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2013年09月17日 (火) | Edit |
僕が40Hz~10kHzを音楽再生における重要周波数帯域であると考えている事は再三書きました。この帯域を「リスニング位置」で十分フラットに、かつ「時間ドメイン的にも正しく」再生する事が音楽再生における最も重要で基本的な第1の課題であるという事です。ヨイオトたらリンヂョカンたらをツイキュする以前のウルトラスーパーアルチメットに基本的な課題です。自動車の「安全に走る/曲がる/止まる」に相当すると言えるでしょう。

未だに古典的技術が幅を効かせる現状では、40Hzまでの低音を「リスニング位置」で(時間ドメイン的にも)十分に正しく再生する事は、大型で高額なハイエンド装置を使っても容易ではなく、特に多くの人々が愛用する小型システムでは全く悲劇的な状態にあると言えます。それを放ったらかしにして、聞こえるか聞こえぬか未だに議論されている蝙蝠さん領域への帯域拡大にウツツを抜かしておるのが現状です。ナンデソーナルカ?

スピカの(特に小型装置の)低域を改善する方法は、当ブログで再三紹介してきましたし、今現在この記事を書きながら、そのような自作装置でゴキゲンに音楽を楽しんでいます。現在の周辺技術を以てすれば困難な事でもコストがかかる事でもアリマセン。

とは言え、現在市場にナイモンはナイわけですから、低音不足の装置でもできるだけ音楽を「良い状態で」(マニアご執心のオンガクセー?とかヨイオト?とやらではナイヨ)楽しむにはどうすれば良いか?について考えてみます。

下は2つ前の記事に載せたデータを重ね合わせたものです。
マドンナベトベン
グレーがベトベン交響曲第5番第1楽章、赤がマドンナのNothing Falseです。ニンゲンの聴覚感度特性で補正した楽曲のスペクトル(ピーク値)をプロットしています。

2つ前の記事をご覧になると分かるように、時代を追う毎に楽曲の低域(40~100Hz)と高域(4~10kHz)がバランスしながら増加する傾向にあります(広帯域化している)。上の図は、その中で最も古典的なベトベンと、最も最近のマドンナを重ね合わせています。

これらの比較から非常に重要な事が分かります。
「ベトベンであろうとマドンナであろうと、西洋音楽の重要帯域は40Hz~10kHzである事に全く変わりなく、また、40Hzと10kHzの(あるいは積が40万になる2つの周波数の)耳に聞こえる(ニンゲンが感じる)音の大きさはほぼ同じである」という事です。つまり、上図のようにプロットすると、約700Hzを中心として概ね左右対称のプロファイルを示し、低域(40~100Hz)と高域(4~10kHz)は常にバランスしています。これがジャンルや時代を超えた西洋音楽の普遍的基本構造であり、「(西洋的)音楽性」(マニヤの言うオンガクセーではない)を表す1つの重要な特徴であると言えるでしょう。

マドンナはベトベンに比べて、ズンドコピートのために低域の音が随分大きくなっていますが、それとバランスするように高域の音も大きくなっていますよね。低音を強く含む曲では、必ず高音も強くなっています。そのようにバランスを取らないと、人間には「エーグアイ」に聞こえないと言う事でしょう。

このような西洋音楽を、不本意ながら帯域の狭い(すなわち低音の出ない)装置で再生せざるを得ない場合、上記のバランス(西洋音楽の基本法則、音楽性)を保つ事が重要であろうと考えるのが極めて自然でしょう。デスヨね。

これはFrieveAudioで各種のフィルタを設定しながら聴いてみると良く分かりますが、僕の実体験に基づく良い例をご紹介します。

僕はAlpair6Mをメインのドライバに使っていますが、時々誤ってサブウーハも補正もなしの素の状態で随分長いこと気付かずに聴いている事があります。この状態でもあまり違和感を覚えず、なんかこのママでも十分聴けるヤン。。。と思えなくもありません。

以前Alpair5をメインに使っていた頃は、そのような事は決してありませんでした。明らかに低音不足に聞こえましたからね。
aplair6M.jpg
上図は約20cmの距離で計測したAlpair6MAlpair6PAlpair5のF特です。Alpair6Mは、他のドライバに比べて低音に強い反面、高音は明らかに減衰したカマボコ型の特性を示します。さらに、実際のリスニング位置では10kHz以上がこれよりも減衰します(軸上ではないため)。さすがに40万の法則を満たす事は無理ですが、50万くらいのバランスにはなっているでしょう。このため、素の状態でも「音楽」の「全体像」をそれほど違和感なくバランス良く聴く事ができるのだと思います。

ちなみに、マークさんによると、Alpair6Mは小容積の箱を使ったデスクトップ/ニアフィールド アプリケーションを狙っているので、高域を敢えて延ばさなかったそうです。なんだか絶妙な特性ですよ。実は、コレ。。。
チョイ聞きの第一印象は他のAlpairに比べると地味でナンダカ冴えないのですが(ハチマル用語でヂミヘン)、実際に長く「音楽」を聴くと実は具合が良いというのがAlpair6M君です(フラットに補正してしまえば関係ないですけどね)。

A6Mを比較的大きめのバスレフ箱で使う場合はツイータを追加した方がバランスが良いかもしれません。フィデリテムさんのDuo60(コチラ)はその好例でしょう。僕はサブウーハまたはデジタルブーストで低音を補強しますが、高域を8kHzまでフラットに補正する事でバランスを取っています。

さて、市販のスピカではどうでしょうか。大小2つのFOSTEX製品で見てみましょう。
02gx250mg copy
スケールを大体揃えて並べてみました。GX100MA(左)のウーハは10cm、GX250MG(右)のスコーかは13cmです。古典的技術では、帯域を低周波側へホンノ数10Hz延ばすために極端な大型化が必要である事が良く分かります。たとえ小さな部屋で小音量で聴く場合でも、低音までシッカリ再生しようとすると巨大装置が必要になるというのは、全く馬鹿げています。マッタクです。これに対し、LEANAUDIO方式の場合、サイズは必要音量によって決まります。

GX100MA.jpg
FOSTEX GX100MA (10cm 2WAY ブックシェルフ型)
10cmのバスレフ型であるため60Hz以下は急激に減衰し、50Hz以下の音は殆どキッコエません。すなわち、ロンさんのベースを十分に再生できず、マドンナさんのズンドコは完全に帯域外です。また、この帯域では時間ドメイン的にもかなりデタラメです。反面、高音側は蝙蝠さん領域の40kHz近くまでほぼフラットに延びています。これではサブウーハを追加しない限り、西洋音楽本来のバランス(音楽性)を楽しむ事はできないでしょう。これだったら、密閉型にして100Hz以下をなだらかに減衰させ(チョイとブーストしても良い)、高域側をそれとバランスするように減衰させた方が、「音楽」を自然なバランスで(音楽性を保って)聴く事ができるはずです。

GX250MG.jpg
FOSTEX GX250MG (25cm 3WAY フロア型)
このクラスの立派なフロア型になるとさすがに低音は大幅に改善されます。設置方法(ツイータの軸上から少し外す、部屋を利用して低音を少し増強する等)で十分にバランスを取る事ができるでしょう。この製品では、バスレフの同調を極端に低くする事で低音をなだらかに減衰させていますね。吸音材も多めに使っているのではないでしょうか。バスレフ臭さを改善する良い方法だと思います。でも、これだったら密閉型にしちまえば良いのに。。。「バスレフ」と書かないと売れないのでしょうか?もしかして。。。

いずれにせよ、特に一般のヒトビト向けの比較的小型の装置において、アホみたいに蝙蝠さんの超音波領域へ帯域を延ばすよりも、低域をしっかりと補強するか、それが適わぬのであれば、高域を適度にバランスさせる方が、「音楽」の全体をより良く聴く(すなわち本来の目的)ために、遙かに重要であろうかと思います。

帯域を闇雲に一方へフラットに延ばすのではなく、40万の法則に従って高/低のバランスを保つ事が重要でしょう。それが本当の意味での(西洋音楽の)「音楽性」(マニヤのいうオンガクセーではない)を保つという事になるでしょう。また、減衰具合もバスレフのように急激なものではなく、できるだけなだらかな方が良いでしょう(上のAlpair6M+密閉は高/低両側に非常になだらかに、しかもほぼ左右対称に近い形状で減衰していますよね)。特にある程度低音を犠牲にせざるを得ない非常に小型の装置においては、努々この点を疎かにしてはならぬでしょう。蝙蝠さんは全く重要ではないと思います。

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2011年07月20日 (水) | Edit |
このブログで再三書いたように、僕がLEANAUDIOを始めたのは、携帯電話にフルトベングラのベトベン交響曲全集(とジャコ全コレクション)をコピーして、6000円くらいの低音がしっかりと出るカナル型イヤフォンで聴いた事が、そもそもの発端です。なにせ携帯電話ですし、圧縮データですし、録音も古いので「音質」的にはお世辞にも良い状態とは言えませんが、低音までキッチリと再生した交響曲を電車の中で聴いて、僕はしょっちゅう鳥肌を立てていました。それまでベトベンは、ピアノソナタとチェロソナタを聴く事が多く、交響曲はそれほど聴きませんでした。低音がしっかり再生できないと交響曲はそれこそ「ツマラナイ」からだと思います。低音までしっかりと聴くと、その楽しさが一気に増し、一時期は交響曲ばかりを聴いていました。

その後、まともなプレーヤーと1マンエンくらいのもう少し上等なカナル型イヤフォンを購入して、ジャズの全コレクションも聴き直してみて、低音再生の重要性を痛感し、今まで自分はマトモに音楽を聴けていなかった事を悟りました。ビシッと正確なタイミングの低音が聞こえるとタノシサが段違いなのよ。。。。(参考記事)。。

その頃所有していたのは、定価6マンエンくらいのDENON製CD/MDコンポ(13cm 2Way バスレフ)でしたが、それではカナル型イヤフォンで聴くような明瞭な低音が聞こえず、頭に来てSPを破壊したのがLEANAUDIOの始まりです。量販店のオーヂオコーナーで試聴させてもらったりもしたのですが、どうも僕が望む聞こえ方がしないのと、低音が出るヤツはやたらデカクて高価だし。。で、「可聴帯域の下限近くまで位相遅れなくフラットな周波数特性で」というやつの始まりですね。

今回は、ベトベン交響曲のデータを基に、そのへんについて考察してみます。

下は前の記事で紹介したCDデータと鎌倉のとあるホールの中央席で実測されたデータの比較です。
704_20110720064652.jpg
共にベトベン交響曲第5番第一楽章(CDはブロムシュテッド盤)ですが、楽団もホールも全く異なるにも関わらず、スペクトル形状は驚くほどよく一致しています(参考記事)。

下は、僕が所有する5枚のベト5第1楽章のCDデータのスペクトル分布です。
818.jpg
50年代に録音されたフルトベングラ盤から、今世紀に入って録音されたものまで、ライブ盤も含めて、非常に良く一致しています。つまり、誰がどこで演奏しようと、またCDを聴こうが(ただし真っ当なフラット再生が必要)ホール中央席で聴こうが、これがあの偉大なるオヤヂが書き上げた交響曲第5番第1楽章の全体的/基本的なカタチ「フォルム」だという事です。さすがにクラシック界はキッチリとした仕事してますね!

この「フォルム」全体を低域までキッチリと、そのカタチのまま耳に届ける事によって、交響曲を聴くタノシサが一気に高まるという事を、僕は携帯電話とカナル型イヤフォンを通して、齢50手前にして遅ればせながら劇的に体感したという事です。で、音楽を夢中で聴いた学生時代にせめてケロが欲しかったなぁ。。。となるわけです。

さて、以下、やや蛇足になりますが、なかなか興味深い事に気付きました。
上の図のピンクの太線は、ベト5-Iの平均的な基本フォルムを表しており、赤の直線は40Hz~10kHzの領域を表しています。この図から、40Hzの音の大きさは10kHzの音の大きさよりも30dB弱高い事が見て取れます。

下図のA特性(つまり人間の等ラウドネス特性)を見ると、40Hzと10kHzの感度差も約30dB弱である事が分かります。すなわち、ベト5-Iを聴いた時、ヒトの耳には40Hzと10kHzの音がほぼ同じ大きさで含まれているように聞こえるという事です。楽曲のスペクトル全体をラウドネス特性で補正すると、40Hzと10kHzの間でカマボコ型になるはずです。つまり、ニンゲンの耳にはそのように聞こえているという事です。というと、また勘違いされるかもしれませんが、「だから装置の特性もカマボコ型で良いのだ」というのでは決してありませんよ。フラットに再生して始めて「ホンモノ」のカマボコ型に聞こえるという事ですからね。そこのところ努々勘違いせぬようお願いします。フラットに再生したら「ドンシャリ」になるってな考え方は全くの根本的大間違いですからね。

698_20110720070814.jpg

これは、奇しくもオーディオ界でよく言われる「40万ヘルツの法則」(再生装置の下限周波数と上限周波数の積が40万であると、「音楽」がバランス良く聞こえるという説)に対応しているようにも思えます。単なる偶然かもしれませんが興味深いですね。

そこで、ブロムシュテット盤の第1から第9の第一楽章のスペクトルも調べてみました。
上から順番に1番、2番、、、、9番です。
LvB 1
LvB 2
LvB 3
LvB 4
LvB 5 copy
LvB 6
LvB 7
LvB 8
LvB 9

曲によって全体的な「フォルム」は結構異なりますが、40Hzと10kHzのバランスは、どの曲でも概ね近いと言えるのではないでしょうか。40Hzから10kHzまでフラットに再生できる装置であれば、ベトベン交響曲の「フォルム」の全体像あるいは全体構造を概ねバランス良く聴き取れると言えそうです。この説に従えば、もう少し裾野を両側に拡げて30Hz~13kHzが再生できればほぼ完璧と言えるかもしれません(僕には、いずれにせよ15kHzから上が全く聞こえないし)。根拠不明のヘンテコリンな「定説?」が多い中、この「法則」は本物かもしれません。これがベトベン以外の交響曲にも当てはまるのかどうか、興味深いところではあります。交響曲あるいはクラシックに限らず、ジャズでもロックでも、西洋音楽の全体構造(スペクトル)の重心は、我々がイメージしているよりも随分低周波数側にあります。。それだけ低域再生が重要だということです(参考記事)。この事からも、件の「法則」は妥当なように思えます。そのうち、イロイロな曲で検証してみますね。。。

さて、音楽に限らず、ゲージツ作品において、その全体的な「フォルム」あるいは「バランス」あるいは「調和」は非常に重要です。例えば、彫刻「ダビデ像」や「ミロのビーナス像」では、身長に対するオヘソの高さの比がほぼ黄金比に一致するというのは有名なハナシですね。作者が「黄金比」を知っていて意図的にそうしたのか、美を追究した結果タマタマそうなったのかは知りませんが、「美」にはそのような神秘的といっても良い「ヒミツの法則」が隠されていると言えます。日本語の五七調や、ブルースのコード進行、ソナタ形式などもその類ですね。理屈ではなく、ヒト(あるいは特定民族)が普遍的に「具合エーヤン」と感じるヒミツの法則があるという事です。ゲージツカは、時には意識的にそれを利用し、時には無意識にそのようなバランスを選択しています。それは「セカイノヒミツノカケラ」に通じるイチバン手前のドアだとも言えます。「音楽」は様々な「音」の要素で構築された、時間軸方向の変化によって表現される極めて複雑で高度な構造体です。そして優れた音楽作品の中にも、そのようなヒミツがふんだんに隠されているはずです。

davide.jpg
ダビデ像

miro 0 miro 1
ミロのビーナス像; 右側はちょっとオヘソの位置を下げてみました。こちらの方が民族的に親しみが持てるカナ?

monariza copy monariza 2
モナリザ: 右のは現代風に小顔にして、ちょっとお化粧してみました。お付き合いするならこっちかなぁ。。

上の例のように末端のユーザーが「音楽」をどう弄ってどう再生しようが全く個人の勝手ですが、例えばこれらの彫刻のプロフェッショナルなレプリカを作成するに際して、全体的フォルムが歪んだのでは、ディティールがどのように素晴らしかろうが、ゲージツ作品の伝達機能としては全く失格です。

極めて基本的な論として、オーディオ装置の本来の機能は「音声発生装置」(Sound Generator)ではなく「音楽再生(伝達)装置」(Music Reproducer)であるとハチマルは考えます。それをどう使おうがユーザの勝手ですが、少なくともプロフェッショナルとしてオーディオ装置の開発/製造に携わる人間は、そこのところを努々疎かにしてはならないと思います。また、「オーディオ技術者は音楽家では断じてない」という事もキモに命じ、身勝手に音楽を解釈せず、「音楽」あるいは「芸術」に対する敬意を忘れてはならないと、ハチマルはそう思います。。。

音楽を聴くに際して、リスナーが上記のようなヒミツを知識として持つ事は重要ではありません(逆に、かえって邪魔になる事も多々あります)。ただ、そのヒミツの調和をしっかりと含んだ全体が、何も意識する事なく自然に耳に届いて、その全体を感じ取れれば良いのです。「素直」に音楽に接するならば、ココロがそれを感じ取ります(アタマでリカイするのではありません、ミミでキクのでもありません)。
であるからこそ、何も知らずともアタリマエのように、可聴帯域の下限近くまで位相の乱れなくフラットに音楽を聴くことができる、コンパクトでリーズナブルな価格のオシャレで真っ当な音楽再生装置が世に広まると良いなと思うのですよ。。ハチマルはね。。

はやいはなしが、オッチャン向けオトナの高級玩具みたいなのバカリでなく、もっと広く大衆一般に音楽芸術を高品位に伝達するための実用機械としてのオーディオが進化しないと駄目じゃん。。。と言いたいのよ。ハチマルは。それが大人の仕事ってもんでしょう。。。

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