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2010年06月02日 (水) | Edit |
「原音再生」はオーヂオの世界では金科玉条のように使われる言葉ですが、「原音」をレコーディング時の「生の音」という意味で使うならば、それは「幻影」に過ぎないと思います。何故ならば、レコーディング時の諸条件が大きく影響するため、タイムマシンで録音現場へ行って「生の音」を聴いてみる以外には「原音」を知るよしがないためです。レコーディングされ最終的に世の中にリリースされた作品(LP、CD)には、録音機材、スタジオの状態、エンジニアの調整、そして何よりもアーティストの表現意思が反映されています。

例えば、60年代のマイルスデイビスのリーダーアルバムとハービーハンコック(当時のマイルス クインテットの一員)のリーダーアルバムを聞き比べると、録音の傾向が明らかに異なります(ベースのロンさんととドラムスのトニさんは両方に出演、ラッパ屋だけ異なる。つまりリズムセクションの3人は共通)。前者の方が高域寄りでシャープ、後者は前者に比べると低域寄りでマイルドです。ロンさんのベースの聞こえ方も異なります。後者の場合は少し高域を持ち上げて聴かないと僕には「dull」(鈍く)聞こえてしまいます。

ここで言いたいのは、世に出される作品の信号には録音ハードウェアの影響とアーティストなりエンジニアなりの「主観」が反映されているという事です。このため、普通にCDなりレコードを聴くためのオーディオ装置において「絶対的な生音」は記憶音(従って主観)に頼らざるを得ない「幻影」に過ぎません。また、生演奏を録音して、その場でステレオ再生しても厳密に耳に届く音を生演奏と同じにする事は理論的に不可能です。そのような「原音再生」を求めるのであればバイノーラル録音の方が原理的には向いていると言えます。

再生音について客観的に評価する場合、我々は「耳に届く音波」とソースに記録されている「信号」を比較するしか方法はありません(信号忠実性)。注: 重要なのは無響室で測ったスピーカー前方1mのカタログデータではなく、あなたが音楽を聴いているその部屋のあなたの耳の位置での音波と信号の比較が重要だという事です。ただし「信号に忠実に再生された音波」が「良いと感じる」あるいは「好ましいと感じる」音かどうかというと、これは人それぞれではないでしょうか。さらには、そのよう音を誰もが「主観的にリアルと感じる」かどうかすら確かではありません。「200万円のアンプと1万円のアンプをブラインドで比較したら1万円の方が勝った」とか「生演奏とブラインド比較したら小さなフルレンジが立派なマルチウェイに勝った」とかも、このあたりに関係しているのではないでしょうか。

多くの場合オーヂオイヂリは信号忠実性とは別の「好み」または「記憶音」に基づく主観的なチューニングに頼る事になります。例として、部屋を適度に反響するようにチューニングしたり、倍音(響き、歪み)の豊かな真空管アンプを使用したり、スピーカーボックスをわざと箱鳴りさせたり等々は、元々ソースには含まれない「響き」や「雑味」あるいは「癖」を追加している訳ですから、「信号忠実性」とは全く別の(多くの場合真逆の)行為だとも言えます。

僕も全くの「主観的好み」に従ってAlpair5を最終的に選択し(音場補正でフラットな特性にして、同一の箱で5種類の8cmドライバーを比較)、特性的にはかなり見劣りするが響き感の心地よい小型の真空管アンプ(TU-870改)をメインに使用しています。これらは各自の「主観」「好み」「感性」が完全に支配する領域であり、他人がとやかく言う筋合いの物ではないのは当然です。

では客観的な「忠実再生」はどうでも良いのでしょうか?

僕は「忠実再生」の目的を「録音されている音楽の全体像と細部ががそのままハッキリと耳の位置で聴き取れるようにする事」と解釈します。アーティストが世に出した作品をしっかりと聴き取る上で非常に重要であると考えます。僕の言う「忠実」とは、何百万円もするアンプが追求しているような「コマケー」信号忠実度とは違います。コマケー音質の差も大事でしょうが、それ以前にとにかく「音楽」の全体像を正確に聴けるようにするという、もっと大ざっぱで基本的な話ですので。。。

僕がオーヂオイヂリに手を染めるきっかけになった3年程前のお話をします。
新しく買った携帯電話が1GBのメモリを内蔵していたので、ジャコの全コレクションとフルトベングラーのベトベン交響曲全集をコピーして(凄い組み合わせ!)、そこそこのカナル型イヤフォン(6千円くらい)で暫く聴いていました。驚いたのは、スピーカーで聴くよりも細部までハッキリと聞こえる事です。特に交響曲の低音(楽器音+ホールの響き)まで聴き取れて、指揮者がそれを意識しながら音を伸ばしたり止めたりしている様子が分かりました。響きの美しい所では鳥肌が立ちそうになったくらいです(50年代のモノラル録音+携帯電話で。しかも電車の座席で。)。それまで使っていたメーカー製の4万円程度で全部そろうセットのコンポでは、そんな風には全然聞こえませんでした。(なんがモゴモゴ、モワモワしか聞こえない。アタマに来たのでスピーカーボックスを破壊したところから、オーヂオイヂリが始まった訳です。その箱は今は補強してウーハー用に使ってます)

で、その後まともなMP3プレーヤーとイヤフォン(1万円くらい)のを買ってコレクションを片っ端に聴き直した結果、それまでは音楽の一部しか聴き取れて(感じ取れて)いなかった事に気付きました。ショック!。正直言って、ホントに真剣に音楽聴くならイヤフォン再生の方が向いていると思います(ヘッドフォンでしか聴かないオーディオ種族が居るのも納得できます)。でも一日中イヤフォンしてる訳にも行かないし、邪魔だし、なんとかスピーカーでも同じように聴けるようにしよう!!!!!でLEANAUDIOを始めた訳ですね。

それでは何が(ハチマル定義の)「忠実再生」を邪魔しているのか?とイロイロ作って聴いて測定した結果、

1) スピーカーから耳までの距離(つまり部屋の音響特性)
2) スピーカーの低音再生限界(30Hzくらいまでしっかり信号が入っているのに全部が聞こえない)

の2項目が最大の問題であるという結論に達した訳です。敢えてもう1項目追加するならば;
3) バスレフポートの音(周波数ドメインではなくタイムドメイン的問題だと思う)
パルシブな音(ピチカートベース)が妙に聞こえるので僕には気色悪く感じます。なんか酔いそうな感じというか。。いわゆる「タイムドメイン」と称して売られているスピーカーにはバスレフポートが付いていたような気がするけど、なんか矛盾するような気がしないでもないような。。。。

他の影響はこれらに比べると「屁」みたいなものです(まあでも「屁」をイヂルのがオーヂオイヂリの楽しい部分でもある訳ですが)。こいつをなんとかやっつけない限り「好み」だ「感性」だ、どのこのと言って「屁」をイヂッテいる場合ではない。全部ちゃんと聴かんとアーティストに対して申し訳ないじゃないか。。と。そいうのが「ぴゅあ」オーヂオというやつではないのかと(この「ピュア」というのはども胡散臭くて好かんけどね)。。。

で、その経緯を綴ったのがこのブログでありますが。。。と長々と書いて来たのですが、今回は何を言いたかったんだけ。。。。アレレ??

これだっけ?
1) そこそこ上等のカナル型イヤフォンで音楽を聴いた事がない人は一度聴いてみてください。原音(ソースの音)をできるだけそのまま聞き取るためのある種のリファレンスとして便利です(部屋の影響なし、超低音まで聞こえる、バスレフポートの音もなし、クロスオーバーもなし(マルチのイヤフォンもあるみたいですが))。

あ、それとこれかな?
2) 測定も是非やってみてください。今時パソコンとパソコン用マイクがあればフリーソフトで簡単に測定できます。測定では表れないような微妙な感覚や感性の問題を云々する以前に、簡単な測定で明らかに分かってしまう程度の問題は優先して解消しておくのが物事の進め方という物だと思います。なんか「データ」って「感性」に相反するもののように思われがちなのが非常に残念ですね(特に文系の方にその傾向が強いかな?)。データは単なるツールに過ぎず、目的ではありません(プロのエンジニアや医者でもここのところが血肉として分かって無い人が多いのも事実です。特に日本人にはその傾向が強い)。このデータというツールを最小限にうまく使うと、目的へより効率良くアプローチできる(つまり時間もお金も節約してより良い結果が得られる)というだけの事です。

逆に音楽を聴く時には無用なデータや知識(ライナノーツ、特にセンセ方のご意見、蘊蓄等々)は一切不要。作品のみが全てを語るはずです。

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