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2010年10月22日 (金) | Edit |
今回はバイノーラル方式について。

2. バイノーラル方式
音場の「再現性」という観点では、バイノーラル方式はステレオフォニック方式に比べて理論的にマトモでビューティフルな方式に思えます。実はステレオ方式よりもバイノーラル方式の方が先に提唱されたというのも頷けます(ステレオ方式は原理的にメチャクチャ エーカゲンで「再現」手法とは言い難い)。このため、正確な音場再現性が求められる研究開発分野ではバイノーラル録音が多く使用されます(自動車分野での適用事例はコチラ)。

下図に録音原理を示します。
612.jpg
この方式では、人間の頭部と肩部形状を模したダミーヘッド(マネキンの頭部)を使用します。マイクは両耳の位置に取り付けます。一般的な小型マイクを頭部の両側面に単純に取り付けるシンプルなものや、外耳道までリアルに再現して内部にマイクを埋め込むものなど、様々なタイプが存在します。当然ですが、耳タブや肩の影響も再現できる形状に設計されています(頭部だけのもある)。
614.jpg
前の記事にも書きましたが、人間はこれらの形状の影響を受けた音を左右の耳で聞き分ける事によって、音の方向を立体的に捉える事ができると言われています。ダミーヘッドを使用する事により、それらの影響を受けた耳位置の音をソックリソノママ録音してしまおうというのが、この方式の狙いです。

下図が再生原理です。
613.jpg
再生にはヘッドフォンまたはイヤフォンを使用します。耳位置で録音した音を、そのまま耳位置で再生するので、再生場(リスニングルーム)の影響を全く受けません。録音された時の耳位置での全方位の音(直接音も反響音も全て含む)をそのまま聴く事ができ、原理的には原音場を立体的に「再現」できます。細かい点ではまだまだ問題もあるのでしょうが、音場再現を目的とするのであれば、ステレオフォニックやサラウンド方式よりもずっと理に適った現実的な方法だと思います。

さてさて、音場の再現手法について長々と書いてきましたが、ではでは、一番肝心な「オウチで音楽を楽しむ」という目的において音場の再現性がそれほど重要なのでしょうか?

次回はそのへんについて考えてみます。

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2010年10月21日 (木) | Edit |
オーディオ愛好家の間では音場再現性が非常に重視されるように見受けられます。
そこで、音楽再生における音場の再現性について3回シリーズで書いてみたいと思います。

1.ステレオ方式
2. バイノーラル方式
3. 音場再現の必要性

という構成になると思います。

ということで、今回はステレオ方式について考察します。

1.ステレオフォニック(一般にステレオ)方式
実用的なステレオ方式がはじめて営業的に一般公開されたのはディズニー映画の「ファンタジア」(1940年)だそうです。その後まずハリウッド映画で普及し、ステレオ盤レコードが大量生産されるようになったのは1957年からだそうです(出典)。

下図はステレオ録音を模式的に示したものです。緑の楕円が複数の楽器で構成されたステージ上の楽団だと思ってください。簡略化のために、以降はこの楽団内で左寄りに配置されたトランペットだけを取り上げます。
610.jpg
ステージ前方に立った人間は、左右の耳の聞こえ方の違いによって、各楽器の方向を認識する事ができます。両耳の聞こえ方の違いは、両耳穴が横を向いている事、両耳穴間が離れている事、両耳穴の間に頭部が存在する事等によって発生します。さらに、頭部形状、耳たぶの形状、上半身(特に肩)の形状等による聞こえ方の違いから、左右だけでなく前後および上下の方向も認識できる(すなわち三次元的に音場を認識できる)と言われます。

ステレオ方式は専ら左右方向の聞こえ方の違いを表現するために発明された方式です。上図には2種類の録音方法を示しています。

最初の方法はステージの中央前方に2本のマイクを配置して録音する最もシンプルな方法です。現在の音楽ソースにおいて、このような方法が採られるのはクラシックの場合でも稀だそうです。適度な指向性を持つマイクロフォンを適度な角度で左右に開いて設置する事によって、その場に立った人間の左右耳の聞こえ方を簡易的に模倣しようというのが狙いです。単純に言うと、左寄りの音源の音は右側マイクよりも左側マイクの方に大きく録音されるという事です。マイクロフォンの指向性と配置角度によって左右の分離度も当然異なりますが、特に標準的な規格は定められていない模様です。また、人間の頭部形状等の影響を表現できないため、ヘッドフォンで再生してもバイノーラル方式のような立体感は得られません。この方式の場合、ホール壁面からの反響音も比較的多めに録音されるはずです。

2番目の方法は、ステージ上の各楽器の近くまたは楽団内部の各所に多数のマイクを設置するか、あるいは各楽器を独立したブースで録音して、後で2chへミキシングする方法です。ほとんどの音楽ソースがこのような録音方式を採用しているようです。この場合、各マイクの音をコンソールで適当に左右チャンネルへ振り分ける事によって、人工的に音源を配置します。この場合、録音に含まれる反響音は上記に比べて少なくなり、各楽器の音が細部まで聞き取りやすくなるはずです。最近はデジタル信号処理(DSP)によってホールの反射を人工的に追加したりもされるようです(ホールの各壁面の距離/反射率等から遅延量/減衰量を計算し、これに基づいて直接音に対して遅延した人工的反射音(エコー)を追加する)。

いずれの場合も、特に定められた規格もなく、また基準となる原則もなく、音を左右に適当に振り分けているだけだと言えます。従って、録音ごとに条件もまちまちです。また、記録された内容には、左右方向のみの一次元的な音場(と言えるのか?)情報しか含まれません。

下図は、そのようにして録音された音を自分の部屋で再生している状態を示しています。
611.jpg
機械的手段(すなわち2本のマイクロフォンを使用)または電気的手段(すなわちミキシングコンソールを使用)を用いて振り分けられた左右の音を、前方に設置した2本のスピーカで再生します。スピーカからリスナの耳の間には、部屋の音響特性(反射、定在波)が介在し、従って実際にリスナの耳に届く「音場」も、これまた千差万別です。また、左側スピーカから出た音は右耳にも届きます(クロストークが発生する)。

この方式では、左右で同音量に録音された楽器は真正面に定位し、例えば左チャンネルだけに音が含まれる楽器は表現可能な音場?の左端に定位します。この時、その楽器は左側ツイーター位置に定位するはずです(その楽器は左スピーカーからのみ聞こえる = その位置に定位する)。つまり、音場は原理的に左右スピーカの間に展開される事になります。

部屋の反響特性によっては、音場がさらに左右に広がったり、あるいは上下に広がってすら聞こえるそうですが、これらは部屋+スピーカー+リスナーの条件によってタマタマ生じる音場感であって、ソースに含まれるものではありません(ソースには左右方向の情報しか含まれない)。ましてや原音場の「再現」と言えるものでは全くありません。

以上のように考えると、ステレオ方式は原理的に「音場を再現する」とはとても言えず「音場を模造する」あるいは「音場を演出する」という程度のものに過ぎない事が分かります。

これを改善する方法として、ホール内の特定位置を中心とする例えば半径1mの球面上に指向性マイクロフォンを多数配置し、再生時にはこれと同じように配置した多数のスピーカに囲まれた球の内部で聴くという方法が考えられます(1m以内の半径であれば部屋の影響も低く抑えられる)。この方式を大幅に簡略化したのが、マルチチャンネルのサラウンドシステムだと言えます(前後左右の二次元的音場再生)。ご存じのようにサラウンドもハリウッド発の技術ですね。

次回は、原理的にはもっとマトモに音場を「再現」できると考えられるバイノーラル方式について考察します。

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