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2011年12月27日 (火) | Edit |
今回はリバーブについてです。

リバーブやディレイは、音に残響効果を与えて空間的な拡がりを作り出すために、ミクスダウンの過程で広く用いられる代表的エフェクタです。このような効果はデジタル信号処理(DSP)で簡単に加える事ができますが、アナログ時代には特殊な部屋を使用したり、鉄板やスプリング等の機械的振動を利用した装置が使われたそうです。鉄板式は独特な質感を出せるため、デジタル時代の今でもスタジオで使われているとの事です(鉄板のサイズは4~5畳程度の巨大なものらしい)。

僕のコレクションは、80年代初頭(ジャコ)までのジャズと、父のクラシックLPコレクションの中から気に入ったのをCDで集めたものが殆どです。つまりアナログ時代に録音されたものが殆どだと言う事です。なので、最近買ったベトベン全集の録音には正直驚かされました。僕の耳には異様と思えるほど残響効果が加えられていて、肝心の偉大なるベトさんが作らはった「音楽」が非常に聴き辛く感じられたからです(ベトさんご自身にアクセスし辛い、不自然に感じるほど音がキレイ、生演奏の音はそんなにやたらキンキラしていない)。最近のクラシックCDは、ほぼ例外なくDSPで残響効果が加えられていると聞いた事があります。聴衆がそのような録音を好むというのもあるのでしょうが、プロである製作側がしっかりと抑制を効かせて欲しいと思います。聴覚に対する「エコー」というやつは味覚に対する「ウマ味」と同じで、慣れてしまうと物足りなくなって、どんどんエスカレートするような気がします。

と、前置きはそれくらいにして、Frieve AudioにはReverb G2とその簡易版であるReverb G2 Lite、さらにサラウンド用のReverbが付属しています。これらはいずれも非常に多機能で自由度の高い本格的なものです。今回は、Reverb G2を使用してみました。Liteも全く同じ機能を備えていますがCPU負荷を軽くできるようです。しかし、Atomプロセッサ搭載の非力なPCでもLiteではない普通のG2を問題無く使用できました。

下がReverb G2のパラメータ設定画面です。
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4種類の定義済み設定が用意されています。「Default」は各種パラメータを分かりやすく配置しただけのもの、「Ambient」は一般的な空間の残響特性をシミュレートしたもの、「Long」は残響時間を極端に長くしたもの、「Plate」は上記の鉄板式をシミュレートしたものだと思われます。

以下、マニュアルの説明です。
[スライダー]
Diffusionはリバーブをぼかす強さです(上図の1)
Sizeは部屋のサイズです(2)
Spreadはリバーブの広がりの大きさです(3)
Colorはリバーブの質感です(4)
Densityはリバーブ音の密度です。100%に近いほど豊かなリバーブ音が得られ
ますが、多くのCPUパワーを消費します(5)
E.R.Denstyは初期反射音の密度です(6)
Wet Gainはリバーブのレベルです(7)
Dry-Wetは、直接音とリバーブ音の割合です(8)


下はグラフの部分を拡大したものです。マウスのドラッグでこれらのパラメータを簡単に変更できます。
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以下はマニュアルの説明です。
[上のディスプレイ]
リバーブの先頭をドラッグしてプリディレイ、直接音の大きさを調節します(上図のA)
リバーブの後方をドラッグしてリバーブタイムを調節します(B)

[下のディスプレイ]
下のポイントをドラッグしてLPF、HPFの周波数を調節します(DE)
上のポイントをドラッグして減衰を開始させる周波数を調節します(F)
バーを上下にドラッグして、高域のフィードバックレシオを調節します(G)


マニュアルには(C)の説明がありませんが、これはER(初期反射音)の強さを設定するものです。
これについては、コチラが参考になります。以下抜粋です。
間接音には、遅れとして感じられるものと、響きとして感じられるものがあります。遅れと感じられる間接音は初期反射音(アーリーリフレクション)と呼ばれ、響きと感じられる間接音は残響音(リバーブ)と呼ばれます。「ウァーン」というリバーブの、「ウ」の部分が初期反射音、「ワーン」の部分が残響音だと考えればわかりやすいと思います。

FGは、一般的なホールの残響特性を表現するためのパラメータです(ホールでは高域の方が吸収されやすく残響時間が短い)。Gのバーを下げる事によって、Fより高い周波数の残響時間をBで設定した残響時間より短くできます(上の図では約50%に短縮している)。

このように、Frieve Audioのリバーブ エフェクタは、極めて多数のパラメータを持つ本格的なものです。しかし余りにもパラメータが多すぎるため、影響の大きなパラメータだけを使用して、できるだけ簡単かつ汎用的に使える設定を探してみました。それが下の図です。
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僕はホールの残響をシミュレートして空間効果を演出したいわけではなく、音に微妙な響きを加えて少しだけ「軽やか」あるいは「メロー」な感じを出したいだけなので、「Plate」の設定を基本としました。従ってER(初期反射音)(C)はゼロ、高域の残響時間(G)は100%です。

Diffusion: リバーブをぼかす強さ(1)、Spread: リバーブの広がり(3)、Color: リバーブの質感(4)の効果は微妙すぎて僕にはよく分からないので、とりあえず全てゼロとしました。つまりソース信号(直接音)に単純に数回のディレイをかけて減衰させるという事です。Size: 部屋のサイズ(2)は最小の20mとしました。

Density(5)は高いほど質感が向上するという事なので最大としました(CPU負荷が増加しますが、Atomプロセッサでも問題なく処理できました)。E.R Density(6)は関係ないのでゼロです。

低域はあくまでもビシッとバシッとさせたいので、下限周波数(D)を2kHzまで上げました。高域の調整はしないのでGは100%です。

Dry-Wet: 直接音と反響音の割合(8)は100%:100%としました。このスライダを右端まで移動すると反響音だけを聞くことができます。

以上の設定は基本的に変更しません。効果の強さは下記の2つのパラメータだけで調整します。

1) Bで残響時間を調整します。これを右に移動すると残響時間が長く(すなわちライブに)なります。僕には1.5~2.0sくらいで具合良く聞こえます。

2) Wet Gain(7)で残響音のレベルを調整します。0dBを標準とし、±3dB程度の範囲で調整します。

このようにして微妙な響きを加えると、音が少し「軽やか」で「メロー」な感じになります。真空管アンプの効果に似ているかもしれません。あくまでも最小限だけホンノリと効かせるのがコツです。はっきりとわかる程度に効かせると、明らかにディティールが失われます(例えばピアノのアタックが鈍る)。

最適な設定は盤によっても異なります。これは製作時のリバーブのかけ具合が盤によって異なるからかもしれません。例えば、総じて録音がシャープなマイルスクインテット(Nefertiti)で丁度よく響いても、同時代のハビハンコックのリーダーアルバム(Speak like a child)では「メロー」になりすぎます。さらに、ソースで十分以上に響かせているベトベン全集ではリバーブは全く不要です。

今までLEANAUDIOでやってきた「音楽再生クオリティ」の領域とは異なり、このへんの「好み」の領域になると、普遍的最適条件というのはソモソモ存在し得ないという事です。この領域を細かく追いかけ回すとキリがありません。上で紹介したハチマル標準設定は、常時効かせっぱなしにしても大概の盤で概ねOKヤネという設定です。録音に合わせてイチイチ微調整する気なんぞ、ハチマルは全く持ち合わせていません。メンドクサイ事は大嫌いなのよ。

ただし、基本的にクラシックを聴く時にはリバーブを使用したくありません。というのは、クラシックでは(特に交響曲では)、製作時にかなり気を遣って残響音を収録(あるいは調整/付加)しているように思われるからです。カナル型イヤフォンでじっくり聴くと、そのへんの事がよく分かります。携帯電話+カナル型イヤフォンでフルトベングラさんのベトベン交響曲を聴いたのがLEANAUIDOに着手する大きなきっかけとなったわけですが、響きの気持ち良いところで鳥肌が立つくらい感動しました。フルさんがホールの響きに合わせて音を止めたり出したりしている様子もよくわかりました(たとえ50年代のモノラル録音であっても、ケータイ電話でもあっても、圧縮した音源であってもです)。ですから、下手に好き勝手に響かせたり、好き勝手な帯域だけを強調したりすると、せっかくソースに含まれているそのへんの醍醐味が台無しになってしまうような気がします。

そのように慎重に記録された「音楽」を構成する全ての音(重要な残響音を含む)を、可聴帯域の下限近くまで正しい位相でしっかりと耳に届ける事がまずは何よりも肝要であって、今回のエフェクタ効果や装置をトッカエヒッカエしてツイキューとやらをするナンチャラ感とかカンチャラ感は、あくまでもその後の、好みや気分や体調に合わせた最小限の味付け程度に留めておいた方が、そこに記録されたせっかくの「音楽」の醍醐味をより深く楽しめるようにハチマルには思えます。

次回は、その他のエフェクタと、まとめを書く予定です。オタノシミに!

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テーマ:オーディオ
ジャンル:趣味・実用
2011年12月18日 (日) | Edit |
シズル感(しずるかん)
-カルチャー&エンタテインメント-2002年8月21日 (出典コチラ)

もともとは広告業界のことばとして、広告クリエーターたちが使い始めた。テレビCMや広告写真に出てくる食品に生き生きとした実感があり、それを見るとすぐにでも食べたり飲んだりしたい気持ちにさせる状態であることを指している。本来の「シズル(sizzel)」という英語は肉がジュージューと焼けて肉汁がしたたり落ちているような状態を表し、それから発して見る人の食欲をそそるような状態の表現として使われている。このシズル感を表すために、広告写真では温かい料理からは湯気を出し、アイスクリームなどの冷たいものからは白い冷気を漂わせ、ビールジョッキの側面が水滴でぐっしょりと濡れるといった状態を、さまざまな工夫を凝らして再現している。


要は、ホンモノよりも「よりホンモノらしく」「より美味しそうに」見えるように演出されたのが「シズル感」だという事です。

エフェクターについて書く前に、今回はこの「シズル感」について書いてみます。

音楽製作現場でも、上記の映像製作現場と同様に、録音した音から媒体を製作する段階で様々な効果が加えられます。音声でも映像でも、デジタル化によって、それらの処理が極めて簡単に行えるようになりました。例えば音声の場合、ミクスダウンの際に使用される代表的なエフェクタとして、「リバーブ」と呼ばれる残響効果を加えるためのエフェクタがあります。アナログ時代は、特殊な部屋を使用したり、巨大な鉄板を振動させる装置(プレートと呼ばれる)を使用したそうですが、デジタル処理では多数のパラメータを調整しながら自由自在に残響効果を付加できます。これらによって、アナログ時代から、ソースにはある程度「シズル感」が既に演出されている事が多いかと思いますし、最近の録音やリマスタ盤にはヤリスギではないかと思われるものもあります。

多くのオーディオを趣味とするマニアと呼ばれる人達が、アノテコノテで音を響かせようとするのも、より「ホンモノの生演奏ポク」聞こえるように、「アタカモその場に居るヨウニ」聞こえるようにという「シズル感」を求めての結果ではないかと思われます。あるいは「シズル感」を自分なりに創出するプロセスそのものを楽しむという要素も確実に含まれているようにも思われます。

しかし、過剰な「シズル感」の演出は、本来の「情報伝達」のクオリティを確実に落とすという事にも留意が必要です。例えば、シズル感をバッチリ演出された焼き肉の写真には、そのお肉の実際の状態に関する情報が大幅に欠落しています。このような写真はホンモノ以上に「美味しソウ」なイメージを訴求する事が目的であり、別にそのお肉の「本質」に関する正確な「情報」を伝達する事が目的ではないからです。

風景写真にしろ、再生音楽にしろ、それらはホンモノの「その場」を再現するものでも、ホンモノの「生演奏」を再現するものでも決してありません。いずれも、ある者がある意図を持って、ホンモノノの一部の情報を、一部の断面で選択的に切り取ったものに過ぎず、多くの場合、配布される前に多くの手が加えられています。

そこのところを根本的に理解しておく事が重要だと思います。一般大衆のそのへんに関する理解が曖昧であるためにトラブルが多発するのか、最近の広告写真には「写真はイメージです」という写真発明以来あまりにも自明の事実が、しつこく記載されるようになりました。これは見るたびに暗澹たる気持ちにさせられます。メディアどぶ付け病。ヒトラーが出てきたらイチコロですよ。ホンマニ。。。そもそも明治時代に「photograph」(光の画像)が「写真」(真実を写しとるもの)と訳された事にも問題があるのかもしれません。

再生音楽とて、これと全く同じです。「写真」が被写体から独立して一個の作品として成り立つのと同様、再生音楽も生演奏とは独立した音楽表現手段/伝達媒体であり、それを「再現」するためのものでは根本的にないし、それはそもそも不可能だという事を血肉として理解しておく事が重要です。

ホンモノではないものを「ホンモノポク」しようとすればするほど、逆に「ホンモノ」からかけ離れてて不自然になってゆくように思えます。逆にもともとホンモノではないものを「ホンモノではない」と承知して、それはそういうものと受け入れた方が、そこに含まれているホンモノの「本質」がより良く見えてくるようにも思えます。

映画では、冷蔵庫のドアひとつを開け閉めするにも、ホンモノポイ効果音が挿入されます。しかし、実際の冷蔵庫があのような音を出すわけではありません。「リアルッポイ」のと「リアル」は端から異なるという事です。オーディオでよく言われる「リアルな」音というのは多くの場合「リアルぽく聞こえる」音であるように思えます。僕はこれを明確に嫌います。

そんな事をするよりも、僕には、トリアエズ素直に正確に再生した方がトリアエズ「自然」に「リアル」に聞こえるように思えます。肝心の「音楽」(アーチストさんのやらはった事)が「自然な」音で違和感なくより聴きやすくなるという事です。トリアエズを二度繰り返しましたが、あくまでも「トリアエズ」です。なぜならば、マイクで拾われた瞬間に既に異なり、さらに各種の手が施されているのですから、トリアエズ正確に再生する以外には「リアル」を求めようもないからです。

ということで、再生音楽にホンモノポイ「リアリティ」やアタカモその場にいるヨウナ「リンジョウカン」を過剰に求めても、かえって失うものの方が大きいようにハチマルには思えます(って、再三紹介した怒りの演奏家も言ってましたね)。

まあ、ナニゴトも、ホドホドにというコトでしょう。次回からは、Frieve Audioのデジタルエフェクタを使用して、ホドホドに音をイヂル方法についてご紹介します。

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