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2013年06月06日 (木) | Edit |
西洋音楽のスペクトル分布は日本古来の雅楽等とは異なり低周波数ほどパワーが高くなる「ピラミッド型」であり、低周波の聴覚感度が低い人間はそれを「カマボコ型」の周波数分布で聴いている。。。というオハナシ。

これについては、以前の記事でソース信号のスペクトル分布を使って解析しました(「音楽のフォルム(続き)」参照)。雅楽を含む楽曲信号のスペクトルに関しては、「音楽のフォルム」と「低音再生の重要性を考える、シツコイけど」も参照してください。

今回はDAYTONの解析ソフトを使って、リスニング位置で実際に聞こえる再生音のスペクトルを確認してみました。この解析ソフトでは、スペクトルの計測にAフィルタの特性(人間の聴覚感度特性)を適用できるため、とても便利です。

FrieveAudioで帯域分割して30~20kHzを完全にフラットに補正して再生しました。マイクはリスニング位置です。

まず、A特性で補正していない生のスペクトルです。
音楽F特 copy 2
黒のラインが2本あります。下がバックグラウンド、上が各種の規格で音量調整の基準に使われる標準ピンクノイズ(-18dBFS(rms))です。赤がベト5(冒頭のジャジャジャジャーンのジャーン)、青がマイルスのRiot(ベースが比較的強いパート)、ピンクがマドンナのBad Girl(ノベツクマナクこんな感じ)です。アンプのボリューム設定は全て同じです。

どの楽曲も帯域の中央部ではピンクノイズの傾きにほぼ沿った右下がりの分布を示します。この-18dBFS(rms)ピンクノイズが各種の規格で再生音量の基準信号として使われるのも頷けます。

ピンクノイズとは、パワーが周波数に反比例(1/ f)する雑音の事です。つまり、周波数に反比例して音の大きさは小さくなるという事です。音に限らず、自然界の様々な現象はこの「1/ f ゆらぎ」に即するとされ、海の波、風、我々の脈拍の変動、さらに高速道路の自動車の分布も「1/ f ゆらぎ」に従うと言われます。

我々人間は1/ f ゆらぎに即した現象を自然あるいは快適と感じると言われます。ベトさんであれマドンナさんであれ、我々人間が楽しめるように作られた音楽のスペクトルは自然界の法則に近いと言えるかも知れません。また、西洋音楽が民族や文化圏の壁を越えて世界中で普遍的に愛聴されているのも、このように自然の法則に則しているからかも知れません。なかなか興味深いですね。

という事で、西洋音楽のスペクトル分布は、ほぼ「1/ f 」に即した低音ほどパワーの強い「ピラミッド型」の構造を持ちます。

なお、自然に囲まれた静かな環境であれば、暗騒音も1/ f に近い分布を示すはずですが、我が家のすぐ近くには交通量の多い道路があるためか、30Hz付近にピークが現れています。このピークは車の通過に伴って結構フラフラと変動するようです。今回は交通量の多い日中に測定しました。普段ゼンゼン気にしていませんが、常に低周波音を聴かされている事になりますね。老後は田舎に住みたいナァ。。。。

下は、上図に人間の聴覚感度に相当するA特性のフィルタを適用した場合のスペクトルです。つまり我々人間にはこのような感じに聞こえているという事です。下に各種楽器の帯域も併記しました。
音楽F特 copy 3 copy
ベトさんであれマドンナさんであれ、500~700Hzを中心としてほぼ左右対称の「カマボコ型」分布を示しています。

この分布を見れば、いわゆる40万ヘルツの法則(音楽再生の下限周波数と上限周波数の積が40万であれば、音楽はバランス良く聞こえるという法則)は理にかなっている事が分かります。この法則に従えば、100Hz~4kHzが音楽の中核を成す主要帯域(この帯域をしっかり再生すれば音楽は結構楽しめる)、100Hz以下がハーモニーの土台を成すキー帯域、4kHz以上が音楽の表情を豊かにする倍音帯域と考えても良いかもしれません。

僕はサブウーハのクロス周波数を今までイロイロ試してみましたが、いつも100Hz近辺でのクロスに落ち着きます。100Hz~4kHzでは帯域分割したくないナァ。。。。というのが僕の直感です。なので、フルレンジスピカを基本とし、必要に応じてその上下をスーパツイータなりサブウーハで増強するのが良かろうというのが、僕の基本的考え方です。

以上のように、僕達が普段聴いている西洋音楽は、ベトさんであれマドンナさんであれ1/ f に近い低音ほどパワーが高くなる「ピラミッド型」のスペクトル分布を持ち、僕達人間はそれを500~700Hzを中心としてほぼ対称形を成す「カマボコ型」のプロフィールで聴いていると言えます。

勘違いされやすいようですが、西洋音楽はピラミッド型の構造だから装置の特性も右下がりのピラミッド型にすると良いとか、あるいはカマボコ型だから装置の中域を盛り上げると良いと言う事ではありません。

演奏者なり指揮者なりが、鍛え抜かれた感覚と、教会音楽を発祥として何百年もかけて洗練されてきた基本法則に従って、「エー具合」に聞こえるように演奏するとこのようなスペクトルになり、ジャズだろうがロックだろうがヒップホップだろうが、やはりその基本法則の流れをくむ現代のアーチスト達がスタジオでフラットな特性のモニタスピカを聴きながら「エー具合」に聞こえるよう調整すると、やはり自然にこのようなスペクトルになるという事です。

リスニング位置でフラットに再生して始めて、彼らが作った音楽を上記のような本来の調和/バランスで「エー具合」に聴く事ができます。

また、人間の耳の特性はフラットではないからフラットに再生したのでは不自然に聞こえるというのも、全くスットコドッコイな大間違いです。当然ですが、音楽家達も人間である以上、我々と同じような聴覚感度特性を持つ耳で聴きながら「エー具合」に音楽を作っています。そこのところ、くれぐれも誤解無きよう注意が必要です。

以上を重々理解した上で敢えて基準状態から変更するのは全く個人の自由でありコノミノモンダイですが、何をやるにせよ原理を理解した上でやるのと、そうでないのとでは大違いです。僕だって、気分や体調に応じて多少は調整しますよ。

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2012年06月02日 (土) | Edit |
常識的サイズの一般家屋の部屋では、定在波の影響はほぼ500Hz以下で顕著に生じると考えて良さそうです。今回は、可聴帯域のほぼ全域を使う西洋音楽において、500Hz以下の領域がどのような位置付けにあるのかについて調べてみました。

まず、おなじみの代表的楽曲の周波数分布です(参考記事1参考記事2)。
ベトベン交響曲第5番第一楽章
bet5 copy

マドンナ Bad Girl
mad copy

青の領域が40~500Hz(暗い部分は40~100Hz)、黄の領域が500~10kHzです。緑の太線はラウドネス特性で補正した周波数分布を表します。つまり、人間が耳で実際に感じている音の大きさの周波数分布だと考えてください。なお、これは90dBを基準とする特性で補正していますが、音楽を聴く場合の一般的な快適音量である70~80dBを基準に補正すると、マドンナの補正特性は、もっと水平に近くなると思われます。また、ベト5のCDの信号周波数分布は、実際のホールの中央席付近で計測された生演奏の周波数分布と極めて良く一致している事も付け加えておきます(参考記事)。

以前にも書いた通り、我々が普段聴いている西洋音楽は、ベトベンであれマドンナであれ、ほぼ40Hzと10kHzの間で、高い音あるいは低い音に極端に偏る事なく、概ねバランス良く「人間の耳に聞こえるように」作られています(ズンドコのマドンナですら)。このため実際の(演奏またはソースの)音の大きさの周波数分布は、クラシック、ジャズ、ロック、ポップに関係なく、人間の耳には聞こえにくい低周波側の信号強度が高くなる右下がりの傾向を示します。このへんは日本古来の雅楽とは全く異なります(参考記事)。

人間は音の高低(周波数)と大きさ(音圧)を対数的に感じ取ります。例えば、現在一般に使われている平均律(12音階/オクターブ、ピアノの白鍵と黒鍵)の各音階の周波数を対数でプロットすると、全く均等な間隔で並びます。そのように周波数を対数で表した時、40~10kHzの中心は約700Hzにあります。つまり、そのように作られた西洋音楽において、500Hz以下というのは、耳で実際に感じられる総音量の半分近くを占めている事になります。

楽器音の帯域をネット上で拾ってきました。
18-1 copy
出典はコチラ。実線が基音帯域、破線が倍音帯域を示しています。500Hz以下は主に基音を受け持つ帯域と言えるかもしれません。

各種楽器と歌声の基音の帯域です。
oroson copy
出典はコチラ。500Hz以下の帯域は、多くの楽器および歌声の基音部を成す事がわかります。

コントラバスは500Hz以下の帯域にスッポリと収まります。ハチマルは、ジャズを聴く際にベースラインを基準とする癖があるため、この帯域がしっかりと正しく再生されないと、非常に気に障ります。

広大な帯域をカバーするピアノの鍵盤で見てみましょう。
275_20120602052810.jpg
赤はオーケストラのチューニングでお馴染みの440Hz(ラの音)の鍵盤です。ピアノを弾けないのでよく知りませんが、左手の受け持ちは500Hz以下の領域に収まるのではないでしょうか。

蛇足になりますが、ピアノソロの再生というのが一番難しいような気がします。たった1台の楽器で広大な帯域をカバーし、しかもパルシブな打撃音ですから、誤魔化しが効きません。また、箱の定在波等のスピーカの癖も、ストリングではなんか華やかに響いたとしても、ピアノソロでは不自然さが一発で露呈してしまいます。ピアノソロを聴く場合、ハチマルは、たった1本のフルレンジドライバで全域をフラットに位相遅れ皆無で再生してくれる馬鹿ブーZAP君を最も好みます。

以上からイメージできる500Hz以下の領域を視覚化すると、こんな感じでしょうか?
miro 1
オヘソを440Hzにみたてて、ウェストのくびれから下が500Hz以下の領域としてみました。あくまでもハチマルのイメージですけどね。ウェストが1kHz、オヘソが700Hzで、骨盤のデッパリから下が500Hzとイメージしても良いかもしれません。

いずれにせよ、部屋の定在波が顕著に表れる500Hz以下の帯域は、耳で感じ取られた音楽の全体構造の半分近くを占めている事は確かです。以前にも書きましたが、音楽に限らず、全体構造の均整あるいは調和が何よりも重要です。音楽再生においても、徒にディティールの泥沼に深入りする以前に、音楽作品が本来持つ全体の均整/調和をきちんと「リスナーの耳に届ける」事が何よりも重視されるべきなのは言うまでもないでしょう。

西洋音楽をこのように分析的に見るたびに思うのですが、構造的な重心は一般的にイメージされているよりも随分低周波側にあります。ハチマルは、齢50前にしてカナル型イヤフォンで本当の構造を感じ取る事ができた時に、甚だ遅ればせながら、はじめてその重要性に気付きました。それに反し、オヂオ業界が、万人のために、この重要極まりない低音再生の根本的クオリティを改善する事に全く努めず、さして重要とは思えぬヤタラ表層的/微視的なオンシツやリンジョーカン、聞こえるか聞こえぬかようわからん超高域再生、一般音楽愛聴者には非現実的としか思えぬハイエンドとやらにウツツを抜かして来た事に激しい違和感を覚え、メンドクサイけど仕方がないので自分で作ったのがLEANAUDIOシステムです。ドナイヤッチューネン、ホンマニ。。。です。

追記
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2011年07月30日 (土) | Edit |
ベト5のスペクトルをニンゲンの等ラウドネス特性で大まかに補正してプロットしてみました。大ざっぱに言えば、ニンゲンの耳には低音が聞こえ難いという特性を補正して、実際に耳で知覚しているスペクトルがどのような形になるのかを極簡単に求めてみたという事です。
ベートーベン交響曲第5番第1楽章(ブロムシュテッド盤のみ)
bet5 copy
緑が40Hzを基準に補正した特性です。ホール中央席付近で聴いても、CDを真っ当にフラット再生しても、ニンゲンの耳にはこのように聞こえるという事です。40Hzと10kHzの間でカマボコ型になっている事がわかります。例の「40万ヘルツの法則」に従って40Hzから10kHzまでフラットに再生できれば、このカマボコを低音/高音バランス良く再生できると言えます。

他のジャンルの曲も調べてみました。

マイルスのRiot
Miles Riot copy copy
ベト5と同じように、40Hzと10kHzがほぼ同じレベルに聞こえ、やや右下がりですが約60Hz~約8kHzがほぼフラットです。

マドンナのBad Girl
Madonna Bad Gir copy
補正しても40Hzの方が10kHzよりも6dB以上高くなっています。流石ズンドコ。。40Hz~約10kHzを直線で結ぶと、右下がりながらもほぼ直線的である事がわかります。この帯域をほぼいっぱいに使っているという事です。欲を言えば30Hz~13kHzの再生帯域が欲しくなります(青の直線)。時代が進むにつれて音楽が広帯域化していると見えなくもないですね(電子楽器はいくらでも帯域を延ばせる)。。もっとサンプル数を増やさないと定かな事は言えませんが。。

サンプルは少ないですが、今回の結果を見る限り、西洋音楽は「耳」で聴いた時に低音と高音がバランス良く聞こえるように、左上がりの(低音が大きい)スペクトルになっていると考えられなくもありません。また、ジャンルを問わず、40~10kHzというのが主要帯域であると考えても良さそうです。このバンドをビシッと位相の乱れなく正確に再生する事が、音楽再生における第一の基本課題であると言えるのではないでしょうか。

フラットに再生するというのは「ドン・シャリ」に再生するのとは全く異なります。低音を持ち上げるのではく、低域限界を下にフラットに伸ばしても決して「ドン」にはなりません。効果は意外と地味なのよ。シアター用の馬鹿低音とは全く別モノです。本来聞こえるべき音が聞こえるようになる、本来の音楽のフォルム(バランス、調和)が正しく耳に届くようになるというだけの事です。ソノヘン努々誤解なきよう。。。「ドン」にしようと思えば200Hz前後を持ち上げるヨロシ。

また、無響室で計測して40Hzまでフラットに再生する立派な特性の古典的大型スピーカーを何も対策していない普通の住居サイズのお部屋にぶち込んでも、定在波の影響でブーミーに聞こえる事が多いと思います。ましてや、とてつもない大音量で鳴らせば、ニンゲンのラウドネス特性もフラットに近付くため、さらに低音過多に聞こえるかもしれません。以前の記事に書きましたが、ホール中央席で聴くベトベン交響曲の最大音圧レベルは80dBAを大きくは超えません。装置単体の周波数特性だけでなく、部屋のサイズに見合った適度なリスニング距離(すなわち適度なSPサイズと低音増強)と適度な耳位置音量も音楽再生には重要なファクタであると言えます。

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2011年07月20日 (水) | Edit |
このブログで再三書いたように、僕がLEANAUDIOを始めたのは、携帯電話にフルトベングラのベトベン交響曲全集(とジャコ全コレクション)をコピーして、6000円くらいの低音がしっかりと出るカナル型イヤフォンで聴いた事が、そもそもの発端です。なにせ携帯電話ですし、圧縮データですし、録音も古いので「音質」的にはお世辞にも良い状態とは言えませんが、低音までキッチリと再生した交響曲を電車の中で聴いて、僕はしょっちゅう鳥肌を立てていました。それまでベトベンは、ピアノソナタとチェロソナタを聴く事が多く、交響曲はそれほど聴きませんでした。低音がしっかり再生できないと交響曲はそれこそ「ツマラナイ」からだと思います。低音までしっかりと聴くと、その楽しさが一気に増し、一時期は交響曲ばかりを聴いていました。

その後、まともなプレーヤーと1マンエンくらいのもう少し上等なカナル型イヤフォンを購入して、ジャズの全コレクションも聴き直してみて、低音再生の重要性を痛感し、今まで自分はマトモに音楽を聴けていなかった事を悟りました。ビシッと正確なタイミングの低音が聞こえるとタノシサが段違いなのよ。。。。(参考記事)。。

その頃所有していたのは、定価6マンエンくらいのDENON製CD/MDコンポ(13cm 2Way バスレフ)でしたが、それではカナル型イヤフォンで聴くような明瞭な低音が聞こえず、頭に来てSPを破壊したのがLEANAUDIOの始まりです。量販店のオーヂオコーナーで試聴させてもらったりもしたのですが、どうも僕が望む聞こえ方がしないのと、低音が出るヤツはやたらデカクて高価だし。。で、「可聴帯域の下限近くまで位相遅れなくフラットな周波数特性で」というやつの始まりですね。

今回は、ベトベン交響曲のデータを基に、そのへんについて考察してみます。

下は前の記事で紹介したCDデータと鎌倉のとあるホールの中央席で実測されたデータの比較です。
704_20110720064652.jpg
共にベトベン交響曲第5番第一楽章(CDはブロムシュテッド盤)ですが、楽団もホールも全く異なるにも関わらず、スペクトル形状は驚くほどよく一致しています(参考記事)。

下は、僕が所有する5枚のベト5第1楽章のCDデータのスペクトル分布です。
818.jpg
50年代に録音されたフルトベングラ盤から、今世紀に入って録音されたものまで、ライブ盤も含めて、非常に良く一致しています。つまり、誰がどこで演奏しようと、またCDを聴こうが(ただし真っ当なフラット再生が必要)ホール中央席で聴こうが、これがあの偉大なるオヤヂが書き上げた交響曲第5番第1楽章の全体的/基本的なカタチ「フォルム」だという事です。さすがにクラシック界はキッチリとした仕事してますね!

この「フォルム」全体を低域までキッチリと、そのカタチのまま耳に届ける事によって、交響曲を聴くタノシサが一気に高まるという事を、僕は携帯電話とカナル型イヤフォンを通して、齢50手前にして遅ればせながら劇的に体感したという事です。で、音楽を夢中で聴いた学生時代にせめてケロが欲しかったなぁ。。。となるわけです。

さて、以下、やや蛇足になりますが、なかなか興味深い事に気付きました。
上の図のピンクの太線は、ベト5-Iの平均的な基本フォルムを表しており、赤の直線は40Hz~10kHzの領域を表しています。この図から、40Hzの音の大きさは10kHzの音の大きさよりも30dB弱高い事が見て取れます。

下図のA特性(つまり人間の等ラウドネス特性)を見ると、40Hzと10kHzの感度差も約30dB弱である事が分かります。すなわち、ベト5-Iを聴いた時、ヒトの耳には40Hzと10kHzの音がほぼ同じ大きさで含まれているように聞こえるという事です。楽曲のスペクトル全体をラウドネス特性で補正すると、40Hzと10kHzの間でカマボコ型になるはずです。つまり、ニンゲンの耳にはそのように聞こえているという事です。というと、また勘違いされるかもしれませんが、「だから装置の特性もカマボコ型で良いのだ」というのでは決してありませんよ。フラットに再生して始めて「ホンモノ」のカマボコ型に聞こえるという事ですからね。そこのところ努々勘違いせぬようお願いします。フラットに再生したら「ドンシャリ」になるってな考え方は全くの根本的大間違いですからね。

698_20110720070814.jpg

これは、奇しくもオーディオ界でよく言われる「40万ヘルツの法則」(再生装置の下限周波数と上限周波数の積が40万であると、「音楽」がバランス良く聞こえるという説)に対応しているようにも思えます。単なる偶然かもしれませんが興味深いですね。

そこで、ブロムシュテット盤の第1から第9の第一楽章のスペクトルも調べてみました。
上から順番に1番、2番、、、、9番です。
LvB 1
LvB 2
LvB 3
LvB 4
LvB 5 copy
LvB 6
LvB 7
LvB 8
LvB 9

曲によって全体的な「フォルム」は結構異なりますが、40Hzと10kHzのバランスは、どの曲でも概ね近いと言えるのではないでしょうか。40Hzから10kHzまでフラットに再生できる装置であれば、ベトベン交響曲の「フォルム」の全体像あるいは全体構造を概ねバランス良く聴き取れると言えそうです。この説に従えば、もう少し裾野を両側に拡げて30Hz~13kHzが再生できればほぼ完璧と言えるかもしれません(僕には、いずれにせよ15kHzから上が全く聞こえないし)。根拠不明のヘンテコリンな「定説?」が多い中、この「法則」は本物かもしれません。これがベトベン以外の交響曲にも当てはまるのかどうか、興味深いところではあります。交響曲あるいはクラシックに限らず、ジャズでもロックでも、西洋音楽の全体構造(スペクトル)の重心は、我々がイメージしているよりも随分低周波数側にあります。。それだけ低域再生が重要だということです(参考記事)。この事からも、件の「法則」は妥当なように思えます。そのうち、イロイロな曲で検証してみますね。。。

さて、音楽に限らず、ゲージツ作品において、その全体的な「フォルム」あるいは「バランス」あるいは「調和」は非常に重要です。例えば、彫刻「ダビデ像」や「ミロのビーナス像」では、身長に対するオヘソの高さの比がほぼ黄金比に一致するというのは有名なハナシですね。作者が「黄金比」を知っていて意図的にそうしたのか、美を追究した結果タマタマそうなったのかは知りませんが、「美」にはそのような神秘的といっても良い「ヒミツの法則」が隠されていると言えます。日本語の五七調や、ブルースのコード進行、ソナタ形式などもその類ですね。理屈ではなく、ヒト(あるいは特定民族)が普遍的に「具合エーヤン」と感じるヒミツの法則があるという事です。ゲージツカは、時には意識的にそれを利用し、時には無意識にそのようなバランスを選択しています。それは「セカイノヒミツノカケラ」に通じるイチバン手前のドアだとも言えます。「音楽」は様々な「音」の要素で構築された、時間軸方向の変化によって表現される極めて複雑で高度な構造体です。そして優れた音楽作品の中にも、そのようなヒミツがふんだんに隠されているはずです。

davide.jpg
ダビデ像

miro 0 miro 1
ミロのビーナス像; 右側はちょっとオヘソの位置を下げてみました。こちらの方が民族的に親しみが持てるカナ?

monariza copy monariza 2
モナリザ: 右のは現代風に小顔にして、ちょっとお化粧してみました。お付き合いするならこっちかなぁ。。

上の例のように末端のユーザーが「音楽」をどう弄ってどう再生しようが全く個人の勝手ですが、例えばこれらの彫刻のプロフェッショナルなレプリカを作成するに際して、全体的フォルムが歪んだのでは、ディティールがどのように素晴らしかろうが、ゲージツ作品の伝達機能としては全く失格です。

極めて基本的な論として、オーディオ装置の本来の機能は「音声発生装置」(Sound Generator)ではなく「音楽再生(伝達)装置」(Music Reproducer)であるとハチマルは考えます。それをどう使おうがユーザの勝手ですが、少なくともプロフェッショナルとしてオーディオ装置の開発/製造に携わる人間は、そこのところを努々疎かにしてはならないと思います。また、「オーディオ技術者は音楽家では断じてない」という事もキモに命じ、身勝手に音楽を解釈せず、「音楽」あるいは「芸術」に対する敬意を忘れてはならないと、ハチマルはそう思います。。。

音楽を聴くに際して、リスナーが上記のようなヒミツを知識として持つ事は重要ではありません(逆に、かえって邪魔になる事も多々あります)。ただ、そのヒミツの調和をしっかりと含んだ全体が、何も意識する事なく自然に耳に届いて、その全体を感じ取れれば良いのです。「素直」に音楽に接するならば、ココロがそれを感じ取ります(アタマでリカイするのではありません、ミミでキクのでもありません)。
であるからこそ、何も知らずともアタリマエのように、可聴帯域の下限近くまで位相の乱れなくフラットに音楽を聴くことができる、コンパクトでリーズナブルな価格のオシャレで真っ当な音楽再生装置が世に広まると良いなと思うのですよ。。ハチマルはね。。

はやいはなしが、オッチャン向けオトナの高級玩具みたいなのバカリでなく、もっと広く大衆一般に音楽芸術を高品位に伝達するための実用機械としてのオーディオが進化しないと駄目じゃん。。。と言いたいのよ。ハチマルは。それが大人の仕事ってもんでしょう。。。

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2010年12月21日 (火) | Edit |
これも何度も書きましたが、ハチマルはそこそこ上等のカナル型イヤフォンの低音の聴きやすさに感動し、そのような低音がスピーカーでも聴けるようにとアレコレやってきたワケです。この歳にして、十分な低音まで明瞭に聞こえると音楽を聴く楽しみが倍増するコト、今までそのような低音を聴いていなかったというコトに遅ればせながら気付いたという次第です。

このためLEANAUDIOを振り返ると、低音再生(主に100Hz以下)の事ばかり書いてきたような気がします。100Hz以上であれば、現在の技術レベルでなんら苦労なく普通に再生できる(例えば8cmフルレンジ1本で十分に再生できる)ため、この領域は専ら「好みの問題」と考えて細かい事は敢えて書かなかったという面もあります。しかし100Hz以下の正確な再生となると、前の記事で書いたようなスピーカー本体の問題のみならず部屋の音響特性も含めて様々な困難が伴う事、そして何よりも、カナル型イヤフォンで聴いて100Hz以下の正確な再生が音楽を楽しむ上で決定的に重要だと気付いた事から、このブログの首題も自ずと「低音」寄りになったと言う次第です。

今回は、様々なジャンルの楽曲の周波数分布(スペクトル)から低音再生の重要性をあらためて考えてみます。

まずはCDのトラックのスペクトル解析結果をざっとご覧ください。

以下のグラフでは100Hz~40Hz帯域を黄色、40Hz~25Hz帯域を緑で示しています。

1)ベートーベン交響曲(全てブロムシュテッド指揮)
No.4 第1楽章
bet4.jpg

No.5 第1楽章
bet5.jpg

No.7 第1楽章
bet7.jpg

2)アコースティックJAZZ
マイルス/RIOT
Miles Riot copy

コルトレーン/至上の愛-1
 Coltrane A love supreme 1

3)エレキJAZZ
ウェザーリポート/Volcane for Hire
WR Volcano for Hire

ジャコパストリアス/Invitation(Japanライブ)
Jaco Invitation

4)ロック/ポップ
マドンナ/Bad Girl
Madonna Bad Gir

ピンクフロイド/吹けよ風、呼べよ嵐
PF One of These Days

いずれのジャンルでも、40Hzまでの黄色の帯域には明瞭なピークが見られ、重要な音楽情報が含まれている事が分かります。この帯域まではしっかりと再生したいものです。

ちなみに下記はオーケストラの低音楽器の最低音階です。
コントラバス E1 (41.2 Hz)
ベースクラリネット D2 (73.4 Hz)
バスーン Bb1 (58.3 Hz)
コントラバスーン Bb0 (29.1Hz)
ベーストロンボーン B1 (61.7 Hz)
40Hzまで再生できれば、コントラバスーンを除く低音楽器の最低音階をカバーできると言えます。
ジャズのウッドベースはもちろんエレキベースの最低音階もコントラバスと同じです。

打楽器の場合、ティンパニは F2 (87.3 Hz)、バスドラムは30~80Hzとされています。ハチマル所有の「春の祭典」には35Hzの強烈なバスドラが録音されています。ピアノの最低音階は27.5Hz、パイプオルガンになると20Hz以下なんてのもあるそうです。ベトベン最晩年のピアノソナタでは32Hz(C1)まで使っています。まあ、パイプオルガンはともかく、30Hzまで確かなレスポンスを確保できればほぼ理想的と言えるかもしれません。というか、それ以下の周波数では聴覚だけで知覚する事は難しく、大型装置で部屋全体の空気を揺るがさないと感じないと思う。

以上は全て西洋音楽ですが、日本古来の音楽ではどうでしょうか?

5)雅楽
ツタヤで雅楽のCDを借りてきました。雅楽は中国から伝来した音楽で、日本音楽の中では珍しいとされる多種楽器の合奏形態をとり、CDのサブタイトルには「平安のオーケストラ」と書かれています。その中から比較的長い「喜春楽」序と破のスペクトルを下に示します。
喜春楽」序
gagaku.jpg
「喜春楽」破
gagaku2.jpg

これらと比べると、西洋音楽のスペクトルはどのジャンルでも随分左上がり(低音寄り)である事が分かります。よく言われるように「西洋音楽は低音を土台として、様々な音域の楽器のハーモニーを積み重ねる事によってピラミッドのように構築されている」というのがよく分かりますね。ハチマルがカナル型イヤフォンで過去に聞き込んだ音楽をもう一度聴き直してみて気が付いたのもこの点です。この構造を土台の低音までしっかりと正確に耳に届けて聴く事ができれば、今までよりももっともっと音楽を楽しめると。。。

低音再生において、周波数ドメインのみならずタイムドメイン的クオリティ(位相、トランジェント特性)も重要なのは言うまでもありません。ジャズを聴く場合は特にそうだと思います。ジャズではスイング感とかグルーブ感とか言われる絶妙なビートのユラギが非常に重要です。例えば4ビートの場合、均等に四分音符を刻むのではなく、絶妙かつダイナミックにタイミングをゆるがしています。そして、その重要な役目を担うのがベースとドラムスです。ベースとドラムスがヘボなジャズバンドはとても聴けたモノではありません。例として、ジャコは16ビートの超高速ベースでバンドをグリングリン加速します。加速といってもペースそのものは一定なのですが、まるでエッシャーの騙し絵の階段を駆け上るように、無限に加速していくかのような錯覚にとらわれる事があります(このグルーブ感というかドライブ感がジャコの真骨頂だと思うぞ)。エンディングに向かって大編成のビッグバンドをベース1本で無限に加速し続けるジャコのベースを聴く時、僕は未だに鳥肌が立ちます。このようなジャズの醍醐味を味わうには、タイムドメイン的に正確な低音がとても重要だと感じます(これがバスレフ型を受け入れられない主要因だと思う)。クラシックの場合、交響曲ではそれほどタイムドメイン的重要性は感じません。しかし、ベトベン最晩年のピアノソナタの低音部にゾクゾクっとする時に、その重要性をつくづく感じる事があります。

まあ、ハヤイハナシが西洋音楽を楽しむには「可聴帯域の下限近くまで位相を乱さずに十分なレスポンスで耳に届かせる事が重要」という事です。これがハチマルの言う「微視的な音質以前に最優先で達成せらるべき総合的音楽再生クオリティ」です。別にそれが観念論的にあるいは技術論的に理想だからそうあるべきだと言っているのではありません。記録されている音楽の聴きやすさを求めれば、より良く聴こうと求めれば、より深く楽しもうと求めれば、自然とそうなるという事です。それがLEANAUDIOトライアルを通してハチマルが得た結論でもあります。

次回に続く。。。

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2009年05月31日 (日) | Edit |
僕はCDのリッピングにExact Audio Copyというフリーのソフトウェアを使用しています。このソフトウェアは処理に多少時間がかかるのですが、データエラーを丁寧にチェックしながらリッピングしてくれるので愛用しています。今回はこのソフトウェアに含まれているツールを使用して楽曲の周波数解析を行ってみました。
Exact Audio Copyの詳細はコチラ

まずは問題の「春の祭典」です。
7分50秒前後にある最強のドラム一発を抜き出して解析しました(約0.2秒間を抽出)。なお全ての図はクリックすると拡大できます。
まずは波形です。
269.jpg
縦軸は16ビットデータを10進数で表しています。2の16乗は65536ですから、±32768がフルスケールになります。上図を見るとほぼ最大強度の信号が記録されていることがわかります。

次にこの信号の周波数スペクトルを下図に示します。
270.jpg
35Hzに高いピークが見られます。こいつが問題の正体ですね。ちなみにドラムなので倍音らしきピークは見られません。

その他いろいろ解析してみました。

まずピアノの鍵盤と周波数の関係を下図に示します。以後の参考にしてください。
275.jpg

それではベートーベンの交響曲第5番「運命」の第1楽章冒頭の「ジャジャジャジャーーン」を解析してみます(チェリビダッケ指揮のライブ盤から)。

2発目の「ジャジャジャジャーーン」の「ャーー」の部分だけを抽出しました。
周波数スペクトルを下図に示します。
273.jpg
約75Hzを基音として倍音が綺麗に分布し、20Hzから3kHzの範囲で信号レベルがほぼフラットになっています。

次は僕の大好きなウッドベースの音を解析してみます。曲は長年の愛聴盤であるチャーリーヘイデンの「Closeness」の1曲目「Ellen David」です。冒頭のベースソロからできるだけ低い一音を抽出してみました。
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約43Hzに基音があります。コントラバスの最低音階は41.3Hzですから、それより1音階高い音に相当します。約1kHzくらいまで倍音がたっぷり出ている事がわかりますね。基音より低域側にも約20Hzまで高い信号レベルが示されており、これがウナリのように聞こえるやつだと思います(胴鳴りというやつでしょうか?)。

最後はエレキベースです。僕の最も敬愛するミュージシャン、ジャコパストリアスのデビューアルバム「Jaco Pastorius」の1曲目「Donna Lee」(ベースとパーカッションのデュオ)から、これもできるだけ低い一音を抽出してみました。パーカッションの音が弱い片側のチャンネルだけを示します。
274.jpg
約65Hzに基音がありますが倍音がほとんど見られません。エレキの場合はエフェクタを効かせるので、これが生?のエレキベースの音なのかどうかは、もう少しいろいろな曲を解析してみないと分かりませんね。

結構楽しめます。皆さんもお気に入りの曲をいろいろ調べてみてはいかがでしょうか?

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テーマ:オーディオ
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