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2013年06月22日 (土) | Edit |
しつこいですが、ちょっと補足しておきます。

位相というやつはホントニ、ヤヤコシイです。

だいたい位相、位相と申しますが、位相はあくまでも計算しやすくするために便宜上使うパラメータであって、最終的には時間を基準に考える必要があります。フィルタは一種の時間遅延回路として働き、出力が入力に対して時間的に進む事はありません。でないとタイムマシンになってしまいます。そして位相回転とは、この遅れ時間を、便宜上、信号周波数の周期に置き換えた値に過ぎません。この定義による位相は、入力に対して絶対に進む事はアリマセン。だって、時間が進めないわけですからね。。。音響出力のタイミング(従って位相)は入力信号に対して絶対に進まないという事です。

位相が「進む」というのは、入力の位相から遅れた任意の状態を基準にして、それに対して「相対的に」進むと言っているに過ぎません。音響の世界では、位相は相対的なものであるかのように扱いますが、これが認識をややこしくしているように僕には思えます。

下はネットで拾ったフィルタの解説です(出展はこちら)。
位相説明
解説には「正弦波形を入力しはじめた直後には、過渡的な応答がありますが、やがて定常状態になり、出力も正弦波形 になります。」とありますね。そして、出力が正弦波形になるまでの時間(図ではΦ)が、フィルタの遅れ時間(位相)です。

無信号状態から正弦波がいきなり始まる現象は、まごう事なき過渡現象であり、高周波成分を多く含むわけですが、フィルタであれバスレフであれ共振要素の出力は、各種の要因により過渡期間にヘンテコリンな現象を生じます。これらのヘンテコリン君達の一部は、理想的にはあってはならない一種のノイズであると言えるかも知れません。

ローパスフィルタの場合、無信号状態から正弦波信号が始まると、最初に信号とは逆向きの小さな山が現れます。これは「位相が進んだ」フィルタ応答などでは決してアリマセン。これは主にローパスフィルタによって高周波のゲインが減衰する事に起因すると考えられるフィルタの正常な過渡挙動です(正常なヘンテコリン君)。正弦波がいきなり始まる場合、そこで正弦波周波数以外の高い周波数成分が発生しますが、ローパスフィルタは高い周波数を通さないため、応答波形にはヘンテコリン君が現れるという事です。ですから、入力に対するローパスフィルタ出力の遅れ時間なり位相なりを評価する際に、このような過渡領域の波形を云々する事に意味はアリマセン。

その事をステップ応答でお見せします。
ローパスフィルタを通した音響波形です。
ステップ1
赤がアナログフィルタ(22mH、400μF)、青がほぼ同じ特性のデジタルフィルタ(Fc=70Hz、-12dB/Oct)です。
アナログ(赤)では例によって初期に信号と逆の波が出ています。過渡正弦波応答でも最初にこの逆相の波が出ますが、これは位相が進んだフィルタ応答などでは全くアリマセン。デジタル(青)では信号が立ち下がる前に既に尖った山が出ていますが、これはデジタルフィルタが移動平均処理を行うためです。アナログの最初の波は、デジタルのこの波が遅れて出ているように見えます。

このような山が出る1つの原因は、ローパスフィルタによって高周波成分がカットされている事にあります。
FrieveAudioで-12dB/Oct/70Hzのハイパスフィルタを設定し、高周波成分も追加してみました。要は高音まで出力できる2Wayスピーカにしたという事です(Lチャンネルにローパス、Rチャンネルにハイパスを設定し、中央で合成波を観測)。

まずデジタルフィルタの場合
ステップ2
最初の山がフラットになり急峻なパルスに変わりました。DC成分を出力できないスピカは、矩形波に対して理想的にはパルスしか発生しません。

次にアナログフィルタの場合
ステップ3
高周波振動が激しかったため500Hz以上をカットしています。デジタルと同様の傾向ですが、アナログフィルタでは位相の回転が大きいため、デジタルほど綺麗にはなりません。

このように、2Wayにして別のスピカから本来あるべき高周波成分が出力されると、過渡領域の合成波の形状は大きく変化します。ですから、ローパスフィルタ出力の過渡領域のチョイトした山について、アレコレ気にする必要は無いという事です。

フィルタであれバスレフであれスピカ自体であれ、このようなヘンテコリンな過渡挙動問題の最大の元凶は、遅延時間(位相ではない)が周波数によって異なる(一定ではない)という点にあります。再三お見せしたように、低音ほど遅延時間が長いデスヨね。つまり高い周波数成分から先にスピカから出てくるという事です。

時間遅れが周波数に対して一定ではないという難儀な性質を持つ共振現象(フィルタなり、バスレフなり、スピカ自体なり)の出力は、多数の周波数成分を含み激しく過渡的に変化する音楽信号入力に対して多かれ少なかれヘンテコリンな挙動を示します。その典型例がバスレフですよね。条件によっては、ドレガドレヤネン、ドナイナットンネン!というくらい、入力に対する出力の関係が分からなくなります。

このような共振要素が、入力とピッタリ同じ波形を出力できるのは、「単一周波数の定常正弦波(始まりも終わりもないズーーート続く一定周波数の正弦波)」ダケです。バスレフは定常正弦波を素晴らしく綺麗に出力しますが、過渡になるとガタガタに崩れましたよね。

このヘンテコリン現象(ソースの信号波形通りに音が出てこない現象)は、システム内に共振要素の個数が多ければ多いほど強まります。再三実測とシミュレーションでお見せしたように、共振要素が増えるとどんどん低音が時間的に遅れますよね。共振要素の数は密閉型で1個、バスレフ型で2個、アナログフィルタを追加すると1個増える。。。という具合です。

現時点では、僕は専ら低音の時間的遅延を問題視しています。従って、アナログフィルタを十分に高い周波数で使う分には大して問題は無かろうと考えます。しかし、バスレフ型は正に最下限周波数で共振を起こすため、問題の現象(低音の時間的遅れ)が非常に顕著に表れます。僕がバスレフを嫌う原因の1つはこの点にあります。

ですから、システムにはスピカ(密閉型)以外の共振要素を追加しないに超した事はアリマセン。昔から言われるように密閉型フルレンジが理想だというのはこの意味で当を得ています。この密閉型フルレンジを、デジタル技術で補おうというのがLEANAUDIOの基本アプローチです。これは、ダイナミック型スピカシステムの改善に向けた最も基本的/根源的アプローチであると言えるでしょう。

密閉型と言えども共振要素を1個含みます(全体で180°回転する)。LEANAUDIO初期においてAlpair5で馬鹿ブーストを採用して以来、仕事中に音楽を聴いていて違和感を覚えるたびに吸音材を増やしてゆき、ほぼ1年かけて吸音材が満杯になるに至りました。これは密閉型の共振現象(インピダンスピーク)を殺す(緩やかにする)行為に他なりません。

また、大分以前の記事で、密閉型モニタヘッドフォンではダイナミック型でありながら低音が全く遅れない(つまり殆ど位相が回転していない)というデータをお見せしました。これは恐らく、振動板が非常に軽量であるため共振周波数が非常に高いからではないかと思われます。超小径ダイアフラムを使うカナル型イヤフォンの場合、共振周波数はもっと高いでしょう。この点でも、ヘッドフォン・イヤフォンは有利であると言えます。

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2013年05月13日 (月) | Edit |
家内が出かけたの見計らって、DAYTONの計測システムでZAP 2.1ch君の歪み特性を手っ取り早く計測してみました。

計測はリスニング位置(距離約75cm)です。マイクは手持ち。相変わらずエーカゲンです。
音量設定には業界標準の-18dBFSrmsピンクノイズを使いました(詳しくはコチラの記事参照)。ピンクノイズは2つのスピーカで再生。再生ソフトはFrieveAudio。補正は全てOFF。ICON AMPのボリュームは1/2。

音量設定は
1) 昼間の標準的ボリュームよりやや高め
標準ピンクノイズで約75dBCに設定。PCのボリューム目盛りは32/100
2) ご近所にビクビクしながらかなり頑張ったボリューム
標準ピンクノイズで約82dBCに設定。PCのボリューム目盛りは60/100

DAYTON計測システムでは歪み計測用に-12dBのスイープ信号(R/Lモノラル)を使います。
「春の祭典」の超絶バスドラ(約40Hz/-6dB)を除けば、僕のコレクション中で低音信号レベルの最も高いマドンナのズンドコが約45Hz/-12dBです。通常のジャズやクラシックの超低音レベルは、マドンナよりもずっと低いので、-12dB信号でOKであれば実用上全くOKと言えます。また、マドンナの曲はコンプレションを効かせているので、再生時のボリュームは標準よりも絞ります。ソンナコンナを鑑みれば、このテストで良い結果が出れば大概のソースで実用上全くOK!と言えそうです。

では結果です。

グラフの色分けは以下の通りです。
Color.jpg
2次:赤、3次:紫、4次:緑、5次:水色、2~5次の合計:青

1) 標準ボリューム
ZAP 75dBC 32
2次(赤)が支配的なので2~5次(青)と殆ど重なっています。
2次歪み率は2%以下、3次歪み率は0.8%以下しかありません。
マイク手持ちという事もあり、計測するたびにグラフの凸凹が微妙に変化しますが、何度計ってもこのレベルでした。結構ヨロシーのではないでしょうか。

2) 標準ボリューム+7dB
ZAP 82dBC 60
2次が5%に達しましたが、3次の歪みはほとんど増えずほぼ1%以下を維持しています。これがAlpair10の凄いトコロと言えましょう。ブリッと完全に破綻するまで(Arrestorにヒットするまで)、3次は決して急増しません。前の記事の正弦波による聴感評価に基づくと、まだ許容範囲内にあると言えます。特に3次歪みが殆ど増加していないため、聴感的にはまだまだ余裕がありそうです。

Alapir10に比べればかなり低音歪み(特に3次)の多かったAlpair5および6の馬鹿ブーでも十分に実用に耐えた事から、様々な周波数成分を含みダイナミックに変化する実際の楽曲音では、純粋な定常正弦波で比較試聴するよりも聴感上の歪み許容範囲はかなり拡がると思われます。いずれにせよ、ZAP 2.1は僕の実用条件において全く十分、というかオーバースペックであるとすら言えるでしょう。Alpair6 4本使いくらいで丁度良いかも知れません。

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2013年05月11日 (土) | Edit |
暖かくなると実験君の虫が動き始めるようです。

前の記事で、「リスニング位置における40~10kHzの周波数特性」が音楽再生における第一等の重要特性であると述べました。

これに次いで重要なのが、「低音領域(100Hz以下)の歪みと遅れ」です。100Hz以下と限定するのは、それ以上の周波数領域では、今時の真面目に作られたオーディオ用スピカであれば安価な物でも十分な性能(再生クオリティ)を有しているからです(主に「コノミの問題」という事)。

今日の音楽再生装置において、最も不完全であるのが100Hz以下の低音再生です。オーディオ技術者は、全力をあげて世の全ての家庭用音響装置で、たとえ安価なTVの内蔵スピーカや小さなドックシステムであっても、音楽を聴くに十分な低音を正しくリスナの耳に届けられるよう取り組まなければアキマセン。もう21世紀ですからねぇ。。。

一般的に再生音の「歪み」と言う場合、一定周波数の定常正弦波信号を入力した時に出力音に含まれる高調波成分の割合(「定常的な歪み率」)を指します。つまり周波数ドメインでの評価です。これに対してタイムドメイン的に評価する「遅れ」は「動的歪み」と言えるかも知れません。特に遅れが「時間的に」大きくなる超低音領域では、本当の「歪み」(ソース音からの乖離度合)は、最終的に動的に評価しないとホンマの事は分かりません。でも、動的評価はトッテモ面倒クサイので後まわしにして、まずは「定常歪み」について考えてみます。

多くの場合、歪み(率)はTHD (全高調波歪み)という1つの値で表されます。これは「高調波成分全体の基本波成分に対する比」を意味します。説明はメンドクサイのでコチラを参照してください。しかし、音楽再生においては、このTHDを鵜呑みにするのは非常に危険です。何故ならば、THDは高調波の全ての次数成分を同じに扱いますが、実際には高調波の次数に応じてヒトに知覚される歪み感が異なるからです。THDの値が同じでも、2次成分が多いのか3次成分が多いのかによってヒトには異なって感じられるという事です。また、一般的に奇数次数が強いとヒトは不快に感じるとも言われます。

一体全体、低音に含まれる各次数の高調波成分はどの程度以下であればヒトは「まぁエーンチャウ?」と感じるのでしょうか。僕の今までの経験によると、波形を見てまぁ概ねサインカーブやねっと感じれば、音の方もまぁ概ね正弦波音に聞こえました。なので波形の観測を重視し、「何次高調波が何%」という数字は余り重視しませんでした。しかし、それでは一般的な指標となり得ません。そこで今回はより具体的な指標値を得るために、波形生成ソフトウェア(WaveGene)で各種の高調波成分を含む正弦波を生成し、モニタヘッドフォンで聴き比べて見ました。

左は50Hz/-6dBの正弦波に2次成分(100Hz/-20dB)を加えた波形、右は3次成分(150Hz/-20dB)を加えた波形です
2nd -20 3rd -20
どちらもTHDは約20%に相当しますが、耳には3次成分を加えた方が明らかに元の正弦波音から大きく異なって聞こえます。僕の経験では、100Hz以下の低音再生において最も厄介に感じられるのが3次高調波です。2次高調波は多少多くても余り気になりません。また、4次以上の成分は元々それ程大きくありません。

という事で、以下では、どの程度まで高調波成分が増えると「明らかに歪んでるヤン(正弦波音とチャウやん)」と感じられるのか、モニタヘッドフォンで聴感評価してみた結果をご紹介します。

基本周波数(40/50/70/100Hz)のレベルを-6dBで固定し、2/3/4/5次の高調波成分を-80dBから-60/-40/-30/-20dBと増やして行き、どの時点で明らかに正弦波の音とチャウ(明らかに歪んでいる)と感じるのかを確認しました。本当はもう少し細かく高調波のdBを変化させたかったのですが、ソフトウェアの都合上できませんでした。なお、基本周波数が変わっても歪みを感じ始める条件は同じでした。以下では50Hzでの波形を載せています。

高調波成分のdB値と歪み率の関係は以下の通りです(基本周波数成分は-6dB)。
-80dB = 0.02%
-60dB = 0.2%
-40dB = 2%
-30dB = 6.3%
-20dB = 20%

以下、各次数での結果です。

2次
左は-30dB、右は-20dBです。-30dBはOKと感じました。-40dBから微妙に音は変化しますが、単独で聴けば余り違和感を覚えないと思います。-20dBは明らかに歪んでいると感じました。これはアキマセン。
2nd -30 2nd -20

3次
左が-40dB、右が-30dBです。-40dBは-60dBからの音の変化をかなり明確に知覚できますが、まあぁギリギリOKかな?。-30dBはNG。お馴染みの三角波形です。
3rd -40 3rd -30

4次と5次
左は4次/-30dB、右は5次/-40dBです。共にNGです。
4th -30 5th -40

以上の結果を歪み率に換算すると下記のように言えます。
2次: 2%はOK、6.3%はまぁまぁOK、20%はNG
3次: 2%はギリギリOK、6.3%はNG、20%は全くNG
4次: 0.2%はOK、2%は微妙
5次: 0.2%はOK、2%はNG

以上から、ごく大雑把な目標値は下記のようになるでしょうか。
2次は5%以下
3次は2%以下(1%以下が望ましい)
4次以上は1%を大幅に下まわる事


次回は、ZAPシステムでの定常歪みの計測準備に入ります。オッタノシミニ!

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2013年01月21日 (月) | Edit |
前の記事では、ボード線図で考えると密閉型の場合 f0 より低い周波数での遅れは90° 以下になるはずなのに、実測では40Hzで180°近くも遅れていると書きました。今回はこの遅れの要因について考えてみます。

とりあえず、20Hzから640Hzまでパルス入り正弦波の音響出力を観測してみました。アンプはIconAMP、スピカはA10です。
A10遅れ
周波数は20, 40, 80, 160, 320, 640Hzです。例によって周波数が高くなるにつれて「位相」は遅れます(時間的には低音の方が遅れます)。
20Hzで丁度90°遅れていますね。20Hzを基準とした場合、高周波の遅れは-270°弱に漸近しそうです。理論的には-180°に漸近するはずですが、これはスピーカのインピーダンスの変化(高周波で増加する傾向)、アンプおよびDACの位相変化(高周波で遅れる傾向)によるものかもしれません。

下は典型的な密閉型のシミュレーションです。
Simu10.jpg
以前の記事のボード線図で考えると、20Hzでほぼ遅れナシ(グラフのスケールでは+90°)です。

では実測の90°分の遅れは何に起因するのでしょうか?

スピーカでは、コイルに電流が流れる事によって駆動力が発生します。原理的に、この電流はコイルに印加される電圧に対して90°遅れます(電圧を時間積分した電流が流れる)。アンプが入力信号に比例した電圧を遅れなく出力するよう動作するならば、コイルに流れる電流は入力信号に対して90°遅れるかもしれません。しかし、アンプが入力信号に比例した「電流」を遅れなく供給するよう作動するならば、この遅れは生じないかもしれません。

確か、普通のオーディオアンプは前者の動作ですよね(電圧駆動っていうんでしたっけ?)。。。後者は「電流駆動型」と呼ばれており、コッチの方がエーンチャウ?と一部で言われているヤツですよね? 違っていたら、どなたかご教示くださいませ。

もし、上の原理(電圧駆動)によって電流が90°遅れるとするならば、この遅れは原理的に周波数に関係なく一定です(でも、時間に換算すれば低周波ほど遅れます(40Hzの90°の時間は4kHzの90°の時間の100倍長い))。ところが。。ところがですよ。。。ダイナミック型マイクロフォンはダイナミック型スピーカの逆の変換をやっているので、「原音」対「再生音」で考えるならば、この90°は相殺されるかもしれません。つまり、マイクは原音→電流→電圧に変換するので、記録された信号の位相は原音に対して90°進んでおり、スピーカはそのように記録された信号を電圧→電流→再生音に変換するので、再生音の位相は信号に対して90°遅れます。なので結局、原音と再生音で比較すれば位相差は生じない。。という事になるはず。。。アーヤヤコシイ。あれ??でも。。コンデンサ型マイクロフォンを使った場合はどうなのでしょうか???アレレ??もし上の逆変換という考え方が正しいとすれば「電流駆動」のアンプって原音に忠実と言えるんだっけ??と、イロイロ疑問点が出てきます。

という事で、当ブログの新年の挨拶で書いたように、マイクロフォンからスピーカに到るシステム全体のメカニズムについて、今年はよーーーく考えてみようかなと思っています。もう実用というよりは単なる知的興味だけですけどね。

この後に予定している実測とシミュレーションの検証では、とりあえず90°を差し引いて位相を比較しても良いかもしれません。あるいは密閉型の20Hzを基準(遅れナシ)としても良いでしょう。絶対的な遅れ時間を知りたいが故に始めた検討ですが、位相を絶対的に評価するというのはホントに困難ですね。なので一般的に位相は相対的に評価するものだと考えられています。しかし、本当にそれで良いのか今のところ僕には納得できていません。真に絶対的な評価をしようとすると、マイクロフォン(つまり原音)まで遡る必要がありそうです。まぁ、そのへんは今年中に気長にやってみましょう。もう実用的な意味はありません。あくまでも知的趣味として。。

他にも色々分からない事があります。例えば、以前の記事で、音圧波形は振動板の変位波形の微分(つまり速度波形)に対応すると書きました。これはスピーカの非常に近くで観測する場合には正しいのですが、マイクをスピーカから離して行くと、音圧波形は振動板の加速度波形(速度の微分)に近付きます。このような現象も、観測される波形の位相に影響すると思われます。

Xmaxを超えて歪んだ音圧波形(A6、40Hz)
hakei.jpg
緑がスピーカの5cm前方、赤がリスニング位置のやや後方(70~80cmくらい)で観測。相互の位相や振幅はデタラメです。FFTによる高調波成分の値は殆ど変化しません。

シミュレーション結果
hakei simu
青が振幅、緑が速度、赤が加速度。相互の位相関係は正しいです。振幅は適当に揃えています。上の実測波形とよく一致していますね。このように、スピーカから常識的な距離をとると、音圧波形は振動板の加速度波形に対応します。そして加速度波形は電流波形に対応します。つまり、音圧波形は電流波形に対応します。電流波形は電圧波形から90°遅れています。なので音圧波形は信号波形から90°遅れます。という事ですかね。。。アアヤヤコシー。

位相を計測する時はマイクを近付け過ぎず、一定距離を保つべきであると言えるでしょう。

いやぁ、音響ってホンットニ、ヤヤコシイですね。気が狂いそう。。。

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2013年01月17日 (木) | Edit |
今回はバスレフ型およびバスレフ型に-12dB/Octのフィルタを組み合わせた場合の位相特性について考えます。最後にいつものシミュレーションと比較する事により、僕の考え方が正しいかどうかを検証してみます。

下はバスレフ型の模式図です。
p3_20130117043119.jpg
バスレフ型では、ヘルムホルツ共鳴周波数(縦の青破線、図では40Hz)を挟んで2つのインピーダンスピークが発生します。密閉型と同様に各ピークを中心として位相が±90° (1ピークあたり計180°)回転します。このため、各ピークにおける遅れは、下側が90°、上側が270°となり、全部で360°位相が回転します。2つのピークの中間に位置するヘルムホルツ共鳴周波数での位相は180°遅れます。バスレフ型の場合、密閉型に比べて位相が遅れるだけでなく、2つのピークの間(50Hz前後)という狭い周波数範囲で位相が180°回転します。

下はバスレフ型に-12dB/Octのローパスフィルタを組み合わせた場合の模式図です。
p4 copy
一般的な2Wayバスレフ型のウーハーに相当します。位相は全部で540°(180°x3)回転する事がわかります。フィルタ カットオフ周波数での遅れは450°です。カットオフが十分に高ければ、下限周波数(例えば40Hz)における遅れ量には殆ど影響しないと思われます。つまり、高い周波数での位相の回転は気にせず下限周波数の時間的遅れだけを問題にするのであれば、アナログフィルタでも別に構わないと言えるかもしれません。ただし、後で書きますが、サブウーハのように極端にクロスオーバー周波数が低い場合にはモロに影響するため注意が必要です。

上図をシミュレーション結果と比較してみます。

下はAlpair 6P + TONO箱(約7L)を想定した結果です。
P0.jpg
模式図の条件とは異なり、バスレフの共鳴周波数は50Hz、ローパスのカットオフは3kHzです。折り返しを展開した位相曲線を明るい緑で示しています。2本のピンクの水平線は、上が位相0°(遅れナシ)、下が-540°(540°遅れ)です。シミュレーションでも全部で540°回転していますね。

各周波数における位相を読み取ると、下側のインピーダンスピーク(1番左の赤縦線:約38Hz)では-90°、ヘルムホルツ共鳴周波数(左から2番目の青縦線: 約50Hz)では-180°、上側のピーク(80Hz)では-270°、フィルタのカットオフ周波数(1番右の赤縦線: 3kHz)では-450°となり、上の模式図とよく一致しています。また、アナログフィルタのカットオフ周波数は十分に高いため、下限周波数における遅れには影響していません。カットオフ周波数(3kHz)で450°遅れますが、時間に換算すると約0.4msですから、一般的に言われる人間の時間分解能(20~30ms)に比べれば非常に僅かです。

最後に極端な例として、アドオン式サブウーハを想定して、フィルタのカットオフを70Hzまで下げてみました。
p6.jpg
50Hzの位相は-180°からさらに-90°回転して-270°になりました。また、100Hzで-450°まで急激に位相が変化しています。サブウーハのように極端に低いカットオフ周波数を使う場合は、明らかにデジタルフィルタの方が有利であると言えます。特にバスレフ型のサブウーハでは位相が大きく変化するため、この問題は密閉型よりも深刻となります。

次回は、実測値と照らし合わせて見たいと思います。

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2012年12月03日 (月) | Edit |
今回はちょっと根本的なトコロを考えてみたいと思います。

オーディオ装置(音楽再生装置)にとって理想的な電気→音響変換方式とは?

電気-音響変換装置の代表がスピーカですが、最近はイヤフォン/ヘッドフォンが主流になりつつありますね。

スピーカにおいては、現在のところ一部の特殊なタイプを除いて殆どがダイナミック型であり、特に低音再生においては現実的にダイナミック型しか無いと言って良いと思います。ダイナミック型は振動板の往復運動(ピストニックモーション)によって空気を振動させて音を出すわけですが、これは多くの楽器が音を出す原理とは異なるため、理想的な方式とは言えないとする説もあります。今回はこのへんも含めて掘り下げて考えてみます。

まず、音はマイクロフォンによって電気信号に変換されます。これは大前提です。マイクロフォンで録音しない限りスピーカから音を出す事は一切でせきません。マイクロフォンは、ダイナミック型であれコンデンサ型であれ、一般的なスピーカに比べて非常に小さな振動板が音圧の変動を受けて往復運動(ピストニックモーション)する事によって音を電気信号に変換します。

マイクロフォンは、発音体(楽器等)の発音メカニズム(弦の振動であれ、胴表面の振動であれ、管の気柱振動であれナンデアレ)の如何に一切関係なく、空気中を伝播して到達した圧力波(音圧変動)によるダイアフラムのピストニックモーションを電気信号に変換します。ここで重要なのは、マイクロフォン信号は楽器そのものの機械的音響的振動形態を何ら直接的に反映しない(どんな仕組みで出た音であれ全て単なる空気の圧力変動として扱うだけ)という事と、空間内の1点とも言って良い微小領域での音圧変動だけを反映するという事です。

とりあえず単純化するために、1本のマイクロフォンで録音する最もシンプルなモノラル録音方式で考えてみます。
とある空間(ホール)のとある楽器からある所定の距離を置いて(例えば客席のドコカに)設置された無指向性マクロフォンで収録した音を、サイズも音響特性も全く異なる全く別の空間内(オウチのお部屋)に置いた1本のスピーカで再生し、リスナはスピーカから数m離れてスピーカからの音を聞きます。

マイクロフォンで捉えたホールのとある位置での音圧の変動波形(音)をソノママ リスナの両耳(モノラルなので)の近傍で再現できれば理想的です。マイクロフォンは無指向性ですから、ホールの残響音も全て捉えています。しかし、実際には、スピーカから離れた位置で聴くリスナの耳近傍にはお部屋の音響効果が相当付加された音が届きます。理想に近付けるには、部屋を無響室にするか、できるだけスピーカに近付くしかありません。また、マイクロフォンは振動板の極近傍の音圧変動だけを捉えるのに対し、スピーカは巨大な空間を励起せねばならず、また低音まで再生できるスピーカの振動板はマイクロフォンに比べて巨大であり、大概は複数のサイズの異なる振動板に帯域分割されるため正確に逆変換できません(マイクロフォンが捉えた音圧変動を周波数、時間、空間領域で理想的に再現できない)。

ここで重要なのは、スピーカを点音源と見立てて全方向に音を放射させたり、一部の楽器と同じような非ピストニックモーションで音を発する事では全くありません。

スピーカがやらねばならない第一のお仕事は、楽器からとある空間内の空気を媒体として届いたとあるマイクロフォン位置の音圧変動をできるだけ正確にリスナの耳近傍で再現(逆変換)する事にあります。それが正確に出来るのであれば、振動板がどのような形態で空気を駆動しようが、どっち向きに音を放射しようが関係ありません。繰り返しますが、弦楽器、管楽器、打楽器、電子楽器、人声等、千差万別のメカニズムで発せられた様々な音は空気中を伝播してマイクロフォンの微小振動板に到達し、その発音原理の如何に一切関係なく一様に振動板の往復振動によって電気信号に変換されます。スピーカのお仕事は、そのような電気信号を逆変換してリスナの耳近傍まで届ける(または耳近傍で逆変換する)という事です。

人間はマイクロフォンのダイアフラムと似たような構造の鼓膜の振動により音を検出します。鼓膜も発音体がどのような形態で振動していようが関係なく空気を通して伝わった圧力変動にのみ反応します。

しつこいですが、根本的に重要なのは、スピーカ自体の発音メカニズムを特定楽器の発音メカニズムに近付ける事ではなく、マイクロフォンで電気信号に変換された音圧変化を逆に変換してリスナの「耳」に正確に届ける事です。

スピーカ単独で楽器に近いとされる発音機構を目指しても、それは徒労に終わるでしょう。マイクロフォンが電気に変換できなかった音の現象は、どうやってもスピーカからは出てきませんし、ナンカ出たとするならばそれは「再生」ではなくタマタマ出たノイズ(または付帯音の一種)に過ぎません。例えば、超音波領域の音が本当に音楽再生にとって重要であるならば(超音波領域の音が音楽表現において真に意味を持つのであれば)、スピーカの再生帯域だけを拡げても意味はなく、マイクロフォンの帯域を拡大すると共にADCのサンプリングレートを高くしなければならないのと同じ事です。

もし、現在のスピーカからリスナーの耳に届く音が理想的ではなく、かつ理想に近付ける必要があると判断するならば、マイクロフォンで拾った音を理想的にリスナの耳近傍で再現するための努力が真っ先に払われるべきなのは当然です(LEANAUDIOでは専らこれに取り組んだ)。それが十分に達成されてもまだ足りないというのであれば、マイクロフォン(音響→電気変換部)あるいは途中の信号変換/伝達/増幅部を改良する必要があるでしょう。スピーカはマイクロフォンが拾えない現象あるいはマイクロフォンが拾っても駆動信号として伝わらない現象を決して正しく再生できません。ナイモンハナイというやつです。

再三申しているように、イヤフォン/ヘッドフォン再生はスピーカ方式に比べて圧倒的に高音質であり、バイノーラル録音方式は現時点において最も理想的で実用的な音および音場記録/再生方式であると言えます。ダミーヘッドの耳近傍の音を録音し、マイクロフォンと同等サイズの振動板(イヤフォン、ヘッドフォン)を使って、部屋の音響特性に一切左右されずに微小なパワーで、リスナの耳近傍(または内部)の非常に微小な空間だけで圧力変動を再現すれば済み、理想的な逆変換に近付ける事ができるためです(乱暴な事を言えば、録音に使ったダイナミック型マイクロフォンを耳穴に突っ込んで信号を逆に流すのに近い)。このため、各種の学術研究分野では一般的にバイノーラル方式が使われます(ステレオスピーカ方式は「再生」機構としては原理的にデタラメなので使えない)。

バイノーラル方式の立体的な音場再現性に耳目が集まり気味ですが、音楽鑑賞においては、音圧波形(音)そのものの再現性の方が僕には重要であるようにも思えます。ですから、ダミーヘッドによる厳密なバイノーラル録音は必ずしも必要ではないでしょう。マルチチャンネルからのミクスダウンでも良いから、ヘッドフォン/イヤフォンで自然に聞こえる処理をしてくれれば十分ではないかと思います。

この方式の問題点は、現在一般的に出回っている音楽ソースがヘッドフォン再生専用に制作されていない事と、装置を直接身に付けなければならない(長時間は鬱陶しい)という点にあります。前者に関しては、スピーカ再生用に作られたソースからヘッドフォン用に信号変換する良質なプロセッサが開発されれば、かなり改善されるでしょう。あるいは逆にヘッドフォン用にオリジナルソースを制作し、2チャンネルスピーカ用に信号変換する事も考えられます。マルチスピーカ(サラウンド方式)は音楽鑑賞用として普及するとはとても思えません(部屋に6本も8本もスピーカを置きたいと思う酔狂な人は少なかろう)。後者に関しては、耳近傍の空間だけを何らかの方法で安全かつ非接触に励起する画期的方法でも発明されない限り、当面はスピーカ方式に頼らざるを得ません。

スピーカ方式に関しては、ニアフィールド方式+密閉型スピーカ+デジタル信号処理の組み合わせにより、かなり理想に近付けられる事を当ブログで再三紹介しました。ただ、音場のサイゲンに関しては、現在のステレオ方式では、どうやっても所詮は駄菓子のオマケレベルに過ぎません。これも、DSPを駆使すれば、理論的にもっとマシなサイゲンが可能になるかもしれませんが、個人的にはそれが重要であるとは全く思えません。それよりも、ステレオ再生を必要と感じない多くのユーザ(部屋のアチコチで自由に聞きたいユーザ)がコスト効率の高いモノラル構成を選択できるようにする方が重要でしょう。ステレオってナニ?という人々にも無条件に2組のアンプとスピーカを強要して代価を支払わせているのが現状です。これは理不尽でしょう。今後ますますヘッドフォン再生が主流になるようであれば、ヘッドフォン用に理想的なオリジナルソースを制作し、スピーカではプロセッサを介して再生するといった方式が現実的かもしれません(ステレオスピーカ用に厳密な音場再現を求めてもソモソモ詮ない事なのである程度テキトーでよい)。僕は基本的にヘッドフォンはバイノーラルまたは擬似バイノーラル、スピーカはモノラルがベストだと思います。

最後に
スピーカは断じて楽器ではありません。それ自体が独自の音を発する物では無いという事です。システム最上流の入力変換装置であるマイクロフォンの逆変換を行うシステム最下流の出力装置(あるいはマシン-マン インターフェイス)です。この点を根本的に認識し尊重しないと進化の袋小路に突っ込むか無限グルグル魔境の虜になるのは必至でしょう。僕の経験では、変換装置として正しく機能すればする程、音は自然に(美しい音は美しく、汚い音は汚く)聞こえ、音楽がより聴きやすく、従ってより快適に音楽を楽しめるようになります。つまり、表現者が作品に込めたジョーカンたらナンタラもより楽に感じとれるようになるという事です。変換/伝達の過程にソーチ設計者なり鑑賞者の身勝手なジョーカンたらナンタラが過剰にブチ込まれれば、表現者本来のジョーカンたらナンタラは聞こえ難くなります。当然ですが。。。

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2012年10月25日 (木) | Edit |
振動板の振幅の増加に伴って3次の歪みが増加し、耳にも明らかに音が変化します。良質な低音再生には、振動板の運動がXmaxを超えない領域で3次歪みをできるだけ低く抑える事が重要だと思われます。

では、音の波形は何故あのように3次歪みによって尖るのでしょうか?

普通に考えれば、振動板の振幅が増加するにつれて機械的および磁気的な非線形性によって波形のピークが抑えられ、波形が丸くなるはずなのに?????と不思議にお思いの方もいらっしゃるかもしれません。僕も最初は不思議に思いました。

実は、マイクロフォン波形で観測される音圧波形は振動板の変位波形と同じではありません。音圧波形の通りに振動板が運動しているわけではないという事です。音圧は振動板の移動量ではなく移動速度に比例します。つまり、音圧波形は振動板の変位波形を微分した波形として観測されます。

今回はそのへんをMicrosoft Excelを使ってシミュレートしてみました。Excelはこのような思考実験に非常に便利です。ソコソコ複雑な多質点系の振動問題でも、Excelであればプログラムコードを書かずに簡単にモデル化でき、結果を様々なグラフで表示できます。開発業務では散々使い倒しましたが、こいつでゴネゴネやっているうちにアイデアが閃いたという事が何度もありました。

では計算結果です。

まずは歪みなしの状態です。
歪み無し
青が振動板の変位です。これを微分して求めた音圧波形が緑です。微分といっても難しくありません。1周期の時間を500個のセルに分割し、各セル間の差を求めれば微分値が得られます(要は引き算するだけ)。音圧は変位の速度(つまり青い線の傾き)に比例します。従って青い線(変位)がゼロ点を横切る時(傾きの絶対値が最大の時)に緑の線(音圧)は最大または最小となり、青い線が最大または最小の時(傾きがゼロの時)に緑の線はゼロを横切ります。

次に、青の変位波形に3次の成分を段階的に追加してみましょう。

3次=2.5%
3次2.5
2.5%の3次成分を加えました。グラフには3次成分を破線で示しています(ゼロ点付近でフラフラしている波形です)。2.5%とは、基本周波数の振幅を1とした時に、振幅が2.5/100の3次成分を追加したという事を意味します。3次成分の追加により、青の変位波形のピークが少し丸くなり、緑の音圧波形が尖って三角形に近付く事が分かります。ね。。こうやってマイクロフォン波形が尖るんですよ。これくらい尖ると、正弦波音とは明らかに違って聞こえます。

3次成分をもっと増やしてみましょう。
3次=7.5%
3次7.5
3次=15%
3次15
今までお見せしたマイクロフォン波形の挙動を良好に再現できています。変位が頭打ちになる事によって、変位に3次の歪みが生じ、その結果として音圧波形があのような形態で歪むという事です。
シミュレーションでは変位波形に人工的に3次成分を追加しましたが、実際の現象は逆ですので注意してください。実際には変位が磁気的および機械的な非線形性によって頭打ちになり、「その結果として」3次の歪みが生じます。

磁気的な非線形性については以前の記事で詳しく書きました。振動板の振幅が最大線形振幅Xmaxを超えれば、磁力による駆動力が頭打ちになるため、3次の歪みが生じるのは当然です。

しかし、Xmaxより小さい振幅で生じる3次の歪みは抑えられるはずです。これには機械的非線形性が強く影響するものと思われます。つまりサスペンション(エッジとスパイダ)が十分にシナヤカでないと、少し変位しただけで振動板を引き戻そうとする力が非線形に増加し、従って変位波形の頭が抑えられて丸くなり、結果として3次の歪みが増加する。。といった具合です。

実際、Daytonウーハの場合、Xmaxより十分に小さな振幅でも3次歪みが目立ちましたが、これもサスペンション系の機械的非線形性によるものではないかと考えています(シナヤカでは無いという事)。これに対し、Alpair10の3次歪みがXmaxに達するまで低く抑えられているのは、マークさんご自慢の超薄ダンパと非常に柔らかいエッジに負うところが大きいのではないでしょうか(非常にシナヤカだという事)。しかし、このようにシナヤカでソフトなサスペンションを使って振動板を傾けずに大きな振幅で運動させるのは極めて難しく、非常に高い組み立て精度が求められるため、今のところラインで量産するのが難しいのだと思われます。市販されているドライバをざっと見渡しても、Alpairというドライバは非常に特異であるように僕には思えます。

ついでに2次の歪みについても計算してみました。

2次=7.5%
2次7.5
2次の歪みは、振動板の前進方向と後退方向で何らかの条件が非対称である事により生じます。上図から、2次歪みが増えると音圧波形は右方に傾く事がわかります。これは、Alpair10の限界近くの大振幅時の傾向と良く一致しています。Alpair10では3次歪みが目立たないため、このように2次の影響を顕著に見る事ができます。

2次の歪みが生じる原因としては、磁気回路の形状(どう見ても対称ではないですよね)、エッジのバネ特性(ダンパは形状的に対称)、コーンの剛性(コーンを拡げる方向とすぼめる方向で剛性が異なる)、密閉箱の空気バネの特性(空気バネは非線形)等によって生じると思われます。これらは簡単には取り除けませんが、聴覚的に2次歪みは3次歪みほど深刻ではないように思えます。ちなみに素敵な音がする真空管シングルアンプでは2次歪みが顕著に表れます。そういえば、スピーカの2次歪みを軽減する方法として、以前に「プッシュプル方式」を試した事がありましたね(参考記事)。こんな事しなくてもDSPをうまく活用すれば2次歪みを大幅に削減できると思います。そのうち実験君してみましょう。

通常は2次と3次の歪みが同時に発生します。
2次=7.5%、3次=7.5%
2次3次7.5
図では、2次と3次を7.5%ずつ付加する事により、片方の振幅だけ激しく頭打ちした状態をシミュレートしてみました。このような場合、変位波形は左右対称であっても音圧波形は左右非対称になる事がわかります。

シミュレーションは以上です。

次に、以上の結果を検証するために、実測の音圧波形から変位波形を逆算してみました。変位波形を微分すると音圧波形になるわけですから、音圧波形を積分すると変位波形が求まります。

方法は簡単です。
僕が使っているハンディオシロはデータをテキストファイルとしてエクスポートできるため、これをExcelに取り込めば計算できます。積分といっても簡単で、微分とは逆に各時間のデータを単純に積算するだけです(要は足し算するだけ)。

Alpari 6M (2.5L密閉)の実測波形を使いました。縦軸は全てオートスケールなので、絶対振幅はデタラメです。
実測1
実測2
実測3
実測4
実測5
と、まぁ、こんな具合みたいです。コメントは不要ですね。

以上です。

これからマークさんにお約束した英語版の執筆(主にAlpair10対他社製比較)に入るので、暫く更新はお休み。その後、8cmクラスの評価をもう一度詳しくやってみます。今度はケロ君のAura3"も評価する予定です。オッタノシミニ!

追記
僕がこのようにデータを使ってオーディオにまつわる現象を解析すると、音楽はゲージツ(とやら)だから。。。人間のカンセー(とやら)は。。。音楽家のジョーカン(とやら)は。。。オンガクセー(とやら)は。。。データでは表せない。。。とかなんとか申してデータを極端に否定的に扱う傾向が顕著に見られます。あのね、僕はなにもオンガクセーたらナンチャラカンたらジョーカンたらを計測しようとしているのではアリマセン。僕は「音楽再生」において超ウルトラ級に基本的なのに放ったらかしにされている現象を問題にしておるのです。

僕に言わせれば、素人が仕事机の上でチョイト簡単にできる実験で露呈してしまうような超ウルトラ級基本的問題に真っ先に取り組まず、表層的/微視的なナンチャラカンばかりを追い求め、その結果ホンマに必要なのか???と思われるような高額な装置が「オンシツ?」が良いと喧伝されている現状には全く納得が行きません。

再三申しているように、僕は「データが良ければ音は良い」というアプローチをとっていません。計測は全て後追いの確認のために行っています。例えば、LEANAUDIOの初期の頃、世の中は殆どバスレフ型なので、僕も当然としてバスレフ型から着手しましたが、どうしても気色悪く聞こえて最終的に受け入れる事ができませんでした。そのため現象を解析した結果、特定周波数に付帯音が現れ、過渡挙動が乱れる事をデータで確認できました。

例えば、僕はVictor製のパワードサブウーハよりもAlpair5をブーストした低音の方が質が高く聞こえ、このため振動板がもっと軽量な普通のウーハとしてPPコーン製の13cmウーハを試しました。しかし、やはり違和感はぬぐえず、自然と使わなくなりました(自然と手が伸びないというのが重要)。次に、振動板の材質を揃えた方が良いのでないかと考え、Dayton製のメタルコーン ウーハを試しましたが、結局A6Mのブーストを超える事はできず、やはり自然と全く使わなくなりました。最後に、Alpair10を思い切って導入する事により、やっと満足のできるクオリティの低音が得られ、常用するようになりました。今回のデータは、このような経緯を後追いで如実に裏付けていると言えるでしょう。

今までの僕の経験に照らし合わせれば、これも再三申しているように、耳に届く音波波形がソース波形に「ソコソコ概ね」近付けば、確実に音は自然になり(違和感を覚える事がなくなり、つまりヘンテコリンな現象がなくなり)、「音楽」の全体と細部を楽に聴きやすくなります。「音楽」(音楽家の表現行為の結果)をより良くより素直に受け止めようとするならば、表層的/微視的/瑣末的/付帯的/主観的/嗜好的/趣味的な「オンシツ」や「リンジョーカン」や「ナンチャラカン」をツイキューとやらする以前に、超ウルトラ級に基本的な「音楽再生クオリティ」をしっかりと整える事の方が遙かに重要です。この点が疎かにされては絶対になりません。でないと、いつまでたっても無限グルグル魔境を脱する事はできぬでしょう。

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2012年10月23日 (火) | Edit |
今回は密閉箱でのテスト結果を簡単にご紹介します。

Arrestorの作動を確認するために、最初は密閉箱に取り付けた状態で試験を行ったのですが、密閉箱ではArrestorの作動を明確には確認できなかったため、オープンエア状態での試験を行ったというのが、そもそもの経緯です。

密閉箱では内圧が働くため、オープン状態とは挙動が少し異なります。

Alpair6でボリュームを同じにして比べてみました。
A6M Open 2-3 A6M Sealed 2-3
IconAMP全開で、パッシブプリが約2/3の位置です。左がオープン右が密閉(2.5L)。密閉では内圧が働くので、同じ入力であれば少し振幅が下がって歪みが減少するように見えますが、波形のパターンが大きく変わるという事はなさそうです。

さて、限界ブリブリ試験の結果です。

まずはAlpair 6M
下はオープンでArrestorにヒットした時の波形です。
A6M Arrestor copy
Alpair 6MのArrestorは振動板振幅がコイル長を大きく超えないとヒットしません。もう少し浅くしても良いかもしれません。

下は密閉箱(2.5L)でArrestorにヒットしたと思われる波形です。
MM 0dB 40Hz
赤がArrestorあり、青がなしです。40Hz/0dB信号、IconAMP全開、パッシブプリも全開!(つまり僕のシステムの完全フルパワー条件)でやっとヒットしたみたいです。完全に3次の波形になっています。超ブリブリ!いゃぁぁぁ。。。怖かったです。。が、別に壊れたりはしませんでした。。。今も元気に鳴っています。

下は同じくフルパワー状態でのAlpair10の波形です。密閉箱の容積は4L。
Arresto 4_4
さすがのAlpair10も超ブリブリです。赤がArrestorあり、青がなし。Arrestorがヒットしたようには見えませんねぇ。。。。

下は、限界よりもボリュームを上げた時のAlpair 10の波形の変化を示しています。
A10 7_8
信号は全て40Hz/0dB、IconAMPは全開です。
青がパッシブプリが約3時の状態。オープンでは、この状態からボリュームを少し上げるとArrestorにヒットします。しかし密閉箱では、ここからボリュームを上げると波形が一気に崩れて緑の状態になり、フルボリュームで赤の状態になりますが、赤の状態でもArrestorにヒットしているようには見えません。

ついでに他の13cmウーハと同じボリュームで比べたデータも。。。
13cm woofer 3_4
13cm woofer 4_4
説明は不要ですね。

今回のデータは以上です。

40Hzのフル信号を入力してフルパワー(24W)をかけると、波形は殆ど3次成分だけになりますが、ドライバはへっちゃらでした。40Hz信号程度では、コイルが勢い余って過剰に飛び出す事は無いようです。ブリバリっと破壊するには、とんでもない信号レベルをステップ状に印加してコイルを一気に加速する必要がありそうです。僕が壊した時は、アンプのボリューム位置から考えてスピーカへの入力は100Wを大きく超えており(100Wステレオアンプをブリッジモードで使っていた)、その状態でアンプの入力信号ラインをブチッと抜いたので、凄まじいステップ信号が発生したのでしょう。もし壊れたら完全にユーザーの責任ですね。

お気づきだと思いますが、Alpair 10の歪み方は、今回テストした他のドライバとは大きく異なります。
他のドライバでは三次歪みの増加に伴って、
正弦波が尖り始める → 三角形 → 中腹が痩せ始める → 中腹が凹む → 波形が3山になる(ブリブリ)
といったパターンを見せますが、Alpair 10だけは完全に破綻するまで3次歪みはあまり顕著ではなく、全く突然に波形が崩れます。一体何が他と違うのでしょうか???不思議です。

他のドライバでは、振幅が大きくなるにつれて3次歪みが顕著に増加します。3次歪みは耳障りですので、できるだけ抑えたいところです。Daytonウーハのように、線形限界(Xmax)よりも随分小さな振幅であのように3次成分が多くて波形が三角では困りますよね。普通のウーハーってあの程度なのでしょうか???

そこで次回は、なんで3次歪みが増加するのか?ナニユエ波形は三角になるのか?ドーシテ波形は尖りだすのか?を簡単なシミュレーションを使って解明します。なかなかオモシロイですよ。オッタノシミニ!

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2012年10月20日 (土) | Edit |
お待たせしました。

今回は振動板の振幅と波形の計測結果をお見せします。

なお当ブログを今回初めて読まれる方は、1つ前の記事を必ず先にお読みください。でないとチンプンカンプンかもしれません。

写真は振幅を計測するための実験君セットアップです。あいかわらず超雑。お仕事の休憩中にチョコチョコっとやるだけですから。。。
test config
iPadのカメラなので写りは最悪ですがご容赦くださいませ。写真のドライバは、マークさんが送ってくださった保護機構(Arrestor)付きの改良型Alpair 10シルバーです。Arrestorとは、早い話が機械的に振幅を制限する(底打ちさせる)シリコン製のストッパです。僕が以前ブリバリっとA10を一台破壊したのを知って送ってくださいました。。。。あれは全く当方のアホなミスで壊れたのですが、他にもブリっとやってしまった方もいらっしゃるようで、ユーザ思いのマークさんは早速この保護機構を採用されたようです。

今回の一連の試験はArrestorの評価も兼ねています。評価の結果、A10のArrestorは丁度良く作動している事を確認できました。今後のロットに順次投入されるのではないでしょうか。ただし、前進側には何のリミッタもありませんので過信はなりませぬよ。1台ずつ大切に組み上げられたドライバです。正しく使いましょう。。。と言える立場ではないですが。。

上の写真でご覧の通り、ドライバを箱に取り付けないオープンエア状態で評価しました。使うのはカメラ、照明、マイクロフォンです。

<計測方法>
ボビンに2mmおきのスケールと三角マークを印刷した紙を貼り付けます。
ラベル1 copy
まず静止状態で撮影し、PhotoShopでスケールの画像からピクセルあたりの長さを計算しておきます。次に正弦波信号をドライバに入力して振動板を上下させてシャッター速度1秒で撮影します。当然画像はブレますが、上死点と下死点では一瞬運動が停止するため、三角マークの残像?が比較的はっきりと写ります。それらの位置をPhotoShop上の座標で読み取って、実際の移動量に換算するという算段。。。。
アーーーーーメンドクサ。。。
でもね。。途中からそんな面倒臭い事しなくても良い事がわかりました。なんと運動中のスケールを目で簡単に読み取れるのですよ。2mm、4mm、6mm...の振幅では、2mmおきのスケールの線が重なってハッキリと見えます。慣れてくると目分量で奇数mmの振幅にも調整できました。楽勝じゃん! カメラは不要ですね。。。今度やる時は1mmおきに長短のスケールを印刷した紙を貼り付けようと思います。。

それでは結果をご覧ください。

1. Alpair 6M 40Hz
Alpai6M 40Hz copy
上の写真はブリブリが始まる直前の状態です。これ以上振幅を上げると、波形の中腹の平らな所が凹み始めて、1周期3山の波形(ハチマル用語の「ブリブリ」)になります。で、このブリブリ一歩手前の状態の写真から読み取った振幅は4.3+4.1=8.4mmでした。つまりA6Mのコイル長=7.2mmを既に超えています。ただし、コイルはまだ完全にギャップの外に飛び出していません(11.2mmを超えると完全に飛び出す)。
ふーーーん。こういう状態だったんだぁ。。。よくわかりました。実験てオモシロイですね。

では振幅の小さい方から見て行きます。
A6M 40 2mm A6M  40 3mm
図中の振幅の値は両振幅(pp)です。A6Mの最大線形片振幅Xmax=1.6mm (両振幅で3.2mm(pp))ですから、右側の3mm(pp)がほぼ線形限界状態に相当します。3次高調波の増加にともなって波形が少し尖り始めています。

A6M  40 4mmA6M  40 6mm
Xmaxを超えて4mm(pp)になると3次高調波成分は2次よりも高くなり、波形は三角形になります。聴感上3次高調波は耳触りです。右側の6mm(pp)はまだコイル長(7.2mm)以内の振幅ですが、波形は大きく変形しています。良質なトーンを得るにはやはりXmax=1.6mm (3.2mm(pp))あたりを正味の限界と考えた方が良さそうですね。

大した事ないように思われるかもしれませんが、次のDaytonウーハの結果をご覧になれば、Xmaxまでまともに振動板を運動させる事がそう簡単ではない事をお分かりいただけると思います。また、50Hz以下の超低域で大信号が入るのはバスドラくらいなので、そのような音ではブリらない限りあまり気になりません。経験上、40Hz/-6dB信号で6mm(pp)程度振動しても実用上は許容範囲であろうかと思われます。

2. Dayton Woofer 40Hz
次にDaytonの13cmアルミコーンウーハ(DA135-8)の結果です。このドライバのコイル長は12mm、ギャップ高は6mm、Xmaxは3mm(片振幅)です。これは一般的に売られている13cmクラスウーハの標準的スペックです。
Dayton 40 3mmDayton 40 4mm
なんだか最初から2次よりも3次が高くて三角形気味です。Xpp=4mmで既に殆ど三角に見えます。

Dayton 40 6mmDayton 40 8mm
Xmaxに相当する6mm(pp)では既に相当歪んでいます。実力的には4mm(pp)程度が限界という感じでしょうか。Xmaxが約半分のAlpair 6Mと大して変わりません。以前の聴感評価では、A6M 2本とDayton 1本がほぼ同等の限界性能でしたし、音質的にはA6Mの方が良好に聞こえましたから、まぁ、こんなもんだと思います。磁気回路の寸法から単純に計算したXmaxだけでは、実力の程は分からないと言えましょう。2つ前の記事に載せたDyanavox製LW5002PPR-S 13cm PPコーンウーハの歪み具合もDAYTONウーハと似たようなものでしたから、このあたりが平凡な13cmウーハの実力と考えて良さそうです。

3. Alpair 10 40Hz
Alpai10 40Hz copy
これは、限界ギリギリの大振幅状態です。これ以上振幅を上げると、例のArrestorにヒットします。薄いブルーの波形がArrestorに接触した時の波形です。この時の写真から読み取った両振幅は7.4+6.3=13.7mmです。A10のコイル長=16mmと最大線形片振幅Xmax=5.5mm (両振幅で11mm)のほぼ中間ですから、Arrestorが効き始める位置としては丁度良いのではないでしょうか。

Alpair 10 40 4mmAlpair 10 40 8mm
右側のXpp=8mmをDaytonの8mmと比べれば、Alpair 10の優位性は一目瞭然です。

Alpair 10 40 10mmAlpair 10 40 12mm
Xmax=5.5mm (両振幅で11mm)に近付くと、さすがに2次成分が目立ってきます。しかし3次成分が2次成分より低いままなので、さほど耳障りではありません。また波形は右方に傾き始めますが、大きく破綻せずにXmax超えの12mm(pp)を経て最終的に上のXpp=約14mmでArrestorにヒットします。僕の常用音量では明らかに過剰性能です。なんだか凄いですね。20kHzまで極めてフラットな特性を持つフルレンジドライバなのに。。。

このようなサイズの振動板を、10mmを超える振幅で、どこにも接触させずに正常に往復させるのは並大抵の事ではないでしょう。ほとんどアクロバティックです。。。これは、ご自慢の超薄スパイダーと非常にソフトなエッジ、それと、ラインに流さず1個ずつ日本人技術者がラボで組み上げるという高い組み立て精度のなせる技と言えます(量産型のCHRはラインに流している。Alpairはガンダムですか?)。先日、「これじゃあ儲からないでしょう?」とお伺いしたとろこ「いゃもう、パッション(情熱)だけでやってるから。。」との事。正に「事」に「仕える」といった感のあるマークさんでした。ナカジマさん、大変ですねぇ。。。Alpairとマークさん、尋常ではないと思います。僕としてはCHRがOEMで大量に売れる事を切に願います。

なお、このように良好な大振幅特性は、元々ブーストを想定したものではなく、常用域のリニアリティとコンプライアンスを徹底的に追究した結果であると思われます。それが僕のブーストコンセプトにたまたま適していたという事でしょう。もしAlpair5を使っていなかったら、このコンセプトには多分辿り付かなかったと思います。だいたい、サブウーハの100Hz以下の低音よりも小さなA5をブーストした低音の方がクオリティが高く聞こえたわけですから。たぶんサブウーハの高調波歪みが高かったのだと思います。平凡なドライバをブーストしても、そらアカンでしょう。。。。F80(多分Xmaxは0.5mm程度)を使っていた頃も、絶対にブーストを試したはずなのですが、記憶に残っていないところを見ると、ちょっとやってみて直ぐに止めたのではないかと思います。

このような実験を重ねるたびに、Alpairというドライバはつくづく特別であるように僕には感じられます。高域性能に注目が集まり気味ですが、Alpairの真価は音楽再生の土台たるべき低音再生クオリティにあると言って良いでしょう。つまり、このような大振幅での優れた特性があればこそ常用振幅域で高いクオリティが得られるという事です。これは、表層的なオンシツを徒に追い求めた小手先の手業ではなく、モノゴトの根本/本質を見据えた真に真当/真正直な技術的アプローチであると言え、そこにこそAlpairのヒミツがあると言えます。このようなアプローチを取らない限り真の「良い」結果(音)には辿り付きません(手業で表層的な面ばかりを追い求めたのではグルグル回るだけなのです)。技術開発とはこうでないとイケマセン。。技術屋としての僕のマークさんに対する尊敬の念はますます高まりました。

次回は密閉箱でArrestorの効果を確認するために行った超ブリブリ限界再生の結果をお見せする予定です。いやぁ。。最初はビクビクもんでしたが、スピーカってそう簡単には壊れないものですねぇ。。。

追記
マークさんに、こんな企業秘密的な情報を公開しても良いのですか?と確認したところ、むしろ積極的に公開を望まれておりました。何でも書け、全部書け。と。。英語版ブログへの掲載もお約束しました。向こうのフォーラムでも驚くほどオープンに情報を公開しておられます。

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2012年10月05日 (金) | Edit |
今回は、主にスピーカによる付帯的な音の現象について書いてみます。

僕は「音質」をシューチューして聞き分けるのではなく「音質」なんか気にせずに「音楽」を聴いている時に「気に障る」(違和感を覚える、不自然に感じる、不快に感じる、聞こえ難く感じる)現象を重視します。「オンシツ」を聞き分けたり「ツイキュー」したりするのが目的ではなく「音楽」を快適に聴けるようにする事が目的だからです。「オンシツ」を「シューチュー」して聞き分けている時の聴き方と、「オンシツ」なんか全く気にしないで「聞く」という意識が遠のいて無意識に「音楽」を追いかけて楽しんでいる時の聴き方は基本的に全く異なるように思えます。だいたいライブで聴いている時にナンチャラカンたらテーイたらクーキカンなんざ気にしないですよね。それと同じです。当初、この点がわからず、無駄な試行錯誤をたくさんしてしまいました。

そのように「音楽」を聴いている時に気に障った現象をコツコツと潰してきた結果が現在のZAPシステムです。「気に障る成分」とは、大雑把に言って「ソースには含まれていない余分な音成分」または「ソースとは異なる(ソースから歪んでいる)音成分」です。それらの成分が過剰に含まれていると「音楽」が聴き辛くなるという事です。考えてみれば当然の事です。ソースに記録されている「内容」を楽しもうとした場合、ソースとは異なる成分は端的に言って「ノイズ」だからです。

僕が「付帯音」と言う時、それは主に前者「ソースには含まれていない余分な成分」の事を指します。これには、箱内部の定在波が振動板の前面に透過(伝播)してくる音、箱の表面振動によって放射される音、箱の振動が床や机に伝わって放射される音、バスレフポートの筒自体の共振音、ポートから漏れる内部定在波の音が含まれます。特に、定在波やポートの共振音等、一定周波数の付帯的音成分は長く聴いていると、凄く気になりだします。

例えば、吸音材を入れないと、「音楽」を聴いているうちに、特にピアノソナタで、一定周波数の「コーーーー」という地下鉄で聞こえるようなというかなんというか、気に触る音の癖が耳につき始めます。これはハチマル用語で「箱臭い音」と呼びます。

もう1つの「ソースから歪んでいる音成分」には、主にスピーカの出力特性のロールオフによる低音不足、部屋の定在波による主に低音部の周波数特性の乱れ(ピーク/ディップ)、バスレフポートによる恐らく過渡応答的な波形の乱れが含まれます。前回の記事で書いた位相の遅延による影響も後者に含まれますが、少なくとも僕のフルレンジ+密閉型システムにおいてはそれほどクリティカルであるとは思えません。

例えば、僕はジャズを聴く時、常に半ば無意識にピチカートベースの音を追いかけますが、バスレフ型でずっと聞いていると不自然さが気に障りだして結局穴を塞いでしまいます。また、交響曲の低音部で時々遅れて聞こえるようなボーといういつも同じ音程の変な音が気になりだします。

上記のような現象は、僕の場合、いずれも短時間のシチョー(試聴)ではあまり気になりません。

「気に障る成分」を2つに分類しましたが、これらは結局「ソースの信号波形にソコソコ近い音を耳に届けられれば「音楽」は聴きやすくなる」に帰結します。マニア達がツイキューするいわゆる「良い音?」になるのではありません。そこに記録されている「音楽」が自然な音で聴きやすくなる、そこに記録されている「音楽」の全体と細部をより楽に聴き取れる感じ取れる楽しめるようになるという事です。

そのようにして現在までに施した具体的な対策を以下にざっと上げてみます
○ ニアフィールドリスニング(部屋の影響の低減)
○ 密閉型(低音のたぶん単純な遅延ではなく動的挙動の改善、付帯音の低減)
○ 吸音材たっぷり(付帯音の低減、恐らく低音の動的挙動の改善)
○ 箱のアホみたいな補強(そこまで必要かは不明、たぶんヤリスギ)
○ DSPやアナログイコライザによる低音ブースト
○ 密閉型パワードサブウーハによる低音補強
○ DSPやアナロググライコによる特性のフラット化、ピーク/ディップの緩和
○ スピーカをデスクトップに置かずに窓枠に固定
○ 左右SP間距離を縮めるまたはモノラル化(おそらく左右間の干渉の低減)

これらの対策のおかげで、最近は音楽を聴いていて気に障るところも無くなったためネタ切れ状態です。低ビットレートのラジオを聴くために真空管アンプを復活させた事くらいでしょうか。。。。TONO君用のTU-870をオークションでお安く落札しました。結局これが一番安上がりですね。

真空管アンプを使うという事は、歪みを付加している事になるわけですが、これはあまり気になりません。恐らく箱の定在波やポートの共振音とは異なり特定周波数だけに発生する共振現象ではないからだと思われます。楽曲によっては聴きにくく感じる事もありますが、低ビットレートのラジオを聴くにはとても効果的なような気がします。

次回は、付帯音に関連する計測データをいくつかご紹介できれば。。。と思います。キガムケバ。。。

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2012年10月03日 (水) | Edit |
最近、音楽再生におけるタイムドメイン的特性に関してお二方よりコメントを頂きましたので、僕の考えるところをまとめておきたいと思います。

微小な「音質」の違いにはさして興味のない僕の経験から言える事は、リスナの「部屋」で彼の「」に実際に届く音響波形が源信号波形に「ソコソコ」近付けば(つまり周波数領域的にも時間領域的にもソコソコ再現できれば)、「音楽」が聴きやすくなる、自然に聞こえる、違和感を覚えない、長時間聴いても疲れない、すなわち、より快適により楽に「オト」ではなく「音楽」を楽しめる(アクセスできる)という事です。

さて、音楽再生を評価する際、まず基本となるのがおなじみの周波数特性(F特)です。これは周波数を横軸として、各周波成分の出力(音の大きさ)をプロットします。このような評価方法は周波数領域(ドメイン)解析と呼ばれ、時間方向の現象(位相)は評価に含まれません。高音に対して低音が遅れていようが進んでいようが結果は同じです。

これに対し時間領域(タイムドメイン)解析では、時間を横軸とします。早い話が色々な信号を入力して波形を見るという事です。このブログでも、各種の信号を入力した時のスピーカ音響波形を再三掲載しましたね。また、各周波数における遅延(位相の遅れ)を計測し、これを周波数を横軸とするグラフにプロットする場合もあります。

下はおなじみのシミュレーション結果です。
sim 000
Alpair6Mを2.5Lの密閉箱に入れた状態です。つまりZAP君をシミュレートしています。一番下の緑のラインが位相です。プラスが側が遅れ方向です。このグラフでは位相は20kHzまでダラダラと進みますが、Alpair6の場合、1kHzから上はほぼ一定と考えた方が実測とよく一致します。1kHzを基準にすると、50Hzで約90°(5ms)位相が遅れる事がわかります。

このようにアナログフィルタやバスレフポートを持たない単純なフルレンジ+密閉箱でも低域で位相が遅れます。しかし、何故このように遅れるのか? その原理を僕は未だ理解していません。明確な説明を見た事がありません。どなたか原理をご存じの方は、是非ご教示願います。

遅れが位相角度(°)で示されている事にも注意が必要です。例えば360°の遅延を時間に換算すると、1kHzでは1msですが100Hzでは10倍の10msです。このように、遅延の位相角が同じでも低音になるほど時間的遅れは大きくなります。僕は低音の「時間」的遅れが重要ではないかと考えています。例えば、10kHzのシンバルに対して50Hzのベースの一発目のアタックが何ms遅れるのか? あるいはどの程度崩れるのかという事です。

下は、再三ご紹介したベースとトランペットの音が重なった波形です。
位相 ON OFF
FrieveAudioで周波数特性だけを補正した波形です。大きなうねりのベース波形に、倍音をタップリと含んだトランペットの波形が重なっています。グレーの源信号波形に対して、ベース波形は90°弱遅れています。また、トランペットの波形も源信号とは随分異なります。各倍音成分の出てくる順番が異なるようにも見えます。

位相 ON ON
FrieveAudioの位相補正もONにしました。今度はベースもトランペットも源信号にピッタリ一致します。でもね。。。実際に聴くと僕には違いがよく分かりません。。

ヘッドフォン
これは密閉型ヘッドフォンです。何も補正してませんが、源信号波形によく一致しています。ベース波形は遅れるどころか若干進み気味です。オープンエア型のヘッドフォンでも殆ど同じでした(こちらは密閉に比べて僅かに遅れ気味でほぼぴったりの位相でした)。これもまた謎で、同じダイナミック型なのに、何故ヘッドフォンでは遅れないのでしょうか??不思議です。
補足: DACなりアンプなりでほんの少し低域の位相が進んでいるケハイがあります。そのうち確認してみますね。

以上のように、最もシンプルなフルレンジ+密閉箱でも、位相遅れによって再生波形はかなり変形しています。しかし、僕の耳では位相遅れ補正のON/OFFによる違いを聴覚で感じ取る事はできません。もともと、音楽を聴くにあたって必要以上に微細な再生音質の違いをワザワザ聞き分けようという強い意志を持たぬ僕には、この程度の違いは普通に音楽を鑑賞する上でさして重要ではないという事なのでしょう。ただ、はっきりと言えるのは、このように雑な波形観測では、デンセンやナンダカンダの違いは観測不能なくらい微小であろうという事です。

下は典型的な2Wayバスレフ型のシミュレーション結果です。
fos_20121003040049.jpg
アナログフィルタとバスレフポートの影響により、フルレンジ+密閉やヘッドフォンに対して凄まじく位相が変化する事がわかります。このツイータの10kHzを基準とするならば、50Hzで約540°(30ms、ZAPの6倍)遅れます。これだと僕にも位相遅れ補正の効果を聞き分けられるかな??? 現在広く一般に普及している形態のスピーカはこのような状態にあると思われます。上の波形はどの程度変形するのでしょうか。。。なお、12dB/Octのフィルタを使っていますが、ツイータを反転していないため、クロスオーバー領域で特性が凹んでいます。これは、位相遅れの値を正しく表示するために敢えてそうしています。反転すると、見かけの位相差は小さくなりますが、実際の位相遅れ(時間的遅れ)が改善されるわけではないので注意が必要です(反転したツイータの波形と、ウーハの次の(遅れた)波形がたまたま一致するだけ)。

このような位相変化が聴感上どの程度影響するのか定かではありませんが、デンセン等のやたら微小な影響に比べれば、根幹的かつ巨大な現象と言って良いでしょう。なお、デジタルフィルタを使えば、このような問題は生じません。僕がデジタルチャンデバ内蔵DACを強く望むのはそのためです。ベリンガの業務用超多機能デジタルスピーカマネジメント装置の値段を考えれば、今時そんなもん超安価に作れるはずです。ホンマニ。。。ナンデヤネン。。。です。

下はAlpair6M+Alpair10のZAPシステムをシミュレートしたものです。
sim ZAP
位相(緑)のラインは、Alpair6MとALpair10単独の特性です。この計算ソフトではバイアンプ状態をシミュレートできないため、別々に計算して重ね合わせました。プレートアンプに内蔵のアナログフィルタを使っているため、Alpair10の低域の位相はこのように遅れます。1kHzを基準とした場合の50Hzの遅れは約270°で、実測とよく一致しています。

下は波形です。
sub hakei
源信号(グレー)に対して音響波形(赤と青)は約270°(赤の水平線)おくれている事がわかります。

この遅れを時間に換算すると50Hzで約15msになりますが、普段音楽を聴いている分にはあまり気になりません。FrieveAudioで位相を全くフラットにした馬鹿ブースト方式と切り換えながら聴き比べると僅かながら差を感じますが、単独で聴いている分にはエーンチャウというのが正直なところです。

シミュレーションでは、バスレフ型の位相遅れは共鳴周波数において180°程度です(1kHz基準)。従って、アナログフィルタを使った密閉型サブウーハ方式よりも位相遅れは少なくなります。しかし、再三申しているように、僕はジャズを聴いている時にピチカートベースにどうしても違和感を覚えて、何度やっても穴を塞いでしまいます。これは、単純な群遅延というよりは、ドンと信号が入った時の初期の過渡挙動(箱の中の空気を一定の共振状態まで励起するのに要する遅延時間)に問題があるように思えます。この点については7LのTONO箱を使って近々検証する予定です。

という事で、現在の一般的なスピーカでは、スピーカそのもの、アナログフィルタ、バスレフポートによって、周波数が低くなるほど位相が遅れます。しかし、バスレフポートと中域でのクロスオーバーを持たない僕の密閉型フルレンジ システム(+密閉型サブウーハ)に限って言えば、時間領域的特性(位相遅れ、過渡挙動)はそれほどクリティカルではなく、やはり周波数特性が「音楽」再生における最も支配的な要因であるように思えます。

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2012年09月05日 (水) | Edit |
現在、改良型Alpairの低音再生能力について実験君中です。マークさんが改良型ユニットを送ってくださったので、仕事の合間にそれらのユニットを評価しています。そのうちこのブログで結果をご紹介できるかもしれません。できるだけ暗騒音を下げる必要があるので、家族の外出中を狙ってやっています(足音やドアの音が入ると、波形が崩れるので)。測定中は窓も閉めて、扇風機も止めるので暑くて仕方ありません。

スピーカによる音楽再生において、最も困難なのが、低音再生です。前の記事で、低音再生についてタクサンご質問を頂き、タクサン回答を書いたので、せっかくですから記事として残しておきたいと思い、以下にまとめて掲載しておきます。原文をご覧になりたい方は、1つ前の記事のコメントをご覧ください。殆どコピペですが、一部加筆しています。

Q: フラットにした場合小さい音量でも40-60Hzの音は聞こえるものでしょうか?基本的には小さい音でききますので。
「低音量」というのがくせ者です。「爆音ではない」という意味の「低音量」であれば、程ほどの音量で聞いておられるのかもしれません。確かに音量が低いと低音は聞こえにくくなりますが、「音量」は音響パワー(スピーカから出る音の大きさ)ではなく「耳」に届く音圧レベルで考える必要があります。例えば、小さい部屋でスピーカの近くで聞けば、大きい部屋でスピーカから離れて聞くよりも、再生出力(パワー)が同じでも「耳」には大きく聞こえます。例えば、イヤフォンで「耳」が壊れるほど大音量にしても、出力パワーはたかが知れています。

ちなみに僕が普段聴いているリスニング位置(1m以内)での音圧レベルは、通常の楽曲で概ね最大75~80+α dBA程度です(A特性、FASTフィルタによるMAX値)。音量を上げ気味にしても最大85dBAを超える事は絶対にありません。コンサートホールの中央席辺りでの交響曲の最大音量もその程度のようです。大部分の人は、音楽を聴く場合80dBA以下を快適音量と感じるようです。100dBAにも達するアホみたいな爆音で再生した場合、フラットに低音を再生すると、実際よりも低音が聞こえ過ぎるでしょう(人間の耳は音量が上がると低音がよく聞こえるようになる)。だいたい耳の健康に良くありません。
僕の耳/僕のリスニング条件では、ロールオフのなだらかな「密閉型」で50Hzまでフラットに再生できれば、一般的な音楽ソースを聴くには必要十分だと思います。低周波が聞こえるかどうかは、低音(30Hz)まで低歪みで再生できるスピーカを使い、アンプを普段のボリュームの上限くらいに設定して、普段のリスニング位置で、正弦波信号(16ビットのフルスパン-6dB程度)を再生してみればわかります。バスレフ型の場合、同調周波数以下の出力は急激に低下しますので、この種の実験には向きません。ご注意ください。

僕の場合、50Hzは確実に聞こえます。40Hzはかなり感度が落ちますが聞こえます。30Hzはもう殆ど聞こえません(歪みの少ないAlpair10を使った場合)。このような超低域では、スピーカの高調波歪みが増加します。高調波歪み(特に3次以上)が顕著だと、実際よりも音(偽の音)が聞こえやすくなってしまうので注意が必要です(正弦波の音を聴き慣れれば歪みは耳で分かります)。マイクで再生波形をモニタできれば理想的です。
また、周囲の環境騒音にも影響されますので、静かな時間帯に試してみてください。我が家の環境では、昼間は結構低周波騒音が大きいように思えます。自動車の音かな? モニタヘッドフォンやカナル型イヤフォンであれば周囲音に影響されないので、お持ちであればそちらでも試してみてください。この場合も、普段聴く曲でボリュームを調整した後にテストしてみてください。

もしかして、ご質問の根拠は、巷で言われている「低音の再生限界は部屋の寸法によって決まる。小さい部屋では低音は再生できない。」ですか?
これについては、一体全体、何を根拠にそのような事が言われているのか、僕には全く理解できません。部屋の定在波の周波数は部屋のサイズで決まりますが、スピーカから再生される直射音は当然部屋の影響を全く受けません。また、小さい部屋であっても、定在波や音響特性を利用して、低音再生を増強する事も可能です(ZAP君の位置であれば、50Hz以下は部屋が増強してくれるし、TONO君のようにコーナーを利用すると、部屋は小さくても低音は出すぎるくらいになる)。 このジャンル、根拠不明の迷信が多いような気がします。

Q: 小さい音量でも40Hzからフラットに聞こえるか?の質問は単純に低音聞くなら、大きいスピーカーで大きい音量でしか聞けない物だと思っていたからです。
どのように小さな振動板でも、40Hzの信号が入力されれば40Hzできちんと振動してくれます。ですから、カナル型イヤフォンのように、振動板と鼓膜の間を密閉してしまえば、数mmの振動板でも38cmウーハーよりも低い音まで再生可能です。
広い空間に置かれたスピーカの場合、空気が振動板の周囲へ逃げてしまうために、小さな振動板では低周波で効率が落ちてしまいますが、信号をブーストして振幅を上げれば、低音をフラットに再生できるようになります。何も不思議な事ではありません。低音だけアンプのボリュームを上げるのと同じ事です。大きな振動板は低音を「出しやすく」小さな振動板は低音を「出しにくい」というに過ぎず、小さな振動板で低音を出すのは不可能だという事ではありません。
小さな振動板をブーストして低音を出す場合の問題は、振動板の振幅限界によって最大音量が制限される点にあります。このため、AlpairのようにXmaxが大きなドライバを使う必要があります。小さな部屋で適度(Max80dBA程度)な音量で聞くならば、小さな振動板でも大丈夫ですが、大きな部屋で爆音再生するには大きな振動板が必要です。密閉型のロールオフをイコライザで補う場合、必要な振動板の大きさは必要音量(必要音響パワー)によって決まります。密閉型で大音量が必要な場合、パワードサブウーハー方式が理想的でしょう。ブースト方式よりもサブウーハー方式の方が汎用性は高いと思います。マイクロ2.1のケロ君はたった8cmのウーハーで50Hzまで全くフラットに再生してくれます。ちなみにケロに使っているAura 3"のXmaxはブットビにデカイみたいです。

Q: マンションの一室でそんな音出たら逆に困るなーとかも思っていました。
部屋が狭かろうが広かろうが、フラットに再生した低音はうるさくはありません。高調波の少ない真にフラットな低音は意外と地味です。ただ音が全体的にズンと重くなるだけです。高調波の少ないフラットな低音は、200Hz前後を強調したいわゆる「ズンドコ」の低音とは異なります。また、リスナの耳位置での音圧レベルを同じにした場合、部屋が狭い方が距離も近く駆動すべき空気の量も少ないため、再生音量(音響パワー)を下げられます(小さなスピーカで済む)。部屋が広いほどスピーカが出さねばならない音(音響パワー)が大きくなるため、かえって近隣への影響が大きくなるでしょう。また、一般的に、音量(音響パワー)が大きくなればなるほど装置(スピーカ、アンプ)の歪みや、部屋自体(床や壁等)が発する騒音は増加します(クオリティは低下する)。考えようによっては、音響パワーを低く抑えられる狭い部屋の方が、良質な低音を再生しやすいと言えなくもありません。その極限状態が、小指の先ほどしかない振動板を使うカナル型イヤフォンです。また、近隣への影響が気になる場合は、ニアフィールドシステムが理想的です。

Q: バスレフ、密閉話も重要視している人が少ないのかそんな議論はあまり見たことなかったので盲点でした。
バスレフ型の原理的な問題点は、僕が中高生の頃の入門書には必ずきちんと書かれていましたが、最近はそのような超基礎的な知識が広く一般に行き渡っていないように思えます。最近は、デンセンやハンダ等、やたらコマケー事に異常としか思えない程にこだわる傾向にあるようですが、バスレフ型やアナログフィルタ、小型スピーカの低音不足等、音楽再生が未だ抱える超基礎的問題に全く目が向けられていない事には驚かされます。これらは簡単な波形計測でも問題が露呈します。
僕も最初はバスレフ型から始めましたが、ジャズのピチカートベースの音に異常に敏感であるため、また、カナル型イヤフォンで理想的な低音ビート再生を知ってしまったため、どうチューニングしてもバスレフ型では不自然に聞こえ、ポートに詰め物をしてバスレフ効果を抑えた方が、余程ましに聞こえました。つまり、バスレフ型の不自然なビートを聞くくらいなら、基音が聞こえなくても倍音のビートだけ聞いている方が余程ましだという事です。バスレフ型は、過渡挙動と付帯音に明らかに問題が見られます。

Q: プロを相手にする業務用スピーカーでもバスレフの比率が見ている限り高いです。 業務用はアクティブが当たり前でドライバー毎のバイアンプになっているのでハチマルさんが言う+6dbブーストぐらい簡単に出来ると思いますがどうなってるんでしょうかね?
プロ用のアンプ内蔵コンパクトモニタが、のきなみバスレフ型であるのは、大音量時の動作を保証する必要があるからだと思われます。小型のモニタでも、大概はかなり大パワーのアンプを内蔵しています。プロ用にはとにかく堅牢性が求められます。また、現在では広く一般にバスレフ型がすっかり標準的な形式として定着してしまったという点もあるでしょう。スピーカとはそういう音だという事になってしまっているという気がします。また、彼らは必ずモニタ用ヘッドフォンでもチェックしています。プロ用の場合、密閉型サブウーハー方式の方が向いているでしょう。当ブログで再三取り上げたBlueSky社は、バスレフ型の問題を徹底的に訴求し(僕と全く同じ事を言っていた)、完全密閉型の2.1chスタジオモニタシステムを提供していましが、日本からは撤退した模様です。なんでやねん。。日本では未だにヤマハの密閉型モニタが多くのスタジオで重用されているようですが、良い状態の中古を見つけるのが困難になっているとのこと。最近プロ用機材を扱うサウンドハウスさんが、そのような要望に応えてレプリカモデルを超安価に提供しています。

Q: この辺りの低音の話になるとよく出てくるのが「小さいスピーカーから出る低音は質がウンヌン、、、やはり最低38cmはないと、、」と始める人がいると思うのですが。この辺りの低音の質の差はデータでいくと高調波歪みだとか位相で説明できるのですか?
同音量で比較するならば、振幅を小さく抑えられる大きなウーハーの方が歪みを低く抑えられます。広い部屋全体を揺るがすような、あるいは風が吹くような爆音で再生したい場合、38cmウーハーが必要でしょう。小さなウーハーをブーストして使う場合、音量を上げると振幅の増加によって高調波歪みが増加し、極端な場合は壊れてしまいます。このようなシステムでは、歪みが実用上顕著にならない範囲の音量で使用する事が大前提です。再三言っているように、必要な振動板のサイズ(面積)は必要な再生音量によって決まります(振動板の許容振幅Xmaxも決定要因です)。一般家庭において、普通に良い状態で音楽を鑑賞する上で、過剰な音量は全く不要であると思います。健康的にも良いはずがありません。大きなソーチを持っていると、大きな音で鳴らしたくなる。。。という面もあるのではないでしょうか。

低音再生のクオリティを考える時、もう1つ重要なのは、過渡挙動(位相遅れを含む)です。低音ビートを気持ち良く再生するにはこれが非常に重要です。この面では、振動板が軽い小さなウーハーを適度な音量で使う方が有利になります。大きくて重いウーハーを大振幅(大爆音)でビシッと動かしてバシッと止めるには、相当に強力な駆動性能を持ったアンプが必要になるでしょう。当然ですが、一般家屋であれば、部屋(家?)自体にも相当な振動対策が必要でしょう。いついかなる場合も「部屋」をシステムに含めて考える必要があります。

また、大径ウーハーの場合、振動板の剛性面でも不利になります。例えば、僕はメタル製のウーハーを好みます。紙やPPコーンでは「ドン」が「バン」気味に聞こえる事を嫌うためです。これは振動板の剛性に関係していると思われます。当然ですが、振動板が極小のカナル型イヤフォンでは、素晴らしく「ドン」に聞こえます。最近のトールボーイ型スピーカのように比較的小径のウーハーを複数個使う1つの理由は、この点にあると思われます。

僕が今まで経験した中で最も理想的な低音再生が可能な装置は、LEANAUDIOのリファレンスでもあるVicotr製のトップマウント型カナル型イヤフォンです。耳穴に入るほど小さな振動板が鼓膜のすぐ近くで振動し、介在する密閉空間が非常に小さいため、鼓膜をビシバシに駆動してくれます。遺伝のせいか僕の姪もベースを基準に音楽を聴く癖があり(彼女はメタル系専門の音楽業界人)、彼女にこのイヤフォンをプレゼントしたところ「ベースがメッチャよう聞こえるわ!」と非常に気に入ってくれました。

低音ビートの正確な再生こそが、スピーカによる音楽再生において最も困難な課題であると思います。密閉型スピーカとデジタル信号処理により、この問題を飛躍的に改善できる事は、当ブログで再三ご紹介した通りです。

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2011年06月08日 (水) | Edit |
ほぼ「モノラルでエーヤン」という方向で固まり、自然に音楽が聞こえるという点では、これを超える方式は無かろうと確信しつつも、そこはそれ、イロイロ試して見たくなるのがギジツヤさんというもの。

そこで見つけたのが「トライポール」という方式。

815.jpg
MK Sound SUR95T
製品ページ

トライポール型というのは3方向に音を出す方式の事です。主にサラウンド方式のリヤSP用に使用するようです。おそらく無指向性に近付けて自然な音の拡がりを狙っているのだと思います。

で、ハチマルとしては、こいつをフロント正面に一本だけ置いて、正面のSPからR+Lのモノラル信号、側面のSPからそれぞれR/L信号を再生して、ホンノリとステレオ効果を効かせてみてはどうか?と思うわけです。つまり、ステレオ効果を壁や天井の反射音だけでホンノリ演出しよう(アクマデ演出ヨ)という魂胆ですね。左右SPを向き調整可能にしておけばセッティング自由度も高まります。Alpair5を使って遊んでみるかなぁ。。。。ってね。

待てよ。。。左右もモノラルでも良いかも。。。別に左右で異なる音が出なくてもエーンチャウ。ちょっと音が拡がった感さえ出ればOKのような気もする(箱鳴らすのとオンナジような狙いか?)。まあイロイロ考えられるわけです。

まあしかし、何やってもモノラル1本の自然さには適わないと思うので、結局使わなくなると思うのだが。。。。

追記
一般家庭用ステレオ スピーカーって、こんなんでエーンチャウ?という感じですね。センターにサブウーハー(20cm以下、40Hzまでビシっとフラット)とモノラル用フルレンジ(8~10cm)、左右に5~2.5cmフルレンジを配置(こいつはオプションでも良い。ステレオ/モノラル切り換えできればなおよし。別体でもよい。さらにDSPによる音場演出モードなんてオマケ機能付きもアリ)。一体式なら左右は真横向きではなく45°くらいまたは角度調整式。コーナー設置を狙った三角形状もお似合いかも。もちろんアンプとDAC内蔵。電線は電源とUSBだけ。欲しくなってきた。。。値段は貧乏学生下宿用/独身女性用/中高生用ミニマムサイズで5マンエン以下。部屋の大きさに合わせて各種サイズを用意。あとはデザイン勝負!

数奇者用ではない人民の人民による人民のためのオーディオ装置。。。

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2011年04月30日 (土) | Edit |
今回はバスレフ型以外の、各種低音増強方式をシミュレーションで比較してみます。

共通条件はユニット「Alpair6 P」、容積「12L」、吸音材の量「普通」です。
12Lという容積は「共鳴管」モデルで「ざっと計算」(ソフトウェアのお薦め設定)した結果、容積が12Lになったので、全ての計算条件をこれに合わせたというだけです。従って今回の計算は各モデルごとに最適化していません。同一容積で比較した場合の大まかな傾向として見てください。

各グラフはクリックで拡大してご覧ください。

まずは密閉型
759.jpg
このソフトウェアでは密閉型の吸音材量を設定できません。その他のモデルの吸音材量は全て「普通」です。以下の各グラフでは、比較基準として密閉型の特性を黄色のラインで重ね合わせています。

バスレフ型
760.jpg
共鳴周波数を約50Hzに合わせています。黄色の線は密閉型の特性。

共鳴管(ストレート)
761.jpg
断面積変化のないストレートな共鳴管です(管径φ96mm x 長さ1700mm、容積約12L)。ソフトウェアのお薦め設定をそのまま使用しました。音道長が170cmですので、その4倍の波長(50Hz)が基本共鳴周波数となっています。200、400、600、800Hzに高次の共鳴ピークがかなり強く表れています。共鳴点(50Hz)前後の位相の変化はバスレフ型に比べるとなだらかです。

共鳴管(先細りテーパー)
762.jpg
音道長は170cmのまま、管径がφ132mmからφ66mmに絞られる先細りテーパー管を設定しました。容積はほぼ同じ12Lです。管長は同じですが、基本共鳴周波数が40Hz以下に低下しています。先細りにすると共鳴周波数は低域側へ移動するようです。また、高次のピークの振幅も大幅に減衰しています。共鳴点が低周波側へ移動したため、位相遅れも全体的に減少しています。ダラ下がりの低域特性を嫌って管長を短くすると前記事のペンシル型に近付き、位相遅れも増加します。このタイプをうまくチューニングすると、顕著な位相遅れを伴わずにダラダラとかなり低域までレスポンスを延ばす事ができるかもしれません。そのへんが欧米のDIYビルダーに好まれる理由かもしれませんね。この方式はバックロード型を逆に使用すると簡単に試せます。ハセヒロ工業さんではコンバート用のバッフルプレートもオプションで販売しています。

蛇足ですが、欧米のDIYビルダーはスピーカー内部にコイルと抵抗を組み合わせた緩やかな高域減衰回路を平気で組み込みます。これにより低域のレベルを相対的に引き上げようというのが狙いです。あるいはバッフルステップ修正用の回路を組み込む場合もあります。日本人ではまずやらないですよね。ハチマルなんかデジイコでやりゃしまいじゃん。と思うのですが。

共鳴管(先太りテーパー)
763.jpg
今度は逆にφ66mmからφ132mmに拡がるテーパー管を設定しました。長さと容積は上記2例と同じです。まず、ホーン効果によって全体の音圧レベルが増加しています。基本共鳴周波数は先細りとは逆に高周波側へ移動します(約65Hz)。高次のピークはストレート管ほど顕著には表れませんが、全体的なレスポンスの変動幅は先細りよりもかなり大きくなっています。

バックロードホーン
764.jpg
音道長と管径は上記の先太りテーパー モデルと同じ値に設定しました(ソフトウェアのお薦め設定でも似たようなものです)。ただし、こちらはエクスポーネンシャル形状です。チャンバー容積はソフトウェアのお薦めを採用しました。200Hz以下の低域特性は先太りテーパーとほとんど同じですが、ホーンからの高周波放射音が減衰しています。これはバックチャンバーの効果だと思われます(試しにチャンバー容積を0Lに設定して確認)。また、低域の位相遅れも緩やかです。この方式で低域限界を延ばそうとするとかなり大型になると思われますが、ホーンから出てくる元気な中低域音が真骨頂というところでしょうか。欧米のDIYフォーラムではこのタイプをあまり見かけませんが、日本のDIYビルダーの間ではこのタイプの人気が非常に高く、お国柄が顕著に出ていて興味深いですね(形状的に真逆ですもんね)。

という具合に、各種低域増強法には長短があって、悪い癖を抑えつつ良いところを引き出すというのがビルダーの腕の見せどころという事でしょう。また、それぞれの音の癖によってリスナーの好みも分かれるのだと思います。大手メーカー製スピーカーの圧倒的大部分はバスレフ型か密閉型ですが、癖のない無難な特性とサイズ的制約からそこに落ち着くという事だと思います。

ハチマルが提唱する小容積密閉型を基本とするデジタルブースト方式またはパワードウーハー方式は、それらの癖を徹底的に取り除きつつ位相乱れのないフラットな低域レスポンスを確保する事により、記録されている音楽作品のオモシロミを最大限に楽しむ事を目的としています。従って、独特の癖による音のオモシロミは全くありません。そのへんを物足りなく感じる人には全くツマラナイ方式だと思います。また、上記の各種方式に比べて容積を極端に小さくできるという利点も備えます(Alpair6の馬鹿ブーだと2.5L、Alpair5パワードウーハー方式で4L、ケロはチャンネルあたりたった0.4L)。

追記
今年の連休はどこにも行かず、基本的にお仕事とバスレフ製作にあてる予定。ムスコ(中3)も受験準備だし(勉強半分、スポーツ推薦狙い(幅跳び)半分で未だどっちつかず)、自転車仲間とのお伊勢参りツアーも地震で立ち消え。。自粛過剰は良くないと言われますが気分的にどうもドンチャンやる気がしません。今年は近所で飲むだけ。

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2010年06月26日 (土) | Edit |
新システムの方はウーハー側の吸音材を増やす事によって微妙な違和感もなくなり、もうイヂルところは無さそうです。今まで実験君的に適当に箱を作ってきたので塗装も雑ですしバスレフポート用の穴も粘土等で適当に塞いでいるだけです。なのでそろそろ見栄えのする箱でも作ろうかなぁ。。。。B&Wみたいなのを。。。

と考えていたのですが根っからの開発屋なので綺麗に作るという事に対してはナカナカ意欲が沸きません。面倒臭い事は嫌いなのよね。それよりも夏場用に小さな音でも十分に音楽が楽しめる超ニアフィールド システムの実験を始めようかな。。。とね。そっちの方が絶対にオモシロイ。

サブウーハー用のモノラルアンプと8cmドライバーが2セット余っているので、とりあえずこれらを組み合わせて近々実験を始める予定です。スピーカーから耳までの距離は50cm以内を目標とします。キーボードの前または後に置いても仕事の邪魔にならない超コンパクトなシステムを目指しますが、ブーストなしでも50Hzまでフラットな特性は維持できそうです(昨日ちょっとだけ実験済み)。

このシステムは2.1ch構成にする予定です。卓上のコンパクトなシステムを目指すため、メインスピーカーの容積をどこまで小さくできるかが鍵となります。

と言うことで例によって「スピーカー設計プログラム アプレット版」で密閉型スピーカーにおける容積の影響を計算してみました。

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上図はAlpair5を5.5 Lから0.2 Lの密閉箱に入れた場合の特性です。赤はスピーカーのインピーダンス、紫は振動板の振幅です。容積が減るにつれてインピーダンス(赤)のピークが高域側へ移動し、それに伴ってピークの高さ(すなわち共振の強さ)が減少します。

共振ピークが抑えられる事によってスピーカーの出力も減少します。このように密閉型の場合はスピーカーの共振によって低域のロールオフ周波数がほぼ決まります。このためドライバーの最低共振周波数(fs)が低いスピーカーほど低域を伸ばす事ができるという訳です。
容積の影響はスピーカーのインピーダンス特性が変化する領域だけに現れ、従って共振の効果がなくなる50Hz以下では箱の容積の影響はほとんど見られなくなります。言い換えれば、密閉型はスピーカの共振を利用して低域を「増強」しているとも言えます。

しかし、この共振領域では小さな入力でも振動板が大きく動こうとするため、特にダンピングファクタの低い小型の真空管アンプでは影響が顕著に表れます(制動が不足する)。僕はスピーカーの共振によるダンピングの弱まった音が嫌いなので、吸音材をたっぷりと詰め込んで共振を抑え込んでいる事は以前の記事で書きました(まだお読みでない方はコチラを先にお読みください)。従って現在のシステムでもさらに箱を小さくしても良いかもしれません(現在2.5Lですが1.5Lくらいまで減らしても良さそう)。

もちろんフルレンジ スピーカーをそのまま使用する場合には、密閉箱の容積を減らすとてきめんに低域が痩せてしまいます。しかし僕のようにデジタルイコライザとバイアンプ駆動のウーハー(またはパワードサブウーハー)を使用し、かつ、ダンピングの効いた低音を好む場合には、容積をかなり小さくできるはずです。まずは1Lから開始して0.5L程度までトライしてみようと思っています。

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2009年03月12日 (木) | Edit |
部屋の定在波の様相を簡単に計算できるフリーのソフトウェアを見つけたので紹介します。

計算結果をそのまま信用するのは危険ですが、実際の測定結果と照合する事によって部屋の吸音対策がよりいっそう効率的に行えるはずです。測定はPCさえあれば簡単にお金をかけずに行えますので、決して計算だけに頼らずに必ず測定も行ってください。計算はあくまでも測定結果を解釈するための補助的なものと考えた方が間違いがありません。
測定方法に関しては「リスニング位置の音響特性を測定してみよう!」を参考にしてください。

今回紹介するのはStandwave2というフリー ソフトウェアです。
ダウンロードサイトはコチラ

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上は計算結果の一例です。
右側に部屋の平面図が表示されます。この枠内で2つのスピーカー()とリスナーの位置()をマウスでドラッグして設定します。中央のスライダーでは各スピーカーとリスナーの床面からの高さが設定できます。
リスナー位置における周波数特性は左側のグラフに表示されます。この特性は20Hzまで完璧にフラットな出力特性を持つスピーカーを使用した場合に得られる周波数特性に相当します。実際にはこの特性にスピーカーの出力特性を掛け合わせた特性となります。

この例では部屋のサイズは3.4m x 3.4mに設定しています。計算結果からは70Hz近辺に強烈なディップが発生する事が予測できます。

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これが設定画面です。部屋のサイズ、各壁の反射率、計算条件をここで設定します。部屋の反射率は僕の手持ちの測定値から大ざっぱに見積もって全て0.7に設定しました。デフォルトの反射率は0.8から0.9に設定されており、これは部屋に家具やカーペットを置いていない引っ越し前の部屋の特性に近いと思われます。この値はご自分の部屋の測定値と見比べながら大ざっぱに設定してみてください。反射回数では何回目の反射まで計算するのかを指定します。10回より増やしても大きく変わりません(デフォルトは20回)。

計算結果が測定結果に近い傾向を示す事を確認したら、どれか1つの壁の反射率を0に設定して計算結果の変化を観察してください。最も望ましい変化が得られた壁から対策を行えば効率的に作業が進められるはずです。
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上の図は後面の反射率だけを0に設定した場合の結果です。問題のディップはほとんど無くなります。従ってリスナー背後の壁に集中的に吸音対策を行えば効果的であると予測できます。まずはマットレス等を簡単に置いて測定してみて、本当に効果が高いようであれば本格的な作業に入れば良いかと思います。
注意: 部屋の形状やスピーカーの配置によって最も効果的な壁面は変わりますので注意してください。つねに後面の対策が効果的という訳ではありませんのでハヤトチリしないでください。

あるいは吸音対策をしなくてもスピーカーの位置を移動するだけで良い結果が得られるかもしれませんので、スピーカーが実際に移動できるのであればマウスであちこちに移動させてみてください。

以上のように計算と測定を組み合わせれば、効率良く対策が進められます。ただし計算を使用する場合は下記を肝に銘じてください。
○ 計算はあくまでも対策の方向性を探るための参考データとして考えてください。常に測定データと照らし合わせて、その計算結果が信用に足る物かどうかを冷静に判断する事が大切です。
○ 計算と測定は決して完全には一致しません。支配的なピークやディップの傾向がそれなりに合っていれば、それで満足とすべきです。結果を精密に合わせるために反射率を細かく調整する必要はありません。あくまでも大ざっぱに設定する事がコツです。

ここで、ニアフィールドリスニングの優位性を検証してみましょう。

スピーカー位置以外の計算条件は上の条件と全く同じです。部屋のサイズは3.4mx3.4mです。
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こちらが一般的なスピーカー配置
70Hzに激しいディップ

スピーカーを極端にリスナーに近づけてみました
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説明の必要は全くありませんね。

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