FC2ブログ
2013年01月17日 (木) | Edit |
今回はバスレフ型およびバスレフ型に-12dB/Octのフィルタを組み合わせた場合の位相特性について考えます。最後にいつものシミュレーションと比較する事により、僕の考え方が正しいかどうかを検証してみます。

下はバスレフ型の模式図です。
p3_20130117043119.jpg
バスレフ型では、ヘルムホルツ共鳴周波数(縦の青破線、図では40Hz)を挟んで2つのインピーダンスピークが発生します。密閉型と同様に各ピークを中心として位相が±90° (1ピークあたり計180°)回転します。このため、各ピークにおける遅れは、下側が90°、上側が270°となり、全部で360°位相が回転します。2つのピークの中間に位置するヘルムホルツ共鳴周波数での位相は180°遅れます。バスレフ型の場合、密閉型に比べて位相が遅れるだけでなく、2つのピークの間(50Hz前後)という狭い周波数範囲で位相が180°回転します。

下はバスレフ型に-12dB/Octのローパスフィルタを組み合わせた場合の模式図です。
p4 copy
一般的な2Wayバスレフ型のウーハーに相当します。位相は全部で540°(180°x3)回転する事がわかります。フィルタ カットオフ周波数での遅れは450°です。カットオフが十分に高ければ、下限周波数(例えば40Hz)における遅れ量には殆ど影響しないと思われます。つまり、高い周波数での位相の回転は気にせず下限周波数の時間的遅れだけを問題にするのであれば、アナログフィルタでも別に構わないと言えるかもしれません。ただし、後で書きますが、サブウーハのように極端にクロスオーバー周波数が低い場合にはモロに影響するため注意が必要です。

上図をシミュレーション結果と比較してみます。

下はAlpair 6P + TONO箱(約7L)を想定した結果です。
P0.jpg
模式図の条件とは異なり、バスレフの共鳴周波数は50Hz、ローパスのカットオフは3kHzです。折り返しを展開した位相曲線を明るい緑で示しています。2本のピンクの水平線は、上が位相0°(遅れナシ)、下が-540°(540°遅れ)です。シミュレーションでも全部で540°回転していますね。

各周波数における位相を読み取ると、下側のインピーダンスピーク(1番左の赤縦線:約38Hz)では-90°、ヘルムホルツ共鳴周波数(左から2番目の青縦線: 約50Hz)では-180°、上側のピーク(80Hz)では-270°、フィルタのカットオフ周波数(1番右の赤縦線: 3kHz)では-450°となり、上の模式図とよく一致しています。また、アナログフィルタのカットオフ周波数は十分に高いため、下限周波数における遅れには影響していません。カットオフ周波数(3kHz)で450°遅れますが、時間に換算すると約0.4msですから、一般的に言われる人間の時間分解能(20~30ms)に比べれば非常に僅かです。

最後に極端な例として、アドオン式サブウーハを想定して、フィルタのカットオフを70Hzまで下げてみました。
p6.jpg
50Hzの位相は-180°からさらに-90°回転して-270°になりました。また、100Hzで-450°まで急激に位相が変化しています。サブウーハのように極端に低いカットオフ周波数を使う場合は、明らかにデジタルフィルタの方が有利であると言えます。特にバスレフ型のサブウーハでは位相が大きく変化するため、この問題は密閉型よりも深刻となります。

次回は、実測値と照らし合わせて見たいと思います。

お役に立てたらクリックしてください。ランキングに参加してます にほんブログ村ランキング参加中
関連記事
スポンサーサイト
テーマ:オーディオ
ジャンル:趣味・実用
2013年01月13日 (日) | Edit |
「低音の遅れ」の最終回です。今回はZAP 2.1chシステムでデジタルフィルタとアナログフィルタを比較しました。

まず、5kHz/40Hzの合成正弦波信号の再生波形です。
位相遅れ2
赤がデジタルフィルタ(fc≒90Hz、メイン側にハイパスあり)、緑がアナログフィルタ(fc≒60Hz、ハイパスなしのアドオン式、実際のクロスは約100Hz)の結果です。デジタル(赤)に比べてアナログ(緑)の40Hz波形は約2倍遅れていますね。デジタルフィルタはサウンドブラスタのDAC用ソフトウェア、アナログフィルタはDAYTON製プレートアンプに内蔵のもの(-12dB/Oct)を使いました。

次に、前の記事と同じ方法で、いろいろな周波数における「遅れ時間」と「遅れ角度」を計測しました。下がその結果です。
G.jpg
A6単独のデータは、前の記事からの転載です。

まず「×」でプロットしたデジタルフィルタの結果を見ると、遅れ量はAlpair 6単独とほぼ同等(またはそれ以下)である事がわかります。さすがデジタルフィルタですね。

次にアナログフィルタでの結果を見てみましょう。僕は約100Hzでハイパスを通さないA6にクロスするために、フィルタのカットオフ(fc)は約60Hzに設定していました。この条件での遅れは「◆」でプロットしています。40Hzにおける遅れ量はデジタルフィルタ(×)に比べて約2倍に増加しています(約10msが20ms、約140°が280°に増加)。

さらにアナログフィルタのfcを約120Hzまで上げて測定してみました。この条件での遅れは「■」でプロットしています。この結果から、fcを上げると低音の「遅れ時間」は大幅に減少する事がわかります。アナログフィルタの場合、fcを極端に下げると低音の遅れにモロに影響する点に注意が必要です。

計測結果は以上です。

今回の結果から、一般的に非常に低い周波数でクロスするサブウーハでは、デジタルフィルタが圧倒的に有利であると言えます。特にメイン側にハイパス(ローカット)フィルタを適用しないアドオン方式ではfcを極端に下げる必要があるため、デジタルフィルタの優位性はさらに顕著となります。

また、fcを上げると低音の遅れが大幅に減少する事から、数kHzでクロスオーバーする一般的な小型2WAY方式では、アナログフィルタを使っても低音の遅れには余り影響しない可能性があります。このへんは、例の激安モニタを購入する事になったら確認してみたいと思います。

一方、バスレフ方式では、再生帯域の下限近くで位相が急激に回転するため、モロに低音の遅れに影響するはずです。随分以前のデータですが、下はTONO(7L) + Alpair 6Pで計測した密閉型とバスレフ型の比較です。
20121012051400183 copy
上からソース信号(50Hz)、密閉型の再生波形、バスレフ型の再生波形です。この結果を見る限り、バスレフ型は密閉型に比べて180°(10ms)以上遅れています。アナログフィルタを内蔵したアドオン式サブウーハにバスレフ型を採用すると、フィルタとポートの相乗効果によって低音が大幅に遅れるかもしれません。

「低音の遅れ」に関するシリーズは今回でオシマイです。

追記
ホンモノ?の低音とは何でしょうか?
僕は、音楽を楽しむにおいてズシッと重くてビシッと速い、演奏した通りの「正しいノリ」の低音(つまり周波数ドメイン的にも時間ドメイン的にも正確な低音)を聴く事が極めて重要であると感じます。音楽を聴く楽しさがダンチガイです。特にジャズを楽しむにおいては、正しいノリのビートというかウネリが非常に重要だと感じます。あ、それとピアノソナタもね。このような低音再生を誰にでも使えるコンパクトかつ安価な装置で実現する事が、家庭用音楽再生装置に残された極めて重要な課題であると言えるでしょう。これにおいて、密閉型+デジタル処理が非常に効果的である事は当ブログで再三述べてきた通りです。

お役に立てたらクリックしてください。ランキングに参加してます にほんブログ村ランキング参加中
テーマ:オーディオ
ジャンル:趣味・実用