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2012年10月08日 (月) | Edit |
お約束通り、再生音の付帯的現象に関するデータをご紹介します。

音の付帯的現象に問題の多いバスレフ型を題材とし、下記の内容で2回にわけて書く予定です。
1回目: 箱内部の定在波とポート自体の共振音の影響と吸音材の効果
2回目: バスレフ型における応答の遅れ

いずれもTONO君(Alpair 6P、7L)を使って一連の計測を行いました。現象をシンプルにするために、ポートは前面のスピーカのすぐ近に配置しました。

おなじみのシミュレーションです。
シミュレーション
約60Hzを同調点としました。

約30cm前方での実測値です。吸音材は一切入れていません。
20cm F特
青が密閉、赤がバスレフです。相変わらず計算とよく一致しています。50Hzで-6dB程度ですから10~13cmウーハを使った市販の小型2Wayクラスに相当します。バスレフ効果は同調点(60Hz)で7~8dB程度です。なお、4~5kHzの盛り上がりはドライバ固有の特性です。

緑は密閉型をベリンガのグライコでブーストした特性です(63Hzバンドを約+7dB)。以前にも書きましたが、密閉型をトーンコントローラ等でチョイト6dB程度ブーストするだけでも、ロールオフ周波数をバスレフ型並に下げる事ができ、しかもバスレフ型よりもなだらかな減衰特性が得られます。

図中の黄色の帯は、ポート自体の最初の(基本モードの)共振領域を表しています。上のシミュレーションの「ポート出力」曲線(青)の最初のポート共振領域(約800Hzから約2.5kHz)に対応します(実際の周波数は、シミュレーションよりもやや低めです)。詳しくは後で説明します。2本の赤の縦線は箱の定在波の周波数です。低い方は箱の前後と左右壁(ほぼ同じ)、高い方は上下壁による定在波に対応します。

それでは詳細なデータをご覧ください。

1. ポートからの音
まず、どのような現象が起こっているのかを、ポート前方3cmの位置で計測したデータで見てみましょう。
a)吸音材なし
ポート吸音材なし
黄色が最初のポート共振領域です(ディップからディップ、シミュレーションよりもやや低め)。この領域に箱の定在波のピーク(赤の2本の縦線)が重なっています。

b)吸音材を3面にはる
ポート吸音材3枚
最小限の吸音措置として、吸音材(ミクロンウール)を3面にだけはりました。この状態では、肝心のバスレフ効果はほとんど低下しませんでした。データを見ると、定在波の急峻なピーク/ディップが明らかに減少してる事がわかります。しかし、最も面積の広い上下壁の定在波の影響はまだ残っているようにも見えます。また、ポート共振領域(黄色領域)の盛り上がりは残ったままです。

C)ポート塞ぎ/吸音材たっぷり
ポート吸音材たっぷり
マイクロフォンはポート前方3cm位置ですが、ポートを粘土で完全に塞いでいます。従って振動板だけの音です。上の2つのグラフには振動板からの音も多少含まれています。

2. 振動板からの音
今度は振動板の前方約3cmにマイクロフォンを置きました。
a)密閉/吸音材なし
振動板 吸音材なし密閉
b)バスレフ/吸音材なし
振動板吸音材なし
c)バスレフ/吸音材3面
振動板吸音材3枚
d)密閉/吸音材たっぷり
振動板吸音材たっぷり

振動板前面では、密閉もバスレフも付帯音の大きさはあまり変わらないように見えます。また、吸音材を3面にはると定在波のピークが明らかに減少します。それでも、前後/左右の定在波の影響はわずかに観測できます(左側の赤線)。上下壁面の定在波(右側の赤線)がほとんど観測されないのは何故でしょうか??ポート音では、吸音材を3面にはっても上下の定在波はしつこく残ったように見えたのとは対照的です。ポチ箱とも傾向が異なるため、とりあえず謎のまま保留。

3. 両方の音の計測
今度は、マイクロフォンを少し離して、振動板+ポートの音を計測しました。マイクロフォンはスピーカのセンターではなく、ポート側に少しオフセットしています(両方の音をほぼ均等に拾うため)。最初にお見せしたF特グラフではプロットがギザギザ過ぎてみにくいため、約15cmの距離で計測しています。
a)密閉/吸音材なし
吸音材なし密閉
b)バスレフ/吸音材なし
吸音材なし
C)バスレフ/吸音材3面
吸音材3枚
d)密閉/吸音材たっぷり
吸音材タップシ

ポート共振による比較的広い周波数領域の盛り上がりと、内部定在波による比較的鋭いピークから成る付帯音成分がはっきりと現れています。上の振動板直前で測定した結果とは異なり、吸音材なしの密閉型とバスレフ型を比べると、バスレフ型の方が付帯音成分が明らかに大きい事がわかります。これは密閉型には皆無であるポートの共振音が発生するのと、ポートから箱内部の定在波を含む音が放出されるためであると考えられます。吸音材を3面にはると、定在波のピークはそれなりに減少しますが、ポート共振による盛り上がりはそれほど改善されません。吸音材たっぷりの密閉型では、そのような鋭いピークや盛り上がりがほぼ平坦になっている事がわかります。1.3kHz近辺の凹みは原因不明ですが、部屋の影響ではないかと思われます。

4. 考察
今回の計測データは以上です。

このように、バスレフ型ではポート自体の共振音が生じる事と、穴からボックス内部の音が漏れる事により、密閉型に比べるとどうしても付帯音が多くなります。定在波は吸音材を使って容易に低減できますが、バスレフ型の場合、肝心の共鳴効果を十分に確保するために吸音材は最小限に留めたいところです。そう考えると、バスレフ型では、箱形状の工夫による定在波の低減が非常に効果的ではないかと思います。対して、密閉型であれば、直方体の箱であっても、吸音材を大量に充填する事により、定在波の影響をほぼ完全に抑える事ができます。

肝心のバスレフ共鳴効果を得るには、ポートは必ず筒として働く必要があるため、ポート自体の共振音を抑制する根本的な方法は無いでしょう。なぜならば筒としての特質が無くなれば、肝心の共鳴効果も無くなってしまうからです。

また、今回のように、ポートの最初の共振領域と定在波が重なってしまうのも良くないかもしれません。箱の寸法は、容積が決まれば、見た目のバランスもあるため、それほど極端にプロポーションを変える事はできないでしょう。しかし、共鳴周波数を変えずにポートを「太く/長く」するか「短く/細く」する事により、ポートの共振周波数を移動する事は可能です。ただし、太く/長くすると、下図のようにポート共振の音がより盛大に出てしまうため、注意が必要です。

シミュレーション2
同調周波数を約60Hzに維持したまま、ポートを極端に太く長くしました。この場合、ポートの共振周波数を低周波側へ移動できますが、共振音のレベルが上がってしまいます。

逆に細く/短くすると共振音のレベルを下げる事ができますが、風切り音に注意が必要でしょう。。と考えれば、結局それほど選択の自由度はないかもしれません。箱の形状を工夫して定在波を極力抑えた上で、風切り音が問題にならない範囲でポートをできるだけ細く短くするというのが最良の手かもしれません。また、設置条件によっては、背面ポートにした方が耳に届くポートからの付帯音を低減できるかもしれません。ただし、背面ポートの場合、設置場所によって低域の特性が変化しやすいといった問題を抱えます。ちょっとした家具の上等に気軽に設置する事はできぬでしょう。本来、コンパクトなスピーカほど、設置自由度は高くあるべきだと思います。

なお、ウーハーのローパスフィルタのカットオフが十分に低く(たとえば100Hz以下)かつ十分に急峻であるために、ウーハーの出力帯域が箱定在波周波数にもポート共振周波数にも重ならない場合、以上のような付帯音問題は基本的に解消されます(起振源がなくなる)。従って、僕が常々提唱しているように、密閉型小径フルレンジ(あるいはワイドレンジツイータ)を基本とし、そのロールオフ領域だけを別のウーハーに受け持たせる場合、バスレフ型であっても付帯音的な問題は深刻ではなくなるでしょう。しかし一般的な市販大型マルチウェイの場合、38cmウーハーでも700~800Hzでクロスオーバし、当然箱のサイズも相応に大きい(すなわち定在波周波数は相応に低い)ため、定在波問題を逃れる事はできないでしょう。

バスレフ型は、このような付帯音以外に、応答の遅れが生じるという問題を抱えています。次回は、そのような問題によって生じる現象について、計測データを交えながら考察を加えたいと思います。オッタノシミニ!

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