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2012年10月28日 (日) | Edit |
英語版用にデータを追加したり、見やすくまとめたりしたので、掲載しておきます。

1) Dynavox PPウーハとAlpair10の4L密閉箱での比較
このウーハにはスケールステッカーを貼る場所が無いので振幅は計測できませんでした。なので4L密閉箱同士の比較です。IconAMPもパッシブプリもボリューム全開で、40Hz信号のレベルを変化させています。

PP vs A10 18

PP vs A10 14

PP vs A10 10

PP vs A10 8

PP vs A10 6
DynavoxもDayton同様3次歪みが多いですね。

2) オープンエアでの結果をまとめました。
左上(i)が1/2Xmax、下の(iii)がXmax、(iV)がXmax超えです。
Alpair 6M
A6M  40 matome copy

Dayton
Dayton matome copy

Alpair 10
Alpair 10matome copy
DaytonはAlpairに比べると4次、5次歪みも顕著に発生していますね。これに対し、どちらのAlpairも、そのような高次の歪みは殆ど見られません。

これらは下限周波数での結果ですが、そのドライバの素性の善し悪しをモロに露わにしてくれます。つまり、磁気的限界(Xmax)以内のこのように優れた振動板の運動特性は主に機械的ロスの少なさ(サスペンションが振動板の動きを邪魔しないという事、機械的コンプライアンスの高さ)に由来するものと思われ、従って全域に影響するであろうという事です。F80からAlpair5に交換した時に、「音楽」の聞こえ方の明瞭さにおいて全く次元が違うぜ!と感じさせられたのは、恐らくこのように優れた基本的素性によるものと思われます。F80では、どうしても、どこかベールが掛かったような不明瞭さ(音楽の聴きたい部分が時々聞こえ難くくモドカシイ)を覚え、ツイータやスーパーツイータを追加したりしましたが改善されませんでした。要は、Alpair5は入力信号に対してちゃんと真面目に動いてくれたという事なのだと思います。きっとね。。。

これから英語の記事を書きます。ではでは。。。

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2012年10月25日 (木) | Edit |
振動板の振幅の増加に伴って3次の歪みが増加し、耳にも明らかに音が変化します。良質な低音再生には、振動板の運動がXmaxを超えない領域で3次歪みをできるだけ低く抑える事が重要だと思われます。

では、音の波形は何故あのように3次歪みによって尖るのでしょうか?

普通に考えれば、振動板の振幅が増加するにつれて機械的および磁気的な非線形性によって波形のピークが抑えられ、波形が丸くなるはずなのに?????と不思議にお思いの方もいらっしゃるかもしれません。僕も最初は不思議に思いました。

実は、マイクロフォン波形で観測される音圧波形は振動板の変位波形と同じではありません。音圧波形の通りに振動板が運動しているわけではないという事です。音圧は振動板の移動量ではなく移動速度に比例します。つまり、音圧波形は振動板の変位波形を微分した波形として観測されます。

今回はそのへんをMicrosoft Excelを使ってシミュレートしてみました。Excelはこのような思考実験に非常に便利です。ソコソコ複雑な多質点系の振動問題でも、Excelであればプログラムコードを書かずに簡単にモデル化でき、結果を様々なグラフで表示できます。開発業務では散々使い倒しましたが、こいつでゴネゴネやっているうちにアイデアが閃いたという事が何度もありました。

では計算結果です。

まずは歪みなしの状態です。
歪み無し
青が振動板の変位です。これを微分して求めた音圧波形が緑です。微分といっても難しくありません。1周期の時間を500個のセルに分割し、各セル間の差を求めれば微分値が得られます(要は引き算するだけ)。音圧は変位の速度(つまり青い線の傾き)に比例します。従って青い線(変位)がゼロ点を横切る時(傾きの絶対値が最大の時)に緑の線(音圧)は最大または最小となり、青い線が最大または最小の時(傾きがゼロの時)に緑の線はゼロを横切ります。

次に、青の変位波形に3次の成分を段階的に追加してみましょう。

3次=2.5%
3次2.5
2.5%の3次成分を加えました。グラフには3次成分を破線で示しています(ゼロ点付近でフラフラしている波形です)。2.5%とは、基本周波数の振幅を1とした時に、振幅が2.5/100の3次成分を追加したという事を意味します。3次成分の追加により、青の変位波形のピークが少し丸くなり、緑の音圧波形が尖って三角形に近付く事が分かります。ね。。こうやってマイクロフォン波形が尖るんですよ。これくらい尖ると、正弦波音とは明らかに違って聞こえます。

3次成分をもっと増やしてみましょう。
3次=7.5%
3次7.5
3次=15%
3次15
今までお見せしたマイクロフォン波形の挙動を良好に再現できています。変位が頭打ちになる事によって、変位に3次の歪みが生じ、その結果として音圧波形があのような形態で歪むという事です。
シミュレーションでは変位波形に人工的に3次成分を追加しましたが、実際の現象は逆ですので注意してください。実際には変位が磁気的および機械的な非線形性によって頭打ちになり、「その結果として」3次の歪みが生じます。

磁気的な非線形性については以前の記事で詳しく書きました。振動板の振幅が最大線形振幅Xmaxを超えれば、磁力による駆動力が頭打ちになるため、3次の歪みが生じるのは当然です。

しかし、Xmaxより小さい振幅で生じる3次の歪みは抑えられるはずです。これには機械的非線形性が強く影響するものと思われます。つまりサスペンション(エッジとスパイダ)が十分にシナヤカでないと、少し変位しただけで振動板を引き戻そうとする力が非線形に増加し、従って変位波形の頭が抑えられて丸くなり、結果として3次の歪みが増加する。。といった具合です。

実際、Daytonウーハの場合、Xmaxより十分に小さな振幅でも3次歪みが目立ちましたが、これもサスペンション系の機械的非線形性によるものではないかと考えています(シナヤカでは無いという事)。これに対し、Alpair10の3次歪みがXmaxに達するまで低く抑えられているのは、マークさんご自慢の超薄ダンパと非常に柔らかいエッジに負うところが大きいのではないでしょうか(非常にシナヤカだという事)。しかし、このようにシナヤカでソフトなサスペンションを使って振動板を傾けずに大きな振幅で運動させるのは極めて難しく、非常に高い組み立て精度が求められるため、今のところラインで量産するのが難しいのだと思われます。市販されているドライバをざっと見渡しても、Alpairというドライバは非常に特異であるように僕には思えます。

ついでに2次の歪みについても計算してみました。

2次=7.5%
2次7.5
2次の歪みは、振動板の前進方向と後退方向で何らかの条件が非対称である事により生じます。上図から、2次歪みが増えると音圧波形は右方に傾く事がわかります。これは、Alpair10の限界近くの大振幅時の傾向と良く一致しています。Alpair10では3次歪みが目立たないため、このように2次の影響を顕著に見る事ができます。

2次の歪みが生じる原因としては、磁気回路の形状(どう見ても対称ではないですよね)、エッジのバネ特性(ダンパは形状的に対称)、コーンの剛性(コーンを拡げる方向とすぼめる方向で剛性が異なる)、密閉箱の空気バネの特性(空気バネは非線形)等によって生じると思われます。これらは簡単には取り除けませんが、聴覚的に2次歪みは3次歪みほど深刻ではないように思えます。ちなみに素敵な音がする真空管シングルアンプでは2次歪みが顕著に表れます。そういえば、スピーカの2次歪みを軽減する方法として、以前に「プッシュプル方式」を試した事がありましたね(参考記事)。こんな事しなくてもDSPをうまく活用すれば2次歪みを大幅に削減できると思います。そのうち実験君してみましょう。

通常は2次と3次の歪みが同時に発生します。
2次=7.5%、3次=7.5%
2次3次7.5
図では、2次と3次を7.5%ずつ付加する事により、片方の振幅だけ激しく頭打ちした状態をシミュレートしてみました。このような場合、変位波形は左右対称であっても音圧波形は左右非対称になる事がわかります。

シミュレーションは以上です。

次に、以上の結果を検証するために、実測の音圧波形から変位波形を逆算してみました。変位波形を微分すると音圧波形になるわけですから、音圧波形を積分すると変位波形が求まります。

方法は簡単です。
僕が使っているハンディオシロはデータをテキストファイルとしてエクスポートできるため、これをExcelに取り込めば計算できます。積分といっても簡単で、微分とは逆に各時間のデータを単純に積算するだけです(要は足し算するだけ)。

Alpari 6M (2.5L密閉)の実測波形を使いました。縦軸は全てオートスケールなので、絶対振幅はデタラメです。
実測1
実測2
実測3
実測4
実測5
と、まぁ、こんな具合みたいです。コメントは不要ですね。

以上です。

これからマークさんにお約束した英語版の執筆(主にAlpair10対他社製比較)に入るので、暫く更新はお休み。その後、8cmクラスの評価をもう一度詳しくやってみます。今度はケロ君のAura3"も評価する予定です。オッタノシミニ!

追記
僕がこのようにデータを使ってオーディオにまつわる現象を解析すると、音楽はゲージツ(とやら)だから。。。人間のカンセー(とやら)は。。。音楽家のジョーカン(とやら)は。。。オンガクセー(とやら)は。。。データでは表せない。。。とかなんとか申してデータを極端に否定的に扱う傾向が顕著に見られます。あのね、僕はなにもオンガクセーたらナンチャラカンたらジョーカンたらを計測しようとしているのではアリマセン。僕は「音楽再生」において超ウルトラ級に基本的なのに放ったらかしにされている現象を問題にしておるのです。

僕に言わせれば、素人が仕事机の上でチョイト簡単にできる実験で露呈してしまうような超ウルトラ級基本的問題に真っ先に取り組まず、表層的/微視的なナンチャラカンばかりを追い求め、その結果ホンマに必要なのか???と思われるような高額な装置が「オンシツ?」が良いと喧伝されている現状には全く納得が行きません。

再三申しているように、僕は「データが良ければ音は良い」というアプローチをとっていません。計測は全て後追いの確認のために行っています。例えば、LEANAUDIOの初期の頃、世の中は殆どバスレフ型なので、僕も当然としてバスレフ型から着手しましたが、どうしても気色悪く聞こえて最終的に受け入れる事ができませんでした。そのため現象を解析した結果、特定周波数に付帯音が現れ、過渡挙動が乱れる事をデータで確認できました。

例えば、僕はVictor製のパワードサブウーハよりもAlpair5をブーストした低音の方が質が高く聞こえ、このため振動板がもっと軽量な普通のウーハとしてPPコーン製の13cmウーハを試しました。しかし、やはり違和感はぬぐえず、自然と使わなくなりました(自然と手が伸びないというのが重要)。次に、振動板の材質を揃えた方が良いのでないかと考え、Dayton製のメタルコーン ウーハを試しましたが、結局A6Mのブーストを超える事はできず、やはり自然と全く使わなくなりました。最後に、Alpair10を思い切って導入する事により、やっと満足のできるクオリティの低音が得られ、常用するようになりました。今回のデータは、このような経緯を後追いで如実に裏付けていると言えるでしょう。

今までの僕の経験に照らし合わせれば、これも再三申しているように、耳に届く音波波形がソース波形に「ソコソコ概ね」近付けば、確実に音は自然になり(違和感を覚える事がなくなり、つまりヘンテコリンな現象がなくなり)、「音楽」の全体と細部を楽に聴きやすくなります。「音楽」(音楽家の表現行為の結果)をより良くより素直に受け止めようとするならば、表層的/微視的/瑣末的/付帯的/主観的/嗜好的/趣味的な「オンシツ」や「リンジョーカン」や「ナンチャラカン」をツイキューとやらする以前に、超ウルトラ級に基本的な「音楽再生クオリティ」をしっかりと整える事の方が遙かに重要です。この点が疎かにされては絶対になりません。でないと、いつまでたっても無限グルグル魔境を脱する事はできぬでしょう。

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2012年10月23日 (火) | Edit |
今回は密閉箱でのテスト結果を簡単にご紹介します。

Arrestorの作動を確認するために、最初は密閉箱に取り付けた状態で試験を行ったのですが、密閉箱ではArrestorの作動を明確には確認できなかったため、オープンエア状態での試験を行ったというのが、そもそもの経緯です。

密閉箱では内圧が働くため、オープン状態とは挙動が少し異なります。

Alpair6でボリュームを同じにして比べてみました。
A6M Open 2-3 A6M Sealed 2-3
IconAMP全開で、パッシブプリが約2/3の位置です。左がオープン右が密閉(2.5L)。密閉では内圧が働くので、同じ入力であれば少し振幅が下がって歪みが減少するように見えますが、波形のパターンが大きく変わるという事はなさそうです。

さて、限界ブリブリ試験の結果です。

まずはAlpair 6M
下はオープンでArrestorにヒットした時の波形です。
A6M Arrestor copy
Alpair 6MのArrestorは振動板振幅がコイル長を大きく超えないとヒットしません。もう少し浅くしても良いかもしれません。

下は密閉箱(2.5L)でArrestorにヒットしたと思われる波形です。
MM 0dB 40Hz
赤がArrestorあり、青がなしです。40Hz/0dB信号、IconAMP全開、パッシブプリも全開!(つまり僕のシステムの完全フルパワー条件)でやっとヒットしたみたいです。完全に3次の波形になっています。超ブリブリ!いゃぁぁぁ。。。怖かったです。。が、別に壊れたりはしませんでした。。。今も元気に鳴っています。

下は同じくフルパワー状態でのAlpair10の波形です。密閉箱の容積は4L。
Arresto 4_4
さすがのAlpair10も超ブリブリです。赤がArrestorあり、青がなし。Arrestorがヒットしたようには見えませんねぇ。。。。

下は、限界よりもボリュームを上げた時のAlpair 10の波形の変化を示しています。
A10 7_8
信号は全て40Hz/0dB、IconAMPは全開です。
青がパッシブプリが約3時の状態。オープンでは、この状態からボリュームを少し上げるとArrestorにヒットします。しかし密閉箱では、ここからボリュームを上げると波形が一気に崩れて緑の状態になり、フルボリュームで赤の状態になりますが、赤の状態でもArrestorにヒットしているようには見えません。

ついでに他の13cmウーハと同じボリュームで比べたデータも。。。
13cm woofer 3_4
13cm woofer 4_4
説明は不要ですね。

今回のデータは以上です。

40Hzのフル信号を入力してフルパワー(24W)をかけると、波形は殆ど3次成分だけになりますが、ドライバはへっちゃらでした。40Hz信号程度では、コイルが勢い余って過剰に飛び出す事は無いようです。ブリバリっと破壊するには、とんでもない信号レベルをステップ状に印加してコイルを一気に加速する必要がありそうです。僕が壊した時は、アンプのボリューム位置から考えてスピーカへの入力は100Wを大きく超えており(100Wステレオアンプをブリッジモードで使っていた)、その状態でアンプの入力信号ラインをブチッと抜いたので、凄まじいステップ信号が発生したのでしょう。もし壊れたら完全にユーザーの責任ですね。

お気づきだと思いますが、Alpair 10の歪み方は、今回テストした他のドライバとは大きく異なります。
他のドライバでは三次歪みの増加に伴って、
正弦波が尖り始める → 三角形 → 中腹が痩せ始める → 中腹が凹む → 波形が3山になる(ブリブリ)
といったパターンを見せますが、Alpair 10だけは完全に破綻するまで3次歪みはあまり顕著ではなく、全く突然に波形が崩れます。一体何が他と違うのでしょうか???不思議です。

他のドライバでは、振幅が大きくなるにつれて3次歪みが顕著に増加します。3次歪みは耳障りですので、できるだけ抑えたいところです。Daytonウーハのように、線形限界(Xmax)よりも随分小さな振幅であのように3次成分が多くて波形が三角では困りますよね。普通のウーハーってあの程度なのでしょうか???

そこで次回は、なんで3次歪みが増加するのか?ナニユエ波形は三角になるのか?ドーシテ波形は尖りだすのか?を簡単なシミュレーションを使って解明します。なかなかオモシロイですよ。オッタノシミニ!

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2012年10月22日 (月) | Edit |
60万ヒットになりました。

いつもご愛読ありがとうございます。

装置の方はすっかり満足できる状態になったので、あまりイヂル事はないでしょう。

サブウーハのローパスフィルタだけはデジタル化したいので、コンパクトで安価なデジタルチャンデバかデジタルフィルタ付きプレートアンプが欲しいですね。業務用はやたら多機能だし、民生用は必要以上にコーオンシツ?を謳った高価なものしかないのが現状です。今の電子技術から考えればイチマンエンくらいで十分にOKなのができると思うのだが。。。

ホンマにソンナにコマケー「オンシツ」が重要なのか?

もっと重要な基本のトコロが随分エーカゲンなまま放ったらかしにされているような気がするのだが。。

そいう部分の方が余程「音楽」を楽しむ上で重要で決定的だと感じるのだが。。。


今後は技術的不明点について、少しずつ解明してゆければと思っています。

何をするにも目的を明確にし、原理をよく理解し、根本からアプローチする事が重要であると思います。

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2012年10月20日 (土) | Edit |
お待たせしました。

今回は振動板の振幅と波形の計測結果をお見せします。

なお当ブログを今回初めて読まれる方は、1つ前の記事を必ず先にお読みください。でないとチンプンカンプンかもしれません。

写真は振幅を計測するための実験君セットアップです。あいかわらず超雑。お仕事の休憩中にチョコチョコっとやるだけですから。。。
test config
iPadのカメラなので写りは最悪ですがご容赦くださいませ。写真のドライバは、マークさんが送ってくださった保護機構(Arrestor)付きの改良型Alpair 10シルバーです。Arrestorとは、早い話が機械的に振幅を制限する(底打ちさせる)シリコン製のストッパです。僕が以前ブリバリっとA10を一台破壊したのを知って送ってくださいました。。。。あれは全く当方のアホなミスで壊れたのですが、他にもブリっとやってしまった方もいらっしゃるようで、ユーザ思いのマークさんは早速この保護機構を採用されたようです。

今回の一連の試験はArrestorの評価も兼ねています。評価の結果、A10のArrestorは丁度良く作動している事を確認できました。今後のロットに順次投入されるのではないでしょうか。ただし、前進側には何のリミッタもありませんので過信はなりませぬよ。1台ずつ大切に組み上げられたドライバです。正しく使いましょう。。。と言える立場ではないですが。。

上の写真でご覧の通り、ドライバを箱に取り付けないオープンエア状態で評価しました。使うのはカメラ、照明、マイクロフォンです。

<計測方法>
ボビンに2mmおきのスケールと三角マークを印刷した紙を貼り付けます。
ラベル1 copy
まず静止状態で撮影し、PhotoShopでスケールの画像からピクセルあたりの長さを計算しておきます。次に正弦波信号をドライバに入力して振動板を上下させてシャッター速度1秒で撮影します。当然画像はブレますが、上死点と下死点では一瞬運動が停止するため、三角マークの残像?が比較的はっきりと写ります。それらの位置をPhotoShop上の座標で読み取って、実際の移動量に換算するという算段。。。。
アーーーーーメンドクサ。。。
でもね。。途中からそんな面倒臭い事しなくても良い事がわかりました。なんと運動中のスケールを目で簡単に読み取れるのですよ。2mm、4mm、6mm...の振幅では、2mmおきのスケールの線が重なってハッキリと見えます。慣れてくると目分量で奇数mmの振幅にも調整できました。楽勝じゃん! カメラは不要ですね。。。今度やる時は1mmおきに長短のスケールを印刷した紙を貼り付けようと思います。。

それでは結果をご覧ください。

1. Alpair 6M 40Hz
Alpai6M 40Hz copy
上の写真はブリブリが始まる直前の状態です。これ以上振幅を上げると、波形の中腹の平らな所が凹み始めて、1周期3山の波形(ハチマル用語の「ブリブリ」)になります。で、このブリブリ一歩手前の状態の写真から読み取った振幅は4.3+4.1=8.4mmでした。つまりA6Mのコイル長=7.2mmを既に超えています。ただし、コイルはまだ完全にギャップの外に飛び出していません(11.2mmを超えると完全に飛び出す)。
ふーーーん。こういう状態だったんだぁ。。。よくわかりました。実験てオモシロイですね。

では振幅の小さい方から見て行きます。
A6M 40 2mm A6M  40 3mm
図中の振幅の値は両振幅(pp)です。A6Mの最大線形片振幅Xmax=1.6mm (両振幅で3.2mm(pp))ですから、右側の3mm(pp)がほぼ線形限界状態に相当します。3次高調波の増加にともなって波形が少し尖り始めています。

A6M  40 4mmA6M  40 6mm
Xmaxを超えて4mm(pp)になると3次高調波成分は2次よりも高くなり、波形は三角形になります。聴感上3次高調波は耳触りです。右側の6mm(pp)はまだコイル長(7.2mm)以内の振幅ですが、波形は大きく変形しています。良質なトーンを得るにはやはりXmax=1.6mm (3.2mm(pp))あたりを正味の限界と考えた方が良さそうですね。

大した事ないように思われるかもしれませんが、次のDaytonウーハの結果をご覧になれば、Xmaxまでまともに振動板を運動させる事がそう簡単ではない事をお分かりいただけると思います。また、50Hz以下の超低域で大信号が入るのはバスドラくらいなので、そのような音ではブリらない限りあまり気になりません。経験上、40Hz/-6dB信号で6mm(pp)程度振動しても実用上は許容範囲であろうかと思われます。

2. Dayton Woofer 40Hz
次にDaytonの13cmアルミコーンウーハ(DA135-8)の結果です。このドライバのコイル長は12mm、ギャップ高は6mm、Xmaxは3mm(片振幅)です。これは一般的に売られている13cmクラスウーハの標準的スペックです。
Dayton 40 3mmDayton 40 4mm
なんだか最初から2次よりも3次が高くて三角形気味です。Xpp=4mmで既に殆ど三角に見えます。

Dayton 40 6mmDayton 40 8mm
Xmaxに相当する6mm(pp)では既に相当歪んでいます。実力的には4mm(pp)程度が限界という感じでしょうか。Xmaxが約半分のAlpair 6Mと大して変わりません。以前の聴感評価では、A6M 2本とDayton 1本がほぼ同等の限界性能でしたし、音質的にはA6Mの方が良好に聞こえましたから、まぁ、こんなもんだと思います。磁気回路の寸法から単純に計算したXmaxだけでは、実力の程は分からないと言えましょう。2つ前の記事に載せたDyanavox製LW5002PPR-S 13cm PPコーンウーハの歪み具合もDAYTONウーハと似たようなものでしたから、このあたりが平凡な13cmウーハの実力と考えて良さそうです。

3. Alpair 10 40Hz
Alpai10 40Hz copy
これは、限界ギリギリの大振幅状態です。これ以上振幅を上げると、例のArrestorにヒットします。薄いブルーの波形がArrestorに接触した時の波形です。この時の写真から読み取った両振幅は7.4+6.3=13.7mmです。A10のコイル長=16mmと最大線形片振幅Xmax=5.5mm (両振幅で11mm)のほぼ中間ですから、Arrestorが効き始める位置としては丁度良いのではないでしょうか。

Alpair 10 40 4mmAlpair 10 40 8mm
右側のXpp=8mmをDaytonの8mmと比べれば、Alpair 10の優位性は一目瞭然です。

Alpair 10 40 10mmAlpair 10 40 12mm
Xmax=5.5mm (両振幅で11mm)に近付くと、さすがに2次成分が目立ってきます。しかし3次成分が2次成分より低いままなので、さほど耳障りではありません。また波形は右方に傾き始めますが、大きく破綻せずにXmax超えの12mm(pp)を経て最終的に上のXpp=約14mmでArrestorにヒットします。僕の常用音量では明らかに過剰性能です。なんだか凄いですね。20kHzまで極めてフラットな特性を持つフルレンジドライバなのに。。。

このようなサイズの振動板を、10mmを超える振幅で、どこにも接触させずに正常に往復させるのは並大抵の事ではないでしょう。ほとんどアクロバティックです。。。これは、ご自慢の超薄スパイダーと非常にソフトなエッジ、それと、ラインに流さず1個ずつ日本人技術者がラボで組み上げるという高い組み立て精度のなせる技と言えます(量産型のCHRはラインに流している。Alpairはガンダムですか?)。先日、「これじゃあ儲からないでしょう?」とお伺いしたとろこ「いゃもう、パッション(情熱)だけでやってるから。。」との事。正に「事」に「仕える」といった感のあるマークさんでした。ナカジマさん、大変ですねぇ。。。Alpairとマークさん、尋常ではないと思います。僕としてはCHRがOEMで大量に売れる事を切に願います。

なお、このように良好な大振幅特性は、元々ブーストを想定したものではなく、常用域のリニアリティとコンプライアンスを徹底的に追究した結果であると思われます。それが僕のブーストコンセプトにたまたま適していたという事でしょう。もしAlpair5を使っていなかったら、このコンセプトには多分辿り付かなかったと思います。だいたい、サブウーハの100Hz以下の低音よりも小さなA5をブーストした低音の方がクオリティが高く聞こえたわけですから。たぶんサブウーハの高調波歪みが高かったのだと思います。平凡なドライバをブーストしても、そらアカンでしょう。。。。F80(多分Xmaxは0.5mm程度)を使っていた頃も、絶対にブーストを試したはずなのですが、記憶に残っていないところを見ると、ちょっとやってみて直ぐに止めたのではないかと思います。

このような実験を重ねるたびに、Alpairというドライバはつくづく特別であるように僕には感じられます。高域性能に注目が集まり気味ですが、Alpairの真価は音楽再生の土台たるべき低音再生クオリティにあると言って良いでしょう。つまり、このような大振幅での優れた特性があればこそ常用振幅域で高いクオリティが得られるという事です。これは、表層的なオンシツを徒に追い求めた小手先の手業ではなく、モノゴトの根本/本質を見据えた真に真当/真正直な技術的アプローチであると言え、そこにこそAlpairのヒミツがあると言えます。このようなアプローチを取らない限り真の「良い」結果(音)には辿り付きません(手業で表層的な面ばかりを追い求めたのではグルグル回るだけなのです)。技術開発とはこうでないとイケマセン。。技術屋としての僕のマークさんに対する尊敬の念はますます高まりました。

次回は密閉箱でArrestorの効果を確認するために行った超ブリブリ限界再生の結果をお見せする予定です。いやぁ。。最初はビクビクもんでしたが、スピーカってそう簡単には壊れないものですねぇ。。。

追記
マークさんに、こんな企業秘密的な情報を公開しても良いのですか?と確認したところ、むしろ積極的に公開を望まれておりました。何でも書け、全部書け。と。。英語版ブログへの掲載もお約束しました。向こうのフォーラムでも驚くほどオープンに情報を公開しておられます。

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