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2013年06月16日 (日) | Edit |
大福丸さまからのコメントに関連して、位相と時間について書きます。

ご興味のない方は最初だけ読んでスルーしてください。とってもヤヤコシーお話しです。

まず重要な結論だけ書きます。

特殊な状況を除き、低音は高音よりも「時間的」に遅れてスピーカから出て来ます。

入力(ソース信号)に対する出力(スピカの音)の遅れ度合は、位相的にも時間的にも、最もシンプルな密閉型フルレンジ システムで最小であり、システムにバスレフのヘルムホルツ共鳴やアナログ フィルタを追加すればするほど、スピーカから出てくる音の位相は入力信号に対してどんどん遅れます。

我々は、音楽のリズムを音と音の時間的間隔として感じ取り、メロディを音階(周波数)の時間的変化として感じ取ります。様々な周波数を含む音現象について考える場合、個々の周波数の「位相」ではなく「時間」を基準とする必要があります。

ヤヤコシー事言う前に実測波形をご覧に入れます。

これは、40Hzと5kHzの合成波の再生音響波形です。グレーのソース信号波形では40Hzと5kHzの信号が同時に発生します。赤はDACのデジタルフィルタを使った場合の音響波形、緑はプレートアンプ内蔵アナログフィルタを使った場合の音響波形です。どちらも、5kHzの音は殆ど「時間的」に遅れる事なく出て来ますが、40Hzの音は遅れて出て来ます。その遅れ度合は、アナログフィルタを使った方(緑)が大きくなっています。緑の波形の最後の方を見ると、5kHzの音は先に終わって40Hzの音だけが綺麗に残っている様子が分かります。なんだか気味ワルイですね。

あとはヤヤコシー話ばかりです。適当にスルーしてください。

次に、100Hzと1kHzの1サイクル正弦波信号を使ってシンプルに考えて見ます。
ここでは振幅1の100Hz信号と振幅1/2の1kHz信号を想定します。位相はどちらもソース信号から90°遅れているとしましょう。
下は横軸を角度としてプロットしています。
10 100 角度
赤が振幅1の100Hz、青が振幅1/2の1kHzです。グレーは信号波形です。位相はどちらも90°遅れですから、横軸を角度にしてプロットすれば、波形は同じ位置にあります。角度を基準にして見れば(つまり位相は)、どちらの周波数も同じ遅れ具合に見えるという事です。

下は横軸を時間としてプロットしています。
10 100 位相
時間でプロットすると、1kHz信号の遅れは非常に小さくなります。このように、位相角度は同じでも、高音の遅れ時間は周波数に反比例して短くなります。つまり、同じ位相的遅れを持つ100Hzと1kHzの信号を同時に入力すれば、先に1kHzの音がスピーカから出て来るという事です。

このようにして、低音は高音に対して「時間的」に遅れます。

しつこいですが、もう一例考えて見ましょう。
50Hzが180°遅れ、5kHzが270°遅れている(つまり高音(5kHz)の方が180°遅れている)場合の遅れ時間を計算すると、
50Hzの1周期(360°)は20msですから180°の遅れは、20ms x 180°/360° = 10msです。
5kHzの1周期(360°)は0.2msですから270°の遅れは、0.2ms x 270/360 = 0.15msです。
つまり低音(50Hz)がスピーカから出てくるタイミングは高音(5kHz)に対して8.5ms(距離にして約3m)遅れます。

複数の周波数が混じり合った現象(例えば、低い音と高い音、ドッチが遅れるの?といった問題)を考える場合、個々の周波数の位相情報はソノママでは使えません。何故ならば、位相値の基準である1周期(360°)の長さは周波数によって異なるからです。従って、このような問題は共通の基準である「時間」を軸に考える必要があります。

下は、2つ前の記事のバスレフ(フィルタなし)のシミュレーション結果から読みとった位相を基に作成したグラフです。
遅れる進む
シミュレーションのグラフの縦軸は上が進み/下が遅れでしたが、このグラフは逆にしています。すなわち、プロット値が高いほど「遅れ」ます。ややこしくてゴメンナサイ。
左軸-赤のプロットが、シミュレーションから読み取った位相(角度)です。高音ほど位相は遅れます。右軸-青のプロットは、位相角度から計算した遅れ時間です。低音の方がタイミングが遅れる事がわかります。

と、以上が「位相と時間」のお話しでしたが、位相に関しては、もう1つ注意すべき点があります。
それは「ナニを基準に考えるのか?」という事です。

よく音響関係では、位相は相対的な関係しか示さず絶対的な基準はナイ。。。とされ、グラフもそのように適当にプロットされます(±180°折り返す)。これがハナシをややこしくします。僕も随分悩まされました。

以下に示す模式図は、随分以前の記事(コチラ)に掲載したものですが、2つ前の記事のシミュレーション結果と照らし合わせながら見ると良く理解できます。

下図は密閉型の位相変化を模式的に示しています

このグラフでは、シミュレーションの図と同様に下方ほど位相が遅れます。注意してください。
密閉型では位相は-180°回転し、共振ピークでの位相は-90°です。破線は吸音材を大量にブチ込んだ状態です。ここでは気にしないでください。

下図はバスレフ型の位相変化を模式的に示しています。

インピダンス ピーク1つあたり-180°回転し、低周波側ピークの位相は-90°です。ヘルムホルツ共鳴点の位相は-180°、2つめのピークの位相は-270°です。周波数が高くなると位相は360°に漸近します。

下図はバスレフにアナログフィルタを追加した状態です。
バスフィル
アナログフィルタによって位相はさらに-180°回転します。カットオフ周波数(実線では300Hz)での位相は-90°回転します。従って、360°回転するバスレフ型と組み合わせた場合、クロス周波数での位相は-450°回転します(遅れます)。そして、高周波側で-540°に漸近します。破線はカットオフ=100Hzの位相を示しています。カットオフをスピカの共振周波数近くまで下げると、このように位相が急激に回転します。

このような位相グラフを見る場合、考え方の基準を「限りなくゼロに近い周波数」に置く必要があります。つまり、グラフのずーーーと左の果ての位相が基準です。周波数が限りなくゼロに近付くと、位相の回転も限りなくゼロに近付きます。この状態を「遅れナシ」の絶対的基準状態として考える必要あるという事です。つまり、これがソース信号の位相です。重要なのは「入力(ソース信号)に対する出力(スピカから出てくる音)の遅れ」ですからね。

高音側を基準に考えると間違います。僕も以前は間違って考えていました。
進んだ
高音側を基準にして密閉型(ピンク)とバスレフ+フィルタ(緑)の位相曲線を重ねて見ました。これを見ると、バスレフやフィルタによって「低音の位相が進む」ように見えます。
僕は実験屋なので、まず理屈抜きの現象として低音が「時間的に遅れる」という事を波形観測から知っていました。このため、グラフの縦軸を上下逆に読む(上が遅れると読む)という間違いを犯しました。

正しくは、上で述べた「遅れナシ」(つまりソース信号の位相)を絶対基準として考える必要があります。入力に対する出力の遅れを見たいワケですからね。
実は遅れた
そうすると、上図のようにアナログフィルタやバスレフによって位相は全体的に遅れます。

ただし、これはあくまでも「位相角度」です。「時間的遅れ」を表すものではない事に注意が必要です。一般的に高音の位相は低音に比べて遅れますが、時間的には高音の方が進む(低音の方が遅れます)。アーヤヤコシイ。。。。

密閉型に吸音材をタップリとブチ込み、前記事に書いたように位相が実質的に全く回転しないデジタルフィルタを使えば(つまりシステムの共振現象を殆ど無くせば)、こんなヤヤコシー問題に頭を悩ます必要は無くなります。

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