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2012年01月05日 (木) | Edit |
昨日は仕事が手に付かず、ちょくちょく中断しながらAlpair 10をざっと計測してみましたので、結果をご紹介します。

ソモソモAlpair 10を試して見ようと考えたのは、今まで試した13cmウーハ(DynavoxのPPコーン、六本木およびDaytonのアルミコーン)の超低音再生能力はAlpair 6M x2本とほぼ同等であり、従って、そのような13cmウーハーを使用して2.1ch方式にしても、馬鹿ブーストに比べて低音再生限界は殆ど向上しなかったためです(関連記事)。これらの一般的なウーハのカタログ上のXmax(振動板の最大振幅)はおしなべて3mm程度しかありません。

ちなみに、Xmaxと有効振動板面積の積(仮にVmaxと呼ぶ)はそのドライバの有効最大行程体積(エンジンの排気量のようなもの)に相当し、純粋に機械的に考えるならば、このVmax値が低域再生能力に直接関係するはずです。計算してみたところ、A6M 2本のVmax値と、Xmax=3mmの一般的13cmウーハ1本のVmax値はほぼ同等であり、これは上記の結果と対応しているように思えます。

マークオーディオ製フルレンジドライバのXmaxは同径の他社製品に比べて極端に大きく、13cmクラスのAlpair 10フルレンジのXmaxのカタログ値は7.5mmとなっています(標準的13cmウーハの2倍以上!A10ウーハーバージョンでは9.5mm!)。上記の推論に従えば、A10は大振幅が要求される超低音領域の再生能力に非常に優れているのではないかと単純に予測できます。ただ、メーカによってXmaxの定義が異なる可能性もあり、また、磁気回路側の限界も影響すると考えられるため、そのへんをどうしても確かめてみたいと言う純粋な興味から、昨年Alpair10を1本だけ購入しました。実用上はA6Mの馬鹿ブーでも十分に満足しているのですが、実験君としては確かめずに居られなかったという事です。悲しい性ですね。

という事で、今回は約7.5Lの実験用密閉箱(Victor製パワードサブウーハの箱を流用)を使用して実験君開始です。第1の目的はAlpair 10の超低域再生能力を確認する事ですが、今回は容積の影響も調べてみました。デスクトップで使うので、どこまで箱をコンパクトにできそうか、大まかな傾向を掴もうというのが狙いです。

下が今回使用した実験用箱です。
_1000118.jpg
この箱は板厚12mmのパーチクルボード製ですが、フロントバッフルに板厚12mmの合板を接着して補強しています。とりあえず、オーディオテクニカのインシュレータを使用してデスクトップに設置しました。中に文庫本を詰め込んで容積を調整します。

まずはF特です。計測距離は25cmです。グラフは全てクリックで拡大できます。
Ftoku_20120103173627.jpg
黒がAlpair 6M (2.5L吸音材タップリ)です。赤と青がAlpair 10です。赤は容積7.5Lですが吸音材を最小限しか入れていません。青は文庫本を大量にブチ込んで容積を約4.5Lに減らした吸音材タップリ仕様です。7.5Lの吸音材タップリ仕様は4.5LのF特と殆ど一致するのでグラフには載せていません。

さて、まずA6とA10を比較してみましょう。吸音材タップリ同士の黒(A6M、2.5L)と青(A10、4.5L)を比べます。A10の100Hz以下のレスポンスが約6dB増加している事が分かります。この差は大きいです。このため、ブーストしなくてもソコソコ音楽を楽しめますし、フラットにする場合のブースト係数を大幅に低減できます。スピーカの設置位置(デスクトップからの高さ)が同じではないため、200Hz~2kHzの範囲のF特の細かい凸凹は無視してください(デスクトップ反射音の影響が異なるため)。

5kHz以上の高域ではA10の方がフラットな特性を示しています。メタルコーンでは一般的に高域に特徴的なピークが発生するとされます。A6Mでは10kHzに振動挙動の変わり目と思われるディップが明確に存在します。Alpair 5では15kHz近辺に強いピークが見られましたし、六本木およびDaytonのアルミコーン ウーハにも強いピークが発生します。それらに比べるとAlpair 10の特性は素晴らしくフラットであると言えます。

A6Mは全体的に緩いカマボコ状の特性を示すため、例えばA5やA6Pと聴き比べると少し癖があるのですが、A10の特性は計測前の聴感評価からも予測された通り全体的に非常にフラットです。ただし基本的な音のキャラは、どちらも僕の愛して止まぬニュートラル/明瞭/ナチュラルなメタルコーンAlpairサウンドである事に全く変わりなく、シリーズとして非常に一貫性が保たれているように感じます。

次に、A10の赤(7.5L、吸音材少量)と青(4.5L、吸音材タップリ)を比較します。吸音材を少なくすると、ドライバの機械的共振によって100Hz前後のレスポンスが増加しています。スピーカのインピーダンスのピークがこの辺りにあるという事です。7.5L吸音材タップリ仕様の特性は、4.5L吸音材タップリ(青)と殆ど変わらないため、グラフに載せていません。つまり、吸音材をタップリとブチ込むと、共振効果が殺されるため(インピーダンスのピークが平になるため)、容積を変えてもF特にはあまり影響しないという事です。

下はAlpair5での計算結果です。吸音材なしの状態と考えてください。
567_20120106081630.jpg
密閉箱で容積をどんどん小さくした時の特性変化を示しています(最小0.2L)。容積を小さくするとスピーカのインピーダンス曲線が平坦になり、共振領域のレスポンスだけが低下する事がよく分かります。吸音材を大量にブチ込むと、容積が大きくてもインピーダンス曲線が平になるため、容積による特性変化はもっと小さくなります。

過去の経験から、ハチマルはどうもこの共振領域の音が気に入らないらしく、吸音材タップリを好みます。基本的にデジタルイコライザを使うので、何かとややこしい共振や共鳴を利用して低域特性を稼ぐ必要はありません。エンジンの吸排気系でもそうなのですが、共鳴現象を利用すると特定周波数(特定回転数領域)でメリットが得られる反面、一般的に好ましくない現象も伴うため、使わずに済むなら使わないに超した事はありません。デジイコを使うならば、わざわざリスクを背負いながら密閉型の機械的共振や、バスレフ型のヘルムホルツ共鳴を利用する必要は無いという事です。

という事で、F特を見る限り、容積は4.5Lでも問題無さそうですが、肝心の超低域の波形(歪み)や位相遅れの問題はどうなのでしょうか?と。。ここからがいよいよ本題です。

下は40Hzの正弦波を再生した時のスピーカ出力波形です。これも前方25cmにマイクを設置して計測しました。
sine.jpg
黒がA6を2本使用した時の波形です。ボリュームをかなり上げているので、主に3次高調波によって音響波形が大きく歪んでいます。赤と青がA10一本だけの波形です。赤は7.5L吸音材少量、青は4.5L吸音材タップリ。この周波数領域はドライバの機械的共振領域の外なので、両者の間に殆ど差は見られません。A6Mと同じ絶対音量レベルでは綺麗な正弦波形状が保たれています。今まで試した13cmウーハ1本では、A6M 2本と同等に歪んでいましたので、この時点でAlpair 10の優位性は確定です。ヤタ!さらにボリュームを思いっきり上げてみましたが、波形が大きく歪む兆候は見られず、ズンと重い「音」を発生してくれます。スゴイ!

40Hzのまともな正弦波音をここまで大ボリュームで聴いたのは始めてです。これ以上ボリュームを上げると、デスク周辺が振動してスピーカ以外のアチコチから音が出始めるので、限界を見極めるのは諦めました。「春の祭典」でも全く問題なく再生できるのは明らかです。頑丈な箱を作って、窓枠にしっかりと固定したら本格的に評価してみたいと思います。しかし、ハチマルの実用レベルでは、どんなにボリュームを上げてもAlpair 10の限界に達する事はないでしょう。

下はFFTの結果です(40Hz正弦波、ほぼ同一音量)。
FFT.jpg
黒がA6M x2本、赤がA10 7.5L吸音材少量、青がA10 4.5L吸音材タップリです。A10では3次歪みが劇的に低下し、4次、5次、6次でも顕著な改善がみられます。基本的に赤と青は殆ど同じですが、5次の高調波だけ4.5Lの方が低くなっています。

2次高調波は振動板の前進方向と後退方向でバネ特性が異なる事に由来すると思われ、振幅の増加に伴って増加します。これはプラス側とマイナス側で波形が対称にならないA級真空管アンプではお馴染みの歪みです。基本的に2次歪みが多少増えても聴感的には余り気になりません。これに対し3次が2次と同等くらいまで増加すると、明らかに音が違って聞こえ、波形も明らかに変形します。ハチマル基準では、3次が2次と同等レベルになった状態を一応の限界の目安としています。

空気バネは非線形であるため、容積を小さくすると2次歪みが増加するのではないかと予測していました。今回の結果を詳しく見ると、小容積の4.5Lでは2次と4次が若干増えるものの、3次と5次は逆に低下するため、容積を減らしても問題無かろうと思われます(ヒトは偶数次よりも奇数次の歪みを嫌うと一般的に言われますしね)。

なお、上図のFFTの縦軸は対数です(1目盛り20dB)。A6Mだけを縦軸リニアで示すと下図のようになります。
fftliny.jpg
基本周波数成分(40Hz)に対する3次高調波成分(120Hz)の大きさは約8%程度です。その他の高調波成分はほとんど見えません。

さらに、以前の記事で使用した、パルス入りの40Hz正弦波も再生してみました。色分けは他のグラフと同じです。今回の計測には全てIcon AMPを使用しています。
pulse.jpg
小径のA6Mに比べてA10の低音の位相が遅れるという事も無さそうです。また、A10の容積/吸音材違いによる差も殆ど見られません。信号の先頭部および末尾で若干A10の方がオーバーシュートが大きいようですが、Frieve Audioで補正すれば劇的に改善されるはずです。

という事で、Alpair 10の超低音再生能力は予測通り素晴らしく高そうです。馬鹿デカイXmax値は伊達ではないと言えましょう。「ウーハ」として売られている製品よりも、20kHzまで全くフラットに再生できる「フルレンジドライバ」の方が低音再生能力が遙かに高いというのは一体全体どういう事なんでしょうか? マークさん???

買ってみてよかった!

Mark audio Alpairの巨大なXmaxは、このようなヤクザな使い方を想定したものではなく、常用域でのリニアリティとコンプライアンスを可能な限り高めようとした結果だと思われますが、奇しくもハチマルLEANAUDIOにとってはこの上も無く有り難い特性だと言えましょう。Alpairのポテンシャル恐るべしです! イヤホンマ。8cmクラスのフルレンジドライバ(Alpair 6M)を馬鹿ブーストしただけでで十分に音楽が楽しめているのもAlpairだからこそ、と考えて宜しいかと思います。他社製同クラスの小径フルレンジで同じ事ができるかどうかは甚だ疑問です。

さて、本格的に頑丈な箱を作らねば。。メンドクサ。。容積は4.5Lで良さそうですね。剛性を稼ぐためにポチと組み合わせて一体型の2.1chボックスにしようと思います。ZAP君最終形態です。もうホントに春の祭典でも矢でも鉄砲でも持ってきやがれなシステムが完成します。それでスピーカ本体の開発は完全終結。絶対にオシマイ。のはず。。。


追記
ランキングが3位まで上昇していました。久しぶりです。応援ありがとうございます。でも、お年玉はもう十分ですよ。どうかブログ村の趣旨に則って応援してくださいね。

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2011年10月12日 (水) | Edit |
英語版に掲載したデータを転載します。

僕のコレクション中で最強の低音信号であるストラビンスキー「春の祭典」(シャイー指揮/クリーブランド)の超絶バスドラをなんとかやっつけたどー。という自己満データです。

haruru.jpg
haruwave.jpg
haru wave2

グレーがCDのソースデータ、赤と青がリスニング位置でマイクロフォン(モノラル)で計測した実際の音です。赤は超低音をウーハーでアシストして30Hzフラットにイコライジングした最強仕様、青がAlpair 6Mだけでイコライジング全くなしの素の状態です。以前の記事に書いた「耳に届く音を信号波形から歪ませている最大の要因は、特に小型のスピーカの低音特性の減衰(ロールオフ)にある」という意味がよくお分かり頂けると思います。

プリのボリュームは最大です。この時リスニング位置で計測した音圧レベルは概ね75~85dBAの範囲で変化し、SLOWフィルタで計測したピーク音圧レベルは91dBA(高音の金管パート)でした。僕としては、かなりの大音量です。家内の外出中に計測しました。これは、以前の記事で紹介したホール中央席におけるベト5第一楽章の最大音圧レベル(単純なピーク値で89.9dB、Aフィルタなし)を余裕で超えています。

ご覧のように、スペクトル、生波形ともにソースに非常に良く一致しています。スペクトルをよく見ると、127Hz前後に3次高調波の影響が少し見られます。また180Hzには、イコライザでは補正しきれなかった部屋の影響による急峻なディップが見られます。

このような超低域(約40Hz)の極めて強烈なアタック音をこのように正確にリスニング位置で再現できるというのは、なかなか大したもんだと思います。通常はカナル型イヤフォンか密閉型のモニタヘッドフォンでもない限り聴けません。古典的スピーカの場合、共鳴点が40Hz以下の最大級バスレフ型でもない限り正確な再生は困難であろうと思われます(通常サイズのバスレフ型では低くて大っきなナンカの音が出ているという程度。位相の遅れはもちろん、ソース信号と並べてもどの山がソースのどのピークに対応するのかすら定かではなくなる程波形は変形し、果ては基本周波数すら一致しなくなる)。さらに、そのような大型スピーカを小さなお部屋にぶち込んで離れて聞く場合、この周波数領域では部屋の定在波が猛威を振るうため、正確な低音再生はさらに困難となります(部屋を何度も行ったり来たりした音を聴く事になる)。通常の古典的スピーカシステムを通常の部屋で離れて聞いている場合、超低音ではレスポンスがあっても波形はかなり出鱈目であると考えた方が良いでしょう。

ということで、自分の限界ボリューム設定でコレクション中最大最強の低音を退治できたと言えましょう。まあ、ここまで来ると単なる自己満ですけどね。「春の祭典」自体は滅多に聴かないのでドーデモヨイのですが、プリ全開でも全コレクションの低音をズッコケなしで正確に聞けるという安心感は大きいです。マドンナのズンドコくらい屁でもありません。究極の最悪条件でも十分に良好な結果が得られた事から、通常の音量(プリ開度1/2~3/4程度)では30Hzまで完全にフラットにしても全曲を十分以上に高品位な低音再生で楽しめていると自信を持って言えるという事です。アンシン アンシン。

追記
クラシックのオーケストラ曲の場合、低音部におけるタイムドメイン的正確さはさほど重要であるとは感じない。量感があればOKなような気もする。これは、もともと広いホールで比較的離れて聴く事を前提に製作された音楽だからであろう。そういう意味でも、交響曲には真面目に録音されたバイノーラル盤の出現を切に望む。ホールという巨大な楽器の内部で聴いている状態を表現するには、ステレオ方式ではどうあがいても無理。土台ムリ。それなりに受け入れて聴くしかない。無理にやっても所詮は嘘っぱち。交響曲の再生は別格だと思う。

ただしクラシックでもピアノ曲は全く別。ピアノの再生ではタイムドメイン的にビシッとバシッとしてないと気色悪い。そいえば、関係ないかもしれないけど、カセットテープの時代にピアノ曲ではワウフラが非常にシビアに感じられた事を思い出した。ピアノの再生は難しいと思う。全てアタック音で、しかも音域がやたら広いからだからだろう。

ジャズ等の場合、低音部はほぼビート(ピアノ含む)で構成され、とりわけジャズではこのビートの絶妙な「ノリ」(グルーブ、スイング)が極めて重要であるため、タイムドメイン的にビシッとバシッとしていると俄然楽しめる。ビシッとバシッとしないと気色悪い。そんなスピーカはハンマーで破壊したくなる。

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2011年10月10日 (月) | Edit |
英語の要約版の末尾に掲載したLEANAUDIOアプローチに関する「注意書き」を和訳して掲載します。

基本的に、デジタルブーストは50Hzまでに留めておく事をお薦めします。この場合、レスポンスは50Hzから12dB/Octで減衰し、概ね-10dB/30Hzの特性が得られます。この設定にしておけば、特別な配慮を必要とせずに大概の音楽を安心して聴くことができます。Alpair 6Mは50Hz以上では極めてタフです。通常、この周波数特性で十分に満足して音楽を楽しめるはずです。

理想目標を掲げるならば、-3dB/40Hz程度がリーズナブルであろうと思います。私の経験では、これ以上特性を伸ばしても、効果はほとんど感じられません。実際、私は普段音楽を聴く際に、40Hzまでフラットにイコライジングし、35Hzから20Hzにかけて急峻なローカット フィルタを適用しています。

超低域(<50Hz)では、振動板の振幅は劇的に増加します。まるで別世界と言っても良いかもしれません。私は、ある意味、純粋な技術的挑戦としてこのような超低域の再生に取り組んでいます。私のように、超低域の再生を試みる場合、危険な楽曲のスペクトルを把握し、なによりもシステムの限界を熟知する事が重要です。さもないと、ドライバを破損してしまう可能性すらあります。

また、リスニング位置がスピーカから離れている場合(すなわち、ニアフィールド リスナーでは無い場合、例えば部屋の中央より後で聴いている場合)、部屋の影響で50Hz以下のレスポンスが増加します。このため、スピーカで30Hまでフラットに再生すると、低音過多でブーミーに聞こえてしまう場合があります。

超小型のシステムを比較的大音量で使用する場合、ドライバを保護するために、ケロのような急峻なローカット フィルタの適用をお薦めします。


英語版LEANAUDIOはコチラです。

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2011年09月21日 (水) | Edit |
前の記事からの続きです。今回は50Hz以下の超低音の再生波形を確認してみました。LEANAUDIOでは50Hzより下を「超低音」と呼ぶ事にしますね。なお、今回でスピーカシステムの開発は一端終結します。その締めくくりとして長文となってしまいました。ご容赦を。。

今までに再三申しているように、LEANAUDIOでは音楽再生装置の最低要件として50Hzまでフラットな低域特性を掲げています(密閉型による-12dB/Octの減衰を前提とする: 30Hzで-10dB程度)。ジャズやロックを聴く場合、この要件を満たしていれば十分に楽しめるように思えます(これ以上伸ばしても嬉しさはあまり感じない。それよりも低音ビートの位相が重要)。しかしクラシックの交響曲を聴く場合(ほとんどベトベンしか聴かないが)、レスポンスがそれ以下に伸びていると微妙に嬉しく感じる事があります。FOSTEXによると、これは「弱音で演奏される低音楽器のうなりや響き」というヤツだそうで「フルオーケストラの醍醐味のひとつ」としています。

以上を念頭に、今回は下記の条件で計測してみました。
1) 音量はハチマル快適音量の上限
- 約65cmのリスニング距離におけるベト5第1楽章の最大音圧レベルで約80dBA相当(参考記事)のアンプ ボリュームとする
2) 現実的な信号レベルとして、フルスパンに対して-6dBAの正弦波信号を再生
- CDにフルスパンの純正弦波が記録されている事はまずないため(参考記事)
- ハチマル コレクションの最強低音である「春の祭典」(シャイー指揮/クリーブランド、参考記事)のバスドラピークでも35Hz/-12dB程度(参考記事))

以下、スピーカ前方約20cmで計測した波形です。赤がAlpair 6M 2本の馬鹿ブースト、青がDAYTONウーハです。両者の絶対音量は同じに調整しています。クリックで拡大してご覧ください。

50Hz
875.jpg
両者ほぼ同等。どちらも、不安になるくらい音量を上げても顕著には崩れません。下段のFFTを見ると、DAYTONの方が2次、3次の高調波成分が少し低い事がわかります。

40Hz
874.jpg
これも両者ほぼ同等ですが、波形が明らかに歪んで尖ってしまいました。FFTを見ると、3次の高調波が強い事がわかります。ボリュームを少し下げれば正弦波に近付きます。40Hzまでは余裕で正確に再生して欲しいと思います。Alpair6Mはともかく、ウーハにはも少し頑張ってもらわないとね。今後の課題だな。

30Hz
873.jpg
波形はさらに崩れます。Alpair 6Mは4次の高調波が強く出るために、DAYTONよりも歪んで見えます。どちらのドライバでも、ボリュームを下げて行くと40Hzと同様のトンガリ波形を経て正弦波に戻ります。50Hzでもボリュームを思いっきり上げると、波形が尖り始めます。つまり、周波数が変わっても歪みのパターンは同じだと言う事です。なお、周波数が30Hzまで下がると、フルスパン信号をカナル型イヤフォンで聴いても微かにしか聞こえないので、ここまでの低周波はあまり重視していません。Frieve Audioでは振動板の無用な振幅を避けるために30数Hzから20Hzにかけて急峻にローカットしています。

以上から下記が言えます。
1) DAYTONウーハ 1本とAlpair 6M 2本はほぼ同等か、ややDAYTONが優れる
2) 両者とも50Hzまでは十分な余裕を持つが、それ以下では高調波が急激に目立ち始める
3) 歪みのパターンはドライバが変わっても周波数が変わっても基本的に同じであり、単純に振動板の「振幅」によって支配されているように見える(歪みの主要因はスピーカの構造的限界(大振幅時の非直線性)に起因するらしい)
- しかし、何故波形が尖るのか? 不思議。。普通に考えれば、振幅が頭打ちになって波形は丸くなると思うのだが。。。調査が必要。

-6dBの単音正弦波というのはかなり厳しい条件であり、通常、50Hz以下の信号レベルはそれほど高くないため、大概の楽曲の再生では聴感上問題ありません。特にベトベン交響曲やアコースティック ジャズでは50Hz以下の信号レベルが十分に低いため、30Hzまで馬鹿ブーストしても歪み領域に全く入りません。また、古典ロック(新しいのは知らない)も、50Hz以下の重いビートは意外と含まれていません。

ハチマルのコレクションの中で最強の低音は、再三取り上げた「春の祭典」の中に1発だけ含まれている超絶バスドラ(曲中他のバスドラは問題なし)と、マドンナの曲中延々と通奏されるズンドコ ビートです。これらの楽曲を再生して波形を確認してみました。

手順は下記の通りです。
1) 音量をハチマル快適音量の上限に調整
- 実際の曲を普通に再生し、約65cmのリスニング距離における大音量時の平均的音量が75dB~80dBになるようにアンプのボリュームを調整。普段は平均75dB前後、あるいはそれ以下で聴いているので、かなり頑張ったボリュームです。家内のイエローカード必至の音量。
2) 楽曲の問題の部分だけ(数秒間)を抜き出したWAVファイルを作成(左右をミックスしてモノラル化)
3) 高調波の発生を見やすくするために、Frieve Audioで60Hz以上を急峻にカットして、上記で決めたアンプ ボリュームでリピート再生

結果は以下の通りです。

マドンナの Erotica
数秒間を抜き出したサンプル音源のスペクトル
mad spe
約45Hzのビートが曲中延々と続きます。ピーク信号レベルは-12dB弱。マドンナの曲の典型的パターンです。

下がスピーカ前方で計測した波形です。
青がソース信号の波形、赤がマイクロフォンで計測した出力波形です。

Alapri6M馬鹿ブースト(30Hzフルフラット)
baka_mad copy
Daytonウーハー
sub_mad copy
どちらも、顕著な高調波歪みは観測されません。ズシッと重くてビシッとタイトなビートを聴くことができます。3"クラスのフルレンジSPだけでこの低音を再生するとは、Alpair 6M君は頑張りますね。凄いぞ。
なお、マイクは手持ちですし、環境騒音が結構影響するため、波形の細かい部分はサイクルごとにかなり変動しています。多少の波形の変形は多めに見て下さい。

春の祭典 第一楽章
最強バスドラ1発だけを抜き出したサンプル音源のスペクトル
haru spe copy
この1発のバスドラだけを抜き出すと、ピークは約40Hzに表れます。ピークレベルは-12dB弱ですから、ソース信号レベルとしては上のマドンナとほぼ同等です。しかーし、この曲は最強バスドラを収録するためにダイナミックレンジが非常に広い(すなわち、平均的な録音レベルが非常に低い)ため、上記の平均音量に設定するにはアンプのボリュームを大幅に上げる必要があります(プリのボリューム位置で比較すると、マドンナが約1/2開度に対して春の祭典はほぼ全開!)。ですから、ソース信号レベルが同じでも、スピーカに入力されるパワーはマドンナの比ではありません。この最強バスドラは全く尋常ではありません。

Alpair6M馬鹿ブースト(30Hzフルフラット)
baka_haru copy
DAYTONウーハー
sub_haru.jpg
注: 横軸のスケールはマドンナとは異なります。
吸音材たっぷりの密閉型なので基本波形をかなり正確に追従しますが、さすがに、このアンプボリュームでは高調波出まくり状態です。尖りモードを飛び越えて4次の高調波が顕著に出ています。しかしAlpair6Mは頑張りますね。偉いぞ!
この曲中の、これ以外のバスドラは難なく再生できますが、この1発だけはどうしようもありません。この曲を聞くときは、最強君のところだけボリュームを下げるか、イコライザで50Hz以下を減衰させるしかありません。それともWAVファイルをここだけ編集するか。。。
680_20110921045633.jpg
赤はブーストなし、青はフルブーストで再生したAlpair6Mスピーカ出力波形。一箇所だけ青の振幅がデカイのが問題の1発です。上の波形グラフは1本抜きん出ているヒゲの部分を時間軸方向に拡大したものです。このように強烈なのは全曲中1発だけ。こいつのために全体の録音レベルが低くなっています。他の盤ではどうなんでしょうか?

そこそこ大型のスピーカでも、この最強の一発をサイズに見合ったそれなりの音量で正確に再生するのは簡単ではないと思います。特にバスレフ型だと、余程大型のもの(共鳴点が40Hz以下、JBLだと4365以上)でないと、波形はかなり崩れるでしょう。どうあがいても、穴っぽこから噴出する音と振動板前面から直接送り出される音は異なります(特に打撃音)。

自分が聴く楽曲、自分が聴く音量がはっきりと限定されており、システムの限界を認識した上で使用するのであれば問題無いのですが、このようなシステムを広く一般に製品として市販する場合、そうも行きません。どのような楽曲でも(例え春の祭典でも)大音量で破綻せぬ事を保証するために、例えば50Hz以下を減衰させるローカット フィルタを適用べきであると言えます。実際、Victor製13cmパワード サブウーハのアンプは約50Hzのローカットフィルタを実装しています(解除不能)。このアンプは現在ケロに使用しており、その特性は下図のように50Hz以下で急激に減衰します(密閉型なのでフィルタが無ければ-12dB/Octで減衰するはず)。
577_20110919071343.jpg
余談となりますが、デジタル信号処理をフルに活用すれば、振幅がある一定量を超えぬように制御しながらドライバの能力をギリギリまで使い切る事ができるはずです。最も単純な方法として、アンプのボリュームと連動したイコライザ設定が考えられます(ボリュームと連動して低域信号レベルを制限する事により、振幅を安全な範囲に保つ。低ボリューム時はフルフラット)。さらに進めれば、波形を先読みしながらダイナミックに処理する事もできます(例えば、春の祭典の最強バスドラだけ信号レベルを少し下げる)。そのような方式を前提とするならば、ハードウェア(スピーカ)の設計自由度も大幅に向上するはずです。ソースだけ、アンプだけ、スピーカだけというのではなく、信号入力から音響出力(さらにルーム アコースティック)を含むシステムトータルで考える事により、音質(音楽再生クオリティ)、サイズ、コストを飛躍的に改善できるはずです。スピーカ屋はスピーカだけ、アンプ屋はアンプだけを見るのではなく、トータルなシステムで考える事が重要です。システムの中で最も大きな問題を抱えるのがスピーカ(さらに言えば部屋の音響特性)であり、この弱点をシステム全体で補う事が肝要かと思います。

さて、上記したように、このような超低域での高調波歪みは、振動板振幅とドライバの構造的限界(直線性の限界)の関係に支配されると考えられます。これを改善する方法として、同一振幅でも低音レベルを上げられる大径ドライバを使用するか、あるいはドライバの数を増やすのが最も直接的です。これとは別に、サイズ据え置きでドライバの構造的限界(線形性をある程度維持できる最大許容振幅: Xmax)を向上させる方向性があります。コンパクトさを追究するLEANAUDIOでは当然後者の方向性に興味が向かいます。そこで、2つ前の記事で紹介した各ドライバの公称Xmax値を調べてみました。

MarkAudio Alpair10v2 13cmフルレンジ: 7.5mm
HiVi M5a マグネシウム・アルミ合金 13cmウーファー: 3mm
DAYTON AUDIO DA135-8 13cmウーファー: 3mm

MarkAudio CHR-70v3 10cmフルレンジ: 4.5mm
MarkAudio Alpair 6Mフルレンジ: 3.4mm
HiVi M4N メタルコーン10cmフルレンジ: 3mm

FOSTEX M100HR-W: 不明

10~13cmクラスだと、判で押したようにXmax = 3mmと記載しているドライバが多く、あまり重視されていないように見受けられます。これに対し、Mark Audioは常にXmaxを重視する姿勢を前面に打ち出し、カタログ値を見る限り同サイズのドライバに比べてXmax値が異様に大きくなっています。13cmクラスで見るならば、HiVi M5aおよびDAYTON AUDIO DA135-8がともに3mmと記載しているのに対し、MarkAudio Alpair10v2は7.5mmを掲げています(実に2.5倍!)。以前製造されていた13cmのAlpair 10ウーハのXmaxは9.0mmにも達します。これは別にズンドコを狙った物ではなく常用振幅領域での直線性を重視した結果だと思われますが、ヤクザなLEANAUDIOコンセプトにとっても好適なドライバであると言えそうです。

メーカによってXmaxの定義や計測方法が異なる可能性があるため、単純には比較できないかもしれませんが、Mark AudioがXmaxを重視する姿勢は明らかです。Alpair6Mがここまで頑張れるのも、その基本姿勢に因るところが大きいかもしれません。このように飛び抜けたXmaxは、全ての部品を専用設計するという基本方針によって可能になったものと思われます。他社製のドライバは標準的なコンポーネント(内部部品やフレームまで)を組み合わせて使用している例が多く、部品をよく見ると他メーカのドライバと同じ部品だったりします。Xmaxがどのメーカでも同じような値になっているのは、そのへんに起因するのかもしれません。

まだ何も知らなかった初期の頃にたまたまMark Audioドライバを採用したわけですが、偶然にもそれらが気密性と大Xmaxという特性を備えていたからこそ、現在のLEANAUDIOがあると言えます。もし、LEANAUDIO初期に例えばフェイズプラグ付きの標準的なXmaxを持つドライバを採用していたとしたら、小容積密閉箱に入れて信号ブーストまたは別アンプで強引に駆動するという基本コンセプトには絶対にたどり付かなかったでしょう。Mark Audioドライバとの出会いは幸運であったと言わざるをえません。また、当ブログを見てLEANAUDIO方式をちょこっと試してみたけど駄目だったという方は、今一度ドライバの適性(まずは気密性)を確認してみてください。フェイズプラグ付きやコアキシャル型ではまず駄目だと思います。センター(ダスト)キャップ付きでも布製や真ん中に穴の開いたタイプでは駄目です。

現在のシステムの50Hz以下のタフネスを向上させるには、ウーハ用にAlpair 10(できればウーハバージョン)を選択するか、あるいは、面倒くさい2.1ch方式は捨ててAlpair10 (または7) 2本の馬鹿ブーストってのがシンプルで良いかもしれません。今回改めてAlpair馬鹿ブーストのポテンシャルを再認識しました。また来年の夏くらいですかね。何か変えるとすれば。

今回サブウーハを追加したそもそもの目的は、iTuneやネットラジオをイコライザなしで聴くためであって、Frieve Audio用には馬鹿ブーストを前提としています。しかし、ブースト方式には欠点が2つあります。すなわち、1)デジタル信号のオーバーフローを回避するために全体の信号レベルを下げる必要がある(アンプのボリュームを上げる必要がある、つまり信号クオリティとS/N比が多少低下する)、2)振動板が大振幅で動くため高域音が多少劣化する、という事です。従って、メタルコーン ウーハを採用した事によって今まで感じていた違和感が無くなるのであれば、2.1ch方式を常用する可能性もあります。

とりあえずは毎日聴いてみないと何とも言えません。無意識にどちらに手が伸びるか? 駄目なシステムには自然と手が伸びなくなり、全く使わなくなります。3つも電源を入れる手間をかけてでもウーハ付きに手が伸びるようであれば大成功と言えましょう。「音質?」の事なんか念頭になく、意識が自然に「音楽」を追いかけている時に、違和感や、不自然さや、聴き取りにくさを感じるようであれば「音楽再生装置」としてNGです。

冒頭でも述べたように、かれこれ3年以上続けてきたデスクトップ スピーカの開発は今回で一端終結します。
基本的にAlpair6M + Frieve Audio自動音場補正による耳幅配置超ニアフィールド馬鹿ブーストでハチマルが望んでいた「音楽再生クオリティ」言い換えれば「音楽の聴きやすさ(自然さ、違和感のなさ、正確さ、明瞭さ)」を十分に達成できたという事です。従来になく「音楽が聴きやすい」システム(そう、ハチマルの欲しかった「ミュージック マシーン」)となりました。また、数々の実験を通して多くの貴重な知見を得る事ができました。それらの経緯は全て当ブログに記載していますので、是非ご参考にしてください。「春の祭典」はめったに聴かないし、これ以上のものはとりあえず不要かなと思えますが、今まで年に1回ペースで何か作っているので、来年の今頃には新しい物をリリースするかもしれません。

マークさんに英語の要約版を約束しているので、そちらが終わるまで暫くブログの更新はお休みになると思います。以降はヘッドフォン再生がメインテーマとなる予定です。既に、ハチマルとしては大奮発のハイエンドなヘッドフォンを購入して早朝に愛用しています(最近奥さんからのイエローカードが頻発しているので。。)。オタノシミニ。

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