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2013年05月24日 (金) | Edit |
今回は、バスレフ型の低音歪みについての実験君結果をご紹介します。定常歪みだけでなく動的歪みも簡単に評価しました。

バスレフ型では、共鳴周波数で振動板振幅が非常に小さくなる(理論的にはゼロになる)ため、下限周波数における「定常」歪みに関しては密閉型+ブーストよりも大幅に有利です。

今回の実験君では、TONO箱(8L)のバスレフ仕様(共振f=60Hz、吸音材なし)とZAP(2.5Lポチ箱、密閉、吸音材大量)の低音歪みを比較してみました。ドライバは共にAlpair 6Mです。

部屋の影響を最小にするために、マイクは20cmの距離に置きました。周波数特性を正確に揃えるために、どちらもFrieveAudioで60Hzまでフラットにしています。密閉型の60Hzにおけるブースト量は約+9dBです。

音量は以前と同様に、下記のように設定しました。
1) 昼間の標準的ボリュームよりやや高め
標準ピンクノイズで約75dBC(リスニング位置)に設定。PCのボリューム目盛りは32/100
2) ご近所にビクビクしながらかなり頑張ったボリューム
標準ピンクノイズで約82dBC(リスニング位置)に設定。PCのボリューム目盛りは60/100

マイクロフォンを20cm位置に置いたため、グラフの絶対音圧レベルは以前のリスニング位置での計測結果と異なりますのでご注意ください。

それでは結果です。今回は4次および5次の歪みもプロットしています。グラフの色分けは下記の通りです。
Color.jpg

1)標準的音量
上が密閉、下がバスレフです。赤の%値は75dBを基準とする値です。
密閉75
バスレフ75
密閉型は最大ブースト点の60Hzをピークとして2次歪みが増加しますが、全く問題のないレベルです。バスレフ型の歪みは殆どフラットですね。

2)大音量
ドアを閉めていても奥さんから1発でレッドカードを喰らう音量です。PCのボリューム目盛りは1)の約2倍。
赤の%値は85dBAを基準としています。
密閉85
バスレフ85
当然どちらの歪みレベルも全体的に高くなりますが、傾向は1)と同じです。ブーストは60Hzまでなので、Alpair6 M最大の弱点である50Hz以下の3次歪みの急増は見られません。このため、このような大音量でも、以前のヘッドフォンによる聴感評価でガイドラインとして設定した基準(2次は5%以下、3次は2%以下(1%以下が好ましい)、4次以上は1%を大幅に下まわる事)になんとか収まっています。これらの歪みは、以前の記事に書いたように信号処理(メカトロ化すればコスト増殆どなし/ソフトで対処)または小径ウーハを2本プッシュプルで使えば(コスト増あり)大幅に改善できます。バスレフ型では、約150Hzに2次の特徴的なピークが見られますが、原因は分かりません。

下は60Hz/-12dB定常正弦波の再生音響波形です。音量は2)の条件と同じです。つまり2)のグラフの60Hzにおける波形と考えてください。
上が密閉型、下がバスレフ型です。
密閉 SINE
バスレフSINE
密閉型では、2次歪みの影響で波形が上下非対称になっていますが、バスレフ型では信号波形(グレー)と非常に良く一致しています。しかし、波形には明確に現れていませんが、このような大音量になるとバスレフ型ではポートの風切り音がハッキリと聞こえ、非常に耳障りです。聴感的には歪みの大きい密閉型の方が好ましく聞こえなくもありません。このように、バスレフ型の場合、高調波歪みは低くても、大音量ではポートの風切り音が問題となります。

下は、上の波形のFFT解析結果です。
上が密閉、下がバスレフ。
FFT密閉
FFTバスレフ 
バスレフ型の場合、高次の高調波成分が高くなっています。風切り音の影響かも知れません。

以上のように、バスレフ型の「定常」歪み特性は非常に優秀である事を確認できました。
しかし
音楽信号の周波数成分と振幅は極めてダイナミックに変化します。一時たりとも留まらぬ過渡現象の嵐であると言えましょう。従って、本当の歪みは動的に評価してみないと何とも言えません。

そこで、1サイクルの正弦波信号(60Hz/-12dB)を入力した時の音響波の挙動を調べてみました。音量設定は上記2)と同じ(大音量条件)です。以下の図には、信号波形をグレーで示しています。

上が密閉型、下がバスレフ型です。
過渡密閉
過渡バスレフ
密閉型の場合、信号に対して少し遅れますが、信号波形との対応は明確です。しかし、バスレフ型になると、音響波形の各ピークが信号のどのピークに対応するのか良く分からない程大きく変形して(従って歪んで)います。このように、バスレフ型は定常正弦波信号を非常に綺麗に出力しますが、過渡的な信号になると大きく崩れます。綺麗な定常波形がだいなしですね。

バスレフ型の波形を少し詳しく見て見ましょう。
最初に密閉型と同じ遅れで小さな振幅の波形が発生し、ほぼ1サイクル遅れて大きな振幅の波形が続いています。最初の小さな波形は振動板から直接放射される音、大きな波形はその後共鳴が起こってポートから放出される音だと思われます。

最初は無信号ですから、システム(ドライバ+箱内の空気)は全く共鳴していません。このため、振動板は信号通りに動いて音響波を発生し、システムが励起されて共鳴が始まります。その結果、1発目のピークよりも2発目のピークの方が振幅が大きくなっています。2発目の振動板の動きでさらにシステムが励起され、ポートからは3発目のさらに大振幅の音響波が放出されますが、その時点で振動板の運動はほぼ停止しています(信号が無くなる)。その後、放ったらかしにされた箱内の空気はダラダラと減衰しながら振動し、信号停止後も暫く音を放出します。。。と、いった現象が考えられます。あくまでも推測ですよ。

音楽信号は過渡現象の嵐ですから、音楽再生中にこれに近い現象がノベツクマナク発生していると考えられます。

LEANAUDIOの初期では、バスレフのチューニングに散々取り組みましたが、どうやってもバスレフ型で長く音楽を聴いているとだんだんイライラしてきて、ポートに詰め物をし始め、最終的に密閉型になってしまうという事を繰り返しました。これは、このような過渡現象の問題に由来するのかも知れません。僕はジャズを聴く際ピチカートベースを基準に聴く癖があるため、特に低音の過渡的問題には敏感なのかも知れません。

さらにバスレフ型は、ポート自体が共振音を発生し、箱内部の定在波音もポートから放出し、さらに大音量時には風切り音も生じると言った付帯音の多さも欠点として持ちます。これに関しては「音楽再生における付帯的音の現象 - データ編 その1 」で詳しく調べました。

最後にオマケとしてFrieveAudioの位相補正をONにしてみました。
過渡密閉 補正
位相の遅れは殆ど無くなります。しかし、実用状態での補正の効果は、僕には全く感じられません。密閉型では元々遅れが少ないからかも知れませんね。

今回の実験君結果は以上です。この後も、過渡挙動について追加の実験君を予定しています。オッタノシミニ!

追記
ブーストの下限周波数を欲張らずに同じドライバのバスレフ型と同等の周波数特性を達成するだけであれば、小さな密閉ブースト方式で十分に実用的な性能(歪み特性)が得られます。今回は8Lのバスレフ型に対して密閉型は2.5Lでしたが、以前の記事に書いたようにLEANAUDIO方式では箱容積の影響は小さいため、1L程度の箱でも結果は殆ど同じでしょう。バスレフ型の場合、共鳴周波数を保ったまま箱を小さくする事は困難です。1Lで60Hzなんか絶対無理ですから。商品性を高める上で、コンパクト化はトッテモ重要です。

再三申しているように、密閉型ブースト方式はシステムのコンパクト化に非常に有利であり、しかも動的挙動の面でも大きく優れている事がお分かり頂けたと思います。さらに、現象がシンプルである(音は振動板の運動に直接対応する)ため、電子制御による挙動の改善も容易です。メカトロ化により、そのポテンシャルはさらに大きく拡がるでしょう。

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2013年05月22日 (水) | Edit |
今回は、信号処理(DSP)による低音歪みの劇的な改善の可能性を実験君で確かめました。

結果をお見せする前に例によってツラツラグダグダです。スンマセン。読んでやってくださいな。

スピーカというのは極めて単純で原始的な構造を持つ「機械部品」であり、電気信号を音響波に変換する「変換器」としては様々な原理的問題を抱えています。でありながら、この科学技術が進化した21世紀においても、スピーカにはアンプで単純に増幅した音楽信号をそのままブチ込んで「後はスピーカ君よろしく!」と成り行きにまかせているのが現状です(根本的問題に対処しようとせず、微細なオトの違いにティマティマ拘りグルグルするばかり)。

スピカに限らず単純な構造を持つ「機械」とはそういうモノです。「機械」は基本的にアホで単純なんです(インテリジェンスを持たない)。

例えば内燃機関(エンジン)も極めて単純な原理で作動する「機械」であり、特性は速度/負荷とエンジン条件(水温、油温、燃料温度)および周囲条件(温度、気圧、湿度)に応じて様々に変化します。大ムカシは、自動調整機構として簡単な機械式ガバナ程度しかなく、人間が多くの調整を行う必要がありました。しかし現代のエンジンでは、非常に精密な電子制御により、莫大な量の情報を高速に処理しながらエンジンを常に最適な状態で稼働させ、有毒ガスの排出量と燃料消費量をソレハソレハモウ劇的に削減しています。

カメラでも全く同様です。昔は全てが機械式であり、様々な調整は全てヒトまかせでした。しかしカメラは今やレンズの付いたコンピュータあるいはメカトロマシンの感があります。

このように、機械と電子制御を組み合わせる事により、機械の性能、機能、効率を飛躍的に高める事ができます。このようなご時世において、ましてや、長年にわたって「ツイキュ」し「ショージン」し続けて来たオヂオ界において、様々な難儀を抱えるスピーカが未だにほとんど裸同然の機械部品である事には全く驚かされます。ナンデヤネン? ナニ?をツイキュしてきたのか??「音楽再生」ではなく趣味の「ヨイオト?」とやらをグルグル追っかけマーしてきただけか?

再三申しているように、スピーカとアンプとDSP(デジタル信号処理)ユニットを一体のシステムとして構築する事により、スピーカが抱える多くの問題を劇的に改善できます。アンプはアンプ屋、スピカはスピカ屋が別々にツイキュするなんて、もうウルトラ超アナクロですよ。何事もシステム全体で考えないと飛躍的な進化は望めません。 進化とはナニも「オンシツ」だけの事ではアリマセン。コンパクト化、低コスト化、使いやすさも実用道具として「オンシツ」と同等または、オンシツが必要十分レベルに達した後はそれ以上に重要な技術課題です。

オーディオシステムの中で最も多くの難儀を抱えるスピーカユニットの特性に合わせて(あるいは特性を補うように)アンプとDSPを最適化し、スピーカと一体のシステムにしてしまう事により、オーディオシステムの音質を改善しながらサイズとコストを飛躍的に低減できるはずです。これが僕の言う「メカトロ」スピーカです(「メカトロ」とは「メカニズム(機械)」と「エレクトロニクス(電子制御)」の融合という意味ですよ!。今のシステムは原始的な「電気/機械装置」に過ぎません)。(関連記事:こんな装置が欲しいなぁ-3. システムの統合が鍵ですよ! )

今時、電気回路は非常に低コストで高性能ですから、どこの業界でもメカトロ化(さらに進んでインテリジェンス化)はとっくのとおにアッタリマエの技術です。デジタル音源の普及(1982)以来、オーディオ技術がマヂメに進化していれば、多くのヒトビトが家庭で現状よりもずっとお安くお手軽に、ずっと良い状態で「音楽」を聴けるようになっていたはずです。僕がオヂオ界に対して犯罪行為だというのはそう言う意味です。

もちろん、マニア達はこのような進化を嫌うでしょう(トッカエヒッカエできないからタノシクないもんね)。それは自動車界でもカメラ界でも同じです。どの業界でも、マニア達は進化に対して一抹の寂しさを(時には激しい嫌悪感さえ)抱きます。かくいう僕だってライカM2を後生大事に防湿庫で保管していますよ。しかし、良質なオーディオ装置(道具)を必要とするのは、「道具」ソノモノに強い愛着を持つ少数のマニアだけではアリマセン。アッタリマエです。また、どの分野でもマニア達は「ヨイオト?」(趣味性)は求めても「良質な音楽再生」(実用性)を必ずしも求めるわけではありません。マニアはマニアの領域で放っておけばヨロシ。ソレハソレコレハコレです。

さて、そのようなメカトロ スピーカには様々な面で飛躍的な進化を期待できますが、その1つが低音大振幅での歪みの低減です。やっと本題ですね。。。。

例えば、メカトロ サブウーハにそのような技術を適用すれば、「非常にコンパクトなドライバ」を「大振幅」で駆動して「非常に低い周波数まで」「十分な音量で」「低歪みの良質な低音」をリスナに提供できます。アホみたいにデカイ装置は要りません。再三申すようにコンパクト化は非常に重要です。余程の数寄者でない限り、他の分野の製品に比べてどう考えてもブットビ高価で1人では動かせぬようなデカイ装置なんか誰も買いませんて。ホンマニ。多くのヒトビトに良さを納得して買ってもらえる良い品を作らんとアキマセン。

という事で、今回の実験君では、信号処理によって低音歪みを大幅に改善できる事を確認しました。

方法は簡単です。
「スピーカの音響出力に含まれる高調波成分とは逆相の高調波成分を最初から信号に付加する事によって歪みを低減する」というのが狙いです。

信号生成にはいつものWaveGeneを使いました。スピーカはAlpair 6Mです(2.5Lポチ箱)。

下は、補正なし信号(純粋な正弦波信号: 40Hz/-6dB)を再生した時の音響出力です。
3次補正なし 最終 copy
3次歪み率が13.5%もあり、波形は三角を通り越してS字状に歪んでいます。当然ですが、聴感でも明らかな歪みを感じます。

下は波形生成の設定画面です。
3次補正 WG copy
Wave1で40Hz/-6dBを生成し、Wave2で3次(120Hz)を生成しています。FFTを観察しながら、3次歪みが最も小さくなるように、Wave1の位相(図では80°)とWave2のレベル(図では-40dB)を調整しました。この状態で3次高調波成分は2%です。この程度では信号波形は純粋な正弦波とほとんど見分けが付きません。

下が補正済み信号波形を再生した時の音響出力です。
3次補正あり最終 copy
3次歪み率だけが13.5%から0.4%まで激減しました。3次高調波成分の大きさを3/100に低減した事になります。信号では2%しか補正していないのに、出力では大幅に変化する事に驚かされます。波形も綺麗な正弦波に近付いていますね(2次が残っているので上下が少し非対称)。聴感でも、補正をONにすると劇的に音が「静かに」「重く」なります。

次に2次歪みの低減も試してみました。
2次補正WG
補正値は95°/-38dBです。2.5%の2次高調波を追加した状態です。

2次補正あり最終 copy
2次歪み率も0.4%まで激減しましたが、3次成分がそのままなので、見た目の波形はあまり変化しません。聴感の変化も微小です。やはり3次歪みの低減が重要ですね。今までの経験から、100Hzを大きく下まわる超低音の2次歪みは10%くらいまで実用的に許容できるのではないかという気もします。

今回の結果は以上です。

今回は1点の周波数で最適値に調整したため絶大な効果(3/100に低減)が得られましたが、実用化するならば80Hz~40Hzの範囲でまぁまぁソコソコ良好な補正結果が得られれば十分でしょう(1/10の効果で御の字)。補正は極力大雑把かつ最小限に適用する事が肝要です。また、2次歪みはソコソコ許容して3次歪みの低減に重点を置くべきであろうと思われます。

このようなDSP技術が実現すれば、サブウーハを大幅に小型化でき(例えば2”ウーハとか)、小さなドックシステム等の低音再生性能を飛躍的に改善できるはずです。

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2013年05月20日 (月) | Edit |
Alpair 6を使ってポチ箱(約2.5L)とTONO箱(約8L)で低音歪みを比較してみました。

今回は、部屋の影響を極力抑えるためにマイクの距離を20cmにしています。また、前回までの結果は2本のスピーカで音を出しましたが、今回は1本のスピーカだけです。音圧の絶対レベルは今までの結果と直接比較できませんのでご注意くださいませ。ボリューム設定は前回までの82dBC/標準ピンクノイズ(2スピーカ)と同等以上です。

以下、計測結果です。いつも通り赤が2次、紫が3次です。全てFrieveAudioで40Hzまでフラットに補正しています。

2.5L ポチ箱 (吸音材タップリ)
ZAP_20130520143555.jpg
スムージングを強く効かせたグラフと重ねています。以下のグラフでは見やすくするために全てスムージングを強く効かせています。

8L TONO箱
まず、吸音材あり/なしを比較しました。
吸音材ありなし
吸音材タップリ(2次は青、3次は水色)と吸音材なし(2次は赤、3次は紫)で低音歪みは殆ど同じです。今回の結果を見る限り、吸音材の量は低音の2次/3次歪みに殆ど影響しないと言えそうです。

ポチと吸音材なしのTONOを重ね合わせて比較します。

2次
ZAP TONO 2nd
赤がポチ(2.5L)、青がTONO(8L)です。なんとも言えませんね。。。

3次
ZAP TON 3rd
紫がポチ(2.5L)、水色がTOTNO(8L)です。小さなポチの方が3次歪みが小さいですね。
他の条件でもテストしてみましたが、やはり2次歪みは余り変化せず、3次歪みは小さなポチの方が明らかに低下していました。

今回の結果から、どうやら2次歪みは容積によって余り変化せず、3次歪みは小容積の方が有利であると言えそうです。これは意外でした。容積が小さい方が空気バネの力が強く働くため(つまり振幅波形は頭打ちになりやすいため)、反対の結果を予測していました。歪みの観点からは、容積を敢えて大きくする必要は無いといって良さそうです。

通常、密閉型の箱容積を大きくすると共振周波数が下がってロールオフを低周波側へ延ばせます。従って古典的密閉型では巨大な箱を必要とし、同じロールオフ周波数を得るにはバスレフ型の方が箱を小さくできると言われて来ました。 オヂオの教科書にもそう書いてあると思います。

しかし、デジタルイコライザを前提とするLEANAUDIO方式では吸音材をタップリと充填して共振効果を殺してしまうため、密閉型の容積は重要では無くなります。また、密閉型である以上、共振を利用しようが(つまり小さな信号で大きな振幅を得ようが)、信号ブーストしようが(つまり信号を大きくして大きな振幅を得ようが)、出力音圧レベルが同じであれば振動板振幅は全く同じです。ですから、デジタルイコライザで同じF特に揃えて比較すれば、低音の歪み率は容積が違ってもそれほど劇的には変化しないであろうと予測できます。今回の結果は、この予測を裏付けるものであると言え、理由はよく分かりませんが容積を小さくした方が3次歪みが低下する傾向にあるという事も分かりました。

現在、ZAP馬鹿ブーであれば合計5L、ZAP 2.1であれば合計9Lで、それぞれの音量限界の下に40Hzまたはそれ以下まで全くフラットな周波数特性で音楽を再生できます。これらの容積はまだ小さくできそうです。

共鳴効果を利用するバスレフ型の場合、共鳴周波数を下げて40Hzまでフラットに再生するには、それなりに巨大な容量と巨大な(重い)ウーハを必要とします(「JBLモニタシリーズをネタにバスレフ型のサイズについて考える 」参照)。そして、どんなに小音量しか必要でなくても、下限周波数を低く保ったままサイズを小さくする事はできません。低音までキチンと再生して音楽を存分に楽しもうとすると、小さなお部屋で近距離で聴く場合であっても巨大な、1人では移動もできないようなソーチが必要になるという事です。ソンナアホナコト、オマッカイナ。。そして、そのような巨大装置は近距離/低音量で聴くには適しません。設計時の想定音量は相当大きいはずです。どのような機械にも設計時に想定する最適動作レンジというものがあります。

再三申しているように、一般家庭で音楽を日常的に快適音量で愛聴するにおいて、そんなに大爆音は不要です。ホンマニ実用的なレンジで最適設計された、音楽の下限周波数まで高いクオリティの再生音をリスナの「耳」まで届けられる、真の音楽再生装置をマヂメに小さくお安く誰でもお気軽に使えるように作らんとアカンと思います。それがホンマの技術です。でないと、ヘッドフォンばっかりが売れるでしょう。

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2013年05月18日 (土) | Edit |
今回の実験君では、2次歪み低減テクニックとして知られる「プッシュプル方式」を試してみました。

プッシュプル方式についてはコチラの記事をご覧ください。
この方式は以前Alpair10で試したのですが、明確な効果を確認できませんでした(コチラの記事参照)。その時は40Hz一点で簡単に評価しただけでしたので、今回はAlpair 6を使ってスイープ方式で評価してみました。

実験君セットアップです。
PP Pic
右側のドライバを前後逆向きに取り付けました。

簡単に原理を説明しておきます。
2次歪みは、振動板に働く磁力と機械的バネ力が前進方向と後退方向で対称にならないために発生します。プッシュプル方式は、2つのユニットを互いに前後逆向きに取り付ける事によって、そのような前後の非対称性に由来する2次歪みを相殺する事を狙いとします。この場合、左右のユニットは逆の極性で接続する必要がある事に注意してください。

さて結果です。
グラフには2次と3次だけをプロットしました。見にくいですが、赤が2次、紫(マゼンタ?)が3次です。

まずノーマル状態
pp OFF

右側のドライバを逆にしたプッシュプル状態
PP ON
プッシュプルにすると65Hz付近の2次のピークが激減(というか消滅)します! メッチャ効果あるやん!

Alpair 10でももっと真面目に実験君すれば良かったですね。ホンマ、セッカチ君やから。

グラフを重ね合わせて見ました。
2次
PP 2nd effect
赤がノーマル、青がプッシュプル。2次歪みのピークは激減!

3次
pp 3rd effect
紫がノーマル、水色がプッシュプル。3次は少し増える傾向かもしれません。

Alpair 10でも、あの特徴的な50~70Hzの2次歪みの山を大幅に削減できるかもしれません。ウーハをダブルにするだけでも効果がありますし、元々3次は低いですから、プッシュプルがうまく働くと素晴らしい歪み特性を達成できるでしょう。そうしたら、もうカンペキですよ。カンペキっ!カンペキのペキちゃん!。。。。でも、通常の音量ではノーマルでも歪み特性は非常に良好ですから、実用的な効果は殆ど感じられないでしょう。超オーバースペックですからね。。。。まぁ、しかし、Alpair 10が1個余っている事だし、気が向いたら再挑戦してみたいと思います。ソノウチね。。。

追記
以前のAlpair10のトライでは40Hzでしか評価しなかったため、判断を誤ってしまったようです。セッカチ君はイケマセンね。反省。。。

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2013年05月17日 (金) | Edit |
今回は、Alpair 6Mの馬鹿ブースト方式での歪み計測結果をご紹介します。

久々の馬鹿ブーストです。サブウーハをデジタルフィルタで帯域分割するようになってからは、馬鹿ブースト方式を全く使わなくなってしまいましたからね。

今回のデータは全てサブウーハOFF/帯域分割フィルタなしです。このシンプルさとコンパクトさが馬鹿ブースト方式の真骨頂。さて、歪みの方は如何ほどか?

まずはFrieveAudioでのF特データ
A6 Baka Frieve
青が補正なし、赤が補正ONです。160Hz近辺のディップは部屋の影響です。スピーカに近付けば、このディップは完全に無くなります。僕の経験によると、このように1オクターブより十分に狭い急峻なディップは余りクリティカルではありません。FrieveAudioの補正係数は平滑化しているため、補正ONでもこのディップは少し残ります。

1) 標準ボリューム
まずは標準的ボリューム(標準ピンクノイズで75dBC)でのデータです。
上がAlpair 6M馬鹿ブースト、下は以ZAP 2.1の結果
A6 Baka 75dBC copy
ZAP 75dBC 32
赤ラインの歪み率(%)は67dBを基準に計算しています。馬鹿ブーでは、さすがに2.1に比べると全体的に歪みレベルが高く、50Hz以下で3次の方が2次よりも高くなり、40Hzで3次は2%を超えています。しかし、この程度の歪みであれば、40Hzまでフラットに補正してもマドンナのズンドコビートに問題を感じません。ブースト量は40Hzで約+17dBです。

そもそも2.1システムは「春の祭典」の超絶バスドラをヤッツケヨーという意地と、FrieAudio以外のソース(ラジオやiTuneやCD/DVD)でもLENAUDIOクオリティで聞けるようにと着手したものです。馬鹿ブーでも常用音量域における実用状態では特に問題を感じませんでした。実際、2.1システムにプレートアンプ内蔵のアナログフィルタを使っていた頃は、低音ビートに微妙な違和感を覚えたため、気持ちの良いビートを聴きたいジャズには専ら馬鹿ブーを愛用していました。その事から考えても、今回の歪みデータは「まぁ、コンナモンヤロ」と納得の行くレベルであるように思えます。

しかし、デジタルで帯域分割するようになってからは、自然と2.1方式に手が伸び、馬鹿ブー方式は全く使わなくなってしまいました。低音の歪みの少なさと、ドップラ歪みによる高音域の音質劣化といった面で2.1方式の方が「音楽を聴きやすい」のかもしれません。比較してしまうと、デジタル帯域分割2.1方式の方が総合的クオリティが高いという事なのだと思います。現在のZAP 2.1には全く満足しています。

2) 標準ボリューム+7dB
家族やご近所様を憚る音量です(標準ピンクノイズで約82dBC)。
同じく上がAlpair 6M馬鹿ブー、下が2.1 ZAPです。
A6 Baka 82dBC copy
ZAP 82dBC 60
さすがに馬鹿ブーでは50Hz以下で3次が激増し、40Hzで約10%に達しています。もうブリブリ寸前。これはアキマセン。ただし、欲張らずにブーストを60Hz(+9dB程度)までにしておけば、かなりの音量まで十分に使えそうです。非常に小径/小型のシステムで60Hzまで全くフラットに位相の乱れなく、しかもマンションの6畳間であれば周囲を憚るほどの音量で再生できるのですから、魅力的なポテンシャルを備えていると言って良いでしょう。 8cmクラスドライバであれば、下限周波数は60Hz程度にしておいた方が無難でしょう。

それにしても、Alpair 10の3次歪みの少なさは素晴らしいと思います。僕の使用環境では2.1 ZAPはオーバースペック気味ですが、Alpair 10を2本使って馬鹿ブーまたは2.2ch方式 (2~3"フルレンジ+ Alpair10)方式にすれば、ウーハが1本の2.1方式よりも低音再生にさらに余裕が得られます(同一音量であれば歪み率は低下する)。それでも音量が足りなければ、ウーハの数を単純に増やせば済みます。また、60Hz近辺の特徴的な2次歪みの増加を抑える事に成功すれば、もう完璧でしょう。プロ用モニタヘッドフォン並(3次歪みの低さを考えればそれ以上)の低音が得られます。一家に一台Alpair 10ですね。

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2013年05月16日 (木) | Edit |
今回はSONYの最高級モニタヘッドフォンMDR-Z1000の歪み測定結果をご紹介します。

このヘッドフォンは、スタジオ向けのプロ用モニタヘッドフォンで高い実績を誇るSONYの最上級モデルであり、メーカは「スタジオユースでの厳しい要求に応えるリファレンススタジオモニター」と謳っています。業界標準器的なMDR-CD900STがスタジオでの録音現場で使われるのに対し、MDR-Z1000は最終的なマスタリング等での使用を想定しているとかイナイトカ。まぁ、とにかくZAPシステムを評価するための基準として全く不足は無いと言って良いでしょう。

計測方法は簡単です。左右のパッドをピッタリと合わせて、隙間からマイクロフォンを突っ込んだダケ。パッド同士を強く圧着させると低音レベルが上がるため、実際の装着時の状態からかけ離れぬよう、パッドを押さえる力は最小限としました。

下はMDR-Z1000での測定結果です。
HeadPhone copy

比較のために前の記事の「標準ボリューム+7dB」を再掲します。
ZAP 82dBC 60

音圧レベルは共に約75dB @40Hzです。図中の歪みレベル(%)を表す赤ラインは75dBを基準として計算しています。あくまでも約40Hz(約75dB)を基準とする参考値として考えてください。僕が実用的音楽再生の下限周波数と考える40Hz一点に限って言えば、耳位置で同じ音圧(75dB)で比べた場合、ZAP 2.1とMDR-Z1000の歪みレベルは全く同等であると言えます。

なお、どちらもマイク手持ちのエーカゲンな計測であるため、グラフの細かい凸凹は計測のたびに結構変化します。ただし全体的なレベルは何度計っても安定していますので、コマケー事は気にせずに大まかなレベルを見比べてください。今回の結果を大雑把に見る限り、ZAPシステムの低音歪み(リスニング位置)はモニタヘッドフォンに比べて遜色のないレベルにあると言って良さそうです。これは日頃普通に使っていて感じていた事でもあります。

データの信頼性が未だ良く掴めていないため、細かい事象について確たる事は言えませんが、下記の2点が注目点として挙げられます。
1)全体的にZAPは2次歪みが高いものの3次歪みは低い(これはAlpair 10に負うところが大きい)
- ヘッドフォンでは約40Hzまで3次歪みの方が2次歪みよりも高く、3次歪みは1%を超えている
2)ZAPでは2次の60Hzあたり(つまり120Hzあたり)に何らかの共振現象が生じている可能性がある
- 正弦波周波数を段階的に変化させながら観察すると、明らかに60Hz前後でスピーカボックス全体の振動が増加する事から、何らかの共振現象が生じていると考えられる。これがユニット単体による現象なのか、ボックスおよびスタンドを含めた全体的な現象なのかは今のところ不明。実用状態で特に問題を感じないが、2次歪みを大幅に改善できる可能性は十分にありそう。

まぁ、コマケー事は置いといて、ZAP 2.1君の低音歪み(リスニング位置)はプロ用モニタヘッドフォンに比べて遜色ないレベルにあるという事を確認できました。いとウレシ。。。次回はZAP馬鹿ブー君を評価してみます。オッタノシミニ!

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2013年05月13日 (月) | Edit |
家内が出かけたの見計らって、DAYTONの計測システムでZAP 2.1ch君の歪み特性を手っ取り早く計測してみました。

計測はリスニング位置(距離約75cm)です。マイクは手持ち。相変わらずエーカゲンです。
音量設定には業界標準の-18dBFSrmsピンクノイズを使いました(詳しくはコチラの記事参照)。ピンクノイズは2つのスピーカで再生。再生ソフトはFrieveAudio。補正は全てOFF。ICON AMPのボリュームは1/2。

音量設定は
1) 昼間の標準的ボリュームよりやや高め
標準ピンクノイズで約75dBCに設定。PCのボリューム目盛りは32/100
2) ご近所にビクビクしながらかなり頑張ったボリューム
標準ピンクノイズで約82dBCに設定。PCのボリューム目盛りは60/100

DAYTON計測システムでは歪み計測用に-12dBのスイープ信号(R/Lモノラル)を使います。
「春の祭典」の超絶バスドラ(約40Hz/-6dB)を除けば、僕のコレクション中で低音信号レベルの最も高いマドンナのズンドコが約45Hz/-12dBです。通常のジャズやクラシックの超低音レベルは、マドンナよりもずっと低いので、-12dB信号でOKであれば実用上全くOKと言えます。また、マドンナの曲はコンプレションを効かせているので、再生時のボリュームは標準よりも絞ります。ソンナコンナを鑑みれば、このテストで良い結果が出れば大概のソースで実用上全くOK!と言えそうです。

では結果です。

グラフの色分けは以下の通りです。
Color.jpg
2次:赤、3次:紫、4次:緑、5次:水色、2~5次の合計:青

1) 標準ボリューム
ZAP 75dBC 32
2次(赤)が支配的なので2~5次(青)と殆ど重なっています。
2次歪み率は2%以下、3次歪み率は0.8%以下しかありません。
マイク手持ちという事もあり、計測するたびにグラフの凸凹が微妙に変化しますが、何度計ってもこのレベルでした。結構ヨロシーのではないでしょうか。

2) 標準ボリューム+7dB
ZAP 82dBC 60
2次が5%に達しましたが、3次の歪みはほとんど増えずほぼ1%以下を維持しています。これがAlpair10の凄いトコロと言えましょう。ブリッと完全に破綻するまで(Arrestorにヒットするまで)、3次は決して急増しません。前の記事の正弦波による聴感評価に基づくと、まだ許容範囲内にあると言えます。特に3次歪みが殆ど増加していないため、聴感的にはまだまだ余裕がありそうです。

Alapir10に比べればかなり低音歪み(特に3次)の多かったAlpair5および6の馬鹿ブーでも十分に実用に耐えた事から、様々な周波数成分を含みダイナミックに変化する実際の楽曲音では、純粋な定常正弦波で比較試聴するよりも聴感上の歪み許容範囲はかなり拡がると思われます。いずれにせよ、ZAP 2.1は僕の実用条件において全く十分、というかオーバースペックであるとすら言えるでしょう。Alpair6 4本使いくらいで丁度良いかも知れません。

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2013年05月13日 (月) | Edit |
低音の実験君をしていると、家族から気分が悪くなるからヤメロ、とレッドカードが出てしまいました。部屋のドアを閉めていても40Hzにもなると筒抜けみたいです。実験君は誰も居ないときを見計らってやるしかありません。またマンションのご近所様にも迷惑をかけないよう、音量は控めにしたいと思います。

という事で、今回は市販スピーカの歪みってどんな具合なの?と調べてみました。

民生用製品では殆ど特性データが公開されていないようですが、プロ用モニタスピーカ製品に関しては比較的詳しいデータがいくつか見つかりました。今回は、JBLモニタのデータをご紹介します。といっても、あのブルーバッフルのやつではなく、以前の記事(コチラ)で紹介したDSP内蔵メカトロ式のJBL LSR4300シリーズです。型番は同じ「43##」ですけどね。詳しくは製品サイトをご覧くださいませ。

JBL_20130513065451.jpg
これは16cmウーハ搭載のLSR4326Pですが、他に20cmウーハ搭載のLSR4328Pがあります。

下がカタログに掲載されていた歪みのデータです。
JBL4326 copy JBL4328 copy
左が16cmウーハの4326、右が20cmウーハの4328です。
共に上段は96dB/1m、下段は102dB/1mで計測されたデータです。
歪み率の縦軸の値は+20dBされていますので注意してください。
図には赤で大まかな歪み率(%)を示すラインを追加しています。上から約2.8%、1.6%、0.9%です。
バスレフ型なので、共鳴周波数の近くでだけ急激に歪みが低下しています(共鳴点では振動板振幅が小さくなるため)。

計測時の音量は1mで96dBおよび102dBですが、これらは一般家庭での標準的な音量に比べると巨大です。また、スタジオでニアフィールド モニタとして使う場合、以前の記事に書いたように彼らも常識的な音量(80dBAを大きく超えない音量)でモニタリングしているようですから、こんなに大音量では使わないはずです。大切な商売道具の耳が壊れますからね。そのような常用音量域では2次も3次もこのデータよりずっと低いでしょう。

下は以前の記事で紹介したリスニング距離と音圧レベルの関係を示すグラフです(関連記事はコチラ)。
ds-303(8)_20130513070909.jpg
図には部屋の広さを表す「畳」が示されていますが、これは壁に背中をはり付けて聴いている状態に相当し、現実的ではありません。例えば12~16畳であれば3~4mくらいの距離が現実的でしょう。図では3m離れると音圧レベルは1mから約10dB低下しています(距離2倍で-6dB)。しかし、これは無響室または開放空間での特性であり、実際の部屋では反射を伴うため、この傾きはもっと緩やかになるでしょう(特に低音は)。

という事で、1mの距離で96dBまたは102dBというのはかなり大音量状態である事に注意してください。僕の普段のリスニング音量設定(楽曲でmax 80dBA程度)だと、-12dBのスイープ信号を使ってF特を計測した場合の音圧レベルは75dBを超えません。歪み率を評価する場合は音量の設定に注意が必要です。当然ですが、実用音量レベルでの歪み率を評価しないと意味がありません。

上段の96dBのグラフで2つのスピーカを比較してみます。
この場合、小径ウーハと大径ウーハを同じ音量レベルで比較する事になります。
小径の4326では2次よりも3次の方が高く、100Hz以下で3次は1%を超え、下限周波数では2%に達しています。対して、大径の4328では3次は全域で1%以下と良好ですが、2次は4326よりも大きくなっています。両者でTHD (全高調波歪み)は余り変わらないかもしれませんが、前の記事に書いたように、聴感的には4328の方が好ましく感じられるはずです。そもそもウーハのサイズが違うのに同じ音量で比較すれば、小径の4326が不利になるのは当然です。小径のウーハで大径のウーハと同じ音量の低音を出そうとすると、振動板の振幅が増加するからです。そして振幅が磁気回路の線形限界(Xmax)に近付くと3次が急増します。上段の96dBと下段の102dBを比べれば、音量が増加すると歪み率もテキメンに増加する事が分かります。特に4328の3次の増加が顕著です。

同一音量であれば、基本的に大径ウーハの方が歪み率は小さくなります(振幅が小さくなるため)。歪み率は実用音量域で評価する必要があります。10cmウーハを非現実的な大爆音で評価しても意味がありませんし、38cmウーハをニアフィールドレベルの小音量で評価しても意味がありません。

再三申しているように、密閉型を基本とするLEANAUDIO方式の場合、再生下限周波数は振動板のサイズに依存しません。振動板サイズは必要音量によって決まります。この場合、音量(リスニング距離)に見合ったサイズのスピーカを選択する事が重要です。基本的に振動板は小さい方が音質面(特に剛性面、動的レスポンス、アンプの負担)はもちろんコスト面および設置スペース面でも有利だからです。その究極がイヤフォンです。ニアフィールド/小音量で聴くのに大径ウーハは不要です。十分に低い下限周波数(例えば40Hz)まで良好な歪み率(例えば3次が1%以下)を維持できるならば、できるだけ小径のウーハを選ぶべきでしょう。

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2013年05月11日 (土) | Edit |
暖かくなると実験君の虫が動き始めるようです。

前の記事で、「リスニング位置における40~10kHzの周波数特性」が音楽再生における第一等の重要特性であると述べました。

これに次いで重要なのが、「低音領域(100Hz以下)の歪みと遅れ」です。100Hz以下と限定するのは、それ以上の周波数領域では、今時の真面目に作られたオーディオ用スピカであれば安価な物でも十分な性能(再生クオリティ)を有しているからです(主に「コノミの問題」という事)。

今日の音楽再生装置において、最も不完全であるのが100Hz以下の低音再生です。オーディオ技術者は、全力をあげて世の全ての家庭用音響装置で、たとえ安価なTVの内蔵スピーカや小さなドックシステムであっても、音楽を聴くに十分な低音を正しくリスナの耳に届けられるよう取り組まなければアキマセン。もう21世紀ですからねぇ。。。

一般的に再生音の「歪み」と言う場合、一定周波数の定常正弦波信号を入力した時に出力音に含まれる高調波成分の割合(「定常的な歪み率」)を指します。つまり周波数ドメインでの評価です。これに対してタイムドメイン的に評価する「遅れ」は「動的歪み」と言えるかも知れません。特に遅れが「時間的に」大きくなる超低音領域では、本当の「歪み」(ソース音からの乖離度合)は、最終的に動的に評価しないとホンマの事は分かりません。でも、動的評価はトッテモ面倒クサイので後まわしにして、まずは「定常歪み」について考えてみます。

多くの場合、歪み(率)はTHD (全高調波歪み)という1つの値で表されます。これは「高調波成分全体の基本波成分に対する比」を意味します。説明はメンドクサイのでコチラを参照してください。しかし、音楽再生においては、このTHDを鵜呑みにするのは非常に危険です。何故ならば、THDは高調波の全ての次数成分を同じに扱いますが、実際には高調波の次数に応じてヒトに知覚される歪み感が異なるからです。THDの値が同じでも、2次成分が多いのか3次成分が多いのかによってヒトには異なって感じられるという事です。また、一般的に奇数次数が強いとヒトは不快に感じるとも言われます。

一体全体、低音に含まれる各次数の高調波成分はどの程度以下であればヒトは「まぁエーンチャウ?」と感じるのでしょうか。僕の今までの経験によると、波形を見てまぁ概ねサインカーブやねっと感じれば、音の方もまぁ概ね正弦波音に聞こえました。なので波形の観測を重視し、「何次高調波が何%」という数字は余り重視しませんでした。しかし、それでは一般的な指標となり得ません。そこで今回はより具体的な指標値を得るために、波形生成ソフトウェア(WaveGene)で各種の高調波成分を含む正弦波を生成し、モニタヘッドフォンで聴き比べて見ました。

左は50Hz/-6dBの正弦波に2次成分(100Hz/-20dB)を加えた波形、右は3次成分(150Hz/-20dB)を加えた波形です
2nd -20 3rd -20
どちらもTHDは約20%に相当しますが、耳には3次成分を加えた方が明らかに元の正弦波音から大きく異なって聞こえます。僕の経験では、100Hz以下の低音再生において最も厄介に感じられるのが3次高調波です。2次高調波は多少多くても余り気になりません。また、4次以上の成分は元々それ程大きくありません。

という事で、以下では、どの程度まで高調波成分が増えると「明らかに歪んでるヤン(正弦波音とチャウやん)」と感じられるのか、モニタヘッドフォンで聴感評価してみた結果をご紹介します。

基本周波数(40/50/70/100Hz)のレベルを-6dBで固定し、2/3/4/5次の高調波成分を-80dBから-60/-40/-30/-20dBと増やして行き、どの時点で明らかに正弦波の音とチャウ(明らかに歪んでいる)と感じるのかを確認しました。本当はもう少し細かく高調波のdBを変化させたかったのですが、ソフトウェアの都合上できませんでした。なお、基本周波数が変わっても歪みを感じ始める条件は同じでした。以下では50Hzでの波形を載せています。

高調波成分のdB値と歪み率の関係は以下の通りです(基本周波数成分は-6dB)。
-80dB = 0.02%
-60dB = 0.2%
-40dB = 2%
-30dB = 6.3%
-20dB = 20%

以下、各次数での結果です。

2次
左は-30dB、右は-20dBです。-30dBはOKと感じました。-40dBから微妙に音は変化しますが、単独で聴けば余り違和感を覚えないと思います。-20dBは明らかに歪んでいると感じました。これはアキマセン。
2nd -30 2nd -20

3次
左が-40dB、右が-30dBです。-40dBは-60dBからの音の変化をかなり明確に知覚できますが、まあぁギリギリOKかな?。-30dBはNG。お馴染みの三角波形です。
3rd -40 3rd -30

4次と5次
左は4次/-30dB、右は5次/-40dBです。共にNGです。
4th -30 5th -40

以上の結果を歪み率に換算すると下記のように言えます。
2次: 2%はOK、6.3%はまぁまぁOK、20%はNG
3次: 2%はギリギリOK、6.3%はNG、20%は全くNG
4次: 0.2%はOK、2%は微妙
5次: 0.2%はOK、2%はNG

以上から、ごく大雑把な目標値は下記のようになるでしょうか。
2次は5%以下
3次は2%以下(1%以下が望ましい)
4次以上は1%を大幅に下まわる事


次回は、ZAPシステムでの定常歪みの計測準備に入ります。オッタノシミニ!

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