-6dB信号で6mm(pp)程度振動しても実用上は許容範囲であろうかと思われます。

2. Dayton Woofer 40Hz
次にDaytonの13cmアルミコーンウーハ(DA135-8)の結果です。このドライバのコイル長は12mm、ギャップ高は6mm、Xmaxは3mm(片振幅)です。これは一般的に売られている13cmクラスウーハの標準的スペックです。
Dayton 40 3mmDayton 40 4mm
なんだか最初から2次よりも3次が高くて三角形気味です。Xpp=4mmで既に殆ど三角に見えます。

Dayton 40 6mmDayton 40 8mm
Xmaxに相当する6mm(pp)では既に相当歪んでいます。実力的には4mm(pp)程度が限界という感じでしょうか。Xmaxが約半分のAlpair 6Mと大して変わりません。以前の聴感評価では、A6M 2本とDayton 1本がほぼ同等の限界性能でしたし、音質的にはA6Mの方が良好に聞こえましたから、まぁ、こんなもんだと思います。磁気回路の寸法から単純に計算したXmaxだけでは、実力の程は分からないと言えましょう。2つ前の記事に載せたDyanavox製LW5002PPR-S 13cm PPコーンウーハの歪み具合もDAYTONウーハと似たようなものでしたから、このあたりが平凡な13cmウーハの実力と考えて良さそうです。

3. Alpair 10 40Hz
Alpai10 40Hz copy
これは、限界ギリギリの大振幅状態です。これ以上振幅を上げると、例のArrestorにヒットします。薄いブルーの波形がArrestorに接触した時の波形です。この時の写真から読み取った両振幅は7.4+6.3=13.7mmです。A10のコイル長=16mmと最大線形片振幅Xmax=5.5mm (両振幅で11mm)のほぼ中間ですから、Arrestorが効き始める位置としては丁度良いのではないでしょうか。

Alpair 10 40 4mmAlpair 10 40 8mm
右側のXpp=8mmをDaytonの8mmと比べれば、Alpair 10の優位性は一目瞭然です。

Alpair 10 40 10mmAlpair 10 40 12mm
Xmax=5.5mm (両振幅で11mm)に近付くと、さすがに2次成分が目立ってきます。しかし3次成分が2次成分より低いままなので、さほど耳障りではありません。また波形は右方に傾き始めますが、大きく破綻せずにXmax超えの12mm(pp)を経て最終的に上のXpp=約14mmでArrestorにヒットします。僕の常用音量では明らかに過剰性能です。なんだか凄いですね。20kHzまで極めてフラットな特性を持つフルレンジドライバなのに。。。

このようなサイズの振動板を、10mmを超える振幅で、どこにも接触させずに正常に往復させるのは並大抵の事ではないでしょう。ほとんどアクロバティックです。。。これは、ご自慢の超薄スパイダーと非常にソフトなエッジ、それと、ラインに流さず1個ずつ日本人技術者がラボで組み上げるという高い組み立て精度のなせる技と言えます(量産型のCHRはラインに流している。Alpairはガンダムですか?)。先日、「これじゃあ儲からないでしょう?」とお伺いしたとろこ「いゃもう、パッション(情熱)だけでやってるから。。」との事。正に「事」に「仕える」といった感のあるマークさんでした。ナカジマさん、大変ですねぇ。。。Alpairとマークさん、尋常ではないと思います。僕としてはCHRがOEMで大量に売れる事を切に願います。

なお、このように良好な大振幅特性は、元々ブーストを想定したものではなく、常用域のリニアリティとコンプライアンスを徹底的に追究した結果であると思われます。それが僕のブーストコンセプトにたまたま適していたという事でしょう。もしAlpair5を使っていなかったら、このコンセプトには多分辿り付かなかったと思います。だいたい、サブウーハの100Hz以下の低音よりも小さなA5をブーストした低音の方がクオリティが高く聞こえたわけですから。たぶんサブウーハの高調波歪みが高かったのだと思います。平凡なドライバをブーストしても、そらアカンでしょう。。。。F80(多分Xmaxは0.5mm程度)を使っていた頃も、絶対にブーストを試したはずなのですが、記憶に残っていないところを見ると、ちょっとやってみて直ぐに止めたのではないかと思います。

このような実験を重ねるたびに、Alpairというドライバはつくづく特別であるように僕には感じられます。高域性能に注目が集まり気味ですが、Alpairの真価は音楽再生の土台たるべき低音再生クオリティにあると言って良いでしょう。つまり、このような大振幅での優れた特性があればこそ常用振幅域で高いクオリティが得られるという事です。これは、表層的なオンシツを徒に追い求めた小手先の手業ではなく、モノゴトの根本/本質を見据えた真に真当/真正直な技術的アプローチであると言え、そこにこそAlpairのヒミツがあると言えます。このようなアプローチを取らない限り真の「良い」結果(音)には辿り付きません(手業で表層的な面ばかりを追い求めたのではグルグル回るだけなのです)。技術開発とはこうでないとイケマセン。。技術屋としての僕のマークさんに対する尊敬の念はますます高まりました。

次回は密閉箱でArrestorの効果を確認するために行った超ブリブリ限界再生の結果をお見せする予定です。いやぁ。。最初はビクビクもんでしたが、スピーカってそう簡単には壊れないものですねぇ。。。

追記
マークさんに、こんな企業秘密的な情報を公開しても良いのですか?と確認したところ、むしろ積極的に公開を望まれておりました。何でも書け、全部書け。と。。英語版ブログへの掲載もお約束しました。向こうのフォーラムでも驚くほどオープンに情報を公開しておられます。

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