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2012年06月02日 (土) | Edit |
常識的サイズの一般家屋の部屋では、定在波の影響はほぼ500Hz以下で顕著に生じると考えて良さそうです。今回は、可聴帯域のほぼ全域を使う西洋音楽において、500Hz以下の領域がどのような位置付けにあるのかについて調べてみました。

まず、おなじみの代表的楽曲の周波数分布です(参考記事1参考記事2)。
ベトベン交響曲第5番第一楽章
bet5 copy

マドンナ Bad Girl
mad copy

青の領域が40~500Hz(暗い部分は40~100Hz)、黄の領域が500~10kHzです。緑の太線はラウドネス特性で補正した周波数分布を表します。つまり、人間が耳で実際に感じている音の大きさの周波数分布だと考えてください。なお、これは90dBを基準とする特性で補正していますが、音楽を聴く場合の一般的な快適音量である70~80dBを基準に補正すると、マドンナの補正特性は、もっと水平に近くなると思われます。また、ベト5のCDの信号周波数分布は、実際のホールの中央席付近で計測された生演奏の周波数分布と極めて良く一致している事も付け加えておきます(参考記事)。

以前にも書いた通り、我々が普段聴いている西洋音楽は、ベトベンであれマドンナであれ、ほぼ40Hzと10kHzの間で、高い音あるいは低い音に極端に偏る事なく、概ねバランス良く「人間の耳に聞こえるように」作られています(ズンドコのマドンナですら)。このため実際の(演奏またはソースの)音の大きさの周波数分布は、クラシック、ジャズ、ロック、ポップに関係なく、人間の耳には聞こえにくい低周波側の信号強度が高くなる右下がりの傾向を示します。このへんは日本古来の雅楽とは全く異なります(参考記事)。

人間は音の高低(周波数)と大きさ(音圧)を対数的に感じ取ります。例えば、現在一般に使われている平均律(12音階/オクターブ、ピアノの白鍵と黒鍵)の各音階の周波数を対数でプロットすると、全く均等な間隔で並びます。そのように周波数を対数で表した時、40~10kHzの中心は約700Hzにあります。つまり、そのように作られた西洋音楽において、500Hz以下というのは、耳で実際に感じられる総音量の半分近くを占めている事になります。

楽器音の帯域をネット上で拾ってきました。
18-1 copy
出典はコチラ。実線が基音帯域、破線が倍音帯域を示しています。500Hz以下は主に基音を受け持つ帯域と言えるかもしれません。

各種楽器と歌声の基音の帯域です。
oroson copy
出典はコチラ。500Hz以下の帯域は、多くの楽器および歌声の基音部を成す事がわかります。

コントラバスは500Hz以下の帯域にスッポリと収まります。ハチマルは、ジャズを聴く際にベースラインを基準とする癖があるため、この帯域がしっかりと正しく再生されないと、非常に気に障ります。

広大な帯域をカバーするピアノの鍵盤で見てみましょう。
275_20120602052810.jpg
赤はオーケストラのチューニングでお馴染みの440Hz(ラの音)の鍵盤です。ピアノを弾けないのでよく知りませんが、左手の受け持ちは500Hz以下の領域に収まるのではないでしょうか。

蛇足になりますが、ピアノソロの再生というのが一番難しいような気がします。たった1台の楽器で広大な帯域をカバーし、しかもパルシブな打撃音ですから、誤魔化しが効きません。また、箱の定在波等のスピーカの癖も、ストリングではなんか華やかに響いたとしても、ピアノソロでは不自然さが一発で露呈してしまいます。ピアノソロを聴く場合、ハチマルは、たった1本のフルレンジドライバで全域をフラットに位相遅れ皆無で再生してくれる馬鹿ブーZAP君を最も好みます。

以上からイメージできる500Hz以下の領域を視覚化すると、こんな感じでしょうか?
miro 1
オヘソを440Hzにみたてて、ウェストのくびれから下が500Hz以下の領域としてみました。あくまでもハチマルのイメージですけどね。ウェストが1kHz、オヘソが700Hzで、骨盤のデッパリから下が500Hzとイメージしても良いかもしれません。

いずれにせよ、部屋の定在波が顕著に表れる500Hz以下の帯域は、耳で感じ取られた音楽の全体構造の半分近くを占めている事は確かです。以前にも書きましたが、音楽に限らず、全体構造の均整あるいは調和が何よりも重要です。音楽再生においても、徒にディティールの泥沼に深入りする以前に、音楽作品が本来持つ全体の均整/調和をきちんと「リスナーの耳に届ける」事が何よりも重視されるべきなのは言うまでもないでしょう。

西洋音楽をこのように分析的に見るたびに思うのですが、構造的な重心は一般的にイメージされているよりも随分低周波側にあります。ハチマルは、齢50前にしてカナル型イヤフォンで本当の構造を感じ取る事ができた時に、甚だ遅ればせながら、はじめてその重要性に気付きました。それに反し、オヂオ業界が、万人のために、この重要極まりない低音再生の根本的クオリティを改善する事に全く努めず、さして重要とは思えぬヤタラ表層的/微視的なオンシツやリンジョーカン、聞こえるか聞こえぬかようわからん超高域再生、一般音楽愛聴者には非現実的としか思えぬハイエンドとやらにウツツを抜かして来た事に激しい違和感を覚え、メンドクサイけど仕方がないので自分で作ったのがLEANAUDIOシステムです。ドナイヤッチューネン、ホンマニ。。。です。

追記
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2010年11月18日 (木) | Edit |
部屋の定在波の影響は、半波長が部屋の寸法に対して同等以上になる100Hz以下の領域で顕著となります。例えば一般的家屋の平均的な天井高さ(2.4m)に対しては、2倍の波長(4.8m = 約70Hz)の定在波の影響が顕著に表れます。

一般的に波長が長くなるにつれて吸音は急激に困難になり、100Hz以下になるとちょっとやそっとの事では吸音できません。今回は、一般に市販されている吸音ボード程度ではこのような長波長音をほとんど吸収できないというオハナシ。

下図は旭板硝子のグラスウール化粧吸音材(厚さ約25mm)の吸音特性です。詳しくはコチラ
636.jpg
このデータは「残響室法」という測定方法で計測されたものですが、計測方法によっては吸音率はもっと低下します。異なるメーカーの製品データを比較する場合は、測定方法に気を付ける必要があります。オーヂオ用として売られている製品では、効能書きばかりでデータが公表されていないものが多いような気がしますが、きちんとデータが公表されている製品を選んだ方が良いかと思います。それがこの種の製品を製造するメーカーの基本的常識でもあります。

下図は別の吸音ボードを各種測定法で計測した結果です。
32_3z3.jpg
残響室法に比べて他の計測方法では吸音率が大幅に低下します。「垂直入射吸音率」とは、吸音材に対して音波が真正面から入射した場合の吸音率です。いずれにせよ、これらの吸音材では100Hz以下の定在波をほとんど吸収できない事が分かります。

このため、低周波まで吸音する必要がある実験用無響室では、グラスウールを整形した大きな楔形ブロックを壁面にびっしりと並べます。
634.jpg
6面を吸音した完全無響室
この楔形ブロックの寸法は、吸音したい下限周波数によって決まり、低周波まで吸音したい場合には巨大なものとなります。下図は旭板硝子のサイト(コチラ)に載っていた寸法算出方法です。

635.jpg
テーパー長 L1=λ0/5 (mm)
下限周波数の波長 λ0=V/f0
V=340000 (mm/s) ・・・20゚Cのとき
下限周波数 f0 (Hz)
ベース長  L2=L1/4 (mm)
頂角  α<40
100Hzの波長は約3.4m(波長/4=85cm)ありますが、この場合の壁面からのブロックの突出量は、先端をカットしたとしても60~70cmにもなります。50Hzだとその2倍。。。普通のオウチだと住むところが無くなります。

部屋の定在波のような低周波音に対しては、カーテンやカーペット程度では全くの問題外、市販の吸音ボードでもほとんど焼け石に水だという事が分かります。

このように、現実的なオーディオ環境において主として100Hz以下に顕著に表れる部屋の定在波というのは、極めて厄介者であると言えます。今まで再三言っているように、この影響を軽減する最も手っ取り早い方法は、耳に届く直接音の割合を単純に増やせる「ニアフィールド リスニング」です(スピーカーは小さくて近いに超した事はない)。

実際に部屋の定在波を吸収するには困難を極めます。上記の吸音ボードを屏風状にして楔形状を作る(楔の先端角度を40°以下にする必要あるので非現実的かな?)か、あるいは移動式のツイタテにして部屋を斜めに仕切る(平行面をなくす)ように設置すれば多少効果が得られるかもしれませんが、いずれにせよ専用の広いリスニングルームでもない限り非現実的な事には変わりありません。ましてや天井までとなると。。。気が遠くなります。

それよりも、F特ができるだけフラットになるようにスピーカーとリスナーの位置を慎重に選んだ上で(あるいはもっと手っ取り早くスピーカーへ近づいた上で)、最終的にデジタルイコライザで修正する方が余程現実的ですね。

ついでに。。。。
これはスピーカーボックス内の吸音材にもあてはまります。

僕の小さなポチ形ボックス(2.5L、奥行き21cm)では約800Hzに定在波が顕著に出ますが、箱が大きくなればこの周波数も低下し、吸音材の吸音率も低下します。
下図はJSPS研究所のサイトに載っていたフエルト材の垂直入射吸音率の測定データです(詳しくはコチラ)。
642.jpg
フエルトを2枚重ねると吸音率がぐっと上がる事が分かります(緑のライン)。しかし2枚重ねでも800Hzで約50%の吸音率しかないように見えます。また、200Hz以下は全く吸音していませんね。

以上、ご参考になれば幸いです。

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2010年10月19日 (火) | Edit |
前の記事の測定結果を計算で検証してみました。
計算ソフトウェアには以前にも紹介したStandwave2を使用しました(参考記事)。
ダウンロードはコチラ

下図がその設定画面です。
608.jpg
部屋の幅は作り付けクローゼット分を差し引いて3mとしています。このため僕の部屋は前後と左右の寸法がほぼ同じ正方形に近くなるため、音響的には良い状態とは言えません。各壁面の反射率は測定結果と比較しながら大まかに合わせ込みました。詳しいパラメータは図を拡大してご覧ください。なお、このソフトウェアは500Hz以下しか計算できません。(注意: デフォルトの反射率は部屋に家具類を置いていない空室状態を想定しているようなので、実測値に比べるとかなりライブな特性です。測定値と比べながら多少反射率を下げる事を推奨します。)

下図に140cm位置での測定結果と計算結果の比較を示します。測定には20Hzまでフラットな音響出力を使用したので、計算結果とそのまま比較する事ができます。
609.jpg
グラフの縦横のスケーリングを正確に合わせて測定結果と計算結果を重ね合わせてみました。赤が測定結果。黒が計算結果です。非常によく一致していると言えます。

この状態から部屋のサイズを左方、後方、上方に1m拡大した場合の計算結果を下に示します。スピーカとリスナの位置関係は変わりません。
606.jpg
部屋を後方に延長した場合に最も良い結果が得られそうです。この場合、部屋を縦長に使用して中央よりやや前寄りで聴いている状態になります。やっぱり広い部屋は良いですね。。

次に各壁面の反射率をゼロに設定して計算してみました。反射率をゼロにするのは現実的に不可能ですが、各壁面の影響の度合を見る事ができます。
607.jpg
この結果からは、後方の壁を吸音するのが最も効果的である事が分かります。しかし60Hz以下のゲインは部屋を大きくしない限りほとんど改善されないように見受けられます。

以上2つの結果を見る限りでは、後方の壁(すなわちスピーカーと対面する壁)の影響が大きいように見受けられます。この壁をできるだけスピーカーから遠ざける(部屋を縦長に使用して前寄りで聴く)か、吸音する(吸音は容易ではないので、ついたて等で斜めにする)と効果的かもしれません。ただし様々なパラメータが複雑に影響し合うため、この結論が全ての部屋に一般的に当てはまるとは限りません。全く逆の結論になる場合も十分に考えられます。ご興味のある方は、ソフトウェアをダウンロードして是非ご自分で試して見てください。使用方法は極めて簡単です。ダウンロードはコチラ

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