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2013年05月11日 (土) | Edit |
暖かくなると実験君の虫が動き始めるようです。

前の記事で、「リスニング位置における40~10kHzの周波数特性」が音楽再生における第一等の重要特性であると述べました。

これに次いで重要なのが、「低音領域(100Hz以下)の歪みと遅れ」です。100Hz以下と限定するのは、それ以上の周波数領域では、今時の真面目に作られたオーディオ用スピカであれば安価な物でも十分な性能(再生クオリティ)を有しているからです(主に「コノミの問題」という事)。

今日の音楽再生装置において、最も不完全であるのが100Hz以下の低音再生です。オーディオ技術者は、全力をあげて世の全ての家庭用音響装置で、たとえ安価なTVの内蔵スピーカや小さなドックシステムであっても、音楽を聴くに十分な低音を正しくリスナの耳に届けられるよう取り組まなければアキマセン。もう21世紀ですからねぇ。。。

一般的に再生音の「歪み」と言う場合、一定周波数の定常正弦波信号を入力した時に出力音に含まれる高調波成分の割合(「定常的な歪み率」)を指します。つまり周波数ドメインでの評価です。これに対してタイムドメイン的に評価する「遅れ」は「動的歪み」と言えるかも知れません。特に遅れが「時間的に」大きくなる超低音領域では、本当の「歪み」(ソース音からの乖離度合)は、最終的に動的に評価しないとホンマの事は分かりません。でも、動的評価はトッテモ面倒クサイので後まわしにして、まずは「定常歪み」について考えてみます。

多くの場合、歪み(率)はTHD (全高調波歪み)という1つの値で表されます。これは「高調波成分全体の基本波成分に対する比」を意味します。説明はメンドクサイのでコチラを参照してください。しかし、音楽再生においては、このTHDを鵜呑みにするのは非常に危険です。何故ならば、THDは高調波の全ての次数成分を同じに扱いますが、実際には高調波の次数に応じてヒトに知覚される歪み感が異なるからです。THDの値が同じでも、2次成分が多いのか3次成分が多いのかによってヒトには異なって感じられるという事です。また、一般的に奇数次数が強いとヒトは不快に感じるとも言われます。

一体全体、低音に含まれる各次数の高調波成分はどの程度以下であればヒトは「まぁエーンチャウ?」と感じるのでしょうか。僕の今までの経験によると、波形を見てまぁ概ねサインカーブやねっと感じれば、音の方もまぁ概ね正弦波音に聞こえました。なので波形の観測を重視し、「何次高調波が何%」という数字は余り重視しませんでした。しかし、それでは一般的な指標となり得ません。そこで今回はより具体的な指標値を得るために、波形生成ソフトウェア(WaveGene)で各種の高調波成分を含む正弦波を生成し、モニタヘッドフォンで聴き比べて見ました。

左は50Hz/-6dBの正弦波に2次成分(100Hz/-20dB)を加えた波形、右は3次成分(150Hz/-20dB)を加えた波形です
2nd -20 3rd -20
どちらもTHDは約20%に相当しますが、耳には3次成分を加えた方が明らかに元の正弦波音から大きく異なって聞こえます。僕の経験では、100Hz以下の低音再生において最も厄介に感じられるのが3次高調波です。2次高調波は多少多くても余り気になりません。また、4次以上の成分は元々それ程大きくありません。

という事で、以下では、どの程度まで高調波成分が増えると「明らかに歪んでるヤン(正弦波音とチャウやん)」と感じられるのか、モニタヘッドフォンで聴感評価してみた結果をご紹介します。

基本周波数(40/50/70/100Hz)のレベルを-6dBで固定し、2/3/4/5次の高調波成分を-80dBから-60/-40/-30/-20dBと増やして行き、どの時点で明らかに正弦波の音とチャウ(明らかに歪んでいる)と感じるのかを確認しました。本当はもう少し細かく高調波のdBを変化させたかったのですが、ソフトウェアの都合上できませんでした。なお、基本周波数が変わっても歪みを感じ始める条件は同じでした。以下では50Hzでの波形を載せています。

高調波成分のdB値と歪み率の関係は以下の通りです(基本周波数成分は-6dB)。
-80dB = 0.02%
-60dB = 0.2%
-40dB = 2%
-30dB = 6.3%
-20dB = 20%

以下、各次数での結果です。

2次
左は-30dB、右は-20dBです。-30dBはOKと感じました。-40dBから微妙に音は変化しますが、単独で聴けば余り違和感を覚えないと思います。-20dBは明らかに歪んでいると感じました。これはアキマセン。
2nd -30 2nd -20

3次
左が-40dB、右が-30dBです。-40dBは-60dBからの音の変化をかなり明確に知覚できますが、まあぁギリギリOKかな?。-30dBはNG。お馴染みの三角波形です。
3rd -40 3rd -30

4次と5次
左は4次/-30dB、右は5次/-40dBです。共にNGです。
4th -30 5th -40

以上の結果を歪み率に換算すると下記のように言えます。
2次: 2%はOK、6.3%はまぁまぁOK、20%はNG
3次: 2%はギリギリOK、6.3%はNG、20%は全くNG
4次: 0.2%はOK、2%は微妙
5次: 0.2%はOK、2%はNG

以上から、ごく大雑把な目標値は下記のようになるでしょうか。
2次は5%以下
3次は2%以下(1%以下が望ましい)
4次以上は1%を大幅に下まわる事


次回は、ZAPシステムでの定常歪みの計測準備に入ります。オッタノシミニ!

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2012年10月23日 (火) | Edit |
今回は密閉箱でのテスト結果を簡単にご紹介します。

Arrestorの作動を確認するために、最初は密閉箱に取り付けた状態で試験を行ったのですが、密閉箱ではArrestorの作動を明確には確認できなかったため、オープンエア状態での試験を行ったというのが、そもそもの経緯です。

密閉箱では内圧が働くため、オープン状態とは挙動が少し異なります。

Alpair6でボリュームを同じにして比べてみました。
A6M Open 2-3 A6M Sealed 2-3
IconAMP全開で、パッシブプリが約2/3の位置です。左がオープン右が密閉(2.5L)。密閉では内圧が働くので、同じ入力であれば少し振幅が下がって歪みが減少するように見えますが、波形のパターンが大きく変わるという事はなさそうです。

さて、限界ブリブリ試験の結果です。

まずはAlpair 6M
下はオープンでArrestorにヒットした時の波形です。
A6M Arrestor copy
Alpair 6MのArrestorは振動板振幅がコイル長を大きく超えないとヒットしません。もう少し浅くしても良いかもしれません。

下は密閉箱(2.5L)でArrestorにヒットしたと思われる波形です。
MM 0dB 40Hz
赤がArrestorあり、青がなしです。40Hz/0dB信号、IconAMP全開、パッシブプリも全開!(つまり僕のシステムの完全フルパワー条件)でやっとヒットしたみたいです。完全に3次の波形になっています。超ブリブリ!いゃぁぁぁ。。。怖かったです。。が、別に壊れたりはしませんでした。。。今も元気に鳴っています。

下は同じくフルパワー状態でのAlpair10の波形です。密閉箱の容積は4L。
Arresto 4_4
さすがのAlpair10も超ブリブリです。赤がArrestorあり、青がなし。Arrestorがヒットしたようには見えませんねぇ。。。。

下は、限界よりもボリュームを上げた時のAlpair 10の波形の変化を示しています。
A10 7_8
信号は全て40Hz/0dB、IconAMPは全開です。
青がパッシブプリが約3時の状態。オープンでは、この状態からボリュームを少し上げるとArrestorにヒットします。しかし密閉箱では、ここからボリュームを上げると波形が一気に崩れて緑の状態になり、フルボリュームで赤の状態になりますが、赤の状態でもArrestorにヒットしているようには見えません。

ついでに他の13cmウーハと同じボリュームで比べたデータも。。。
13cm woofer 3_4
13cm woofer 4_4
説明は不要ですね。

今回のデータは以上です。

40Hzのフル信号を入力してフルパワー(24W)をかけると、波形は殆ど3次成分だけになりますが、ドライバはへっちゃらでした。40Hz信号程度では、コイルが勢い余って過剰に飛び出す事は無いようです。ブリバリっと破壊するには、とんでもない信号レベルをステップ状に印加してコイルを一気に加速する必要がありそうです。僕が壊した時は、アンプのボリューム位置から考えてスピーカへの入力は100Wを大きく超えており(100Wステレオアンプをブリッジモードで使っていた)、その状態でアンプの入力信号ラインをブチッと抜いたので、凄まじいステップ信号が発生したのでしょう。もし壊れたら完全にユーザーの責任ですね。

お気づきだと思いますが、Alpair 10の歪み方は、今回テストした他のドライバとは大きく異なります。
他のドライバでは三次歪みの増加に伴って、
正弦波が尖り始める → 三角形 → 中腹が痩せ始める → 中腹が凹む → 波形が3山になる(ブリブリ)
といったパターンを見せますが、Alpair 10だけは完全に破綻するまで3次歪みはあまり顕著ではなく、全く突然に波形が崩れます。一体何が他と違うのでしょうか???不思議です。

他のドライバでは、振幅が大きくなるにつれて3次歪みが顕著に増加します。3次歪みは耳障りですので、できるだけ抑えたいところです。Daytonウーハのように、線形限界(Xmax)よりも随分小さな振幅であのように3次成分が多くて波形が三角では困りますよね。普通のウーハーってあの程度なのでしょうか???

そこで次回は、なんで3次歪みが増加するのか?ナニユエ波形は三角になるのか?ドーシテ波形は尖りだすのか?を簡単なシミュレーションを使って解明します。なかなかオモシロイですよ。オッタノシミニ!

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2011年09月21日 (水) | Edit |
前の記事からの続きです。今回は50Hz以下の超低音の再生波形を確認してみました。LEANAUDIOでは50Hzより下を「超低音」と呼ぶ事にしますね。なお、今回でスピーカシステムの開発は一端終結します。その締めくくりとして長文となってしまいました。ご容赦を。。

今までに再三申しているように、LEANAUDIOでは音楽再生装置の最低要件として50Hzまでフラットな低域特性を掲げています(密閉型による-12dB/Octの減衰を前提とする: 30Hzで-10dB程度)。ジャズやロックを聴く場合、この要件を満たしていれば十分に楽しめるように思えます(これ以上伸ばしても嬉しさはあまり感じない。それよりも低音ビートの位相が重要)。しかしクラシックの交響曲を聴く場合(ほとんどベトベンしか聴かないが)、レスポンスがそれ以下に伸びていると微妙に嬉しく感じる事があります。FOSTEXによると、これは「弱音で演奏される低音楽器のうなりや響き」というヤツだそうで「フルオーケストラの醍醐味のひとつ」としています。

以上を念頭に、今回は下記の条件で計測してみました。
1) 音量はハチマル快適音量の上限
- 約65cmのリスニング距離におけるベト5第1楽章の最大音圧レベルで約80dBA相当(参考記事)のアンプ ボリュームとする
2) 現実的な信号レベルとして、フルスパンに対して-6dBAの正弦波信号を再生
- CDにフルスパンの純正弦波が記録されている事はまずないため(参考記事)
- ハチマル コレクションの最強低音である「春の祭典」(シャイー指揮/クリーブランド、参考記事)のバスドラピークでも35Hz/-12dB程度(参考記事))

以下、スピーカ前方約20cmで計測した波形です。赤がAlpair 6M 2本の馬鹿ブースト、青がDAYTONウーハです。両者の絶対音量は同じに調整しています。クリックで拡大してご覧ください。

50Hz
875.jpg
両者ほぼ同等。どちらも、不安になるくらい音量を上げても顕著には崩れません。下段のFFTを見ると、DAYTONの方が2次、3次の高調波成分が少し低い事がわかります。

40Hz
874.jpg
これも両者ほぼ同等ですが、波形が明らかに歪んで尖ってしまいました。FFTを見ると、3次の高調波が強い事がわかります。ボリュームを少し下げれば正弦波に近付きます。40Hzまでは余裕で正確に再生して欲しいと思います。Alpair6Mはともかく、ウーハにはも少し頑張ってもらわないとね。今後の課題だな。

30Hz
873.jpg
波形はさらに崩れます。Alpair 6Mは4次の高調波が強く出るために、DAYTONよりも歪んで見えます。どちらのドライバでも、ボリュームを下げて行くと40Hzと同様のトンガリ波形を経て正弦波に戻ります。50Hzでもボリュームを思いっきり上げると、波形が尖り始めます。つまり、周波数が変わっても歪みのパターンは同じだと言う事です。なお、周波数が30Hzまで下がると、フルスパン信号をカナル型イヤフォンで聴いても微かにしか聞こえないので、ここまでの低周波はあまり重視していません。Frieve Audioでは振動板の無用な振幅を避けるために30数Hzから20Hzにかけて急峻にローカットしています。

以上から下記が言えます。
1) DAYTONウーハ 1本とAlpair 6M 2本はほぼ同等か、ややDAYTONが優れる
2) 両者とも50Hzまでは十分な余裕を持つが、それ以下では高調波が急激に目立ち始める
3) 歪みのパターンはドライバが変わっても周波数が変わっても基本的に同じであり、単純に振動板の「振幅」によって支配されているように見える(歪みの主要因はスピーカの構造的限界(大振幅時の非直線性)に起因するらしい)
- しかし、何故波形が尖るのか? 不思議。。普通に考えれば、振幅が頭打ちになって波形は丸くなると思うのだが。。。調査が必要。

-6dBの単音正弦波というのはかなり厳しい条件であり、通常、50Hz以下の信号レベルはそれほど高くないため、大概の楽曲の再生では聴感上問題ありません。特にベトベン交響曲やアコースティック ジャズでは50Hz以下の信号レベルが十分に低いため、30Hzまで馬鹿ブーストしても歪み領域に全く入りません。また、古典ロック(新しいのは知らない)も、50Hz以下の重いビートは意外と含まれていません。

ハチマルのコレクションの中で最強の低音は、再三取り上げた「春の祭典」の中に1発だけ含まれている超絶バスドラ(曲中他のバスドラは問題なし)と、マドンナの曲中延々と通奏されるズンドコ ビートです。これらの楽曲を再生して波形を確認してみました。

手順は下記の通りです。
1) 音量をハチマル快適音量の上限に調整
- 実際の曲を普通に再生し、約65cmのリスニング距離における大音量時の平均的音量が75dB~80dBになるようにアンプのボリュームを調整。普段は平均75dB前後、あるいはそれ以下で聴いているので、かなり頑張ったボリュームです。家内のイエローカード必至の音量。
2) 楽曲の問題の部分だけ(数秒間)を抜き出したWAVファイルを作成(左右をミックスしてモノラル化)
3) 高調波の発生を見やすくするために、Frieve Audioで60Hz以上を急峻にカットして、上記で決めたアンプ ボリュームでリピート再生

結果は以下の通りです。

マドンナの Erotica
数秒間を抜き出したサンプル音源のスペクトル
mad spe
約45Hzのビートが曲中延々と続きます。ピーク信号レベルは-12dB弱。マドンナの曲の典型的パターンです。

下がスピーカ前方で計測した波形です。
青がソース信号の波形、赤がマイクロフォンで計測した出力波形です。

Alapri6M馬鹿ブースト(30Hzフルフラット)
baka_mad copy
Daytonウーハー
sub_mad copy
どちらも、顕著な高調波歪みは観測されません。ズシッと重くてビシッとタイトなビートを聴くことができます。3"クラスのフルレンジSPだけでこの低音を再生するとは、Alpair 6M君は頑張りますね。凄いぞ。
なお、マイクは手持ちですし、環境騒音が結構影響するため、波形の細かい部分はサイクルごとにかなり変動しています。多少の波形の変形は多めに見て下さい。

春の祭典 第一楽章
最強バスドラ1発だけを抜き出したサンプル音源のスペクトル
haru spe copy
この1発のバスドラだけを抜き出すと、ピークは約40Hzに表れます。ピークレベルは-12dB弱ですから、ソース信号レベルとしては上のマドンナとほぼ同等です。しかーし、この曲は最強バスドラを収録するためにダイナミックレンジが非常に広い(すなわち、平均的な録音レベルが非常に低い)ため、上記の平均音量に設定するにはアンプのボリュームを大幅に上げる必要があります(プリのボリューム位置で比較すると、マドンナが約1/2開度に対して春の祭典はほぼ全開!)。ですから、ソース信号レベルが同じでも、スピーカに入力されるパワーはマドンナの比ではありません。この最強バスドラは全く尋常ではありません。

Alpair6M馬鹿ブースト(30Hzフルフラット)
baka_haru copy
DAYTONウーハー
sub_haru.jpg
注: 横軸のスケールはマドンナとは異なります。
吸音材たっぷりの密閉型なので基本波形をかなり正確に追従しますが、さすがに、このアンプボリュームでは高調波出まくり状態です。尖りモードを飛び越えて4次の高調波が顕著に出ています。しかしAlpair6Mは頑張りますね。偉いぞ!
この曲中の、これ以外のバスドラは難なく再生できますが、この1発だけはどうしようもありません。この曲を聞くときは、最強君のところだけボリュームを下げるか、イコライザで50Hz以下を減衰させるしかありません。それともWAVファイルをここだけ編集するか。。。
680_20110921045633.jpg
赤はブーストなし、青はフルブーストで再生したAlpair6Mスピーカ出力波形。一箇所だけ青の振幅がデカイのが問題の1発です。上の波形グラフは1本抜きん出ているヒゲの部分を時間軸方向に拡大したものです。このように強烈なのは全曲中1発だけ。こいつのために全体の録音レベルが低くなっています。他の盤ではどうなんでしょうか?

そこそこ大型のスピーカでも、この最強の一発をサイズに見合ったそれなりの音量で正確に再生するのは簡単ではないと思います。特にバスレフ型だと、余程大型のもの(共鳴点が40Hz以下、JBLだと4365以上)でないと、波形はかなり崩れるでしょう。どうあがいても、穴っぽこから噴出する音と振動板前面から直接送り出される音は異なります(特に打撃音)。

自分が聴く楽曲、自分が聴く音量がはっきりと限定されており、システムの限界を認識した上で使用するのであれば問題無いのですが、このようなシステムを広く一般に製品として市販する場合、そうも行きません。どのような楽曲でも(例え春の祭典でも)大音量で破綻せぬ事を保証するために、例えば50Hz以下を減衰させるローカット フィルタを適用べきであると言えます。実際、Victor製13cmパワード サブウーハのアンプは約50Hzのローカットフィルタを実装しています(解除不能)。このアンプは現在ケロに使用しており、その特性は下図のように50Hz以下で急激に減衰します(密閉型なのでフィルタが無ければ-12dB/Octで減衰するはず)。
577_20110919071343.jpg
余談となりますが、デジタル信号処理をフルに活用すれば、振幅がある一定量を超えぬように制御しながらドライバの能力をギリギリまで使い切る事ができるはずです。最も単純な方法として、アンプのボリュームと連動したイコライザ設定が考えられます(ボリュームと連動して低域信号レベルを制限する事により、振幅を安全な範囲に保つ。低ボリューム時はフルフラット)。さらに進めれば、波形を先読みしながらダイナミックに処理する事もできます(例えば、春の祭典の最強バスドラだけ信号レベルを少し下げる)。そのような方式を前提とするならば、ハードウェア(スピーカ)の設計自由度も大幅に向上するはずです。ソースだけ、アンプだけ、スピーカだけというのではなく、信号入力から音響出力(さらにルーム アコースティック)を含むシステムトータルで考える事により、音質(音楽再生クオリティ)、サイズ、コストを飛躍的に改善できるはずです。スピーカ屋はスピーカだけ、アンプ屋はアンプだけを見るのではなく、トータルなシステムで考える事が重要です。システムの中で最も大きな問題を抱えるのがスピーカ(さらに言えば部屋の音響特性)であり、この弱点をシステム全体で補う事が肝要かと思います。

さて、上記したように、このような超低域での高調波歪みは、振動板振幅とドライバの構造的限界(直線性の限界)の関係に支配されると考えられます。これを改善する方法として、同一振幅でも低音レベルを上げられる大径ドライバを使用するか、あるいはドライバの数を増やすのが最も直接的です。これとは別に、サイズ据え置きでドライバの構造的限界(線形性をある程度維持できる最大許容振幅: Xmax)を向上させる方向性があります。コンパクトさを追究するLEANAUDIOでは当然後者の方向性に興味が向かいます。そこで、2つ前の記事で紹介した各ドライバの公称Xmax値を調べてみました。

MarkAudio Alpair10v2 13cmフルレンジ: 7.5mm
HiVi M5a マグネシウム・アルミ合金 13cmウーファー: 3mm
DAYTON AUDIO DA135-8 13cmウーファー: 3mm

MarkAudio CHR-70v3 10cmフルレンジ: 4.5mm
MarkAudio Alpair 6Mフルレンジ: 3.4mm
HiVi M4N メタルコーン10cmフルレンジ: 3mm

FOSTEX M100HR-W: 不明

10~13cmクラスだと、判で押したようにXmax = 3mmと記載しているドライバが多く、あまり重視されていないように見受けられます。これに対し、Mark Audioは常にXmaxを重視する姿勢を前面に打ち出し、カタログ値を見る限り同サイズのドライバに比べてXmax値が異様に大きくなっています。13cmクラスで見るならば、HiVi M5aおよびDAYTON AUDIO DA135-8がともに3mmと記載しているのに対し、MarkAudio Alpair10v2は7.5mmを掲げています(実に2.5倍!)。以前製造されていた13cmのAlpair 10ウーハのXmaxは9.0mmにも達します。これは別にズンドコを狙った物ではなく常用振幅領域での直線性を重視した結果だと思われますが、ヤクザなLEANAUDIOコンセプトにとっても好適なドライバであると言えそうです。

メーカによってXmaxの定義や計測方法が異なる可能性があるため、単純には比較できないかもしれませんが、Mark AudioがXmaxを重視する姿勢は明らかです。Alpair6Mがここまで頑張れるのも、その基本姿勢に因るところが大きいかもしれません。このように飛び抜けたXmaxは、全ての部品を専用設計するという基本方針によって可能になったものと思われます。他社製のドライバは標準的なコンポーネント(内部部品やフレームまで)を組み合わせて使用している例が多く、部品をよく見ると他メーカのドライバと同じ部品だったりします。Xmaxがどのメーカでも同じような値になっているのは、そのへんに起因するのかもしれません。

まだ何も知らなかった初期の頃にたまたまMark Audioドライバを採用したわけですが、偶然にもそれらが気密性と大Xmaxという特性を備えていたからこそ、現在のLEANAUDIOがあると言えます。もし、LEANAUDIO初期に例えばフェイズプラグ付きの標準的なXmaxを持つドライバを採用していたとしたら、小容積密閉箱に入れて信号ブーストまたは別アンプで強引に駆動するという基本コンセプトには絶対にたどり付かなかったでしょう。Mark Audioドライバとの出会いは幸運であったと言わざるをえません。また、当ブログを見てLEANAUDIO方式をちょこっと試してみたけど駄目だったという方は、今一度ドライバの適性(まずは気密性)を確認してみてください。フェイズプラグ付きやコアキシャル型ではまず駄目だと思います。センター(ダスト)キャップ付きでも布製や真ん中に穴の開いたタイプでは駄目です。

現在のシステムの50Hz以下のタフネスを向上させるには、ウーハ用にAlpair 10(できればウーハバージョン)を選択するか、あるいは、面倒くさい2.1ch方式は捨ててAlpair10 (または7) 2本の馬鹿ブーストってのがシンプルで良いかもしれません。今回改めてAlpair馬鹿ブーストのポテンシャルを再認識しました。また来年の夏くらいですかね。何か変えるとすれば。

今回サブウーハを追加したそもそもの目的は、iTuneやネットラジオをイコライザなしで聴くためであって、Frieve Audio用には馬鹿ブーストを前提としています。しかし、ブースト方式には欠点が2つあります。すなわち、1)デジタル信号のオーバーフローを回避するために全体の信号レベルを下げる必要がある(アンプのボリュームを上げる必要がある、つまり信号クオリティとS/N比が多少低下する)、2)振動板が大振幅で動くため高域音が多少劣化する、という事です。従って、メタルコーン ウーハを採用した事によって今まで感じていた違和感が無くなるのであれば、2.1ch方式を常用する可能性もあります。

とりあえずは毎日聴いてみないと何とも言えません。無意識にどちらに手が伸びるか? 駄目なシステムには自然と手が伸びなくなり、全く使わなくなります。3つも電源を入れる手間をかけてでもウーハ付きに手が伸びるようであれば大成功と言えましょう。「音質?」の事なんか念頭になく、意識が自然に「音楽」を追いかけている時に、違和感や、不自然さや、聴き取りにくさを感じるようであれば「音楽再生装置」としてNGです。

冒頭でも述べたように、かれこれ3年以上続けてきたデスクトップ スピーカの開発は今回で一端終結します。
基本的にAlpair6M + Frieve Audio自動音場補正による耳幅配置超ニアフィールド馬鹿ブーストでハチマルが望んでいた「音楽再生クオリティ」言い換えれば「音楽の聴きやすさ(自然さ、違和感のなさ、正確さ、明瞭さ)」を十分に達成できたという事です。従来になく「音楽が聴きやすい」システム(そう、ハチマルの欲しかった「ミュージック マシーン」)となりました。また、数々の実験を通して多くの貴重な知見を得る事ができました。それらの経緯は全て当ブログに記載していますので、是非ご参考にしてください。「春の祭典」はめったに聴かないし、これ以上のものはとりあえず不要かなと思えますが、今まで年に1回ペースで何か作っているので、来年の今頃には新しい物をリリースするかもしれません。

マークさんに英語の要約版を約束しているので、そちらが終わるまで暫くブログの更新はお休みになると思います。以降はヘッドフォン再生がメインテーマとなる予定です。既に、ハチマルとしては大奮発のハイエンドなヘッドフォンを購入して早朝に愛用しています(最近奥さんからのイエローカードが頻発しているので。。)。オタノシミニ。

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2009年07月20日 (月) | Edit |
最近気になるのが真空管アンプです。

ネットでいろいろ調べてみると、真空管アンプはトランジスタアンプに比べて明らかに音が異なる「らしい」ということが分かってきました。高調波歪みの出方がどうやら違う「らしく」、それで聴感上の響きが違うように聞こえる「らしい」。特に、意図的に適度なディストーションをかけるギターアンプの領域では未だに真空管アンプが一般的に愛用されている「らしい」です。「らしい」ばかりでゴメンなさい。

 
まあとにかくトランジスタとはかなりはっきりと違って聞こえるというのは確かなようで、多分それは信号の忠実再生がどうのこうのというのではなく、音楽がより気持ちよく聞けるという点で熱心な愛好者が多数居られるということなのかな。。というのが今のところの僕的理解です。

はい、それでは本題です。
「真空管VSトランジスタアンプ」というちょっと興味深い記事を発見したので読んでみてください。アメリカのレコーディングエンジニアが書いた論文の和訳が掲載されています。コチラからどうぞ。
これを訳された方のホームページ「アンプなぜによもやま話」本体はコチラからアクセスできます。こちらも是非参考にしてください。ただし、オーディオアンプではなくギターアンプがメインですのでご注意ください。

で、その論文から重要と思われる部分をざっと抜粋してみました。

1).........ポップスのレコーディングなどにおいても真空管のサウンドとトランジスタのサウンドの違いが直接議論の的になる。その違いは目に見えて顕著であり、ソリッドステート・コンソールに関してはなお更である。

2)....... (トランジスタ、ハイブリッド、真空管の3つのマイクロフォン用プリアンプの比較において)......アンプのサウンドクオリティにおける違いは、早い段階でのオーバーロード領域の音質のみ、ということが判ったのである。一度アンプが深い歪み領域に入ってしまうと、全てのアンプはその歪みによって同じようなサウンドになってしまう。また、それぞれのアンプがリニア領域であれば、そのサウンドもとてもクリーンである。.................今回のテスト結果は、はっきり気づくところに至るまでに全てのプリアンプがある程度のオーバーロード状態になっていることを示しているのである。そして真空管とトランジスタのサウンド間にはっきりと違いを生じさせるのは、この早い段階での歪みであるという結論に至った。

3)シンプルな分類をするならば、低い周波数の高調波は以下の2つのグループに分けることが出来る。奇数の高調波(第3、第5)は“閉鎖音”や“覆われた”サウンドを作り出す。一方、偶数の高調波(第2、第4、第6)は“合唱のような”または“唄うような”サウンドを作り出す。第2、第3高調波は、前述の電気的歪みのグラフの観点から、最も重要な成分であることが判る.........(以下、各種高調成分の音響心理学的な影響についての記述)

4)基本的な真空管とトランジスタの違いの原因は、オーバーロード状態における高調波成分の重み(量)である。トランジスタアンプはオーバーロード時には強い第3高調波を発生させる。この高調波は“覆われた”感じを出し、レコーディングにおいては制限された音質を与える。一方、オーバーロード状態における真空管アンプは全ての成分の高調波を発生させる。特に強いのは第2高調波であり、第3、第4、第5高調波はトーンに厚みを加える。.........

5)基本的に、オペアンプはほんの数dBオーバーロード状態に入った段階で強い第3、第5、第7高調波を発生する。その結果、サウンドはメタリックなザラザラしたものとなり、耳には非常に歪んだ音に聞える。このサウンドはとても不快であるので、オーバーロードの警告として働く。結果的に、オペアンプはそのような飽和領域ではほとんど使われない。これはアンプの限界以内のとてもクリーンな音ではほとんどサウンドにカラーが無く、また正確に音を再生するという結果につながる。

以上

これはあくまでもマイクプリアンプ(ギター用?)での実験なので、そのままオーディオ再生用のパワーアンプに適用可能かどうかはよく分かりませんが、下記のようにまとめることができるかと思います。

どのタイプのアンプも、リニアな特性領域で歪みの極端に少ない状態あるいは逆に完全に歪ませた状態であれば大した音質的差はない。しかし、トランジェントで適度なオーバーロードがかかる領域では、アンプ間で高調波の出方に明らかに差があり、聴感上もはっきりとした差が感じられる。高調波はその次数によって心理音響的な影響が異なるので、どの次数が高いかによって試聴者が受ける印象が異なる。

ま、とにかく高調波の出方の違いが主要因らしいですね。しかし、オーディオアンプの場合その適度なオーバーロードっていうのはどうやってかけるのか? たとえばパワー的に余裕のある真空管アンプを小音量で使用した場合は効果が薄れるのか?真空管アンプはたいがい小出力なので、普通に使えば適度なオーバーロードがかかっている状態になるのか?などなど、まだまだ不明な点があります。

ちなみにギタリストは一般的に適度なディストーションがかかるようにゲインを調整してアンプを使うので、真空管アンプのシェアが高いというのも納得できます。


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