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2012年06月09日 (土) | Edit |
イコライザというと、「鮮度が落ちる」とか言われて毛嫌いされる向きもあるようですが、果たしてそうでしょうか?彼らの言う「センド」とは一体何を指すのでしょうか? 今回は、そのへんについて書いて見たいと思います。

その前に、カラー写真について考えてみます。多くのデジカメでは「カラーバランス」を設定できるようになっています。これは、照明の種類(太陽光、人工照明(白熱/蛍光灯等))によって光のスペクトル分布(色温度)が異なり、また自然光であっても天候や時間帯によって色温度が異なるため、一定の条件で処理したのでは色かぶり(色が偏って不自然に見える)が生じるためです。これは一種のデジタルイコライザ機能であると言えます。多くの方はオマカセの「オートカラーバランス」を使っていると思いますが、これは撮影した画像の全体的な色の傾向からその時の色温度を推測して補正します(専用のセンサを使う機種もある)。これはデジタル式の自動音場補正に相当します。デジカメに限らず多くの装置は、ある条件を基準として設計され、実際の使用条件がそれと異なる場合には、その装置に課せられた本来の目的を最善の状態で達成するために、何らかの補正を適用します。

銀塩のカラー写真の場合、フィルムは特定の色温度で自然な発色が得られるように作られています(デーライトとかタングステンとか)。しかし、撮影条件に合わせてフィルムを選んだとしても、実際の色温度はそのフィルムの標準色温度と常にピッタリと一致するわけではありません。このため、ネガカラーであれば引き延ばし時点で、リバーサルであれば撮影時に、光学系に色付きの補正フィルタを挿入します。こちらはアナログ式ですね。当然ですが、そのようなフィルタを挿入すると、光学系の性能(すなわち画質、オヂオ的に言えばレンズのセンド)は僅かに低下しますが、それを嫌って補正しなければ、色が不自然に偏ってしまって、本来の目的を最善の状態で達成する事はできません。もちろん表現上の理由により意図的に色をかぶらせる事もありますが、それは表現者が行う特殊なケースです。

さて、オーディオではどうでしょうか?

スピーカは、無響室で測定した時に概ねフラットな特性になるように設計されています。無響室というのは実用からかけ離れた非常に特殊な条件ですが、実際に使われる条件が不特定であるため、致し方のないところと言えます。しかし、実際の部屋に設置した場合、スピーカから出た音がリスナの耳に届くまでに、必ずその部屋の影響を極めて多大に被ります。

TONO君でその影響をもう一度見てみましょう。

下は、スピーカをデスクの前端に置いて約20cmの距離で測定した結果です。device.jpg
ほぼドライバの素の特性(無響室での特性)に近いと思われます。4kHzのピークはドライバ自体の癖です。

下は、TONO君をコーナーに設置して、実際のリスニング位置(ベッドの枕の位置)で計測した結果です。
room.jpg
これが同じスピカか?と目を疑いたくなるくらい違います。このように、実際の使用条件によって、耳に届く特性は装置ソノモノの特性とは大きく異なります。もちろん、部屋が異なれば、その影響の出方も千差万別です。このまま聴くと、交響曲の低音部のウナリがブオーと不自然に聞こえ、また、ジャズのベースラインを追跡しにくくなります。

そこで9バンドのイコライザで調整しました。
equalize_20120609060642.jpg
これは、以前に紹介した設定から、イロイロな曲を聴いている時に気になるところがあるとその都度チョコチョコ微調整を繰り返した結果としての現在の状態です。このような調整により、「音楽」は明らかに自然で聴きやすくなります。

さて、「鮮度」とは何を指すのでしょうか?

「鮮度」を、「記録された音楽と実際に耳に届く音楽の違いの少なさ」と定義するならば、適正なイコライジングによって音楽再生の総合的な「鮮度」は確実に向上します。すなわち、その装置の本来の目的をより善い状態で達成できるという事です。もちろん、「装置」レベルでの信号は多少劣化します。特にアナログ式フィルタでは位相に影響も出ます。しかしリスナの耳に実際に届く「総合的な音楽再生」の鮮度の向上は、そのような微小な信号劣化を補って余りあると言う事です。色補正フィルタを挿入するとレンズの性能(ガシツ)は僅かに劣化しますが、「写真」としての総合的な鮮度(本来の色味の自然さ)は、そのような微小なガシツの劣化を補って余りあるのと同じです。微小な劣化にばかり目を向けて、総合的で決定的な本来の目的を見失ったのでは意味がありません。ソーチがいくらセンドとやらの高い音を出しても、リスナに届く実際の音楽の全体的な調和がガタガタに崩れていたのでは意味がありません。キモチヨクナイノヨ。

もちろん、可能であれば、イコライザを適用する以前に、部屋の音響特性を可能な限り整える事も重要です。しかし、完璧に行うには多大な費用と労力を要し、一般的には対策の範囲も極めて限定されます。唯一現実的な方法は、ニアフィールドで聴く事です。

さて、では、彼らの言うところの「センド」とは何なのでしょうか。それは、「装置ソノモノから出てくるオトのコセーの際立ち度」と言う事でしょうか。写真でも、レンズマニアは写真ソッチノケでルーペに齧り付きで超微細なレンズのガシツに拘ります。それと似ているように思えます。

つまり、主たる興味の対象を「そこに記録されている音楽」に置くのか「ソーチそのもの」あるいは「ソーチから出てくるオト」あるいは「ソーチによって現出する諸々の付帯的現象」あるいは「それらのコセイとかアジ」に置くのかによって、イコライザに対する考え方が如実に違ってくるという事です。端的に言えば「音楽」を主体に考えるのか「ソーチ」を主体に考えるのか、という事です。

当ブログで再三書いたように、デジタルを音源とするならば、DAC以前のデジタル段で全ての処理を済ませる事により、位相の遅れなく最小限の信号劣化でそのような補正を、望むならば自動的に、極めて容易に適用できます。「音楽」を主たる目的としてオーディオ装置を使う場合(って、それが普通なんですけど)、TONO君の例のように部屋の影響を強く受けているようであれば、イコライザは大きな効果を発揮するでしょう。基本的なところが整った後、コマケー事をティマティマやる以前に、デジタル式であれアナログ式であれ、何らかのイコライザの適用を真剣に検討してみる価値は十分にあると思います。音楽再生において周波数特性の影響は何にも増して決定的です。アタリマエなんですけどね。

イコライジングを適用する際に何よりも重要なのは、絶対的な基準を明確にする事です。すなわち、まずリスニング位置で計測してみる事が必須です。計測に基づいてできるだけフラットに調整し、その状態で暫く素直に聴いて耳を慣らした後に、必要と感じれば自分なりに微調整すると効率的です。もちろん、自動補正が利用できれば非常に便利です。「ブツリトクセーはジューヨーではない」と言って憚らぬオヂオ業界人も多いですが、それはあくまでも「ソーチ」を主たる興味の対象とするかなり特殊な音楽との関わり方をするヒトビトの考え方であり、そうではないヒトビトはそのような言動に決して惑わされてはなりません。

フラットな状態を聴き慣れていない方がいきなり聴感だけでイコライジングするのは無謀です。基準の状態が分からないまま感覚だけで調整すると、それこそ富士の樹海グルグル必至でしょう。イコライザが正しく認識されて普及しない根本の原因はそこにあるような気がします。あ、それと、イコライザは簡単にイヂラレルので、今度は超微小な調整に没頭しだす危険性があります。イコライザ(equalizer)とは、読んで字のごとく「特性を均一化」するための装置です。基本的に好き勝手にイヂクリマースための装置ではアリマセン。あくまでフラット基準で、オコノミは必要最小限に留めておいた方が身のためですよ。後は音楽聴くダケ。メンドクサガリ屋さんになりましょう。

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テーマ:オーディオ
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