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2013年01月13日 (日) | Edit |
「低音の遅れ」の最終回です。今回はZAP 2.1chシステムでデジタルフィルタとアナログフィルタを比較しました。

まず、5kHz/40Hzの合成正弦波信号の再生波形です。
位相遅れ2
赤がデジタルフィルタ(fc≒90Hz、メイン側にハイパスあり)、緑がアナログフィルタ(fc≒60Hz、ハイパスなしのアドオン式、実際のクロスは約100Hz)の結果です。デジタル(赤)に比べてアナログ(緑)の40Hz波形は約2倍遅れていますね。デジタルフィルタはサウンドブラスタのDAC用ソフトウェア、アナログフィルタはDAYTON製プレートアンプに内蔵のもの(-12dB/Oct)を使いました。

次に、前の記事と同じ方法で、いろいろな周波数における「遅れ時間」と「遅れ角度」を計測しました。下がその結果です。
G.jpg
A6単独のデータは、前の記事からの転載です。

まず「×」でプロットしたデジタルフィルタの結果を見ると、遅れ量はAlpair 6単独とほぼ同等(またはそれ以下)である事がわかります。さすがデジタルフィルタですね。

次にアナログフィルタでの結果を見てみましょう。僕は約100Hzでハイパスを通さないA6にクロスするために、フィルタのカットオフ(fc)は約60Hzに設定していました。この条件での遅れは「◆」でプロットしています。40Hzにおける遅れ量はデジタルフィルタ(×)に比べて約2倍に増加しています(約10msが20ms、約140°が280°に増加)。

さらにアナログフィルタのfcを約120Hzまで上げて測定してみました。この条件での遅れは「■」でプロットしています。この結果から、fcを上げると低音の「遅れ時間」は大幅に減少する事がわかります。アナログフィルタの場合、fcを極端に下げると低音の遅れにモロに影響する点に注意が必要です。

計測結果は以上です。

今回の結果から、一般的に非常に低い周波数でクロスするサブウーハでは、デジタルフィルタが圧倒的に有利であると言えます。特にメイン側にハイパス(ローカット)フィルタを適用しないアドオン方式ではfcを極端に下げる必要があるため、デジタルフィルタの優位性はさらに顕著となります。

また、fcを上げると低音の遅れが大幅に減少する事から、数kHzでクロスオーバーする一般的な小型2WAY方式では、アナログフィルタを使っても低音の遅れには余り影響しない可能性があります。このへんは、例の激安モニタを購入する事になったら確認してみたいと思います。

一方、バスレフ方式では、再生帯域の下限近くで位相が急激に回転するため、モロに低音の遅れに影響するはずです。随分以前のデータですが、下はTONO(7L) + Alpair 6Pで計測した密閉型とバスレフ型の比較です。
20121012051400183 copy
上からソース信号(50Hz)、密閉型の再生波形、バスレフ型の再生波形です。この結果を見る限り、バスレフ型は密閉型に比べて180°(10ms)以上遅れています。アナログフィルタを内蔵したアドオン式サブウーハにバスレフ型を採用すると、フィルタとポートの相乗効果によって低音が大幅に遅れるかもしれません。

「低音の遅れ」に関するシリーズは今回でオシマイです。

追記
ホンモノ?の低音とは何でしょうか?
僕は、音楽を楽しむにおいてズシッと重くてビシッと速い、演奏した通りの「正しいノリ」の低音(つまり周波数ドメイン的にも時間ドメイン的にも正確な低音)を聴く事が極めて重要であると感じます。音楽を聴く楽しさがダンチガイです。特にジャズを楽しむにおいては、正しいノリのビートというかウネリが非常に重要だと感じます。あ、それとピアノソナタもね。このような低音再生を誰にでも使えるコンパクトかつ安価な装置で実現する事が、家庭用音楽再生装置に残された極めて重要な課題であると言えるでしょう。これにおいて、密閉型+デジタル処理が非常に効果的である事は当ブログで再三述べてきた通りです。

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2013年01月11日 (金) | Edit |
前の記事に関連して、低音の遅れについて書きます。

下はZAP 2.1で計測した波形です。
位相遅れ
グレーがソース波形(DAC出力)、赤がスピーカからの音響波形です。ソース信号は40Hzと5kHz正弦波の合成波です。40Hzが4周期ですから、信号の長さは100msです。信号の前後には、基準信号として急峻なパルスを挿入しています。FrieveAudioの補正はOFFです。なお、Alpair 6M単独でも計測しましたが、遅れ量はピッタリ同じでした。さすがデジタルフィルタですね。

赤のスピーカ出力を見ると、5kHzの音はソースに対して「時間的に」ほとんど遅れる事なくスピーカから出力されるのに対し、40Hzの音は約135°(約9ms)遅れて出て来る事がよくわかります。信号の最後の方を見ると、5kHzの音が止まっても、40Hzの音はまだ続いていますね。このように、ソースでは5kHzと40Hzの音が同時に発生していても、スピーカからは40Hzの音が「時間的に」遅れて出てきます。なお、以前のデータによると、アナログフィルタを使った場合、40Hzの音はこれの約2倍(約270°/約19ms)遅れて出てきます。

下図は遅れの異なる正弦波を並べたものです(実測音響波形ではありません)。
phase_20130111022250.jpg
左端の位相角度値の下の時間値は40Hz(25ms/cycle)を想定した場合の値です。黄色は上図の波形に相当する100msの区間です。一番下のように40Hzが5kHzに対して720°遅れた場合、半分の50msが過ぎてからやっと40Hzの音が出てきます。つまり、5kHzの音がピーっと鳴り始めてから50ms後に40Hzの音がボーっと鳴り始めるという事です。

次に、右の方の白い領域を見てください。0°、360°、720°は全く同じ位相に見えます。また、180°と540°の位相も全く同じです。このように、定常波形(波形の始まりと終わりが無い一定状態の波形)を観測した場合、360°を超える「時間的」遅れは正しく認識できません。実際には360°または720°遅れていても、全く遅れていないかのように見えてしまうという事です。

このため、よく見かける位相特性のグラフは、0°を中心に-180~+180°のスケールで示され、値が+180°に達すると-180°に折り返してプロットされます。下は以前の記事で紹介したYAMAHAのPA用スピーカ(2Way バスレフ型)の位相特性図です。
AEE5163A834841E0BAF166DA0B2842D5_12083_20130111024621.jpg
左がアナログフィルタ、右がデジタルフィルタによる特性です。このグラフでも、プロットは-180と+180°の間で折り返していますね。しかし、これでは現象の絶対的な遅れ時間を見る事はできません。そこで、以前の記事では下図のようにグラフを改造しましたよね。
phase_20130111024621.jpg
このグラフから5kHzと40Hzの絶対的位相差を読み取ると、アナログフィルタの場合700°弱、デジタルフィルタの場合360°弱遅れる事になります。僕のいつものシミュレーションより遅れ方が随分大きくなっています。

下はいつものシミュレーション結果です。
まずFOSTEXドライバによる2Wayバスレフ型の結果
fos_20120129095422_20130111031058.jpg
このグラフでも位相(緑)は折り返して表示されるため、上と同じ方法で絶対的な遅れがわかるように改造しています。これによると5kHzに対する40Hzの遅れ進みは約540°です。

次にAlpair10密閉型の結果
A10_20130111031058.jpg
遅れは120°くらいでしょうか。

以上のように、小型スピーカとしては最も一般的な2Wayバスレフ型ではアナログフィルタとバスレフポートによって低音の遅れ位相の変化が増加します。3Wayや4Wayではどうなるのか、興味深いですね。

では、どの程度遅れると聴覚で感じる事ができるのでしょうか? 例によってネットで調べてみたところ「リズム知覚の基礎としての時間知覚に関する精神物理学研究」という非常に興味深いサイトを見つけました。是非ご一読ください。
関係しそうな内容を抜粋すると、
[1.時間分解能]の項目から
高さや、到来方向の異なる二つの音に、時間的なずれを与え、どのくらいのずれがあれば前後関係が正しく知覚されるかを検討した。その結果、充分に訓練を積んだ被験者では、20 ms くらいのずれがあれば、前後関係がぎりぎりで判断できることが判った。
[2.リズムを生ずる時間間隔]の項目から
二つの音が 40 ms 程度離れていれば、その前後関係がはっきりと判るので、部分的には 40~100  ms くらいの時間間隔も、リズムを構成する単位となりうる。
とあります。これに従えば、上のYAMAHAのアナログフィルタ型2Wayバスレフのようなスピーカ(700°/約50msの遅れ)では、ピー(5kHz)に対するボー(40Hz)の遅れを十分に知覚できるという事になります。グルーブ感とかスイング感等のノリは非常に微妙なリズムの揺らぎによって表現されるので、こういうSPでジャズは聴きたくないかなぁ。。。周波数によって遅れ具合も大きく変化するため、僕なんか酔ってしまうかもしれません。

また、人間の視覚的な時間分解能は30ms程度であると言われ、聴覚も視覚もほぼ同程度の時間分解能となります。この事から、人間は時間を完全に連続的に知覚しているのではなく、30ms前後の分解能で離散的に知覚しているのではないかと言われています。僕が音楽帯域の現実的下限周波数と考える40Hzの1周期は25msです。この事から、一応の目安としては、40Hzにおける遅れが360°以下であれば、時間的遅れの観点からはまずOKであろうと言えるかもしれません。あ、でも、僕はフルレンジのバスレフ型(位相回転は360°以内)でも違和感を覚えるので、これも何とも言えないですねぇ。やなり、僕が懸念しているもう1つの問題要因「狭い周波数領域での急激な位相変化」がどのように音楽の知覚に影響するのか?という疑問は残ります。なお、例えば100Hzでは720°遅れても時間的遅れは20msですから、これより高い周波数での時間的遅延はあまり気にする必要は無いかもしれません。

前の記事に書いたように、音楽は一時も留まらない過渡的現象です。ですから、定常的な波形解析だけで装置の性能を評価するのは非常に危険であると言えるでしょう。とはいえ定常的な評価ももちろん重要です。例えば、位相の違いが音色に及ぼす影響については、複数周波数の合成波を生成し、位相を変えながら聴き比べてみるとおもしろいかもしれません。下はWaveGeneというフリーソフトウェアを使った例です。
wave.jpg
wave2.jpg
このソフトウェアでは、3つの波形を合成でき、その内1つの波形の位相を変更できます。上の例では200Hz、400Hz、600Hzの合成波を生成し、200Hzの位相を変更しています。位相を変更すると波形は全く異なって見えますが、僕には同じ音色に聞こえます。以前から言っているように、僕は高い周波数における位相問題が音色に及ぼす影響については重視していません。敏感な人なら聞き分けられるのでしょうか。WaveGeneはコチラでダウンロードできますので、興味のある方は是非試してみてください。

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