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2011年05月27日 (金) | Edit |
ステレオ方式は原理的に「音場」を再現できるものではなく「演出」する程度のものに過ぎない事は以前の記事(コチラ)に書きましたが、実はこれ以外にも基本的な問題が存在します。

ステレオ方式の場合、中央に定位する音は、左右chで同相/同振幅の信号によって表現されます。人間は左右の耳で同相/同振幅の音(全く同じ音)が聞こえると、その音源は中央(正面または真後)にあると認識します。このため左右対称の2点の音源から全く同じ同相の音が出ていると左右の耳で全く同じ音が聞こえるため、その音源は真ん中にあると「錯覚」するという事です。

下に、真正面に1つの点音源が存在する場合の実際の音場と、この音場をステレオ再現した場合の音場を示します(SPも点音源として表現)。このように音場としては全く異なるのですが、人間には同じように聞こえるはずだ。とするのがステレオ方式です。

実際の音場
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ステレオ再生された音場
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2つのスピーカーから放射された同相の音は互いに干渉しあい、場所によって強め合ったり弱め合ったりします。上の図で、例えば青が振動板が前進した時の正の位相、黄が後退した時の負の位相とした場合、青同士または黄同士が重なった位置では同相となるので問題ないのですが、青と黄が重なった位置では逆相となるため互いにキャンセルしてしまいます。青(または黄)の縞1本分の幅が半波長に相当します(等ラウドネス曲線によると人間の耳は3~4kHzで最も感度が高いとされますが、例えば4kHzの波長は約8.5cm、半波長では4.25cmです)。また、周波数が異なれば縞の幅(波長)も異なるため、強め合う位置/弱め合う位置は周波数によって異なります。さらに、人間の耳の間隔は20cm弱ありますから、耳位置の干渉状態も両耳で全く同じにはなりません。

極簡単にマイクで確認してみました
Alpair 6P(スパンと距離は共に約1.2m)で、3.1kHz正弦波のモノラル信号を左右のSPで出力し、マイクロフォンを手持ちして左右に約±10cmの範囲で移動しながら録音しました。下がその波形です。
813.jpg
マイクを手持ちしてほぼ中央(C)から録音開始。ここから右へ約10cm移動(R)。再び中央(C)に戻し、そのまま左へ約10cm移動(L)後、中央(C)まで戻しました。キャンセルされて振幅がほとんどゼロになる位置があり、干渉の影響によるものと考えられます。前後に移動した場合も同様の現象が発生します。また、単音であれば耳で聴いてもはっきりと音の変化がわかります。

このような音場の下で、ヒトは普通左右の正確な中心に陣取ってマンジリともせずに音楽を聴くわけではありませんし、左右の耳位置で干渉状態も異なる事から、ステレオ再生で音像が中央に定位しても実際に前方に音源が存在するのとは異なるなにがしかの微妙な違和感を覚えるようです(さらに視覚的違和感も生じる)。また、ステレオ効果が正しく機能を発揮するのはリスナーが中央に位置する時だけであり、視聴位置が左右に移動すると音像位置も移動します。逆にステレオ効果がはっきりと出ると違和感を覚えるためにセンターで聴く事を嫌い、わざわざ左右どちらかに少し偏って聴く事を好むリスナーも居ると聞きます。SPを一本だけ使用するモノラル再生の場合、このような2点音源による干渉問題は生じません(上側の図と同じになる)。

本来最も重要となる正面(人間は興味の対象に対して正対しようとする)には実体の音源が存在せず、虚構の音源(ファントムとも呼ばれる)によって表現せざるを得ないというのが2chステレオ方式の弱点と言えるかもしれません。これを補うために、サラウンドシステムでは試聴位置が移動しても必ず中央(画面方向)から聞こえるべきナレーションや台詞を明瞭に聴き取れるようにするためにセンタースピーカーを使用していますよね。音楽でも最も重要であるべきセンターの再生音が幽霊(ファントム)なんかでホンマニエーノンカ?と疑問に思えなくもありません。。。

通常の録音ではリードボーカルやスタープレーヤーを中央に配置する事が多いはずです。ですから、特にボーカルや独奏あるいは小編成を聴く場合には、モノラル(SPは当然1本ですよ)で聴いてみても良いのではないかと思います。しかしオーケストラの場合、SP1本のモノラル再生をニアフィールドで聴くと、なんだかトッテモ寂しく聞こえます。これはスピーカから離れれば改善されますが、デスクトップで聴く場合にはステレオの方が断然楽しめるように思います。その他の楽曲ではモノラルでOKかな。。。という感じ。やはり交響曲の再生だけは特別なような気がします。最新技術で真面目に録音されたバイノーラル盤のベトベン交響曲を聞いてみたいなぁ。。。。。

SP再生で音場感(音場の再現ではない、あくまでも演出)を望む場合、例えばモノラルのメインSPを正面に配置し、ステレオ感をホンノリ演出するために左右に高音用SP(角度調整式、リスナ直射ではなく壁に反射させても良いかも)を配置するような3ch方式が良いかもしれません。左右の信号から中央寄りの同相成分(左右で同じ部分)を信号処理で排除できればさらに効果的でしょう(干渉も軽減できる)。音場感は弱め(中央寄り)になるでしょうが、かえって聞きやすいのではないかと思います。

実際のライブでは、音源(直射音の出所、すなわち定位すべき方向)はそれほど左右に拡がっていないと思います(例えばオーケストラの場合ステージから離れるほど音源(直射音)の分布角度は小さくなるがステレオでは左右一杯に拡がって録音されている、ライブのジャズコンボはステレオで聞くほど各奏者が左右いっぱいに離れていない)。現在のステレオソースはかなり誇張されている嫌いもあるため、モノラル+オプションで左右の反響音の拡がりを少し演出するくらいでエーンチャウという気もします。音が拡がるのは気持ち良いのかもしれないが、主役はあくまでも中央だとハチマルは思うぞ。

左右音声にちょっとだけディレイやエコーかけるとかもアリかも。端っから「再現」など考えずに(バイノーラル以外はどうせ虚構なんだから)メインのモノラル音声を左右チャンネルで「演出する」という考え方。そのうち実験してみるか。。

追記
音楽鑑賞だけであれば後方のSPは不要であろう。今までサラウンドには全く興味が無かったが、3.1chシステム(前方L/C/R + サブウーハー)は従来のステレオ方式より具合良さそうだな。。。。と今回、この記事を書いていてフト思い当たった。マヂでいっちょ試して見るかな。

追記2
しかし、真正面にSPを置くというのはレイアウト的に邪魔だ。だからオートグラフみたいにコーナー型のモノラルSPが作られたのだろう。2chステレオ方式はレイアウトしやすいという面でも広く一般に受け入れられたのだと思う。デスクトップで正面にSPを置くのは殆ど不可能。やはり、壁掛け可能なコンパクトなSP + 床置きサブウーハーというのが現実的か。しかしセンターSPはどう考えても邪魔だ。以前の記事で「2chステレオ方式の最大のメリットは正面にSPを置かなくても良い点にある」と書いたが、正にその通りだと思う。

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