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2010年11月18日 (木) | Edit |
部屋の定在波の影響は、半波長が部屋の寸法に対して同等以上になる100Hz以下の領域で顕著となります。例えば一般的家屋の平均的な天井高さ(2.4m)に対しては、2倍の波長(4.8m = 約70Hz)の定在波の影響が顕著に表れます。

一般的に波長が長くなるにつれて吸音は急激に困難になり、100Hz以下になるとちょっとやそっとの事では吸音できません。今回は、一般に市販されている吸音ボード程度ではこのような長波長音をほとんど吸収できないというオハナシ。

下図は旭板硝子のグラスウール化粧吸音材(厚さ約25mm)の吸音特性です。詳しくはコチラ
636.jpg
このデータは「残響室法」という測定方法で計測されたものですが、計測方法によっては吸音率はもっと低下します。異なるメーカーの製品データを比較する場合は、測定方法に気を付ける必要があります。オーヂオ用として売られている製品では、効能書きばかりでデータが公表されていないものが多いような気がしますが、きちんとデータが公表されている製品を選んだ方が良いかと思います。それがこの種の製品を製造するメーカーの基本的常識でもあります。

下図は別の吸音ボードを各種測定法で計測した結果です。
32_3z3.jpg
残響室法に比べて他の計測方法では吸音率が大幅に低下します。「垂直入射吸音率」とは、吸音材に対して音波が真正面から入射した場合の吸音率です。いずれにせよ、これらの吸音材では100Hz以下の定在波をほとんど吸収できない事が分かります。

このため、低周波まで吸音する必要がある実験用無響室では、グラスウールを整形した大きな楔形ブロックを壁面にびっしりと並べます。
634.jpg
6面を吸音した完全無響室
この楔形ブロックの寸法は、吸音したい下限周波数によって決まり、低周波まで吸音したい場合には巨大なものとなります。下図は旭板硝子のサイト(コチラ)に載っていた寸法算出方法です。

635.jpg
テーパー長 L1=λ0/5 (mm)
下限周波数の波長 λ0=V/f0
V=340000 (mm/s) ・・・20゚Cのとき
下限周波数 f0 (Hz)
ベース長  L2=L1/4 (mm)
頂角  α<40
100Hzの波長は約3.4m(波長/4=85cm)ありますが、この場合の壁面からのブロックの突出量は、先端をカットしたとしても60~70cmにもなります。50Hzだとその2倍。。。普通のオウチだと住むところが無くなります。

部屋の定在波のような低周波音に対しては、カーテンやカーペット程度では全くの問題外、市販の吸音ボードでもほとんど焼け石に水だという事が分かります。

このように、現実的なオーディオ環境において主として100Hz以下に顕著に表れる部屋の定在波というのは、極めて厄介者であると言えます。今まで再三言っているように、この影響を軽減する最も手っ取り早い方法は、耳に届く直接音の割合を単純に増やせる「ニアフィールド リスニング」です(スピーカーは小さくて近いに超した事はない)。

実際に部屋の定在波を吸収するには困難を極めます。上記の吸音ボードを屏風状にして楔形状を作る(楔の先端角度を40°以下にする必要あるので非現実的かな?)か、あるいは移動式のツイタテにして部屋を斜めに仕切る(平行面をなくす)ように設置すれば多少効果が得られるかもしれませんが、いずれにせよ専用の広いリスニングルームでもない限り非現実的な事には変わりありません。ましてや天井までとなると。。。気が遠くなります。

それよりも、F特ができるだけフラットになるようにスピーカーとリスナーの位置を慎重に選んだ上で(あるいはもっと手っ取り早くスピーカーへ近づいた上で)、最終的にデジタルイコライザで修正する方が余程現実的ですね。

ついでに。。。。
これはスピーカーボックス内の吸音材にもあてはまります。

僕の小さなポチ形ボックス(2.5L、奥行き21cm)では約800Hzに定在波が顕著に出ますが、箱が大きくなればこの周波数も低下し、吸音材の吸音率も低下します。
下図はJSPS研究所のサイトに載っていたフエルト材の垂直入射吸音率の測定データです(詳しくはコチラ)。
642.jpg
フエルトを2枚重ねると吸音率がぐっと上がる事が分かります(緑のライン)。しかし2枚重ねでも800Hzで約50%の吸音率しかないように見えます。また、200Hz以下は全く吸音していませんね。

以上、ご参考になれば幸いです。

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2009年03月12日 (木) | Edit |
部屋の定在波の様相を簡単に計算できるフリーのソフトウェアを見つけたので紹介します。

計算結果をそのまま信用するのは危険ですが、実際の測定結果と照合する事によって部屋の吸音対策がよりいっそう効率的に行えるはずです。測定はPCさえあれば簡単にお金をかけずに行えますので、決して計算だけに頼らずに必ず測定も行ってください。計算はあくまでも測定結果を解釈するための補助的なものと考えた方が間違いがありません。
測定方法に関しては「リスニング位置の音響特性を測定してみよう!」を参考にしてください。

今回紹介するのはStandwave2というフリー ソフトウェアです。
ダウンロードサイトはコチラ

162a_20090807205550.jpg
上は計算結果の一例です。
右側に部屋の平面図が表示されます。この枠内で2つのスピーカー()とリスナーの位置()をマウスでドラッグして設定します。中央のスライダーでは各スピーカーとリスナーの床面からの高さが設定できます。
リスナー位置における周波数特性は左側のグラフに表示されます。この特性は20Hzまで完璧にフラットな出力特性を持つスピーカーを使用した場合に得られる周波数特性に相当します。実際にはこの特性にスピーカーの出力特性を掛け合わせた特性となります。

この例では部屋のサイズは3.4m x 3.4mに設定しています。計算結果からは70Hz近辺に強烈なディップが発生する事が予測できます。

163_20090807210047.jpg
これが設定画面です。部屋のサイズ、各壁の反射率、計算条件をここで設定します。部屋の反射率は僕の手持ちの測定値から大ざっぱに見積もって全て0.7に設定しました。デフォルトの反射率は0.8から0.9に設定されており、これは部屋に家具やカーペットを置いていない引っ越し前の部屋の特性に近いと思われます。この値はご自分の部屋の測定値と見比べながら大ざっぱに設定してみてください。反射回数では何回目の反射まで計算するのかを指定します。10回より増やしても大きく変わりません(デフォルトは20回)。

計算結果が測定結果に近い傾向を示す事を確認したら、どれか1つの壁の反射率を0に設定して計算結果の変化を観察してください。最も望ましい変化が得られた壁から対策を行えば効率的に作業が進められるはずです。
164_20090807210320.jpg
上の図は後面の反射率だけを0に設定した場合の結果です。問題のディップはほとんど無くなります。従ってリスナー背後の壁に集中的に吸音対策を行えば効果的であると予測できます。まずはマットレス等を簡単に置いて測定してみて、本当に効果が高いようであれば本格的な作業に入れば良いかと思います。
注意: 部屋の形状やスピーカーの配置によって最も効果的な壁面は変わりますので注意してください。つねに後面の対策が効果的という訳ではありませんのでハヤトチリしないでください。

あるいは吸音対策をしなくてもスピーカーの位置を移動するだけで良い結果が得られるかもしれませんので、スピーカーが実際に移動できるのであればマウスであちこちに移動させてみてください。

以上のように計算と測定を組み合わせれば、効率良く対策が進められます。ただし計算を使用する場合は下記を肝に銘じてください。
○ 計算はあくまでも対策の方向性を探るための参考データとして考えてください。常に測定データと照らし合わせて、その計算結果が信用に足る物かどうかを冷静に判断する事が大切です。
○ 計算と測定は決して完全には一致しません。支配的なピークやディップの傾向がそれなりに合っていれば、それで満足とすべきです。結果を精密に合わせるために反射率を細かく調整する必要はありません。あくまでも大ざっぱに設定する事がコツです。

ここで、ニアフィールドリスニングの優位性を検証してみましょう。

スピーカー位置以外の計算条件は上の条件と全く同じです。部屋のサイズは3.4mx3.4mです。
162a_20090807205550.jpg
こちらが一般的なスピーカー配置
70Hzに激しいディップ

スピーカーを極端にリスナーに近づけてみました
165_20090807205855.jpg
説明の必要は全くありませんね。

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