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2012年11月17日 (土) | Edit |
今回はAcoustic Rsearch社のAR-3aという有名なスピーカのデータを基に、アコースティック サスペンション方式について考察を加えたいと思います。このスピーカの詳細については、「オーディオの足跡」さん(コチラ)と「ステレオの産業史」さん(コチラ)を参考にさせて頂きました。どちらのサイトも非常にレベルが高く、貴重な情報を掲載しています。ご存じなかった方は是非ご覧ください。

AR社が開発したアコースティック サスペンション方式のスピーカは、コンパクトでありながら大型なみの低音再生を可能とした当時としては革新的なスピーカであったとされます。この方式は1954年に発表され、アンプの大出力化によって低能率スピーカでも十分な音量が確保できるようになった事と、ステレオ方式の普及に伴い小型スピーカへの要求が強まった事から、その後の「スピーカの主流を征した」(ステレオの産業史)と言われます。

当然これは日本の各社にも影響を与え、DIATONEのDSシリーズやYAMAHAのNSシリーズ等、密閉型ブックシェルフ タイプが1960年代~1980年代まで市場に多く出回っていたようです(90年代になるとDIATONE DSシリーズでもバスレフ型が多くなります)。

今回は「オーディオの足跡」さんに掲載されていたAR-3aの特性図をネタに、アコースティック サスペンション方式について考察を加えたいと思います。

ar-3a(1).jpg
AR-3a 1966年発売 (1959年発売のAR-3の改良型)
30cmウーハを使った3Way方式です。小容積密閉型では内圧変動が大きいため、エンクロージャは相当頑丈に作られている事が写真からも見て取れます。内部は吸音材で満たされ、ユニットの取付方法等、気密性にも十分に配慮されていたとの事。その後の密閉型ブックシェルフ タイプの基本形ですね。外寸は356x635x292mm、容積は約45Lであったとの情報があります。大径ウーハを採用しながら異常にコンパクトであると言えるでしょう。カラヤンがモニタとして常用したとか、あのマイルスもオウチで愛用していたと言われます(まぁ、メーカの宣伝文句ですが)。

M-Davis-AR-3a-1971[1]
広告に使われた写真。1966年と言えばマイルスの絶頂期ですね。
正確さとカラーレーションの無さから多くのプロ音楽家に選ばれた、と書いてあります。宣伝文句ではありますが、おそらく本当でしょう。こういうスピーカは音楽が聴きやすいと思います。

特性データは「オーディオの足跡」さんから拝借しました。下はウーハのF特です。
ar-3a(2).jpg
50Hzを下まわる周波数まで特性がフラットである事がわかります。30Hz/-6dBですから尋常ではありません。通常、普通のドライバを単純に密閉箱に入れただけでは、このようにフラットな特性は得られません。にわかには信じ難く、いろいろネットでサーチしたところ、ユーザが計測したデータでも、掛け値なしにこの特性が得られている事がわかりました。LCR回路で特性を調整(イコライジング)しているのかな?とも疑いましたが、そのような情報は何処にもありませんでした。一体どのようにすれば、チッコイ密閉型でこのような特性が得られるのでしょうか?

という事で、いつものようにシミュレーションによる解析を試みました。ドライバにはFOSTEX製30cmウーハFW305Nのデータを使いました。このシミュレーション ソフトは、TSパラメータから自動的にお薦めの箱容積を計算してくれます。まずはその結果から。
305 SLD 232L
容積は232Lと巨大ですが、低域特性はフラットにはならず、200Hzくらいから緩やかに減衰する事がわかります。巨大な容積のおかげで共振周波数(f0)は35Hzと非常に低くなっています。このユニット自体の共振周波数(fs)は25Hzです。

AR-3aと同じ45Lにしてみました。
305 55g
前記事と同様、黄色が吸音材「なし」、色付きが吸音材「多め」です。数L しかなかった前記事に比べて容積が大きいせいか、吸音材の影響は大きくありません。肝心のF特ですが、とても実際のAR-3aには及びません。普通はこんなもんです。容積が小さいため、f0は約70Hzまで上昇しています。

AR-3aのような特性を実現するには、f0をもっと下げる必要があります。ネットをサーチしたところ、f0は40数Hzくらいだという情報が見つかりました。このような小容積でf0を下げるには、まず振動板を重くする必要があります。コンプライアンスを大きくしてもf0は下がりますが、シミュレーションでは値を10倍にしてもf0は大して変化しませんでした。

そこで、f0が約45Hzになるように、等価振動系質量を元の55gから130gまで増やしてみました。注: 振動系を重くすると能率は低下するはずですが、このシミュレーションでは能率値(93dB)を独立したパラメータで設定しているため、その影響を見る事はできません。
305 130a
これで実機に非常に近い特性が得られました。繰り返しますが、振動系が重くなると実際には能率(出力)が落ちますので注意してください。吸音材を多く入れると、通常の密閉型と同様にロールオフ部の出力が若干低下する事がわかります。つまり、このように低域まで伸びた特性は、専ら異常に低いf0に起因するものであり、吸音材はそれには直接関与しない(どころか逆に抑制する)と言えます。

アコースティック サスペンション方式の元々の狙いは、低音の調波歪みを低減する事にあったと言われます。上の図には振動板振幅も表示しています(紫が吸音材「多め」、黄色が吸音材「なし」)。これを見ると、吸音材を増やす事によってロールオフ周波数以下の振幅(従って歪み)を抑えられる事がわかります(出力が低下するのだからアタリマエですけど)。吸音材を大量に投入する1つの狙いは、この点にあるのかもしれません。

振動系が重いと能率は落ちます。このためAR-3aの能率値は、当時としては極めて低い86dBであったという情報があります。このため、メーカは25W/ch以上のアンプを推奨していた模様です。非力な真空管シングルアンプには駆動しきれないでしょう。ちなみにAR社がAR-3aと同年に発売した半導体アンプの出力は60W/ch(4Ω)でした(コチラ)。アコースティック サスペンション方式は半導体アンプの高出力化があってこそ可能になった方法と言えるでしょう。

ざっと見たところ、国産同クラスの密閉型ブックシェルフは、いかにも日本製という感じで中庸を狙い、ARほど過激な設定にはなっていません。次回は、60~80年代の国産密閉型ブックシェルフ スピーカについて書いて見ようかなぁ。。と考えています。面白く纏まったらね。。。

追記
マニアの間では未だに能率が重視され、90dBを超える高能率型がやたら珍重されますよね。90dB以下はスピーカではない!なんて言う方も居られます。この傾向は海外でも同じらしく、マークさんも彼らは第1にSPLの向上を望むと言ってました(ちょっと困り気味に)。これは僕にはとても不思議に思えます。今時、アンプの出力は全く十分に得られるわけですから、音楽再生において極めて重要な低域出力をフラットに確保できるのであれば、多少の効率の低下なんぞトータルの音楽再生クオリティで考えれば、大して重要ではなかろうと思います。例えば、デジタルで低域信号をブーストする場合、高域信号を相対的に減衰させて、全体的に下がった音量レベルをアンプのボリュームで補います。これはつまりスピーカの能率が低下したのと同じ事です。スピーカにLCR回路を組み込んで高域を相対的に減衰させる方法でも同じです。

高能率型スピーカから低能率型スピーカに交換した場合、普段と同じアンプ ボリューム位置では音が小さくて頼りなく聞こえるため、あるいはアンプのボリュームを普段よりもタクサン回さないとなかなか望みの音量にならないため、感覚的になんだか元気がないように感じられるのではないでしょうか(マニアはよく音が前にトバナイいう表現を使う)。ボリューム位置対音量の関係を同じにして比較したならば、そのような印象はかなり軽減されるのではないかと思います。ブラインドテストを行う際、試聴者に自由に音量調整してもらう場合は、この点に気を付ける必要があろうかと思います。

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2012年10月25日 (木) | Edit |
振動板の振幅の増加に伴って3次の歪みが増加し、耳にも明らかに音が変化します。良質な低音再生には、振動板の運動がXmaxを超えない領域で3次歪みをできるだけ低く抑える事が重要だと思われます。

では、音の波形は何故あのように3次歪みによって尖るのでしょうか?

普通に考えれば、振動板の振幅が増加するにつれて機械的および磁気的な非線形性によって波形のピークが抑えられ、波形が丸くなるはずなのに?????と不思議にお思いの方もいらっしゃるかもしれません。僕も最初は不思議に思いました。

実は、マイクロフォン波形で観測される音圧波形は振動板の変位波形と同じではありません。音圧波形の通りに振動板が運動しているわけではないという事です。音圧は振動板の移動量ではなく移動速度に比例します。つまり、音圧波形は振動板の変位波形を微分した波形として観測されます。

今回はそのへんをMicrosoft Excelを使ってシミュレートしてみました。Excelはこのような思考実験に非常に便利です。ソコソコ複雑な多質点系の振動問題でも、Excelであればプログラムコードを書かずに簡単にモデル化でき、結果を様々なグラフで表示できます。開発業務では散々使い倒しましたが、こいつでゴネゴネやっているうちにアイデアが閃いたという事が何度もありました。

では計算結果です。

まずは歪みなしの状態です。
歪み無し
青が振動板の変位です。これを微分して求めた音圧波形が緑です。微分といっても難しくありません。1周期の時間を500個のセルに分割し、各セル間の差を求めれば微分値が得られます(要は引き算するだけ)。音圧は変位の速度(つまり青い線の傾き)に比例します。従って青い線(変位)がゼロ点を横切る時(傾きの絶対値が最大の時)に緑の線(音圧)は最大または最小となり、青い線が最大または最小の時(傾きがゼロの時)に緑の線はゼロを横切ります。

次に、青の変位波形に3次の成分を段階的に追加してみましょう。

3次=2.5%
3次2.5
2.5%の3次成分を加えました。グラフには3次成分を破線で示しています(ゼロ点付近でフラフラしている波形です)。2.5%とは、基本周波数の振幅を1とした時に、振幅が2.5/100の3次成分を追加したという事を意味します。3次成分の追加により、青の変位波形のピークが少し丸くなり、緑の音圧波形が尖って三角形に近付く事が分かります。ね。。こうやってマイクロフォン波形が尖るんですよ。これくらい尖ると、正弦波音とは明らかに違って聞こえます。

3次成分をもっと増やしてみましょう。
3次=7.5%
3次7.5
3次=15%
3次15
今までお見せしたマイクロフォン波形の挙動を良好に再現できています。変位が頭打ちになる事によって、変位に3次の歪みが生じ、その結果として音圧波形があのような形態で歪むという事です。
シミュレーションでは変位波形に人工的に3次成分を追加しましたが、実際の現象は逆ですので注意してください。実際には変位が磁気的および機械的な非線形性によって頭打ちになり、「その結果として」3次の歪みが生じます。

磁気的な非線形性については以前の記事で詳しく書きました。振動板の振幅が最大線形振幅Xmaxを超えれば、磁力による駆動力が頭打ちになるため、3次の歪みが生じるのは当然です。

しかし、Xmaxより小さい振幅で生じる3次の歪みは抑えられるはずです。これには機械的非線形性が強く影響するものと思われます。つまりサスペンション(エッジとスパイダ)が十分にシナヤカでないと、少し変位しただけで振動板を引き戻そうとする力が非線形に増加し、従って変位波形の頭が抑えられて丸くなり、結果として3次の歪みが増加する。。といった具合です。

実際、Daytonウーハの場合、Xmaxより十分に小さな振幅でも3次歪みが目立ちましたが、これもサスペンション系の機械的非線形性によるものではないかと考えています(シナヤカでは無いという事)。これに対し、Alpair10の3次歪みがXmaxに達するまで低く抑えられているのは、マークさんご自慢の超薄ダンパと非常に柔らかいエッジに負うところが大きいのではないでしょうか(非常にシナヤカだという事)。しかし、このようにシナヤカでソフトなサスペンションを使って振動板を傾けずに大きな振幅で運動させるのは極めて難しく、非常に高い組み立て精度が求められるため、今のところラインで量産するのが難しいのだと思われます。市販されているドライバをざっと見渡しても、Alpairというドライバは非常に特異であるように僕には思えます。

ついでに2次の歪みについても計算してみました。

2次=7.5%
2次7.5
2次の歪みは、振動板の前進方向と後退方向で何らかの条件が非対称である事により生じます。上図から、2次歪みが増えると音圧波形は右方に傾く事がわかります。これは、Alpair10の限界近くの大振幅時の傾向と良く一致しています。Alpair10では3次歪みが目立たないため、このように2次の影響を顕著に見る事ができます。

2次の歪みが生じる原因としては、磁気回路の形状(どう見ても対称ではないですよね)、エッジのバネ特性(ダンパは形状的に対称)、コーンの剛性(コーンを拡げる方向とすぼめる方向で剛性が異なる)、密閉箱の空気バネの特性(空気バネは非線形)等によって生じると思われます。これらは簡単には取り除けませんが、聴覚的に2次歪みは3次歪みほど深刻ではないように思えます。ちなみに素敵な音がする真空管シングルアンプでは2次歪みが顕著に表れます。そういえば、スピーカの2次歪みを軽減する方法として、以前に「プッシュプル方式」を試した事がありましたね(参考記事)。こんな事しなくてもDSPをうまく活用すれば2次歪みを大幅に削減できると思います。そのうち実験君してみましょう。

通常は2次と3次の歪みが同時に発生します。
2次=7.5%、3次=7.5%
2次3次7.5
図では、2次と3次を7.5%ずつ付加する事により、片方の振幅だけ激しく頭打ちした状態をシミュレートしてみました。このような場合、変位波形は左右対称であっても音圧波形は左右非対称になる事がわかります。

シミュレーションは以上です。

次に、以上の結果を検証するために、実測の音圧波形から変位波形を逆算してみました。変位波形を微分すると音圧波形になるわけですから、音圧波形を積分すると変位波形が求まります。

方法は簡単です。
僕が使っているハンディオシロはデータをテキストファイルとしてエクスポートできるため、これをExcelに取り込めば計算できます。積分といっても簡単で、微分とは逆に各時間のデータを単純に積算するだけです(要は足し算するだけ)。

Alpari 6M (2.5L密閉)の実測波形を使いました。縦軸は全てオートスケールなので、絶対振幅はデタラメです。
実測1
実測2
実測3
実測4
実測5
と、まぁ、こんな具合みたいです。コメントは不要ですね。

以上です。

これからマークさんにお約束した英語版の執筆(主にAlpair10対他社製比較)に入るので、暫く更新はお休み。その後、8cmクラスの評価をもう一度詳しくやってみます。今度はケロ君のAura3"も評価する予定です。オッタノシミニ!

追記
僕がこのようにデータを使ってオーディオにまつわる現象を解析すると、音楽はゲージツ(とやら)だから。。。人間のカンセー(とやら)は。。。音楽家のジョーカン(とやら)は。。。オンガクセー(とやら)は。。。データでは表せない。。。とかなんとか申してデータを極端に否定的に扱う傾向が顕著に見られます。あのね、僕はなにもオンガクセーたらナンチャラカンたらジョーカンたらを計測しようとしているのではアリマセン。僕は「音楽再生」において超ウルトラ級に基本的なのに放ったらかしにされている現象を問題にしておるのです。

僕に言わせれば、素人が仕事机の上でチョイト簡単にできる実験で露呈してしまうような超ウルトラ級基本的問題に真っ先に取り組まず、表層的/微視的なナンチャラカンばかりを追い求め、その結果ホンマに必要なのか???と思われるような高額な装置が「オンシツ?」が良いと喧伝されている現状には全く納得が行きません。

再三申しているように、僕は「データが良ければ音は良い」というアプローチをとっていません。計測は全て後追いの確認のために行っています。例えば、LEANAUDIOの初期の頃、世の中は殆どバスレフ型なので、僕も当然としてバスレフ型から着手しましたが、どうしても気色悪く聞こえて最終的に受け入れる事ができませんでした。そのため現象を解析した結果、特定周波数に付帯音が現れ、過渡挙動が乱れる事をデータで確認できました。

例えば、僕はVictor製のパワードサブウーハよりもAlpair5をブーストした低音の方が質が高く聞こえ、このため振動板がもっと軽量な普通のウーハとしてPPコーン製の13cmウーハを試しました。しかし、やはり違和感はぬぐえず、自然と使わなくなりました(自然と手が伸びないというのが重要)。次に、振動板の材質を揃えた方が良いのでないかと考え、Dayton製のメタルコーン ウーハを試しましたが、結局A6Mのブーストを超える事はできず、やはり自然と全く使わなくなりました。最後に、Alpair10を思い切って導入する事により、やっと満足のできるクオリティの低音が得られ、常用するようになりました。今回のデータは、このような経緯を後追いで如実に裏付けていると言えるでしょう。

今までの僕の経験に照らし合わせれば、これも再三申しているように、耳に届く音波波形がソース波形に「ソコソコ概ね」近付けば、確実に音は自然になり(違和感を覚える事がなくなり、つまりヘンテコリンな現象がなくなり)、「音楽」の全体と細部を楽に聴きやすくなります。「音楽」(音楽家の表現行為の結果)をより良くより素直に受け止めようとするならば、表層的/微視的/瑣末的/付帯的/主観的/嗜好的/趣味的な「オンシツ」や「リンジョーカン」や「ナンチャラカン」をツイキューとやらする以前に、超ウルトラ級に基本的な「音楽再生クオリティ」をしっかりと整える事の方が遙かに重要です。この点が疎かにされては絶対になりません。でないと、いつまでたっても無限グルグル魔境を脱する事はできぬでしょう。

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2012年05月30日 (水) | Edit |
今回は、前回の計測結果をシミュレーションで検証してみます。

以前にも何度か紹介したStandwave2という定在波シミュレーション ツールを使いました。なかなか使えるソフトですので、ご興味のある方はコチラからダウンロードしてください。お薦めします!

まずは前回の計測結果を再掲します。
meas.jpg
シミュレーションが500Hzまでなので、計測結果も500Hz以下だけを切り出しました。赤が前方約20cm、緑が部屋の中央、青がベッドの枕の位置です。

次にシミュレーション結果です。
simu copy
プロットの色は上図と対応しています。計測結果と非常に良好に一致していると言えます。シミュレーション結果は、20Hzまで全くフラットな音源を使って計測した状態に相当します。これに対しAlpair6P+密閉箱を音源として使った実測データの100Hz以下は、概ね12dB/Octの傾きで減衰しています。そこのところの違いは頭の中で差っ引いて考えてくださいね。

シミュレーションの条件は下記の通りです。
部屋の幅x奥行き: 3x3m
天井の高さ: 2.4m
部屋の反射率: 6面全て0.7 (デフォルトよりかなりデッドです)

下はスピーカとリスナの配置です。
simu ichi
赤四角がスピーカ。青丸がリスナ(部屋中央とベッド枕)。これは平面図ですが、各点の高さも設定しています。
実際のハチマルの仕事部屋は長方形ですが、作り付けのクローゼットがあるため、音響的に実効約3x3mの正方形に近い状態です(とにかく狭いのよ)。当然ですが、正方形は音響的に好ましくありません。

以上でシミュレーションが十分な精度を持つ事を確認できたため、各種条件で計算してみました。

1) コーナーの効果
スピーカの設置場所を変更して、音源から距離20cmでの特性を計算しました。下は配置図です。
near ich
スピーカとリスナを同じ高さに設定し、スピーカ正面20cmにマイクを置いて計測した状態をシミュレートしています。
near.jpg
赤が実際のTONO君の位置です(すなわち天井と正面および右側面の3面が交わるコーナー)。リスナの高さもスピーカと同じです(すなわち真正面で計測した状態)。青は、高さはそのまま、スピーカとリスナを右側面の中央に移動した状態(すなわち天井と右側面の2面が交わるコーナー)。緑は青の位置からスピーカとリスナの高さを1.2mまで下げた状態(すなわち右側面の中心)です。
コーナーでは100Hz以下のレスポンスが増加し、2面が交わるコーナー(青)よりも3面が交わるコーナー(赤)の方が影響が大きい事がわかります。緑に対する赤のゲインは6~8dBあります。これは同一容積の密閉型に対するバスレフ型のゲインとほぼ同等です。

次にリスナをベッドの枕位置に固定してスピーカだけを移動してみました。
far.jpg
色は上図と対応しています。緑(壁中央)に対して青(2面コーナー)の効果は少ないですが、赤(3面コーナー)の低音増強効果は最大で12dBにも達します。おかげでTONO君の場合、8cmフルレンジの密閉箱だけで、バスレフ効果や信号ブーストの助けを一切借りずに、十分以上の低音レベルを得る事ができました(ディップは酷いけどね)。

2) スピーカと壁の距離
2つ上の図の緑の状態(右側面中心)から、スピーカとリスナを部屋の中央まで移動しました。
kabe ichi
スピーカとリスナの距離は20cmのまま。高さは共に1.2mです。
kabe.jpg
スピーカを壁から離すと、約60Hz以下の低音のレベルが下がりました。影響の大きさはコーナー部ほどではなさそうです。

3) 部屋の広さ
天井の高さは2.4mのまま、幅と奥行きを2倍の6mにしてみました。
6m ichi
黄色の部分が実際のハチマル部屋の大きさです。

6m.jpg
赤は3mの実際の部屋の状態(枕位置)です。緑は、スピーカとリスナの関係を固定したまま、部屋だけ大きくした状態です(すなわち6m部屋のほぼ中央で聴いている状態)。青は、リスナを左下隅まで移動した状態です。
スピーカとリスナの距離を変えずに部屋だけ広くすると、ピークが減少してF特は平坦に近付きますが、部屋に合わせてリスナも後方に下がった場合、ピークの高さ自体はほとんど変わりません(ただしピークの周波数は低い側に移動)。

以前にも書きましたが、ニアフィールド効果が十分に得られる(低域のF特が十分に平坦になる)リスニング距離というのは、一概に何メートルという事はできず、部屋の大きさとの相対的な関係が強く影響します。一般的な目安としては、部屋の中央より前寄りで聴く事により、それなりの効果が得られます。部屋の前寄り1/3くらいまでスピーカに近付く事ができれば理想的ではないでしょうか(ZAP君はこの状態)。要は、できるだけ広い部屋をできるだけ小さく使えば、定在波の影響から逃れる事ができるという事です。いくら部屋が広くても、それに合わせてスピーカから離れたのでは、良好な結果は得られません。離れて聴かざるを得ない場合(狭い部屋に大きなSPを置いている場合等)は、TONO君のようにイコライザによる低域の補正が効果的であると思われます。バスレフ型で低音が出すぎる場合は、ポートに詰め物をするのも効果的でしょう。

いずれにせよ、真っ当な音楽再生を目指すのであれば、一度リスニング位置で計測してみる事を強く推奨します。何もFrieveAudioで補正したように真っ平らにする必要はなく、40~10kHzの帯域が±6dBの範囲に、顕著なディップなく、全体的に自然な形状で概ね収まっていれば、まず十分であろうと思われます。しつこいですが、これは音楽再生における基本中の基本です。全ての「コマケーコノミノモンダイ」や「ナンチャラカン」とかは、これが必要十分に達成された後の「オタノシミ」という事ではないでしょうか?

計算結果は以上です。

このシミュレーションは500Hzまでしか計算できません。また、ハチマル部屋での実測でも、500Hz以上の特性には部屋の影響が殆ど見られませんでした。次回は、ほぼ可聴帯域の全域を使う西洋音楽において、500Hz以下の帯域がどのような位置付けにあるのかについて考察し、音楽再生における重要性について考えてみたいと思います。

追記
いやぁしかし、ファーフィールド(というか一般的な距離)では低域に対する部屋の影響が凄まじいですね。今回TONO君を試してみて改めて実感した次第です。バスレフだ密閉だとチマチマやるのがアホらしくなるくらいです。

最近はポートを完全に塞いだTONO君で専らラヂオを聴いていますが、かなり良い線を行っているように思います。撤収の憂き目に合う事はどうやら無さそう。。。ですね。合格!としましょう。全くモノラルで十分だし、聴きやすいし。イコライザの方も、シンプルに250Hzバンドをブーストするだけでエーンチャウ?という所に落ち着きそうです。ネットラジオの音質(192kbps)もハチマルには全く十分。近いうちにTONO君も綺麗にお化粧しないとね。。。

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2011年05月06日 (金) | Edit |
もう少し部屋が広ければ欲しいなぁ。。と思うのがJBLのコントロールモニタ(43###)シリーズです。音質がどうのこうのというのでは無く「カッコイー」から。オトコノコ心をくすぐるメカッポさというか。。。特にグレーの4311なんか欲しいですね。1本だけで良いのだけれど。モノラルで十分。

520_20110506212148.jpg
4311 こいつが1台だけ欲しい

さて今回はJBLモニターシリーズをネタにしてバスレフ型のサイズと周波数特性の関係についてチョコッと考察してみます。

下はカタログデータです。容積は外寸から推測しました。
796.jpg
もし本当に30Hzまでほぼフラットに再生しようとすると38cmウーハーと100Lを軽く超えるボックスが必要だと言う事です。ここに「低音出るスピーカ」= 「デカイ/高価」という古典的ヒエラルキーが産まれます。しかし、「音楽再生装置」にとっての可聴帯域下限近くまでの再生というのは、自動車にとっての「安全に走る/曲がる/止まる」と同じ基本的要件のはずです。すなわち、大きかろうが小さかろうが、キチント低音を再生できてこそ「音楽再生装置」と呼べるという事です。と、それはさておき。。

下図はシミュレーション結果です(4319は4312とサイズ的に同じなので省略)。
797.jpg
ドライバにはデータベース内のテキトーなJBL製ウーハー(30cmと38cm)を選び、容積と-6dB周波数(カタログ値)に基づいてポートを適当に設定しました。まあ、ごく大ざっぱな計算として見て下さい。吸音材は全て「普通」です。ついでにAlpair 6Pのハチマル最終バージョン(容積11L、ポート:φ34 x 70mm)も載せました。

JBLの計算結果を見ると、いずれも綺麗な2山のインピーダンス曲線を描く典型的なバスレフ チューニングである事が分かります。当然ですが、ウーハー径が大きい方、あるいは同一径であれば容積が大きい方が低域が伸びています。

また、低域が伸びるモデルほど共鳴点が低周波側にシフトするため、低域の位相遅れも低減します。小容積のバスレフ型では共鳴周波数が高くなるため、低域が伸びないだけでなく、バスレフ臭さが強く出てしまうのは仕方ないところと言えるでしょう。今回のバスレフトライアルの経験から、共鳴点を50Hz以下に持って行ければ、バスレフっぽさもあまり気にならないのではないかという気がします。

さて、以上のように、30Hzまでフラットに再生しようとした場合、バスレフ型では38cm径のウーハーと100Lを大幅に超える巨大な箱が必要です。低域をたった20Hz延ばすのに如何に大きな代価が必要な事か。。。また、このようなスピーカーを使用できる恵まれた住環境と経済的余裕を持つ人は如何に希少な事か。。

なんでこんな馬鹿デカイSPが作られる(必要とされる)か?と言えば、それは本当に西洋音楽を楽しもうとすれば、そのような低音が聞こえる事が重要だからです(参考記事)。しかし小さい部屋で快適音量で聴きたい人でも、交響曲の低音部を聴こうとすると、こんな馬鹿デカイモンが必要になるというのは大変馬鹿げた話だとハチマルは思います。

普通の部屋で快適音量で日常的に音楽を楽しむ大多数の音楽愛聴者(オーディオ愛好者ではない)は、それなりのサイズのSPで不十分な低音で、何も知らされずに我慢しろ。。。というのが現在のオーディオ装置のあり方です。信号再生面での基本技術が十分に成熟した現段階において、これを解決して万人が安価に当たり前に何も知らなくても低音までキチント聴けるようにする事が「音楽再生装置」としての技術的最優先課題であろうとするのが普通の業界の技術者の考えるトコロだと思うのですが、どうもこの業界の目指すトコロは違うらしい。しかも、それは現在の技術レベルで容易に解決可能であるにもかかわらず。。。激しく違和感を覚えるのよね。ハチマルは。。また批判的になってしまった。この辺で。。。

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2011年05月02日 (月) | Edit |
今回のバスレフ チューニングでの測定結果をご紹介します。

まずは吸音材を入れずにポートと振動板前方の近接音を測定しました。ポートと振動板が離れているので、近接して合成音を測定する事はできません。ポート径はφ34mmです。なお、以下の全ての測定は、左右のSPを直列接続した状態で実施しています。
765.jpg
黒がポート長70mm、赤が40mmです。凄まじい定在波が出ています。初めて音を出した時に愕然としたのも頷けます(こりゃ駄目かと思いました)。1/2波長ではなく1波長の定在波のようです。ポートの位置を中央ではなく左右どちらかにずらした方が良いかもしれません。共鳴周波数は容積11Lで計算にほぼ一致しました。

767.jpg
振動板前方数cmでの測定です。同調点では振動板の出力が低下します。振動板からも激しく定在波の音が出てきます。

10cmx10cmの正方形に切った吸音材(厚さ25mmのミクロンウール)を左右の両端に入れました。ポート長は40mmです。
766.jpg
768.jpg
赤が吸音材なしです。この状態から吸音材を1枚ずつ増やして行きました。1枚入れるだけで高周波放射音は大幅に低下しますが、周波数が低いほど吸音率が下がるため、300Hzの定在波を殺すには左右に5枚ずつ計10枚(厚さ計250mm)の吸音材が必要でした(緑のプロット)。しかし狙い通り、細い筒の両端にだけ吸音材を入れるため、全体の共鳴効果に対する吸音材の影響はそれほど大きくなく、共鳴効果は劇的には低下していません。以前試した小容積ボックスでは、吸音材を少し入れるだけで共鳴効果は激減しました。なお、ピーク点がやや高域側に移動したため、最終的にポート長70mmを採用する事にしました。

次に、約1m離れて合成音を測定してみました。ポート長は40mmです。
774.jpg
スピーカーをデスクの上に置いて、中央前方約1.2mで測定しました。部屋の影響が凄まじく出ています。50Hzの激しいディップは部屋の特性です。無響室が欲しい。。。
黒が密閉(ポート塞ぎ)、赤が吸音材なし、緑が吸音材5x2枚です。100Hz~50Hzのバスレフ効果は吸音材を入れてもほとんど低下していない事が分かります。

下が前方の壁に設置してリスニング位置で測定した状態です。距離は約1m。ポートは最終的に70mmを採用。
777.jpg
吸音材の詰め方を少し修正し、前記事の測定データよりも音量を上げて測定しています。青が中央のリスニング位置、赤がドライバの正面で測定した結果です。50Hz以下で急激に減衰する典型的なバスレフ型の特徴が見られます。なお、特性のディップは部屋の影響です。吸音材で各種付帯音を十分に殺しながらほぼ狙い通りの50Hzまでフラットな特性が得られました(JBLの30cmコンパクトモニタ4312等と同等)。これは主にドライバのサイズに対して余裕のある容積を選択したおかげです。

以上のように事前のシミュレーションと、チューニング中の簡単な測定によって非常に効率的に作業を進める事ができました。もちろんそこから先は聴感による微調整が必要ですが、計算と測定は基準となるスタートラインへ素早くたどり付くために非常に有効な手段だと思います。

追記
今のところ筒とエルボーは普通に差し込んだだけの状態です。接合部で振動を遮断する必要性はそれほど感じません。エルボーのバッフル直後のストレート部には、内側にエアコン用の穴埋めパテを貼って補強/制振/マス付加しています。バッフル板(というかリング)には厚さ9mmの合板を使用しました。塩ビ管は木に比べて響かず、爆音を望まないのであれば、肉厚が薄くても意外とそのままSP用に使えそうです。お安く手っ取り早く実験/製作するには好適かもしれません。ただし、基本は長細い筒っぽなので管の長手方向で激しく定在波が発生します。断面が円なので、管端にだけ吸音材を挿入すれば効果的に吸音できるようです。波長の長い定在波は吸音が大変なので、管を長くする場合には注意が必要です。

追記2
測定しやすいようにモノラル接続のままで聴いていますが、別にモノラルでもエーンチャウ??というのが正直な感想。かえって聞きやすいかもしれません。ステレオってホンマに必要なのか???

追記3
Frieve Audioを使用して45Hz~8kHzの範囲でフラット化と位相補正を適用したところ、少し残っていた臭さが抜けてぐっと音楽が聴きやすくなった。思いの外効果が大きい。やはりフラットな特性が最も自然で聞きやすいと思う。最低音域の締まりと重みはデスクトップの密閉型システムに及ぶべくもないが、完全にハチマルの許容範囲に入ったと実感できる。このような周波数特性の微妙な修正を機械的/電気的/音響的にチューニングするのは大変手間がかかるが、デジイコを使用すれば極めて簡単に良好な結果が得られる。軽くて明るい音調もバリエーションとしては良いかもしれない。たぶんこれでOKなのでステレオ接続に戻した。
778.jpg
イコライザ係数。これで50Hz~8kHzが完璧にフラットになる。バッフル板を大きくすればハイ上がりの度合を低減できると思うので、不要な板が見つかればそのうち実験してみる。

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2011年04月30日 (土) | Edit |
今回はバスレフ型以外の、各種低音増強方式をシミュレーションで比較してみます。

共通条件はユニット「Alpair6 P」、容積「12L」、吸音材の量「普通」です。
12Lという容積は「共鳴管」モデルで「ざっと計算」(ソフトウェアのお薦め設定)した結果、容積が12Lになったので、全ての計算条件をこれに合わせたというだけです。従って今回の計算は各モデルごとに最適化していません。同一容積で比較した場合の大まかな傾向として見てください。

各グラフはクリックで拡大してご覧ください。

まずは密閉型
759.jpg
このソフトウェアでは密閉型の吸音材量を設定できません。その他のモデルの吸音材量は全て「普通」です。以下の各グラフでは、比較基準として密閉型の特性を黄色のラインで重ね合わせています。

バスレフ型
760.jpg
共鳴周波数を約50Hzに合わせています。黄色の線は密閉型の特性。

共鳴管(ストレート)
761.jpg
断面積変化のないストレートな共鳴管です(管径φ96mm x 長さ1700mm、容積約12L)。ソフトウェアのお薦め設定をそのまま使用しました。音道長が170cmですので、その4倍の波長(50Hz)が基本共鳴周波数となっています。200、400、600、800Hzに高次の共鳴ピークがかなり強く表れています。共鳴点(50Hz)前後の位相の変化はバスレフ型に比べるとなだらかです。

共鳴管(先細りテーパー)
762.jpg
音道長は170cmのまま、管径がφ132mmからφ66mmに絞られる先細りテーパー管を設定しました。容積はほぼ同じ12Lです。管長は同じですが、基本共鳴周波数が40Hz以下に低下しています。先細りにすると共鳴周波数は低域側へ移動するようです。また、高次のピークの振幅も大幅に減衰しています。共鳴点が低周波側へ移動したため、位相遅れも全体的に減少しています。ダラ下がりの低域特性を嫌って管長を短くすると前記事のペンシル型に近付き、位相遅れも増加します。このタイプをうまくチューニングすると、顕著な位相遅れを伴わずにダラダラとかなり低域までレスポンスを延ばす事ができるかもしれません。そのへんが欧米のDIYビルダーに好まれる理由かもしれませんね。この方式はバックロード型を逆に使用すると簡単に試せます。ハセヒロ工業さんではコンバート用のバッフルプレートもオプションで販売しています。

蛇足ですが、欧米のDIYビルダーはスピーカー内部にコイルと抵抗を組み合わせた緩やかな高域減衰回路を平気で組み込みます。これにより低域のレベルを相対的に引き上げようというのが狙いです。あるいはバッフルステップ修正用の回路を組み込む場合もあります。日本人ではまずやらないですよね。ハチマルなんかデジイコでやりゃしまいじゃん。と思うのですが。

共鳴管(先太りテーパー)
763.jpg
今度は逆にφ66mmからφ132mmに拡がるテーパー管を設定しました。長さと容積は上記2例と同じです。まず、ホーン効果によって全体の音圧レベルが増加しています。基本共鳴周波数は先細りとは逆に高周波側へ移動します(約65Hz)。高次のピークはストレート管ほど顕著には表れませんが、全体的なレスポンスの変動幅は先細りよりもかなり大きくなっています。

バックロードホーン
764.jpg
音道長と管径は上記の先太りテーパー モデルと同じ値に設定しました(ソフトウェアのお薦め設定でも似たようなものです)。ただし、こちらはエクスポーネンシャル形状です。チャンバー容積はソフトウェアのお薦めを採用しました。200Hz以下の低域特性は先太りテーパーとほとんど同じですが、ホーンからの高周波放射音が減衰しています。これはバックチャンバーの効果だと思われます(試しにチャンバー容積を0Lに設定して確認)。また、低域の位相遅れも緩やかです。この方式で低域限界を延ばそうとするとかなり大型になると思われますが、ホーンから出てくる元気な中低域音が真骨頂というところでしょうか。欧米のDIYフォーラムではこのタイプをあまり見かけませんが、日本のDIYビルダーの間ではこのタイプの人気が非常に高く、お国柄が顕著に出ていて興味深いですね(形状的に真逆ですもんね)。

という具合に、各種低域増強法には長短があって、悪い癖を抑えつつ良いところを引き出すというのがビルダーの腕の見せどころという事でしょう。また、それぞれの音の癖によってリスナーの好みも分かれるのだと思います。大手メーカー製スピーカーの圧倒的大部分はバスレフ型か密閉型ですが、癖のない無難な特性とサイズ的制約からそこに落ち着くという事だと思います。

ハチマルが提唱する小容積密閉型を基本とするデジタルブースト方式またはパワードウーハー方式は、それらの癖を徹底的に取り除きつつ位相乱れのないフラットな低域レスポンスを確保する事により、記録されている音楽作品のオモシロミを最大限に楽しむ事を目的としています。従って、独特の癖による音のオモシロミは全くありません。そのへんを物足りなく感じる人には全くツマラナイ方式だと思います。また、上記の各種方式に比べて容積を極端に小さくできるという利点も備えます(Alpair6の馬鹿ブーだと2.5L、Alpair5パワードウーハー方式で4L、ケロはチャンネルあたりたった0.4L)。

追記
今年の連休はどこにも行かず、基本的にお仕事とバスレフ製作にあてる予定。ムスコ(中3)も受験準備だし(勉強半分、スポーツ推薦狙い(幅跳び)半分で未だどっちつかず)、自転車仲間とのお伊勢参りツアーも地震で立ち消え。。自粛過剰は良くないと言われますが気分的にどうもドンチャンやる気がしません。今年は近所で飲むだけ。

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2011年04月29日 (金) | Edit |
以前の記事(コチラ)でご紹介したAlpairの生みの親であるMark Fenlon氏のコメントには、Alpair6 P用にペンシル6型ボックスを採用しているとありました。そこでMark audioのホームページをあたったところ、ペンシル型ボックスの図面を見つけましたので、今回はこれを基に計算検討してみます。

今回参考にしたMark audio提供の資料(PDFファイル)はコチラからダウンロードできます。

下図がAlpair6用ペンシル6型の図面です。
752.jpg
ペンシル型の名の通り、細長い形状をしています。これはバスレフ型ではなく1/4波長共鳴管(管の一端が開放端、他端が閉端)の効果を狙ったタイプのようです。日本ではあまり馴染みのあるタイプではありませんが、欧米の自作派の間では人気があるようです。一般的に吸音材をかなり多めに入れるように見受けられます。
寸法から計算すると主要パラメータは下記のようになります。
容積: 19.2L
共鳴管長: 902mm
共鳴管径: φ165mm相当
開口径: φ89mm相当

これを基に、シミュレーションしてみました。
まずバスレフ型として計算した結果です。
753.jpg
容積19L、ポート径φ88mm、ポート長18mm(板厚相当)としました。吸音材の量は「普通」です。このような形状ではポート長をどう見積もるかが難しいですが、この開口面積だとポート長を数10cmまで延ばさないとまともなバスレフチューニングにはなりません。基本的にバスレフ方式で作動しているのではないようです。

次に先細りテーパー管型として計算してみました。
754.jpg
実際の形状は、断面積一定で開口面積だけ絞った形状ですが、このシミュレーション ソフトウェアにはそのような形態のモデルが用意されていないため、先細りテーパー管モデルを使用しました。吸音材の量は同じく「普通」です。約60Hzに管の共鳴のピークが表れています。この結果、ドライバのインピーダンス曲線は綺麗な2山になります。またバスレフ型と同様に共鳴点以下の周波数では出力が急激に低下します。位相の遅れ度合も普通にチューニングしたバスレフ型とたいして変わりません。バスレフ型に対して有利な点としては、開口面積が大きいのでポートでの流速を大幅に低減できる点が挙げられます。バスレフポートの筒っぽの共振音もなくなりますが、本体全体が筒っぽなので、シミュレーションには本体の共振の影響がかなりはっきりと表れています。これを抑えるには吸音材を相当量入れる必要があると思われます。

下はMark audioが公表している、Alpair 12用のペンシル12型のシミュレーション結果です(容積67L、長さは6型と同じ約90cm)。
755.jpg
ほぼ同じような傾向ですね。管長が90cmそこそこしかないので、大きい割には低域は伸びていません。

普通のバスレフ型に比べて別段大きなメリットもないようですし、今回は容積大きめ+吸音材多めのバスレフ型を採用しようと思います。
757.jpg
容積を16Lに拡大。吸音材「多め」にして共鳴効果を適度にダンピングし、低域を欲張って延ばさないタイプ。まあ、こんなとこチャウカナ。。。ボチボチ材料集めに入りたいと思います。

追記
上の例はシンプルなペンシル型だが、海外のDIYフォーラムでは音道長を稼ぐために下記のような形態をよく見かける。大概は吸音材の量を指定している。結構な量を充填する模様。海の向こうではあまり吸音材アレルギーはないようだ。
758.jpg

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2011年04月07日 (木) | Edit |
という事で、Alpair6 Pはオーソドックスなバスレフボックスで使用してみたいと考えています。

例の「スピーカー設計プログラム アプレット版」で検討したところ、6Pでは概ね7~9Lくらいで約50Hzまでフラットな素直な特性が得られそうです(6Mの場合は5 L前後の小さめの箱で同等の低音特性が得られる、関連記事)。以前購入したVictorのパワードサブウーハーの箱がちょうど8 Lくらいなので、こいつを実験用に利用しようと考えています。ちなみに、このサブウーハーが内蔵していたアンプは現在ケロ用に使用しています。

で、容積が決まったので、今回はポートの径と長さについて検討してみます。

同じヘルムホルツ共鳴周波数が得られるポート径/長さの組み合わせは無数に存在します。箱容積と共鳴周波数を一定とした場合、細くすると短くする必要があり、逆に太くすると長くする必要があります。

容積を8L、共鳴周波数を約53Hzに合わせて、3種類のポート仕様について計算してみました。

ケース1: 内径=4cm x 長さ=12cm
ケース2: 内径=2.8cm x 長さ=4.5cm
ケース3: 内径=2cm x 長さ=1.5cm

ケース1: 内径=4cm x 長さ=12cm
717.jpg

ケース2: 内径=2.8cm x 長さ=4.5cm
716.jpg

ケース3: 内径=2cm x 長さ=1.5cm
715.jpg

3つとも共鳴周波数がほぼ同じなので、得られる周波数特性もほぼ同じです。このシミュレーションは空気抵抗の影響を考慮していないのかもしれません。ポートが細くなると流速が上がって空気抵抗も大きくなるので、共鳴周波数が同じでも実際の出力に影響が出るかもしれませんのでご注意。。。。

さて、ここで注目すべきは、ポートから出てくる音の特性です(グラフの緑の線)。太くて長いケース1では、約1kHzにポート(筒っぽ)自体の共振ピークが発生し、そこから高域側に倍数周波数のピークが発生しています。この1発目のピークは、ポートを短く細くするにつれて高周波側へ移動し、そのレベルも低下します(ケース1では1kHz/67dBに対してケース3では4.5kH/36dB)。

このように、同じチューニング周波数でも、ポートを細く短くする事によって、ポート自体が発生する筒っぽ臭い音を抑える事ができます。また、バスレフ型の場合、十分な共鳴効果を得るには吸音材を最小限にせざるを得ず、箱内の定在波の音もポートから放射されるため、その意味でもポート径は小さめの方が有利かもしれません。

ただし、ポート径を小さくすると流速が上がるため、空気抵抗と風切り音の影響が無視できなくなる可能性があります。また、過渡特性にも悪影響が生じる可能性もあります。これは実際に使用する時の音量にも影響を受けます(音量が大きいとポートを出入りする空気の量が増える → 流速も上がる)。例えばドライバの限界近い大音量で聴く場合には、あまり小径にはできないかもしれません。しかし、控えめの音量でしか聴かない場合には、ポートをかなり小径にしても大丈夫かもしれません。市販製品の場合、当然限界近い音量での再生も想定してポートを選定せざるを得ませんが、自作の場合は自分の音量に見合ったチューニングが可能です。

という事で、近々バスレフのスタディを始めますのでオタノシミニ。。。

追記
この場合もそうだけど、最大音量をどこに見積もるかによって装置の設計は大きく影響を受けますね。たとえば馬鹿ブーストにしてもそうです。最大音量を制限する事によって音質面のみならず設計自由度が大きく広がります。そういう意味でもニアフィールドリスニングは極めて有利です。また、デジタル処理によって信号を制御する事により、使用条件を確実にハードウェアの限界以下に制限できるようになれば、ハードウェア側の設計自由度はさらに向上します。それには、信号入力から音響出力(スピーカー)までを含めたトータルなシステムコンセプトが必要なのは言うまでもありません。このようなコンセプトにより、「本質的」な「音楽再生クオリティ」の向上のみならず「コンパクト化」も可能です。まだまだ技術的にやることが一杯あると思うのだが。。。。

追記2
6Mは6Pよりもf0が低いが、6Pと同じ箱に入れて低域が伸びるのではなく、6Pよりも小さい箱で同等の低域特性が得られると考えた方が良さそうだね。

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2010年10月19日 (火) | Edit |
前の記事の測定結果を計算で検証してみました。
計算ソフトウェアには以前にも紹介したStandwave2を使用しました(参考記事)。
ダウンロードはコチラ

下図がその設定画面です。
608.jpg
部屋の幅は作り付けクローゼット分を差し引いて3mとしています。このため僕の部屋は前後と左右の寸法がほぼ同じ正方形に近くなるため、音響的には良い状態とは言えません。各壁面の反射率は測定結果と比較しながら大まかに合わせ込みました。詳しいパラメータは図を拡大してご覧ください。なお、このソフトウェアは500Hz以下しか計算できません。(注意: デフォルトの反射率は部屋に家具類を置いていない空室状態を想定しているようなので、実測値に比べるとかなりライブな特性です。測定値と比べながら多少反射率を下げる事を推奨します。)

下図に140cm位置での測定結果と計算結果の比較を示します。測定には20Hzまでフラットな音響出力を使用したので、計算結果とそのまま比較する事ができます。
609.jpg
グラフの縦横のスケーリングを正確に合わせて測定結果と計算結果を重ね合わせてみました。赤が測定結果。黒が計算結果です。非常によく一致していると言えます。

この状態から部屋のサイズを左方、後方、上方に1m拡大した場合の計算結果を下に示します。スピーカとリスナの位置関係は変わりません。
606.jpg
部屋を後方に延長した場合に最も良い結果が得られそうです。この場合、部屋を縦長に使用して中央よりやや前寄りで聴いている状態になります。やっぱり広い部屋は良いですね。。

次に各壁面の反射率をゼロに設定して計算してみました。反射率をゼロにするのは現実的に不可能ですが、各壁面の影響の度合を見る事ができます。
607.jpg
この結果からは、後方の壁を吸音するのが最も効果的である事が分かります。しかし60Hz以下のゲインは部屋を大きくしない限りほとんど改善されないように見受けられます。

以上2つの結果を見る限りでは、後方の壁(すなわちスピーカーと対面する壁)の影響が大きいように見受けられます。この壁をできるだけスピーカーから遠ざける(部屋を縦長に使用して前寄りで聴く)か、吸音する(吸音は容易ではないので、ついたて等で斜めにする)と効果的かもしれません。ただし様々なパラメータが複雑に影響し合うため、この結論が全ての部屋に一般的に当てはまるとは限りません。全く逆の結論になる場合も十分に考えられます。ご興味のある方は、ソフトウェアをダウンロードして是非ご自分で試して見てください。使用方法は極めて簡単です。ダウンロードはコチラ

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