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2013年11月15日 (金) | Edit |
今やヘッドフォンは家庭用音楽再生装置の主流を占めつつあると言って良いでしょう。新規参入するメーカーも後を絶ちませんし、老舗の高級オーディオ専業メーカー(B&W、JBL等)も自社ブランド ヘッドフォンの販売に熱心ですよね。

そのような中、JBLがDSPを内蔵した意欲的な製品(有線式)を発売しました。
intro.jpg
JBL S700 (製品ページ)
ヨドバで34,800YEN
独自のデジタル信号処理(DSP)機能"LiveStage™"シグナル・プロセッシング・テクノロジーを採用。ヘッドホン・ハウジングに内蔵された "LiveStage™"DSPをオンにすることで、目の前に広大なライブステージが広がったような臨場感を体験することができます。

DSP内蔵ヘッドフォンについてネットで調べていたところ、さる方のブログで下記のような気になるコメントを見つけました。

JBLのヘッドフォンS700は興味深いコンセプトのもとに作られています。ヘッドフォンに直接インストールされたバッテリー駆動の「LiveStage」DSPは、普通なら非現実なアイデアだと警笛を鳴らされるかもしれません。少なくとも良質な設計がなされたヘッドフォンを持っていれば、今さら必要のない技術かもしれません。なぜなら、左右それぞれの耳に対して厳密にミックスされたレコーディング音源は、精巧なヘッドフォンのイヤーカップ(あるいはスピーカーなど)を通して再生すれば三次元空間の効果を生み出すはずだから。

これは大いなる勘違いです。これが世間の標準的な認識であるとするならば、メーカーは正しい情報を提供する事に注力する必要があるでしょう。

一般に出回っているステレオソースは、前方に設置した2本のスピカで再生する事を前提に制作されています。つまり、左右のクロストークが盛大に発生する状態を前提としているという事です。左のスピカから出た音は右耳にもハッキリと聞こえますよね。でも、左耳の方が少しだけ大きく聞こえ、少しだけ早く音が届きます。ヒトはこの左右の聞こえ方の僅かな違いを頼りに空間を認識します。

ヘッドフォンの場合、左右耳のクロストークは一切発生しません。左チャンネルの音は右耳には絶対届かないという事です。このため、音場は完全に左右に拡がってしまい、全体的に散漫に聞こえるため、僕には「音楽」に集中し辛く感じられます。

例えば、僕がよく聴く60年代のジャズのスタジオ録音盤では、ベースが殆ど片方の耳だけでしか聞こえない場合が多くあり、これは非常に気になります。通常、低音は高音に比べて頭部を回り込んで反対側の耳にも届きやすい(回折現象が強く生じる)ので、低周波音ではほとんど方向感覚(定位感)が生じません。サブウーハは部屋の何処に置いてもよいと言われるのはそのためです。それなのに、ヘッドフォンではベースの低音が片側だけからはっきりと聞こえます。これでは、不自然に感じて当然でしょう。

これに対する最も原始的な対策として、左右の信号を適度に混ぜてクロストークを人為的に発生させるという方法があります。以前の記事では、自作の抵抗入りアダプタを紹介しましたよね(コチラ参照)。

DSPを使えば、さらに複雑な処理が可能です。
例えば、周波数に応じてクロストークの度合を変化させる事ができます。低音ほど反対側の耳に届きやすく、高音ほど届きにくいという現象を人工的に発生させるという事です。また、反対側の耳への音の到達を遅延させる事もできます。

さらには、理想的な広さと残響特性を持つリスニングルーム(モニタルーム)を想定して、擬似的な反響音を生成する事もできます(もちろん定在波はなし)。部屋の広さ、残響特性、スピカの左右の間隔、スピカとの距離等をパラメータ化して、ユーザが好みに合わせて調整できるようにしても構いません。お好みのバーチャル リスニングルームを作れるという事です。

しかし、「生の音場」を再現しようとすると、またまた幻影を追いかけてグルグルする事になります。あくまでも、スタジオ(モニタルーム)または理想的リスニングルームにおける2chステレオ スピカ再生の擬似的再現を目指すべきでしょう。なぜならば、「生」を再現しようとしても、ソースによって録音条件が千差万別だからです。ソースから「生」に遡る手立てが無いという事です。「生の音場」の再現を目指すのであれば、最初からバイノラル方式で録音すべきです。絶対に。。。

以上で述べたヘッドフォン用DSP処理は、早い話が、ステレオソースの擬似的バイノーラル化であると言えます。もちろん、ソースが最初からヘッドフォン再生を前提に制作されるようになれば理想的です。その場合、逆にスピカ再生時に多少のDSP処理を通せば良いでしょう。そもそもスピカによるステレオ再生の音場は、再三申しておるように、極めてエーカゲンです(グリコのオマケ)。あくまでもヘッドフォンを基準として制作し、スピカで再生する場合は多少処理を加える(あるいはモノラルでもOK)という方が理に適っているように僕には思えます。

DSPなら何でもできます。小さなヘッドホンにすら内蔵できます。コストも大してかかりません。上手に使い倒さない手はありません。ホンマニ。

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2013年08月24日 (土) | Edit |
Bluetoothヘッドフォンはホントに快適です。

どちらのヘッドフォンも、もう有線で使う事はないのではないか? とすら思います。例によって有線とトッカエヒッカエしてキキクラベルという事をしていませんが、ワザワザ粗探しをしなければ、普段普通に「音楽」を愛聴するには全く十分なクオリティを確保できていると思います。

通常、我々はステレオスピカ再生を前提に制作されたソースをそのままヘッドフォンで聴くわけですが、ヘッドフォン再生では左右耳間でクロストークが全く発生しないため、ソースによっては左右チャンネルのセパレーションが強すぎて聴き辛い場合があります。特に、僕が良く聴く'60代ジャズのスタジオ録音盤では、ベースが殆ど一方のチャンネルだけから聞こえるようなソースが結構多くあり、ベースを基準に全体を聴く癖がある僕には非常に煩わしく感じられます。また、一般的なソースでも、音が左右に拡がり過ぎるため、希薄に感じたり全体像を捉えにくく感じたりします。

ヘッドフォン再生用エフェクタ」に書いたように、ヘッドフォン用のデジタル信号処理(DSP)を使うと、この問題をかなり改善できます。しかし、最も多用するiTune(またはネットラジオ)+USB直指しBluetoothトランスミッタの組み合わせでは、これらのエフェクタを使う事はできません。

そのような場合、「ステレオ感を低減するiPod用アダプタを試作」で紹介したように、ヘッドフォン出力のL/Rラインの間に抵抗を挿入する事で左右の信号を適度にミクスできます。以前に作ったヤツは、あり合わせのデカイ抵抗器(2W)を使ってデッチアゲタ実験君用試作品でしが、今回は1/4Wの小型金属皮膜抵抗を使ってミニマムなアダプタを作ってみました。

ストレート型とL字型を作ってみました。
BT2 Plug
左端は失敗作。半田の熱で駄目になりました。
プラグとジャックの端子を、L/R間に抵抗(4Ω,1/4W)を挿入して直接半田で接合し、エポキシで固めてデッキアガリ。
チッチャクできたでしょ。外装には本革でも貼ってみますかね。

さらに、MDR-F1には抵抗を直付けしてしまいました。アダプタは不要です。
BT2 F1 inside

BT2 F1
デンセンを極端に短くするとノイズが発生しやすくなる事がわかったので、ラインを約50cmまで長くしました。

モニタヘッドフォンの方にはL字型アダプタを使います。
BT2 monitor
こちらはデンセン(約1.2m)を短縮せずにマジックテープで束ねています。こちらも果たして有線で使う事があるのかどうか?それくらいワイヤレスは快適です。

よく問題にされるBluetoothのノイズですが、レシーバにアルミテープを貼ったりデンセンの長さを調整したりでかなり改善され、さらにPC側の出力ボリュームを最大にしてレシーバ側のボリュームを絞る事で、実用上全く問題を感じなくなりました。頗る快適ですよ。

現在、ネットラジオ(AccuRadio)を聴きながらこの記事を書いています。おそらく64~128kbps/AAC程度のクオリティだと思いますが、「ワザワザオトノアラサガシ」をするのではなく「音楽を楽しむ」分には、全く必要十分な音楽再生クオリティを確保できているように感じられます。常々思うのですが、「基本の音楽再生クオリティ」(音楽重要帯域の周波数ドメイン/時間ドメイン的に正しい再生)がしっかりと「実際のリスニング位置(または耳元)」で確保できていれば、コマケーオンシツは多少どうであれ、十分に「音楽」を楽しめます。逆に、どんなにコーキュなハイエンド装置でも、「リスニング位置」で「基本の音楽再生クオリティ」が必要十分に確保できていなければ、どんなにキレイ?なオンガクセー?たらジョーカン?のある音がしようが、「音楽」は聴くに堪えないでしょう。

音楽家が制作した「音楽作品」をより良く聴こうとするならば、全くアッタリマエですが、そして何度でもシツコク言いますが、「リスニング位置(耳元)」での「基本の音楽再生クオリティ」が一等第一に重要です。これはウルトラ超スーパーアルチメットにアッタリマエの事です。非常に微細で表層的なオトノコノミノモンダイは「それ自体に拘りたい特殊な人だけが拘れば良い」問題でしょう。

現在一般に市販されている従来型スピカ再生システム(オヂオ)では、ハイエンドであろうがローエンドであろうが、ソレが余りにも疎かにされています。全く重要で超基本的な技術的課題が長年にわたって放ったらかしにされているという事は、当ブログで実験君データを交えながら繰り返し主張してきました。現在の進んだ周辺技術をもってすれば簡単に低コストで解決可能であるにもかかわらずです。もう21世紀なのに。。。

対して、躍進著しいヘッドフォン・イヤフォン再生では、非常に高い「基本の音楽再生クオリティ」が「耳元で」いとも簡単に得られる事も再三述べました(お部屋の影響を全く受けず、アナログフィルタもバスレフポートも使わずに、チッチャナ振動板1つで、十分に低い周波数まで、ソース波形をソノママ正確に、僕達のお耳まで届けてくれるという事)。ヘッドフォン・イヤフォン再生が本来持つ原理的かつ圧倒的なアドバンテージを生かし切るために、ソースそのもの(制作側)の最適化(バイノラル化)と、従来のステレオ録音で遺された莫大な遺産を最善の状態でヘッドフォン再生するための信号処理技術が、今後の重要な課題であると思います。

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2013年08月06日 (火) | Edit |
当ブログで再三書きましたが、僕は常々、表現者側がもっと積極的に民生用オーディオに関わるべきだと考えています。表現者として、丹精込めて作り込んだ自分の作品が最終的に鑑賞者の耳に「正しく」伝わるまで責任を持つべきだし、僕がこんな事を偉そうに言うまでも無く、彼らはそれを強く望むのが当然だからです。アッタリマエの事です。

現状では、本来表現者から鑑賞者に音楽作品を伝達するための民生向け実用道具であるオーディオ装置および技術それ自体に特殊な愛着を持つ特殊なヒトビトが民生用オーディオに強い影響力を持ち続け、全く好き勝手にアーダコーダ言っているだけにしか僕には見えません。また、そのようなヒトビト以外の、一般人向けに作られたスピーカ方式オヂオは、音質(音楽再生クオリティ)面で余りに安直に作られているように僕には見えます。

僕がもしミュージシャンだったら、もう絶対にヘッドフォン・イヤフォン再生を前提に作品をリリースするだろうし、自分が制作時に使ったヘッドフォンの機種も明示するでしょう。だって、やっぱり、「イーネー!俺様って、やっぱ天才っしょ!フォー!皆の者、俺様の音楽を、俺様の音を聴きやガレ!」(表現者とは多かれ少なかれそういうモンです)とリリースした作品を、そのまんま産地直送で皆に聴いて欲しいですモン。アッタリマエですよね。アッタリマエ。ウルトラ超スーパー アッタリマエ。

ヘッドフォン・イヤフォン再生の利点を以下に挙げます。
1) 再生場における最大の不確定要素であり最大の障害である部屋の影響を全く受けない
2) 安価に、コンパクトに、鬱陶しいセッティングや専門的知識を必要とせずに、誰でも買ってポンと繋げば、一般的スピカシステムでは絶対に得られない最高レベルの音楽再生クオリティ(マニアの言うオンシツではない)が得られる
3) 制作時の音場をそのまま正確に再現できる(バイノラル)
4) オヂサン(オヂオ)臭くなくてクール

という事で、僕はヘッドホン再生を前提とした(バイノラル)音楽ソースの普及を強く待ち望んでいるわけです。

スピカ再生方式は、そのように作成されたソースを気楽に聞き流したい場合や、僕のように長時間仕事しながら聴きたい場合の代替システムとして使えば良いでしょう。そもそもLEANAUIDOは、ヘッドフォン・イヤフォンの代替方式として開発したそのようなシステム(非接触型ヘッドフォン)の一例です。

スピカ方式の場合、一般的に言って、周波数および時間ドメイン的にしっかりと正しく「リスナの耳」に届ける事が最重要であり、世の大多数のヒトビトにはモノラル再生で全く十分だと思います。2つのスピカの中央で聴かない限り正しく聞こえないのでは全く不自由ですし(普通、ヒトビトはセンターに陣取ってマンヂリともせずに音楽を楽しむわけでは断じてナイ)、部屋の影響を圧倒的に受けるステレオ式スピカ再生に正確なオンヂョ再生を求めるのはソモソモ酷です(というか、ソモソモ原理的に不可能)。

そんな僕にとってちょっと嬉しいニュースをご紹介。。。例によって、やっと本題です。

コチラの記事をご覧ください:
「サカナクション、バイノーラル録音をメンバー自ら 解説した最新トレーラー映像をYouTubeに公開」



以下抜粋
- 今回のトレーラー映像は通常の宣伝を主な目的としたトレーラー映像とは異なり、作品の正しい視聴方法を案内するという特殊なもの。
- TVやPCのスピーカーで視聴しているリスナーが多いと感じたメンバーが、リスナーに正しい視聴方法を改めて案内したいという思いで、このトレーラー映像を制作することを発案した。


制作サイド(音楽のクロートさん)からのこのような働きかけが絶対に必要であると思います。彼らは、今まで、余りに末端の再生環境に対して無関心過ぎたと言えるでしょう。その結果が現状のオヂオです。。。コラアカンでしょう。

これも再三申している事ですが、音楽再生において何が「正しい」かを定義できるのは、唯一表現者自身だけです。オヂオヒヨロンカでは断じ全く絶対にアリマセン。

今後、このような制作サイドから民生オーディオへの働きかけが急速に拡がる事を切に期待します。

追記
Bluetoothイヤフォンをオウチの中で使ってみましたが、ワイヤレス方式はオウチの中でも圧倒的に快適です。今後はインドア用高音質型にも無線化が進むのは明らかでしょう。バッテリ寿命(低消費電力化)、充電時の給電技術(非接触給電方式 → 完全なデンセンからの開放)、軽量化といった面での進化が望まれます。技術の進化に伴い、今後もますますヘッドフォン・イヤフォン方式が普及し続けるものと思われます。

絶対に音楽制作側の対応が必要です。
また、スピカ方式も根本的にマヂメに進化しないとアキマセン。

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2012年07月28日 (土) | Edit |
前の記事からの続きです。

review (英辞朗より抜粋)
【名】
再調査{さい ちょうさ}、再検討{さいけんとう}、再考察{さい こうさつ}
〔過去{かこ}の出来事{できごと}の〕報告{ほうこく}、説明{せつめい}、総括{そうかつ}
・Could we have a quick review of your progress so far? : これまでの進捗についてザッと説明していただけますか?
〔評価{ひょうか}のための〕検査{けんさ}、点検{てんけん}、審査{しんさ}
《法律》〔上級審{じょうきゅうしん}の〕再審理{さい しんり}
〔作品{さくひん}や公演{こうえん}の〕批評{ひひょう}、書評{しょひょう}、レビュー
《印刷》批評{ひひょう}[評論{ひょうろん}]誌
〔テストの前の〕復習{ふくしゅう}、おさらい
《軍事》閲兵(式){えっぺい(しき)}、観兵(式){かんぺい(しき)}
〔ミュージカルの〕レビュー◆【同】revue


今回も、評者の主観的感想を綴った「読み物」ではなく、工業製品たるオーディオ機器の特徴(例えばオンシツ)や性能(例えば音楽再生クオリティ)を可能な限り正確かつ客観的にレポートし、読者が貴重なお金を費やして購入する製品の選択に最大限に役立つ真に有用な情報を提供するための「レビュー」について考えてみます。

今回はバイノーラル録音(と、それを収録したCDの付録)についての続きです。

バイノーラル録音は、製品同士の比較だけでなく、各種の条件比較(スピーカ位置(部屋)の影響、バスレフと密閉の低音の比較、音場補正の効果比較、生演奏と再生音の比較等の各種実験君)を読者に体験してもらうためにも活用できます。使いようによっては、非常に有効なマテリアルになるのではないかと思います。

特に興味深いのは生演奏と再生音の比較です(「原音再生」というのを冷静に評価してみようじゃぁないか。。とね)。例えば、音楽家にスピーカ位置で生演奏してもらい、これを近接マイクとリスニング位置のバイノーラルヘッドで同時録音します。そして、今度は近接マイクの音を装置のスピーカから再生して再びバイノーラル録音します。この2つのバイノーラル録音を聴き比べる事により、その装置がどの程度「原音」に近い音を再生しているのかが概ね分かります。楽器の演奏だけでなく、アナウンサーに何かを読み上げてもらった音声なんかも、装置の評価に使えると思います(ニュースが不自然に聞こえるオヂオを僕は嫌う)。あるいは身近な色々な音(お茶碗の割れる音、黒板を引っ掻く音、バケツを叩く音等)も試して見るとオモシロイのではないでしょうか。このような各種生録音データをストックしておけば、以降の全ての装置の評価に使えます。このような評価により、装置間の差ではなく、その装置の絶対的な癖(カラーレーション)を知る事ができるでしょう。活用方法は、この他にもいくらでもあると思いますよ。

そのようなバイノーラル評価を採用する場合、まず、この方式でどの程度微小な音の違いを識別できるのかを検証しておく必要があります。このため、装置を直接試聴した時のブラインド評価結果と、バイノーラル録音を試聴した時のブラインド評価結果の相関性を確認する必要があるでしょう。これにあたっては、ヒヨロンカではなく本当に聴覚を鍛え上げたプロフェッショナルな被験者(スタジオでマスタリングをやっておられる方々が非常に敏感な耳をお持ちらしい)に協力を仰ぎ、ブラインド評価で有意な結果が得られる何らかの条件の下に試験を行う必要があります。彼らが装置からダイレクトに試聴してギリギリ有意なブラインド結果が得られる条件を探す必要があるという事です。彼らがブラインドで確実に電線を聞き分けられるのであれば、電線を使っても良いでしょう。電線ではまともに評価できないようであれば、ビットレート違いの圧縮データを使う事も考えられます。そのようにして、バイノーラル録音で評価できる事できない事をまず明確にする必要があります。

また、読者が試聴する際に使用すべき推奨ヘッドフォン/イヤフォンも指定しておいた方が良いでしょう。その機種の選定も、彼らプロフェッショナルの協力を得て事前に行っておく必要があります。装置から直接聞いた時とバイノーラル再生を聞いた時の聞こえ方ができるだけ近く感じられる機種を選定するという事です。多くの読者が購入できるよう、あまり高価な機種は避けるべきでしょう。多くのスタジオで愛用されているSONYのMDR-CD900STや、ハチマル推奨のVictor製トップマウント型イヤフォンあたりが適しているのではないでしょうか。オヂオ用の超高級品は余計なオンガクセーとやらが演出されている可能性があるため適さぬのではないかと思います。

以上のような事前検証で判明したバイノーラル録音では伝えきれない現象については、データで補足すれば良いでしょう。例えば、20kHzを超えるような超音波は、鼓膜で感知するというよりは、顔等の皮膚表面で感じていると言われますし、僕もIA7Eを評価した時にそのように感じました。ですから、超音波領域に感度を持つマイクロフォンと計器を使って、そのような領域の強度を測定できれば参考になると思います(参考: このような計器が売られています)。

その他にも、掲載すべき基本的計測データがいくつか考えられます。それらについては、僕が今まで計測したデータを例として挙げながら、次回の記事で紹介したいと思います。その次のシリーズ最後の記事では、真のオーディオ評論家には何が求められるのかについて考察したいと思います。オタノシミニ。。。

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2011年08月21日 (日) | Edit |
前の記事からの続きです。「圧倒的」高音質なんてタイトルを付けてしまったので、カウントが一気に跳ね上がって驚きました。内容を見てがっかりされた方も多いと思います。ハチマルの言う「音質」とは「音楽再生クオリティ」の事です。またイヤフォン/ヘッドフォンは、この面で「原理的に」圧倒的に有利であるという意味ですのでご理解ください。オーヂオ関連では「至高の」とか「究極の」とかヤタラ多く使われるようなので、相対的表現である「圧倒的」くらい使っても良いかなと。。。

今回は、通常のステレオソースをイヤフォンやヘッドフォンで聞きやすくするための方法について考えて見ます。通常のCDやLPは前方に置いた左右のSPで再生する事を前提に製作されているため、ヘッドフォン再生では不自然に聞こえ、これを嫌う方も多いと思います。最初からヘッドフォン再生を前提として製作されたソースが出回るようになるのが理想的ですが、現存するソースは殆どステレオ盤であるわけで、これらをもっと快適に聴けるようにしたいものです。

下はスピーカーでステレオ再生を聴いている時の模式図です。
611_20110821063759.jpg
話を単純にするために、以下では無響室(壁からの反射ゼロ)を想定します。
前方に2つのSPを置いて聴くステレオ再生の場合、L側(R側)の音は右耳(左耳)にも聞こえます。クロストークが発生するという事です。また、反対側の耳に届く音の位相は若干遅れます。さらに、クロストークの発生度合は周波数によって異なります。波長の長い音ほどクロストークは強くなるはずです(音の回析現象)。ステレオソースは、このようにクロストークが発生する事を前提に調整/製作されています。

このように製作されたステレオソースをヘッドフォンやイヤフォンで再生した場合、クロストークは一切発生しません。例えば、図のトランペットが独立したブースで録音されて、Lチャンネルだけに割り振られている場合、この音は左耳にしか聞こえません。これは、例えばそのプレーヤーの演奏に意識の焦点を合わせようとしたときに非常に聴き辛く感じます。このため、自宅で深夜/早朝にヘッドフォンで聴く場合、FrieveAudioのマトリクスを使用して左右チャンネルを少しミックスしています(図ではLchにRch-12dB、RchにLch-12dBをミックス)。このミックス度合によって、音場の拡がり度合を自在に調整できます。完全にL/Rをミックスするとモノラルとなって全てセンターに定位します。しかもSPによるステレオ再生とは異なり、左右音波の干渉は一切発生しません。
644_20110821071308.jpg

僕には適度なL/Rミックスで十分なような気もしますが、例えば周波数ごとにミックスする度合と位相差を調整する事によって、あたかも前方のスピーカーでステレオ再生して聴いているような感じに近付ける事も可能なはずです(左右だけを考慮した疑似的なバイノーラル化)。つまり、左右スピーカーを点音源と考え、それぞれのSPから左右の各耳までの伝達関数(各周波数で耳に届く音の大きさと位相)を求め、これを基に再生信号をデジタル処理すれば良いわけです。それほど精密に補正する必要はないはずです(ニンゲンの聴覚による空間認識はかなり曖昧なので)。ホンノリと効果を効かせるだけで十分でしょう。この種の補正はあまり厳密にやるとかえって不自然に聞こえる事が多いかと思います。

パラメータで仮想SPの左右距離を好みに応じて変更したり、あるいは適度な反響を持つ理想的な仮想リスニングルームを想定した伝達関数を使用する事も可能なはずです。この場合もデッド/ライブ、部屋の広さ等をパラメータで調整できるようにしておけば、好きな人には結構楽しめるかもしれません。

このような信号処理機能がiPod等の携帯型プレーヤーに実装されると、非常にありがたいとハチマルは思います。少なくとも左右の単純なミックス機能だけでも早急に採用してくれないかなぁ?

ヘッドフォン/イヤフォンをメインで使用して音楽を愛聴するリスナーの数は確実に増えています。ソース製作および再生技術において、この方面での取り組みにも期待したいと思います。オーヂオ業界が取り組むべき技術的課題はたくさんあると思うのだが。。。

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2011年05月25日 (水) | Edit |
ここ最近、音場あるいは聴覚による空間認識について考察を重ねました。

どう考えてもステレオ方式で表現される音場というのは、あくまでも「それらしく」聞こえる程度の「演出」に過ぎず、その程度のものと認識してそれなりに受け入れ、深追いせずに素直に音楽を聴いた方が良かろうというのが今のところの僕の理解です。

このステレオ方式では、装置をどう調整しようが、部屋をどう対策しようが(部屋の影響が大きい)、どんなに追求しても普遍的理想状態というのはそもそも存在せず、またソースが変われば録音状態も千差万別であるため、結局は好みの問題、気分の問題を追いかけ回す事に終止したあげく、富士の樹海をさまよう事になるだけのような気がします。まあ、それが楽しいのかもしれませんが。ソコソコでコンナモンと受け入れるのが肝要かと。。。。

音楽を鑑賞する上でそれほどまでに音場が重要というのであれば、ステレオ方式などとっとと廃れているはずです。しかし過去に4chブーム、バイノーラルブームがあり、最近ではサラウンド方式というのもありますが、あい変わらずステレオ方式が主流を占めている事から、広く一般の人々は、普通に音楽楽しむんやったらこんなもんでエーントチャウと受け入れているという事だと思います。もし、全く同じ性能の装置をモノラル バージョンとステレオバージョンで選べるとしたら、そしてモノラルの値段がステレオの半額だとしたら、皆さんどうします?例えば20万円のステレオセットをモノラルにして10万円で買えるとしたら、ステレオ効果と10万円を天秤にかけて、どっちが得と感じるか?(実際に半額になるのはスピーカだけ、アンプは電源部があるので半額にはならない、プレーヤ部の減額分はさらに小さかろう)

本当に音場に拘りたいと言うのであれば、少なくともサラウンド方式の方が現実的でしょう。スピーカーの配置や、信号処理(遅延)の設定にも大きな自由度があるため、ステレオ方式よりもずっとイヂリ甲斐があって楽しいのではないかと思います。PCを音源としてFrieve Audioのようなソフトウェアを使用すれば、結構ディープに楽しめるのではないでしょうか。でも、サラウンド方式を徹底的に弄っているオーヂオマニアというのを余り見かけないのも、不思議といえば不思議です。サラウンド方式でも再生場の音響特性に影響を受けるという点では、ステレオ方式とたいして変わりません。

もし家庭で音楽鑑賞するに際して音場再現がそれほど重要であるというのであれば、最も理に適ったバイノーラル方式の開発を進めるべきだと思います。とにかくそのホールで生演奏を聴いた時の耳位置での音場をそのまま正確に収録でき、再生時に部屋の影響を全く受けないという点で原理的に極めて優れています。ただし、ホールの観客席で単純にダミーヘッドで収録しただけでは、現在の演出されたステレオソースほど定位感はないでしょうから(ヒトは物足りなく感じるでしょうから)、多少演出するために補助的な近接マイクの使用や、ミキシングおよびデジタル信号処理技術等、録音技術にももまだまだ改善の余地があるでしょう。また、既存のステレオソースをバイノーラル再生用に信号処理する方式の開発も必要かもしれません。それらがうまくできれば、かなり魅力的なソースになるはずです。

近年、iPodの普及に伴い、ヘッドフォンやイヤフォンおよびヘッドフォンアンプ等が以前にも増して市場を賑わしており、家庭でもこれらをメインに使用して音楽を楽しむ人口が確実に増えていると思われます。そういう意味でも、ヘッドフォン再生に適したバイノーラル録音というのは、今後真剣に考えるべき技術ではないかと思います。最も厄介な部屋の影響を全く受けず、小さなダイアフラムで極低音まで再生できるため、原理的にスピーカー方式よりも音質面(ナンタラ感の音質ではない)でも優れます。

追記
現在のオーディオ装置は基本的にステレオ再生を前提に設計されているが、ホンマにステレオは必要なのか? と考えてしまう事がある。そもそもスピーカーを何個使おうが、てんで勝手な再生条件(お部屋)で音場を表現しようとしても端から無理がある。オウチでスピーカから音だして音楽聴いてナニが悪いと言うのよ? なにもムリクソ臨場感演出せんでもエーヤン。。中途半端な事するくらいなら、居直ってモノラル再生をもっと真面目に考えてみても良いかもしれない。スピーカー間の干渉も生じないため、かえって潔く聴きやすいような気もする。例えばタンノイの有名なオートグラフというやつは1953年の設計。ステレオレコードが本格的に普及したのが1957年だから、本来モノラル再生を前提としたスピーカーだと思われる。そいえばモノラルでホールの響き感を演出する事を狙った設計であると聞いた事もあるような気がする。そう考えればあのような設計にも納得できるか(45°の角度ってステレオ配置には向かないのでオッカシーナ?と以前思っていたのよ)。1本だとコストも半分だし。場所も半分だし。ホンマノホンマニ ステレオって必要なのか?

追記2
調べたらやっぱりオートグラフはモノラル用なので45°のコーナー角度に設計されているとのこと。作家の五味康祐氏が初めて日本に輸入して以来、日本のオーディオマニアの憧れになったとか。このスピーカーをステレオで鳴らすのは日本人くらいではないか?とか書いてあった。似たような構造でステレオ用に設計しなおしたと思われるウェストミンスターというのが今も売られているが、こちらはイマイチ話題に上らないみたいね。

追記3
お部屋で音楽を普通に聞くならモノラル、臨場感楽しみたいならバイノーラル、ってとこが無理なくストンと腑に落ちるような気がしてきた。暫く片方のスピーカだけでモノラルで聞いてみようっと。モノラルを前提とした無指向性スピーカの実験をしたくなってきたゾ。。。

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2011年05月19日 (木) | Edit |
人間は主に視覚と聴覚の組み合わせによって空間を認識すると言われます。また、これら2つの感覚は互いに補い合って機能するとされます。

聴覚は視覚よりも時間認識分解能に優れると言われ(であるからこそ、このように複雑で高度な音楽を楽しめる)、また一般的に聴覚の刺激に対する反応の方が速いとされます。これは情報処理量の違いによるものかもしれません。また、視覚は視野の範囲しか知覚できませんが、聴覚は全方向の音を知覚できます。これに対し、視覚は空間認識分解能に優れると言われます。聴覚よりも細かく正確に位置(方向/距離)の違いを見分ける事ができるという事です。この点で、聴覚は視覚に対して大幅に劣ります。

私達はこれらの感覚を上手に組み合わせて使用しています。例えば、森の中を歩いていて不意にどこかでガサッと音がした時、人はまず聴覚によって素早く反応し、音の方向を大まかに認識してそちらに眼を向け、眼をこらして正確な位置(距離と方向)と音の原因が何なのか(危険なのかどうか)を知ろうとします。

オーディオのステレオフォニック方式もサラウンド方式も元々は映画館用に実用化されたものであり、音(聴覚)と映像(視覚)の組み合わせによる臨場感の「演出」を狙いとしています。これらは正確な「空間」を再現する事を目的とするものではなく、あくまでも映像のショーアップを目的とするものです。ステレオ方式が導入された当初、馬が画面を左から右に横切ると、パッパカ音も左から右に移動するという事で、客も単純に喜んだのでしょう。最近では3Dですか。これも3D TVによって一般家庭に浸透しつつあるようです。

さて音楽を生演奏で楽しむ場合、ヒトは聴覚だけではなくその他の感覚、主には視覚と併せて体験しています。例えば、フルオーケストラのバイオリンの音は、はっきりとバイオリン奏者が見える方向から聞こえるような気がするでしょう。しかし眼を閉じてしまうと、聴覚の空間認識分解能は視覚に比べて大きく劣るため、その方向感覚は極めてあやふやになります。実際に眼を閉じて試された方から全く方向を認識できなかったという体験談も聞いた事があります。

恐らく、生演奏と同じ音場をどのように正確に再現したとて、視覚情報を欠いた(というかむしろ全く異なる視覚情報/環境条件を伴う)体験は実体験とは全く別物として感じられるでしょう。バイノーラルで録音して自宅でそのまま聴いてもなんだかモノタリナイと感じるはずです。むしろ、家庭で楽しむ事を前提にある程度演出された現在のステレオソースの方がリアルっぽく聞こえるのではないでしょうか(ソースは単なる記録ではないということ)。これをさらに無理矢理、実体験の輝かしい記憶/印象に近付けようとすると、果てしのない徒労となるばかりでなく、(視覚)情報の欠落分を聴覚だけで補おうとするあまりに(無理矢理リアルっぽくライブっぽくしようとするあまりに)、過剰な演出によって、本来の音楽再生が疎かになりがちです。また、幸運にしてあるソースでイメージ通りの聞こえ方が得られたとしても、ソースによって録音条件がマチマチであるため(マイクの位置とか分離とか残響時間等について規格はない)、他のソースでも良好に聞こえるとは限りません。このように現在のオーヂオ装置は「生演奏疑似体験装置」あるいは「音場再現装置」などではなく単なる「蓄音機」と言っても良い程度のものに過ぎません。しかし、再三申しているように、それは生演奏体験に準ずる低級な代替体験手段でもありません(また空間再現性が音楽を楽しむ上でさして重要であるとも思えない)。生演奏体験とは端から異なる、さらに言えば生演奏よりも高度な表現が可能ですらある音楽体験/音楽表現手段として、その独自の良さを素直に受け入れた方が、せっかくソースに記録されている貴重この上ない音楽作品をより深く楽しむ事が出来るはずです。

以前にも数回にわたってさる演奏家のコメント「空間表現の追求など不可能を無理して求めているだけであって失うものの方がはるかに大きい、そもそも現代のオーディオは完全に間違った方向に走っている」を取り上げましたが、その趣旨は概ねハチマルが上に書いたような事ではないかと思います。また、オーディオマニア達が、音楽家は概して再生音楽の空間再現性に無頓着であるという点において自分達の指向するオーディオとは乖離していると結論付けたお話しもご紹介しました(これも不思議な話で、逆に音楽に関してはドシロートの自分達の音楽との接し方の方が乖離していると真摯に受け止めようとしないのか?)。僕の個人的見解でもありますが「音楽のイチバンオイシイところはそんなところにはナイ」というコトだと思います。音楽を聴いていて、いまだかつてソコが重要だと感じた事は一度もありません。というか意識に登った事すらありません。

オーティオ趣味のイチバンオモシロイところはソコにアルという方もいらっしゃるでしょう。楽しみ方はヒトそれぞれです。どの分野でもそうですが、それがマニア、それが趣味というものでしょう。しかし、一方で業界全体としてそれは実用的音楽鑑賞装置の本来の用途ではないという事をしっかりと認識する必要もあるのではないでしょうか。一部のマニアックな傾向によってオーディオ装置の正常進化が阻害されてはなりません(正常進化とは根本的な音楽再生性能(やたらコマケー音質やナンタラ感ではない)の向上、コンパクト化、低価格化、利便性の向上等)。例えば鉄道マニアは、例えばクラシックカーマニアは、そしてそれらの関連業界および一般ユーザーはそんな事はアタリマエとして認識しています。現在のオーディオ業界の動向を見るに付け、そのあたりの認識が疎かにされているような気がしてなりません。

追記
僕は今、全盲の方の再生音楽に関する考え方、感じ方に凄く興味があります。もともと実体験から視覚情報が全く欠落しているわけですから、音だけの再生でもリアルに感じる事ができるのだろうか? バイノーラル再生が凄くリアルに聞こえるのだろうか? ステレオ再生音はどのように感じるのだろうか? リアル感やライブ感を演出するために響かせた音が果たしてリアルに自然に聞こえるのだろうか?等々。。。

追記2
あたかも眼の前に居るような、口のカタチや大きさが、ミニチュアのステージが目の前に展開するような等、視覚情報の欠如を音から補おうとする意識が伺えますね。これはオーディオを「趣味」とされる方々の特徴のようにも思えます。そのように聞こえるように(あるいは聞こえるような気がするように)装置を調整するのが楽しいという事なのでしょうか。僕はいまだかつてそのような事を思っても見なかったので、ちょっと驚きました。ステレオで初めて聴いた時、ポールの声が左右に移動するので、なるほどこれがステレオか。。と納得した後、ドーッテコトナイヤンと、現在に至るまでほとんどステレオ感を意識していません。ケロの実験中に、左右スピーカー間の距離を拡げてゆくと、ほんとに何もない空間にポッカリと音像が浮かび上がる事がありました。こういうのがオモシロイのかなぁ。とも思いましたが、僕には気色悪く感じて音楽に集中できないので、結局あのように狭いスパンを選択しました。マイルスが目の前に浮かんだらコワイし。。。ス、スンマセンデシタ!って逃げ出したくなる?

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2010年10月22日 (金) | Edit |
さて、何らかの方法でコンサートホール特等席の正確な音場を再現できたとして、果たしてそれで楽しくオウチで音楽が聴けるのでしょうか?

先に言っておきますが、僕個人は自分の部屋で再生音楽を鑑賞するに際して、音場感や臨場感を全くと言って良いほど重視しません。未だかつて、それが重要だと感じた事は一度もありません。逆に過剰に演出された音場感や臨場感には嫌悪すら感じます(だって、音楽が聴きにくくなるんだもん。。)。

3. 再生音楽における「音場感」について
そもそも僕は「再生音楽」を「生演奏の再現」を目的とするものとは全く考えていません。「再生音楽ソースとは自宅でスピーカーから発音して音楽を楽しむ事を前提とし、それに合わせて最適に録音された媒体である」というのが基本的な考え方です。原理的に無理なのを承知で何故ライブの音場(往々にして諸々の現実的制約から理想的な音響条件とは言えない状態)をわざわざ「再現」しなければならないのか全く理解できません。

演奏会場で聴いている場合は、目の前の絢爛豪華なオーケストラ、隣席の普段よりも入念に化粧して着飾った妻(息子が産まれて以来行ってないなぁぁ。。)、人々のざわめき、ご婦人方の香水の香り、休憩中に飲んだワインの心地よい酔い等々、聴覚だけでなく視覚や臭覚を含めて全身でその場の雰囲気を楽しむことができます(反面、だらしなくリラックスできないという欠点もあります。隣席の妻にチャントシナサイとしょっちゅう叱られた)。これに対し、再生音楽を聴く場合は専ら聴覚に頼らざるを得ません。また音響的な環境もコンサートホールとウサギ小屋では全く異なります。物理的、心理的、音響的に条件が余りにも異なり過ぎると言えます。演奏会ではホールの響きを心地よく感じたとしても、専ら聴覚に頼らざるを得ない再生音楽を、音響特性も全く異なり、雑多な物であふれかえる自分の部屋で聴く場合にも同じように心地よく感じるのでしょうか?。僕ならば再生音楽を聴く場合には、ライブの時よりも音楽そのものの音響クオリティの高さ(言いかえれば音楽の聴きやすさ)を重視します。だって「聴く」事しかできないんだもん。

例えば、臨場感とか音場感とかを重視するために、フルオーケストラをバイノーラル録音または2本マイク式ステレオ録音する場合について考えてみます。
この場合、たった2本のマイクで全ての楽器の音を明確に捉えなければならず、また個々の楽器音のバランスを調整する事もできません。ですから音響的に理想的なホールを選び、全ての楽器の音が最も理想的に聞こえる座席位置で録音する必要があります(果たしてそのような席は存在するのか?)。また、直接音に対して反響音の成分が増えるため、楽器音が相対的に聴きづらくなります。その場で生で聴く場合には、目の前にオーケストラが居て、視覚で指揮者なり興味のある楽器と奏者に意識の焦点を合わせる(演奏を目で追う)事ができますが、再生音楽では専ら聴覚に頼らざるを得ません。つまり、聴覚でしか楽しむ事ができない再生音楽では、その他の感覚も動員して体験するライブよりもトータルの情報量が少なくなります。これを補うために、反響音を控えめにして楽器音の細部を明瞭に録音した方が、オウチでは音楽をより楽しめるのではないかと思います(だからこそマルチトラック録音が多くの場合採用されるんですよね)。

録音時に近接配置した多数のマイクで収録して慎重にミクスダウンするという非常に手間がかかる手法を敢えて使用するのは、「オウチでスピーカーで再生した時により音楽が楽しめますように」という製作側のアリガターイ配慮です。「音場感」なり「音場再現性」を過剰に重視する余りに、再生音楽ならではの聴きやすさや生では得られない音響クオリティの高さを損なってしまうというのは、ハチマルとしては全く納得しかねますですネ。

で、ハチマル的結論としては
オウチで音楽聴くには、マルチトラックで録音して2chへミクスダウンする現在主流のステレオ録音方式で十分
というところですね。。。モノラルでもOKよ。
ただし
DSPでホールの反響とかの変なエコーを追加しないでネ
を付け加えたいと思います。

追記
もし現在もモノラル方式しかなかったとしたら。。。人々はオウチで音楽を聴くに際してそんなにホールの反響とか臨場感とかを重要だと思うんだろうか? そもそもステレオ方式はモノラル方式を2つ並べてテキトーに音を右と左に振り分けた程度のものに過ぎないワケで、たいして事情は変わらないと思うんだけど。

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2010年10月22日 (金) | Edit |
今回はバイノーラル方式について。

2. バイノーラル方式
音場の「再現性」という観点では、バイノーラル方式はステレオフォニック方式に比べて理論的にマトモでビューティフルな方式に思えます。実はステレオ方式よりもバイノーラル方式の方が先に提唱されたというのも頷けます(ステレオ方式は原理的にメチャクチャ エーカゲンで「再現」手法とは言い難い)。このため、正確な音場再現性が求められる研究開発分野ではバイノーラル録音が多く使用されます(自動車分野での適用事例はコチラ)。

下図に録音原理を示します。
612.jpg
この方式では、人間の頭部と肩部形状を模したダミーヘッド(マネキンの頭部)を使用します。マイクは両耳の位置に取り付けます。一般的な小型マイクを頭部の両側面に単純に取り付けるシンプルなものや、外耳道までリアルに再現して内部にマイクを埋め込むものなど、様々なタイプが存在します。当然ですが、耳タブや肩の影響も再現できる形状に設計されています(頭部だけのもある)。
614.jpg
前の記事にも書きましたが、人間はこれらの形状の影響を受けた音を左右の耳で聞き分ける事によって、音の方向を立体的に捉える事ができると言われています。ダミーヘッドを使用する事により、それらの影響を受けた耳位置の音をソックリソノママ録音してしまおうというのが、この方式の狙いです。

下図が再生原理です。
613.jpg
再生にはヘッドフォンまたはイヤフォンを使用します。耳位置で録音した音を、そのまま耳位置で再生するので、再生場(リスニングルーム)の影響を全く受けません。録音された時の耳位置での全方位の音(直接音も反響音も全て含む)をそのまま聴く事ができ、原理的には原音場を立体的に「再現」できます。細かい点ではまだまだ問題もあるのでしょうが、音場再現を目的とするのであれば、ステレオフォニックやサラウンド方式よりもずっと理に適った現実的な方法だと思います。

さてさて、音場の再現手法について長々と書いてきましたが、ではでは、一番肝心な「オウチで音楽を楽しむ」という目的において音場の再現性がそれほど重要なのでしょうか?

次回はそのへんについて考えてみます。

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2009年02月17日 (火) | Edit |
前の記事でバイノーラル録音の話が出たのでついでに。

僕の専門分野ではないのですが、以前仕事で間接的に関わった事のある自動車の室内音の評価について書きます。

<その前に>
バイノーラル録音とは、人間の鼓膜に届く音声をそのまま記録することによって、イヤフォンで再生したときにあたかもその場に居合わせたかのような臨場感を再現しようとする録音方式です。録音には人間の頭部形状を真似たダミーヘッドと、両耳の位置に取り付けたマイクロフォンを使用します。再生音からはその場に居るような臨場感や立体感を得る事ができるとされています。
両耳に届く音は頭部や上半身の形状に影響されます。人間はそれによって生じる左右の微妙な位相差や音圧差から音の方向を認識するわけですが、それをそのまま再現しようというのが狙いです。

通常の2チャンネル ステレオ方式はあくまでも自分の部屋で「それらしく」音楽を楽しむためのものであり、正確に生の音場を再現する事はできません。

最近の自動車は、室内音をただ静かにするだけでなく、積極的にそのモデルのイメージに合ったサウンドを創り出すといった事をやっています。耳障りで不快な音成分は徹底的に除去した後に、例えばスポーツカーであればスポーティーなサウンド、高級車であればラグジュアリーなサウンドを表現するのに必要な音成分だけを選択的に残したり強調したりするわけです。時にはエンジンの吸気音がドライバーの耳に届くように細工したり、性能を多少落としてでも吸排気系の形状を変更したりもします。これらの技術はサウンドエンジニアリングと呼ばれています。クルマの性能自体は各社横並びの状態にあるため、特に欧州メーカーを中心にサウンドキャラクターによる製品の差別化が重要視されつつあります。欧州のユーザはクルマを選ぶ際の選択基準として室内サウンドを重視する傾向にあると聞きます。

この分野では人の音の感じ方に基づく音質指標として心理音響パラメータを使用します。例えばラウドネス(音の大きさ)、シャープネス(甲高さ)、ラフネス(ざらつき感)、トナリティ(純音感)とかがあります。これらのパラメータの値は、信号解析によって定量的に数値化可能です。そして、これらの客観的なパラメータと、主観的なフィーリングである「スポーティ感」あるいは「パワフル感」がどのように相関付けられるかを、多数の被験者によるリスニング評価(一種のブラインドテスト)の統計的解析によって同定するといった事が行われます。

リスニング評価では、被験者にできるだけリアリティのある音を聴かせる必要があるため、バイノーラル方式で録音/再生を行います。すなわち助手席に設置したダミーヘッド(マネキンの耳にマイクロフォンを埋め込んだもの)を使用して録音し、被験者にはヘッドフォンを使用して試聴してもらいます。さらに被験者前方の床面にはサブウーハーを設置して、ヘッドフォンでは再現しきれない重低音を再生します(遅延は補正)。サブウーハーを使用するため、試験は無響室内で行い、サブウーハーからの音が聞こえるようにオープンエア タイプのヘッドフォンを使用します。

例えば、フェラーリ、ポルシェ、NSXといった内外の主要なスポーツカーのフル加速中の室内音を録音して、そのままの再生音やDSPで一部改変した再生音を被験者に聞かせ、その音からどの程度の「スポーティさ」が感じられるかを10点満点で主観的に評価してもらうわけです。当然被験者にはそれがどのモデルの音なのかは知らされません(ブラインドテスト)。

そのようにして集められた多数の結果と心理音響パラメータの値を統計的に照らし合わせて、最終的には顕著な相関性を示す数個の心理音響パラメータから「スポーティーさ」の点数を算出するための計算式を多重回帰法を用いて導き出します。その計算式を解析装置にプログラミングし、録音したデータを解析装置に流せば、「スポーティさ」の点数が出力されるといった具合になります。ちょうどカラオケの点数みたいなもんです。新型車の開発においては、このようなツールを駆使して様々な改造が行われます。

僕も被験者の一人として参加させてもらったのですが、世界中の有名スポーツカーの音が聞けてなかなか楽しい経験でした。ブラインドでしたがフェラーリはすぐに分かっちゃいました。ちなみに完全な主観評価にもかかわらず、被験者間の差は以外と少なかったです。ただし、同じ試験をヨーロッパ人と日本人でやると、はっきりとした傾向の差が現れます。基本的に欧州人はやや濁った迫力のある低音を好む傾向にあり、日本人はエンジン回転と連動した澄んだ高音(F1に代表されるレーシングサウンド)を好む傾向にあります。

以上は、プロフェッショナルなレベルで再生音のリアリティが求められる場合のバイノーラル方式の実施事例として紹介しました。

自分の部屋でコンサートホールを本当にリアルに再現したいのであれば、このような方式をとるのが最も現実的ではないかと思います。でなければ少なくとも2chステレオシステムではなくマルチチャンネルのサラウンドシステムを採用すべきでしょう。前の記事で書きましたが、僕個人は音楽を聴くにあたってそのへんのリアリティをあまり求めません。

オーディオ界でも以前一度バイノーラル ブームがあったように記憶しますが、その後すぐにすたれてしまったようです。最近はMP3プレーヤーの普及によってヘッドフォンなりイヤフォンが広く受け入れられ、それら機器の装着感や性能も大きく改善されているので、今一度バイノーラル録音を見直してみてもよいのでは、と思います。録音する側の技術においても、以前は外耳道までリアルに再現したダミーヘッドが一般的に使用されましたが、最近ではおむすび状のシンプルな形状のダミーヘッドが開発されています(実はこちらの方が自然に聞こえるらしい)。また信号処理技術も飛躍的に進歩しているはずです。

蛇足ですが、このような積極的なサウンドの創出による車の個性化あるいは差別化といった動きは、欧州の自動車メーカーが先行していました。それまで、日本の自動車メーカー各社は室内音を何dBまで下げられるかでしのぎを削っていたわけです。特に一時期のT社の車は気色悪いぐらい静かでした。しかし、そのような車では操作に対するフィードバックが得られないため、運転の楽しさが得られないばかりか、危険さえ感じる事がありました(知らない間にスピードが出ている、無駄にアクセルを踏んでしまう等)。

最近、オーディオ界においては個性的な外国製スピーカーが幅を効かせ、気真面目に作られた日本製スピーカーは苦戦している模様ですが、何となく関係のありそうな話ではありませんか?

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2009年02月17日 (火) | Edit |
当然ですが、人によってそれぞれ再生音に求めるクオリティや評価基準は異なります。

今回のオーディオ トライアルを通して、僕が再生装置に何を求めているのかが少し明確になったような気がするので、下記の項目にまとめてみました。

1) 聴きやすさ
2) 低音
3) 音量
4) 臨場感とか定位感
5) 原音再生
6) 生演奏か再生音か
 
1)聴きやすさ
僕にとって一番重要なのは「聴きやすさ」です。聴きたいと思った楽器の音がストレスなく聴きとれることを第1に求めます。このため、カナル型イヤフォンが今回のトライアルのリファレンスとなりました。例えば僕の場合ジャズのベースラインの聴きやすさが1つの重要な基準となります。当然、反射音の影響が少ないニアフィールドリスニングが僕には合っています。カナル型イヤフォンは究極のニアフィールドリスニング装置ですね。

2)低音
クラシックの交響曲を聴く時には、やはり低域の再生能力が欲しくなります。盛り上がりの部分の楽しさは低域側の再生帯域が足りないと半減してしまいます。ジャズのベースラインを追いかけるだけであれば、そこまでの低域再生能力は必要ありませんが、サブウーハーで低域側に余裕が出た事によってベースラインがよりストレスなく聴き取れるようになりました。しかし「迫力のある」低音とか身体に感じるような重低音とかは全く求めません。逆に邪魔です。僕の求める低音は、あくまで「聴きやすさ」の延長線上にあります。

3)音量
コンサートホールと同じ音圧の再現を理想とする方も多いようですが、僕は聴きたい音が十分に聴き取れる以上の音量は求めません。アンプの出力は2Wくらいしか使ってないと思います。逆に音が大きすぎると「聴きやすさ」が損なわれます。また、狭い部屋でそのような音量で再生したら、僕は重圧感で30分も聴いていられないでしょう。同じ音圧でも壁に囲まれた狭い室内と広いホールで聴くのでは、あるいは実際に演奏者が前方に存在するのとしないのとでは、物理的にも心理的にも条件が異なり過ぎます。僕はライブで聴くのと再生音を聴くのは全く別の体験として扱います。

4) 臨場感とか定位感
特に重視しません。もともとライブ盤は好きではなく、最初からステレオ再生を想定してセッティングされ慎重にミクスダウンされたスタジオ録音の方が好きです。ステレオシステムで音場を正確に再現する事など理論的に無理ですし、また可能であったとしても僕には重要な評価基準ではありません。部屋で再生音を聞いている瞬間そのものが独立した実体験すなわちライブですから。定位もあまり気になりません。フルトベングラーとかマイルスの古い録音はモノラルですが、特にステレオに劣るようには思えません。逆に真ん中に全てが定位するので聴きやすく感じる場合もあります。

5) 原音再生
これも必要以上はに重視していません。さすがにPCのオンボード サウンドデバイスは許容できませんが、まじめに作られたオーディオ用のそれなりの装置であれば僕には十分です。スピーカーで音が発せられるまでの部分が原信号に対して正確極まりなく作動したとしても、その後の部屋の反射の影響が大きいのではないかと思います。原音再生や臨場感(音場の再現性)を突き詰めるのであれば、再生場の反射の影響を受けないヘッドフォン再生(バイノーラル録音)の方が向いていると思います。

6) 生演奏か再生音か
一流ではあるが凡庸なミュージシャンの生演奏か、それとも人類の歴史に残るような超一流ミュージシャンの渾身の名演奏の録音盤か、どっちかだけといったらどっち取ります? 僕なら迷わず後者の方を取るな。それが今回の結論。僕にとってライブで聴く事が至上ではないし、従って再生音がライブにどれだけ近いかも至上の基準ではないという事です。

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