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2012年10月12日 (金) | Edit |
今回はバスレフ型の動的挙動についての計測結果を簡単にご紹介します。

条件をできるだけ揃えるために、どちらもFrieveAudioイコライザを使って周波数特性だけ50Hz~20kHzの範囲で完全にフラットに補正しています。位相はもちろん補正していません。

スピーカ前方約30cmで計測しました。3つの波形は上から、ソース信号、密閉、バスレフです。
80Hz
BR 80
60Hz
BR 60
50Hz
BR 50
50Hzの波形にはピークを結んだ包絡線も表示しています。

如何でしょうか?バスレフ波形は単純に遅れるというのではないように見えます。密閉型の場合、ソース波形とのピークの対応は一目瞭然ですが、バスレフ型の場合どれがどれに対応するのかよくわかりません。一発目の波形が崩れていて後に余計なピークがあるように見えなくもありません。また、僕がよく使う表現「ビシッと動いてバシッと止まる」という観点でもなんだか間延びして見えます。

全部を重ねて、時間ではなく周期を合わせてみました。
BR all
赤が50Hz、青が60Hz、緑が80Hzです。

密閉型の場合、周波数が変わっても波形(位相)は殆ど変化しませんが、バスレフ型の場合はたった30Hzの範囲でかなり大きく波形(位相)が変化しています。密閉型に比べて現象が複雑である事は明らかです。

僕はバスレフ型のピチカートベースの音に違和感を覚えますが、それが専らこのような現象に起因するのかどうかは定かではありません。しかし密閉型と比較した場合、単純な位相のシフトというのではなく、信号波形の再現性という観点でもかなり問題があるように思えます。様々な周波数成分を含み、様々に変化する実際の楽曲の信号を再生した場合、ある特定の条件で違和感を覚える可能性はあるかもしれません。

次に、ベリンガ製グライコを使って密閉型をブーストした波形をお見せします。F特は前の記事に掲載しています。
digi ana
青がFrieveAudioのマニュアルイコライザで60Hzを約+7dBデジタル ブーストした波形、赤がベリンガ製グライコの63Hzバンドだけ約+7dBアナログ ブーストした波形です。それぞれ2回の計測波形を重ねています。青がデジタル、赤がアナログです。

アナログでも位相は殆ど変わらない事が分かります。ナカナカやりまんがな。。しかし、ダンピングが低下するのでしょうか、信号波形が終わった後に1山余計なピークが発生し、その後の減衰具合もデジタルに比べると劣ります。それでもバスレフ型に比べれば明らかに波形再現性に優れていると言えるでしょう。

前回の付帯音と今回の動的挙動の計測結果から、共鳴効果というキワドイ現象を利用するバスレフ方式というのはナニカと難儀な機構であると言えます。使わなくて済むなら使いたくない。。。。と考えるのが普通でしょう。ですよね?

しかし、密閉型ブースト方式にも致命的と言ってよい欠点があります。バスレフ型の場合、共鳴周波数における振動板の振幅は大幅に小さくなります。これに対し、密閉型ブースト方式では振動板振幅が大幅に増加します。次回は、このへんについての実験君データをご紹介しようかと予定しています。その後、いよいよ「真空管サウンドのヒミツを探る!」に挑戦してみるかな? オッタノシミニ!

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2010年12月18日 (土) | Edit |
バスレフ型というのは、密閉型では不足しがちな低音を補強するために発明された巧妙な手法です。この手法では箱に適当な長さ/太さのダクトを設ける事により、ヘルムホルツの共鳴効果を利用して特定周波数領域の音響出力を増強します。しかし、当ブログで再三取り上げているように、この方式には避けて通れない様々な欠点が存在します。今回は、そのあたりをシミュレーションを使用して再検討してみます。

例によって「スピーカー設計プログラム アプレット版」を使用しました。このツールは、当ブログでも再三にわたって実験結果と比較し、十分な精度を持つ事を確認しています。

ツールのデータベースからMarkaudioのAlpair 6 MetalのTSパラメータをそのまま使用し、ポートの共鳴周波数を50Hzに合わせ、吸音材の量は「なし」に設定しました。

まず、50Hzに共鳴点を合わせた時に50Hzまでフラットな周波数特性が得られる容積をトライアンドエラーで探しました。その結果、容積=5L、ダクト長=120 mm、ダクト直径=30 mmで良好な結果が得られました。結果を下図に示します。クリックで拡大してご覧ください。
650.jpg
緑が振動板前方からの出力、濃い青がポートからの出力、水色がトータル出力です。赤の二山はドライバのインピーダンス、紫は振動板の振幅、一番下の緑は位相です。

100 Hz以下で振動板の出力は低下し始め、これをポートからの出力が補って共鳴点の50Hzまでほぼフラットな特性が得られています。共鳴点では振動板はほとんど動かず、専らポートから音が出ている事が分かります。共鳴点以下では、ポートと振動板の音が逆位相となるために、互いに弱め合って出力は急激に低下します。

次に容積は同じ5Lのまま密閉型にしてみました。
651.jpg
これを比較のためにバスレフ型のグラフに重ねたのが下図です。密閉型のデータは全て白でプロットしています。
652.jpg

密閉型の容積を2.5Lまで下げた結果を下に示します。
653.jpg
白抜きは5Lの結果です。容積を半分にしても、40Hzの出力は1.5dB程度しか低下しません。下はもっと極端に5.5Lから0.2Lまで容積を変化させた計算結果です(参考記事)。
567_20101218125009.jpg
密閉型の場合、容積を小さくするとドライバの機械的共振効果が下がるだけで、それ以外の領域のレスポンスはほとんど変化しません。LEANAUDIOではこの機械的共振効果をタップリの吸音材で殺してしまうので容積は重要ではなくなります。

バスレフ型を2.5Lにしてみました。共鳴点は50Hzに合わせています。この容積ではフラットな特性は得られません。
654.jpg
この容積で50Hzに同調するには、ダクト径30mmに対して300 mmものポート長が必要になります(ポチ型ボックスには入らないっす)。また、ポート自体の共振もより強くなります(音もより筒っぽ臭くなるということ)。

以上からバスレフ型の問題点を挙げてみます。
1) ポートの位相反転により、共鳴点以下で出力が急激に低下する
グラフから読み取ると、50Hz以下では-28dB/Octの傾きで急激に減衰します。これは密閉型の-12dB/Octの2倍以上の傾きです。上から3番目のグラフの左側の赤いラインは-12dB/OCtの傾きを持ち、密閉型を50Hzまでフラットにデジタルブーストした時の特性を表しています。

2) 位相遅れが大きい
グラフの最下段の緑の線が位相特性です。グラフが上に行くほど位相が遅れます。バスレフ型の場合、共鳴点前後で位相が急激に遅れる事が分かります。グラフ左上隅の時計の針は40Hzにおける位相を表しています。20kHzでの位相は時計の3時15分くらいの位置です。密閉型でも40Hzで約120度の遅れが発生しますが、バスレフ型ではその約2倍の遅れが発生しています。ちなみにFrieveAudioは、このような位相遅れも非常に正確に補正してくれます。

3) ポートからポート自体の共振音が出てくる
ポートからの出力を見ると、約1kHz に大きなピークがあり、そこから高周波側にいくつものピークが見られます。これはポート自体の共鳴によるものです。このため、本来の狙いである低音以外にもポートの「筒っぽい音」がどうしても出てしまいます。
この周波数は下式でザット見積もれます。
共振周波数 = 34000/(ダクト長(cm)+ダクト径(cm))x2) Hz
この計算だと、共振周波数は1.1 kHzとなり、グラフにほぼ一致します。
箱に十分な吸音材を入れない場合は、箱の定在波の音もポートから放出されます。

4) 共鳴周波数を下げるには、それなりの容積が必要
一般にバスレフ型の方が密閉型より小型にできると言われていますが、デジタルブーストを前提にするならば、その関係は逆転します。

以上を過去に計測したデータと照らし合わせてみます。

1)下図は2.5Lでのバスレフvs密閉比較です(参考記事)。吸音材を全く入れていないので、定在波の影響がモロに出ています。
545_20101218114616.jpg
バスレフ型は共鳴点の80Hzから40Hzにかけて1 Octで実に36dB以上も出力が低下しています。同区間の密閉型の低下量は例によって12dB/Octです。

2) 下は、ピチカートベース音の再現性を比較したものです。554_20101218112849.jpg
556_20101218112925.jpg
赤のラインがCD内の信号波形、青がスピーカ前方で測定した音波形です。上がバスレフ、下が密閉+デジタルブーストです(参考記事)。これは共鳴点よりかなり高い周波数での結果です。共鳴点では、影響がさらに顕著になると考えられます。上の波形では、位相遅れというよりは、音の出だしのトランジェント部の波形に大きな問題が見られます。このため、ピチカートベースの音を重視するハチマルにはバスレフ型がどうしても受け入れられませんでした。ちなみに、上図のデジイコは手動でテキトーに設定したものですが、全域フラットに自動音場補正すると、下図のように信号と音波波形はほとんど一致します。
659.jpg


3) 下図はダクト音の実測値です(参考記事)。
548_20101218114040.jpg
この時のダクトの長さ8 cm、太さ2.3cmから共振周波数を計算すると約1.6kHzとなります。800Hzの立ち上がりは箱の定在波の影響が強いと思われますが、2発目のピークは明らかにポート(筒っぽ)の固有振動の影響だと考えられます。結構レベルがでかいのには驚かされますね。上の周波数特性グラフにも、定在波以外のポートの影響が見て取れます。

以上、このブログで再三述べてきた事を敢えて再度しつこく取り上げました。

バスレフ型は、信号処理技術が発達していなかった当時に低音を稼ぐために考え出された極めて巧妙な手段だと思います。過去のオーディオ技術者達の叡智に敬意を払うに吝かではありません。しかし、音源がデジタル化されたこの時代において、数多の欠点を背負いながら未だにアタリマエのように使われ続けている事には大きな疑問を感じざるを得ません。やたらと微細な「音質」に拘泥する以前に、100Hz以下の低音を正確/明確に聞き取れるようにする事は、「音楽をより楽しく深く聴くため」の「総合的な音楽再生クオリティ」にとって極めて重要であると認識するハチマルには不思議でなりません。オーディオ技術が真っ先に解決しなければならない長年の最大の課題がかくもお座なりにされ、微細な「音質?」とか「ナンタラ感」を追い続ける現在の「ピュアオーディオ」とやらには憤りすら禁じ得ません。ホンマニ。。。

マニアはどうでもヨロシイ。。。。しかし、装置の事なんか何も知らずに普通に音楽を聴く人々が、アタリマエのようにしっかりとした低音を聴けるようになる事は非常に重要だと思います。まあ、今はイヤフォンの性能が素晴らしく向上したので、根本的に進化しないオーヂオ装置で聴くよりも、そちらで聴く方が余程良いといえばそうかもしれませんが。。。

次回に続く。。。。

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